ジャクソンホールから探る年末までのBTC(ビットコイン)は?

Daily Market Report 2023/8/25

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BTC/JPYは当社終値(Mid)
ドルインデックス、S&P500はTradingviewより作成

上表は、直近5ヶ年のジャクソンホール後のBTC/JPY、ドルインデックス(複数の通貨に対する米ドルのレートを指数化したもの)、S&P500のパフォーマンスと、BTCとの相関係数を表したものである。
※パフォーマンスの起点はジャクソンホール前の為替市場の営業日とし(2023年の場合8/23)、「閉幕翌日」はジャクソンホール後の為替市場の営業日(2023年の場合8/28)、「1ヶ月後」はジャクソンホール前の為替市場の営業日の1ヶ月後、休日であれば翌営業日(2023年の場合9/25)、「年末」は為替市場の最終営業日(2023年の場合12/29)としている。

ジャクソンホールは各国の中銀総裁が議論する8月の一大イベントとして市場参加者に知られており、2023年は8/24~8/26の開催を予定している(日本時間)。

中でも25日に予定されているFRB議長の講演は今後の米国の金融政策の方向性を示唆するため要注目だ。

さて、実際のところ、過去のジャクソンホールは各アセットのパフォーマンスにどのような影響を及ぼしてきたのだろうか。

まずは、直近5ヶ年を振りかえってみよう。

2018年

現FRB議長のパウエル氏は2018年2月に就任したが、当時はVIXショックによりドル高株安の相場環境となっていた。翌月にはトランプ米大統領(当時)が中国からの鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税を表明し、米中の貿易摩擦が鮮明化。再び下値を試した。

この年のジャクソンホールは戻り相場といえる時期であり、会見では年末まで利上げの方針を表明したが、市場の期待通りだったのか、翌日はドル安株高で反応したことが伺える(上表 2018年ドルインデックス、 S&P500の閉幕翌日)。その後も堅調な流れが続き、9月にはS&P500が当時の史上最高値を更新する様相をみせた。

しかし、10月には米中貿易戦争の激化を懸念した金利上昇と、12月にはメキシコの壁建設を巡る政府機関閉鎖などが連なり、「クリスマス・ショック」と評される波乱の年末相場となった。

BTC/JPYは、年初に205万円付近を付けてから上値を切り下げる下落トレンドとなっており、相関係数からみても株式市場と程遠い独特の値動きをしていたことが確認できる。

2019年

2018年末の安値引けからの大発会となり、リスク資産は5月にかけては堅調に上昇していた。しかし、5月にトランプ米大統領(当時)が中国への追加関税を表明したことで急落。6月にはメキシコにも不法移民対策の不備を理由に関税をかけると表明したこともあり(のち撤回)、米大統領の旧Twitter投稿に振り回される相場となった。

この年のジャクソンホールは、トランプ氏の発言と中国商務省の応酬が繰り広げられた時期と重なり、パフォーマンスをみるうえで安値圏の時期だった点には注意されたい。当時のジャクソンホールのテーマは「金融政策の課題」で、厳しい外部環境をふまえ、利下げの方針を打ち出している。その後、他の懸念要素とされていたイギリスのEU離脱や香港の逃亡犯条例撤回などが好感され、株式市場は再び大幅高となった。

BTC/JPYは各国の法整備などを背景に、年初の40万円から7月に150万円まで戻りはしたものの、その後は軟調な展開となった。相関係数から伺えるように、株式市場との連動性は近づきつつも高いとはいえず、ドルインデックスとの相関を強めている。当時は「仮想通貨」と呼ばれていたように「資産」としてよりも「決済手段」としての側面が強かったとも考えられそうだ。

2020年

2020年は2019年末の高値を追う展開となったものの、2月中旬からコロナウイルスの拡大による経済活動の停滞への懸念から株式市場、BTC/JPYは急落した。その後、各国中銀の資金供給もあり、インフレヘッジとして伝統的な株式市場だけでなく、レイダリオ氏に代表される著名投資家の保有により、次第に暗号資産にも注目が向かうようになった。

BTC/JPYとS&P500との相関係数は0.77をつけており、株式市場との連動性は現在の水準まで上がった。

ジャクソンホールのテーマは「次の10年の金融政策」で、その後の会見ではインフレ容認の姿勢をみせた。これを受け、上表のように翌日の暗号資産、株式市場は上昇、ドルインデックスは下落の様相となったが、翌月にはコロナウイルスへの不安感もあり、マイナスに落ちる展開となったことが伺える。年末にはリスク資産がさらに買われる展開となっていることから、大きな方向感はジャクソンホールの通りだが、短期的には下落に転じるという面が教訓となるかもしれない。

