メイヤー倍率からは既に底打ち感が出ているBTC(ビットコイン)

Daily Market Report 2022/7/27

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米国株式市場と強まる相関性

Trading Viewより当社作成

上図は、2016年1月から2022年7月現在までのBTC/USD(黒線、左軸)とナスダック総合指数(青線、左軸)の変動率の対数チャートを比較し、相関係数(背面グラフ、右軸)をグラフ化したものである。

相関関数は1に近くなるほど両者は同じ値動きをしていることを指し、逆に-1に近づけば逆の値動きをしていることを表している。

図で示している通り、2020年2月のコロナショック以来、BTCはナスダックともに上昇し、両者は正の相関が強く表れている(上図 点線枠①)。

2021年5月には、中国のマイニング規制等の悪材料によりBTCは約65,000ドル付近で反落し、一時的に相関が崩れたが、BTCと米国株式市場の連動性は再び強まっていると言えるだろう。

そして、過去にも下落相場において相関が強まる傾向が見受けられたように(上図 点線枠②)、今年の下落相場では両者の相関がより一層強くなっており、暗号資産市場と株式市場共に勢いに欠ける展開となっている。

今年に入ってからの暗号資産市場と米株相場の主な下落材料は、下記のようなものが考えられる。

【暗号資産市場】
・ステーブルコインのUST(テラUSD)のドルペッグが外れ裏付け資産となるLUNA(テラ)の価値が99%安まで下落
・大手暗号資産レンディングプラットフォームを運営するCelsius Networkによる暗号資産市場の大幅下落を理由にした暗号資産の引き出し、送金を停止の発表
・シンガポールの大手暗号資産ヘッジファンドであるThree Arrows Capitalの破産
・米資産運用会社のプロシェアーズ(ProShares)、ビットコイン価格の下落に投資できるアメリカ初のETF(上場投資信託)を販売開始

【米国金融市場】
・先行きの見えないロシア・ウクライナ戦争
・FRBによる金融引締めの加速

以上のようになり、両市場ともに相場回復に繋がるといえる材料は現状乏しく、サル痘など疫病関連の突発的な悪材料や、地政学的なリスクには注意し続ける必要がある。

また、7/28日本時間未明からのFOMCで決定される利上げ幅により、今後の米国株式市場の方向感が定まると言っても過言ではなく、ナスダック総合指数に強い相関関係にあるBTC価格にも影響を受けるのはほぼ確実だろう。

一方で、BTCの現在の価格の立ち位置を、他の市場とは切り離した視点で各指標をもとに考察すると、底を示すシグナルは既に出ている可能性もある。

次は、BTC価格の過去の騰落を基準に考察していく。

長期スパンでの現状のBTCの立ち位置

Trading Viewより当社作成

上図は、2013年6月から2022年7月現在までのBTC/USD(黒線、左軸)の変動率の対数チャートに200週移動平均線(赤線、左軸)、200日移動平均線(青線、左軸)、メイヤー倍数(右軸、背面グラフ)をプロットしたものである。
※メイヤー倍数とは、200日移動平均線に対するBTCの価格比率で、現在価格を200日移動平均線で割ることで求められる。価格比率を求めることにより、現在価格が買われすぎもしくは売られすぎの状態であるかを知る手がかりとなる。倍数1を基準とし、1以上であれば買われすぎ、1以下となれば売られすぎと見ることができる。また、その倍率の大小によって過熱感を測ることができる。

以下、【200週移動平均線と底値の関係性】【メイヤー倍数と底値の関係性】の2つの観点からBTCを考察していく。

200週移動平均線と底値の関係性

過去の値動きを振り返ると、BTCは200週移動平均線を割った後に底値を付け(上図 点線丸)、その後回復する傾向にあることがわかる。この時のメイヤー倍率は0.5台であり、一般的には売られすぎということを意味する。

特に2014年と2018年においては、直近高値から84%下落したにも関わらず、その後立ち直りを見せている。

現在のBTC価格は既に200週移動平均線を割りこむ水準への下落を達成しており、200週移動平均線と価格の交差を底入れシグナルとみなせば、回復局面へのトレンド転換も考えられるかもしれない。

