ついに実施されるThe Merge。ETH(イーサリアム)の行方はいかに
Daily Market Report 2022/9/15
_
これまでThe Mergeは複数回にわたって延期されており、様々な紆余曲折を経てきたETH(イーサリアム)であるが、ついにProof of Stake(PoS)に移行する日がやってきた。
The Mergeが近づくにつれてETH/BTCは去年記録した0.087BTCに迫る勢いを見せているが、まずは昨年のETH/USDとETH/BTCの推移を振り返りたい。
CoinGeckoより当社作成
ETH(イーサリアム)のチャート・価格情報はこちら
昨年(2021年)は暗号資産市場全体が好調だったこともあり、ETH、BTCともに過去最高値をつけるなど記録的な年であった。そのなかでもETHは特に大きな飛躍を遂げている。
実際、2021/1/3は1ETHあたり約0.024BTCであったが、2021/12/8には約0.087BTCと、BTCに対して約3.6倍も上昇しているが、これは、昨年が「NFT元年」であったことが大きな要因のひとつだろう。
一方、周知のとおり今年に入るとNFTは流行から外れた印象もあり、それに伴いETH/BTCは、下落の道を辿ることとなる。
CoinGeckoより当社作成
上図は、2022/1/1以降のETH/USD(左軸、緑面)とETH/BTC(右軸、青線)の推移だ。
1/5にETH/BTCは0.0826BTCを記録するものの、以降は5月頃まで0.065~0.075BTCの間で推移。その後、5/11頃のLUNAショックや6/13頃のセルシウスショック、6/16頃のGray GlacierアップデートによるThe Mergeの延期などの悪材料によってETH/BTCは0.05BTC台にまで下落する。
しかし、7月半ば以降、The Mergeの機運が高まり、ETH/BTCは再び上昇気流に乗る。そして9/9には昨年の高値圏である1ETHあたり0.084BTCを記録することとなった。
・The Merge以外の影響
The MergeによってETHが環境負荷への影響が大きいProof of Work(PoW)からエネルギー消費量が99.95%以上も低いとされるPoSに移行することは、「PoW禁止草案」が提出されるほど環境問題への意識が高いEU地域などにおいて持続可能性が高まったといえるだろう。
とはいえ、The MergeアップデートはEthereumが抱えるスケーラビリティ問題の解決とはなっていない。
実際、これまでのPoWでは1秒あたりのトランザクションの処理数(TPS)は15程度であるが、The MergeでPoSに移行しても10%程度の速度上昇がある程度であり、数千TPSを備える「イーサキラー」のパフォーマンスには到底及ばない。
それでもEthereumに期待が高まる理由は、The Merge移行後に計画される複数のアップデートへの期待かもしれない。
特に、2023年に予定される「The Surge」アップデートではシャーディングと呼ばれる技術の導入により、トランザクションの処理能力が飛躍的に上昇するとされる。
さらに、現在Ethereumでは「The Verge」、「The Purge」、「The Splurge」といったアップデートが並行して開発されており、実施時期は未定だがこれらのアップデートが完了するとトランザクションの処理能力は最大で100,000TPSにも達する見込みだ。
・ETHの抱える懸念材料
The Mergeはこれまで何度も延期を繰り返してきたことから、いつ実施されるのか不透明であったが、7月末にようやく具体的なスケジュールが公表された。The Mergeの実施が確定したことを市場が好感し、ETHは対BTC比で上昇することとなったのかもしれない。
CoinGeckoより当社作成
一方、ETH対法定通貨となると話は別だ。
米国の政策金利の引き上げなどの金融政策によって株式市場並びに暗号資産市場は上値が重い状況だ。これは対BTC比で高パフォーマンスを見せるETHにも当てはまる状況だ。
特に、9/13発表の米国CPI(消費者物価指数)は事前予想よりも高かった影響で、来週9/21開催予定のFOMC(米連邦公開市場委員会)では100bps(ベーシスポイント)の引き上げとなる憶測さえ生じた。
これに伴い、ETH/USDは9/14(世界標準時)には1,573ドル(約21万円)まで下落し、今年1月に記録した約3,800ドル(約44万円)の半値程度でとなった。
実際に100bpsの引き上げとなれば今後も上値の重い状況は続きそうだ。
