待望のETH(イーサリアム)マージ実装完了。暗号資産市場の光となるか

Daily Market Report 2022/9/16

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ETHの新しい歴史

かねてより市場の注目を集めていた、ETH(イーサリアム)のアップデート「The Merge」(以下マージ)が日本時間9/15 15:40分頃正式に実装された。これにより、ETHはコンセンサスアルゴリズムをPoW(プルーフ・オブ・ワーク:Proof of work)からPoS(プルーフ・オブ・ステーク:Proof of stake)へと移行し、新たな歴史を歩み始めた。

マージは複数回予定されている一連のアップデートの序盤であり、今回のPoSへの移行により、莫大なエネルギーを必要としたマイニングは不要となり、99%以上のエネルギー削減が可能となった。

これまでPoWを採用するETHをはじめとした暗号資産は、脱炭素の社会的潮流の中でエネルギーを大量に消費する点から、企業・機関投資家から敬遠されがちであった。しかし、マージを含むこれからのアップデートにより彼らの支持を集ることにより、既存の社会システムへの導入促進といった躍進を遂げることへの期待が寄せられる。

また、PoSになることで、1日のETH新規発行量はステーキング報酬である1,600ETH(90%減)のみとなる。さらにステーキング報酬のために保有するメリットが大きくなるため、ETHはデフレ資産となる可能性もある。

ビットコインは半減期というデフレ構造を持たせることにより希少性を生むことで、価格を保ち続けていることからわかるように、ETHのPoSへの移行は価格上昇という観点からも大きな可能性を持っているといえるだろう。

以上のように、マージはETHのみならず今後の暗号資産市場を左右する重要なイベントであったが、意外にもマージ後のETH価格は大きく変動することはなかった。

マージ実装。市場の反応は?

ETH/JPY 10分足Bidチャート(当社取引ツールより作成)
ETH(イーサリアム)のチャート・価格情報はこちら

上図は、9/15におけるETH/JPY 10分足チャートである。

マージの実装のタイミングは明確な時刻ではなく、特定のTTD(Terminal Total Difficulty:期間中の合計難易度)に到達した瞬間から発生するものであった。マージ実装に際し、イーサリアム公式YouTubeでのライブ配信はあったものの、実装時間予想サイトのタイムにはばらつきがあり、直前は情報がやや錯綜していたようだ。

マージの前の市場は、機能、利便性ともに向上することに期待した買いや、ハードフォークであるETHPoWのエアドロップを目的とした現物の買いが目立ち、ここ数か月のETHの好調を支えていた。

一方で、ヘッジ目的としてや、スナップショット後の事実売りを見越したショート勢がマージ直後には待機しており、過去にエアドロップがあったOMGと同様、スナップショット後に暴落するという見方も少なくなかったが、それほど大きな動きは見られなかった。

15:40頃にマージが実装された後は、世界中の暗号資産関係者から祝福ムードが沸き起こるとともに、一時ETHは上昇したものの、強気相場を引き起こすには至らなかった。

また、PoSへの移行により必要性がなくなったマイナーたちの行き先として、ETCやハードフォークのETHPoWに注目が集まっていたところ、ETCはマージ後10%近く上昇した。

ハードフォークにより発生したETHPoWは、執筆時点ではいくつかの海外取引所では既に扱われているが、高いボラティリティを伴っており、今後の展開は未知数である。ETHPoWはイーサリアム財団による正式な情報なども乏しく、持続可能性にも疑問点があるため、どのような位置付けとなるのか引き続き注意をする必要があるだろう。

ETHの今後はどうなるか

先に述べた通り、今回のマージはPoWからPoSへ移行したことで既存の社会システムへの導入促進といった躍進を遂げる可能性やデフレ資産となる可能性など、暗号資産市場にとっても歴史的な意味を持ち、ETHの一連のアップデートがすべて完了した後には、ブロックチェーンが社会に浸透する足掛かりとなることが考えられる。

一方で、足元では暗号資産市場、米国株市場どちらも冴えない様相を呈しており、油断ができない状況である。

9/13に発表された米CPI(消費者物価指数)では、事前予想を超える結果となりインフレピークアウト期待が高まっていた市場は再びリスクオフムードを迎えている。

直近での注目すべきイベントは9/20~9/21に予定されているFOMC(米連邦公開市場委員会)であるが、100ベーシスポイント(1%)の利上げ可能性も浮上している。

市場の争点はインフレピークアウトがいつかという点にかかっており、悪循環に陥り歯止めの利かないドル高から通貨危機の懸念すら起きている現状では、楽観することはできないといえるだろう。

(9/15 午後10:00時点)

銘柄別価格前日比(%)

社内データより作成

9/15の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。

平均値は-2.05%、中央値は-1.82%、標準偏差は1.84%となった。

最大上昇銘柄はBCH/JPY1.12%、最大下落銘柄はETH/JPY-5.73%

最大上昇銘柄のBCH/JPYは、16,933円でオープン、17,123円でクローズとなった。4時間足、日足ともに一目均衡表の雲下限付近を推移しており、目の前のレジスタンスとなっている。しかし、日足の雲では目先の雲は薄く、MACDも0付近とテクニカル面からはトレンドが発生しやすい状況であることがわかる。

最大下落銘柄のETH/JPYは、213,166円でオープン、211,890円でクローズとなった。23時台には8%ほどの下落を見せたが、日足の一目均衡表雲下限がサポートとなったようだ。

24時間ボラティリティ(%)

社内データより作成

9/15の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。

平均値は6.98%、中央値は6.39%、標準偏差は2.87%となった。

最もボラティリティが高かった銘柄はETC/JPY13.78%

一方、最もボラティリティの低かった銘柄はZPG/JPY1.93%となった。

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2022-09-16
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