また、米大統領選挙でバイデン氏が当選したが、前年までの米中貿易戦争における追加関税のような不確実性が低下した分、要人発言に注目が向かうようになり、ジャクソンホールの影響度も増したのではないかとも考えられそうだ。

2021年

前半は、2020年末の上昇基調に則り、暗号資産市場ではアルトコインにも注目が向かうようになった。株式市場ではリモートワーク銘柄に関連し、半導体製造企業やテクノロジー関連銘柄が上昇した。5月中旬から下落に転じ、テスラ社CEOが環境負荷を理由にBTCの決済を停止したことや、中国における規制などが要因となった。日本のレバレッジ規制も要因の一つに挙げられるだろう。その後、利上げへの思惑から株式市場でも軟調な流れとなった。

ジャクソンホールは、量的緩和の縮小が織り込まれており、資産購入ペースが縮小された。

また、年末にはウクライナ国境にロシア軍が20万人集結したとの報道もリスク要因となり、前年のような年末高とはならなかった。

2022年

前年のウクライナ危機がロシアによる軍事侵攻に進展し、エネルギー価格の上昇がインフレを加速させた。

ジャクソンホールのテーマは「経済と政策の制約の再評価」であり、インフレ下の金融政策に関心が向かっていた。終了後の会見で、「インフレは一時的」との姿勢を表明したことで、秋以降も軟調な相場となった。暗号資産市場では、FTXの破綻を発端とした急落が発生し、BTC/JPYも年末まで下値を模索した。ジャクソンホールの影響が高かった年と総括できそうだ。

2023年

中国では行動制限の撤廃による中国経済回復への期待感や、米国ではテクノロジー関連株の上昇に牽引された株高など、年初からリスク選好の流れが広がっていた。しかし、米国で複数の地銀が相次いで破綻に至ったことでリスクオフムードがにわかに強まることとなった。

これらの報道時ではBTC/JPYやS&P500も下押したものの、7月にブラックロックによるBTCのETF申請の報道もあり、1年2ヶ月ぶりにBTCは450万円台に乗せる局面もあった。

以上から、2023年度の相場環境を比較すると、2019年のような外部環境の厳しさは維持しているものの、2021年以降のインフレ懸念は続いており、急速な利下げの想定は難しいといえる。

今回のジャクソンホールのテーマは「グローバル経済の構造転換」だが、インフレとリセッションへの対応が注目ポイントとされており、以前から言われていたことなので、目新しさはないとも考えられる。

その分、何らかのサプライズがあった場合にボラティリティが急拡大する可能性には注意されたい。

秋から年末にかけてのBTC/JPY

当社取引ツールより作成
BTC(ビットコイン)のチャート・価格情報はこちら

上図は、2023年5月末~現在までのBTC/JPYの日足Bidチャートへ、冒頭の図における各年末のBTC/JPYの変化率を、今後のシナリオとしてプロットしたものである。

足元のBTC/JPYは、ETF申請などを背景に7/3につけた4,523,556円の年初来高値から、中国恒大のショックなどを背景に急落し、380万円前後を推移している。

今回は前項の通り、ジャクソンホール前日の8/23につけた3,816,339円(当社Mid)を出発点に過去5年の翌営業日(2023年なら8/28)、1ヶ月後(9/25)、年末(12/29)に当てはめてみた。

2018年のパフォーマンスの場合は、この中では最悪のケースといえるが、当時の相関係数は0.24であり、現在の0.78の相関係数や前項記載のファンダメンタルズの近さを踏まえると、ある程度リスク資産のファンダメンタルズに則った2019年、2021年、2022年の価格推移のほうが現実的ともいえる。その場合のレンジは280万円~391万円が想定されるだろうか。

一方、唯一7/3の高値を上回るパフォーマンスを発揮した2020年の場合は9,395,570円だが、1ヶ月後の9/25時点では、ジャクソンホール前の価格を下回っていた。当時と相場環境は異なるものの、良好なファンダメンタルズだったとしても短期的には逆行することがあるという前例になっている点には注意されたい。

(8/24 午後7:00時点)

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