また、ETHのThe Merge後に分裂するとされるEthereumPoW(ETHW)についても一定の注目が必要かもしれない。
ETHはPoSに移行した後、トランザクションの検証にPoWで必要とする莫大な計算力や、この処理を行うための高価なGPUや設備、施設を必要としなくなるため、既存の機材をこれからも使用したいと考えるマイナーにとって移行先の有力な選択肢としてETCが存在する。
一方で、ETCのハッシュパワーやプロジェクトの進捗状況に不満を抱え、移行を拒むマイナーによってETHのPoWを継続して使用するEthereumPoW(ETHW)と称するプロジェクトが立ち上げられている。
ETHWのプロジェクトについては公式サイトにも詳細な情報はなく、どれほどの数のマイナーによってETHWチェーンが維持されるか未知数、さらにはETHの有力な開発者がETHWに移行しているとは考えにくい状況であり、持続可能性の余地に疑いはある。
また、複数の有力(時価総額の高い)ステーブルコインや、オラクルネットワーク分野の時価総額で首位のチェーンリンク(LINK)がETHWをサポートしないという表明を出しており、そもそもの問題としてクライアント(システムを動かすソフトウェア)が正しく機能するかなど、プロジェクトそのものに様々な障壁があり、無事に開始できるかについても不透明である。
とはいえ、ETHWプロジェクトが成功した場合は既存のETH利用者がETHWに移行する可能性もあることから、今後も同プロジェクトを注視する必要があるだろう。
2022/9/14 18:00現在、ETH/JPYは約23万円となっている。来週に控えるFOMCの影響によりETH/JPYの価格上昇を抑える要因となるものの、ETH/BTC に着目すると、The Mergeの結果によっては今年最高値の0.085BTC台を目指せるかもしれない。
(9/14 午後7:00時点)
・銘柄別価格前日比(%)
社内データより作成
9/14の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は0.16%、中央値は-0.50%、標準偏差は1.85%となった。
最大上昇銘柄はETC/JPYの5.91%、最大下落銘柄はIOST/JPYの-2.36%。
最大上昇銘柄のETC/JPYは、5027.7円でオープンし、5324.8円でクローズ。日足を確認すると、現在の価格帯は、7/28以降のレンジ上限であることがわかる。RSIは70付近と買われすぎを示唆しているが、目先には一目均衡表の厚い雲が待っている。5,000円を割るか見どころだろう。
最大下落銘柄のIOST/JPYは、1.692円でオープンし、1.652円でクローズの4日連続の陰線となった。8/19以降、一目均衡表(日足)の雲下限でレンジを形成し、軟調な値動きとなっている。
・24時間ボラティリティ(%)
社内データより作成
9/14の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は6.33%、中央値は6.08%、標準偏差は2.11%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はXYM/JPYで11.53%。
一方、最もボラティリティの低かった銘柄はZPG/JPYで2.07%となった。
◆本資料においてお客様に提供される情報は、株式会社DMM Bitcoinが収集・作成等したものです。
◆本資料は、一般的な情報提供を目的に作成されたものであり、暗号資産取引の勧誘を目的としたものではありません。
◆本資料は、本資料作成時点で株式会社DMM Bitcoinが信頼できると判断した情報を基に作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
◆本資料の情報によって生じたいかなる損害についても、株式会社DMM Bitcoinおよび本情報提供者は一切の責任を負いません。
◆本資料のグラフ・データ等は、過去の実績または作成時点での見通し・分析であり、将来の市場環境の変動や運用状況・成果を示唆・保証するものではありません。また、税金・手数料等を考慮しておりません。
◆本資料に関する著作権、知的所有権、その他一切の権利は、株式会社DMM Bitcoinまたは権利者に帰属します。お客様は、本資料に表示されている情報をお客様自身のためにのみ利用するものとし、第三者への提供、再配信、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。