しかし、今回の下落サイクルでは一つの重要なサポートラインである2017年高値(19,000ドル)を下回ったことから、底値が掴みにくくなっているとも捉えられる。

また、昨年11月の最高値(65,500ドル)から現在約74%の下落に留まっているという点で、過去の例から言えば下落余地が残されていると言え、注意が必要だろう。

メイヤー倍数と底値の関係性

中長期での割高・割安感を図る指標の一つであるメイヤー倍数は、今年の6月に過去最低水準の0.51を示している。

これは言い換えると、200日間のBTC平均価格の約半値ということである。

過去にメイヤー倍数の0.5付近をつけた時にBTCは底打ちをしているため、現在のBTCは過去最低水準まで売り込まれていると仮定すると、既に下落は一服した位置にいるといえるだろう。

また現在は0.6まで回復し、200週移動平均線を突き抜けて強い上昇を見せたことからも、先月の17,000ドル台が底値であったという見方が強まっているといえる。

次は、価格の決定に重要なステークホルダーとして欠かせないビットコインマイナーの視点から考察していく。

決断を迫られるマイナー

Trading Viewより当社作成

上図は、BTC/USD変動率の対数チャート(黒線、左軸)にマイニング収益率の指標であるPuell multiple(以下プエル倍数)の対数グラフ(右軸、棒グラフ)を表示した図である。

プエル倍数とは、1日に発行されるビットコインの総額を年間平均で割り、BTCマイナーの収益率を算出、供給量側の経済状況を指標化したものである。

プエル倍数を見ると、2013年・2017年頃のようなバブル期には非常に高い収益率を示しており、反対に暴落後は0.5を下回る低収益となっている。

BTC価格の回復と共に、収益率は改善され新しいサイクルに移っていくというのが通例である。

マイナーはこれまでBTCの半減期を迎えるたび、マイニング効率の悪いマイナーから淘汰され、効率を高めてきた背景がある。

その中で、有利な地位を築いた大規模なマイニング事業者は新規発行されるBTCの多くを得ることとなり、機関投資家と比肩するBTCを保有していると推察できるだろう。

マイニング事業者は過去のサイクルでも、暴落後は事業の継続のため保有しているBTCの売却を強いられてきた過去があるが、それはベアマーケットの終盤を示していた(上図点線枠部分)。

6月にBTCが大幅下落した後プエル倍数は0.39~0.55の値を推移しており、今まさに窮地に立たされたマイナーが事業を手放すか否かを迫られているタイミングであると言えそうだ。

特に先月からマイニング事業者の撤退、BTCの売却のニュースが立て続けに報じられている通り、収益の立たないマイニング事業者は既に撤退している状況である。

マイニング事業者の淘汰が進んでいるのであれば、プエル倍数は現在の数値を底として、BTC価格とともに上昇していくという楽観的な見方もできよう。

しかし、ここからBTC価格がもう一段下落した場合、大部分のマイナーが保有分のBTC売却を余儀なくされることが予想されるため、過去にはない下落が待っていることも否定はできないだろう。

まとめ

様々な視点から今後のBTC価格について考察したが、BTCの独自材料で考えた場合、各指標が示す通り、現状が底値圏であると十分に考えられるのではないだろうか。

しかし、米国株式市場を始めとした各市場の影響を大きく受ける可能性を考えると、楽観的な判断は難しいと言わざるをえない。

複数の要因が岐路に立たされており、各材料を消化しながら下落に対して油断のできない相場が続くこととなりそうだ。

(7/27 午前6:00時点)

銘柄別価格前日比(%)

社内データより作成

7/26の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。

平均値は-3.40%、中央値は-3.63%、標準偏差は2.76%となった。

最大上昇銘柄はZPG/JPY1.46%、最大下落銘柄はETH/JPY-8.73%

最大上昇銘柄のZPG/JPYは、終日上昇基調にあり、売りが続いても買い支えられる展開となった。現在短期的な高値圏に位置している。

最大下落銘柄のETH/JPYは、東京時間序盤から大幅下落となった。BTCが安値でレンジを組む一方、ETHはもう一段下落し一時183,000円台まで下落。しかし、7/13を始点とした上昇傾向を維持しており、BTCと比較するとまだ中期的には高値圏にあるといえる。

24時間ボラティリティ(%)

社内データより作成

7/26の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。

平均値は7.19%、中央値は6.96%、標準偏差は2.31%となった。

最もボラティリティが高かった銘柄はETH/JPY11.91%

一方、最もボラティリティの低かった銘柄はZPG/JPY1.87%となった。

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2022-07-27
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