英ポンド下落時に取引高急増のBTC(ビットコイン)。デジタルゴールドとしての真価を発揮か
Daily Market Report 2022/10/12
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・デジタルゴールドとは
BTCはデジタルゴールドという呼び名を持ち、度々その性質からゴールドになぞらえられている。
BTCとゴールドの主な共通点としては希少性(BTCの発行上限枚数は2100万枚)、高い採掘コスト、偽造不可、劣化しないなどの点が挙げられる(詳しくは当社コラム参照)。
「有事の金」と呼ばれるように、ゴールドは国際情勢が不安定な時期に資金の退避先として選好される性質があり、昨今のウクライナ情勢下でも上昇を見せた。
これはゴールドの持つ普遍的価値から資金の避難先として選択された結果である。
そして、BTCも2015年のギリシャショック時などには上昇した実績を持っており、これはBTCがデジタルゴールドと表現される所以であるだろう。
BTCの値動きを確認すると、昨年11月の過去最高値からピークアウトし、米株を代表とするリスク資産と同様に下落を続けている。BTCは株式などと同様にリスク資産の性格が強くなっていたが、1カ月ほど前からはその傾向に変化が表れ始めている。
本稿では、ゴールドとの相関関係と、財政懸念から混乱が続いている英ポンド安との関係性、という2つの観点からBTCを考察する。
・BTCとゴールドの相関が上昇
比較チャート(2022.3/1- 現在)当社取引ツールより作成
BTC(ビットコイン)のチャート・価格情報はこちら
上図は、BTC/JPYと※ZPG(ジパングコイン)/JPYそれぞれの2022/3/1を起点とした騰落率を表すチャートと、それらの相関係数である。
※ZPGはゴールド現物を裏付け資産とし、「1ZPG=1gのゴールド価格(JPY)」に概ね連動することを目指して設計されている。本稿ではゴールドの価格の代用としてZPGを用いる。詳しくは昨日のレポート参照。
BTC/JPYとZPG/JPYは、ともに9月中旬から上昇した後に下落しているように見えるが、相関係数で表してみると、BTCとゴールド(ZPG)は9月中旬以降高い相関を維持しているが一目でわかる(上図丸部分)。
BTCは今年に入ってから続く弱気相場でナスダックをはじめとした米国株式市場と強く連動しており、BTCとナスダックは概ね正の相関関係を維持していたが、9月末頃からはその関係が崩れはじめた(10/6のレポート参照)。
一方、この時期にBTCとの正の相関関係を高めたのがゴールドである。
ゴールドは安全資産として強く認識されているため、このタイミングでゴールドとの相関を強めたBTCは、経済的混乱下における資金の避難先としての性質を帯び始めたともいえるだろう。
この傾向は先月末の英ポンド安時のBTCに注目することで、より鮮明になる。
・避難先にビットコインという選択肢
TradingViewより当社作成
上図は、9/19からのBTC対ポンド、円、ドルの変動比較チャートである。
図を見ると、9/22頃からBTC対英ポンドが対円、米ドルから乖離し、大きく上昇している。
これは英トラス政権の減税政策や、国債の増発計画に伴う財政悪化懸念により、英ポンドが対ドルで最安値を更新したタイミングと重なる。
ポンド安によりBTC/ポンドが上昇するのは当然ではある。しかし、注目すべきは、9/26にBTC/ポンドの通貨ペア取引量が過去最高の約47,700BTCと、平常時の10倍以上に達しているという点である。
Crypto Compare、Trading Viewより当社作成
上図は、BTC/ポンドの取引量(青棒グラフ、左軸、単位BTC)とポンド/ドルのチャート(オレンジ折れ線、右軸、単位ドル)である。
上図を見ると、ポンド暴落時のBTC/ポンドの通貨ペアの取引量は圧倒的に増加しているのがわかる。
また、先に述べたように9/26にはBTC/ポンドは大きく上昇した一方、英国の株や債券は下落している。
つまり、財政懸念を発端とした通貨ポンド、英株、英債券の暴落に際し、資産の避難先としてBTCを選択するという動きが見られたといえるだろう。
今回の件のみでBTCがゴールドのように資産の退避先として選ばれていると断定することはできないが、BTCがデジタルゴールドとして意識された一つの事例として捉えることはできるだろう。
ビットコインはゴールドと比べボラティリティこそ高いが、資産の保存先として選ばれることも不自然ではないだろう。
・10/13に控える米CPI発表。今後のBTCは?
市場全体が注目している大きなポイントの一つは、世界的なインフレのピークアウトがいつになるかという点だ。
先週末の米雇用統計では非農業部門雇用者数、失業率ともに市場予想を上回り利上げ継続の見方が強まった結果、BTCは米株とともに下落した。
足元で注目すべきは10/13に控える9月FOMC議事録と9月米消費者物価指数(CPI)の発表である。
インフレに直結するCPIが市場予想を上回れば、米FRBは金融引き締めのペースを緩めず、リスク性資産には逆風となるだろう。
また、急速に進んでいる米国金利の上昇は金利の付かないゴールドにも重石となっており、BTCのデジタルゴールドという側面が裏目にでる展開もあろうか。
一方で、全世界の債務残高はGDP比で約350%を超えており、英国のような財政懸念が騒がれるケースが出てくることも否定できない。
景気減速の中で安全資産への株式などからの資金退避が加速すれば、それはBTCにとってプラス材料となる可能性もあるかもしれない。
今後、BTCがデジタルゴールドとしての地位を確立できるのか試金石となるタイミングは迫っていそうだ。
(10/11午後8:00時点)
・銘柄別価格前日比(%)
社内データより作成
10/11の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は-3.21%、中央値は-3.53%、標準偏差は1.57%となった。
最大上昇銘柄はMONA/JPYの0.05%、最大下落銘柄はXLM/JPYの-7.53%。
最大上昇銘柄のMONA/JPYは、下落相場を形成しているが、11日の夜間帯に59円の安値を付けたのち短期で買い戻されている状況だ。
最大下落銘柄のXLM/JPYは、9/23の高値18.7円まで上昇したもののレジスタンスされ反転。直近の上昇に対する手仕舞いの売り注文を巻き込んで下落。現在は10/7に付けた安値16.7円ラインを試す展開となっている。
・24時間ボラティリティ(%)
社内データより作成
10/11の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は6.01%、中央値は5.83%、標準偏差は1.93%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はCHZ/JPYで10.29%。
一方、最もボラティリティの低かった銘柄はZPG/JPYで1.23%となった。
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