BTC(ビットコイン)傾向分析:セル・アンド・ホールド戦略から見る有効なポイントは?
Daily Market Report 2022/8/26
本稿では、セル・アンド・ホールドにおける3つのトレンドフォロー戦略をシミュレーションする「バックテスト」で得られた傾向に基づき、今後のBTC(ビットコイン)の動向を分析する。
前回のレポートでは、2022年初から同年8/14におけるSMA(単純移動平均線)を用いた有効なトレード戦略は、「セル・アンド・ホールド」及び「トレンドフォロー」であったことを記載した。
セル・アンド・ホールドとは、ある条件の発生に従って空売りを行い、一定期間買い戻さない手法である。
セル・アンド・ホールドは売りからトレードを始めるため、レバレッジ取引でしか実施できない戦略である。
そのため、レバレッジ取引を行える銘柄を多数取り扱っている取引所及び販売所で行うことが推奨される(当社では現物取引及び、レバレッジ取引を行うことが出来る。レバレッジ取引における暗号資産の取扱種類数は、現在、当社が国内最多である)。
・テクニカル指標の市場反応度(平均利益率)
前回のレポートでは、SMAを用いた分析により、セル・アンド・ホールド戦略が有効であるということを示した。
今回のレポートでは、異なる複数のテクニカル指標を比較することにより、セル・アンド・ホールドを行う際に最も有効なテクニカル指標が何であるかを分析する。
まずは、分析方法の概要について紹介する。
主な3つのテクニカル指標の参入シグナルによって生成された全ての取引履歴より、トリガーが発動した当日以降の損益を累算し、各パラメーターに対する「1トレード当たりの平均利益率」を求めることで、市場反応度(平均利益率)の良いテクニカル指標を探る。
次に、分析に用いるテクニカル指標を紹介する。
3つのテクニカル指標は単純移動平均線とドンチャンチャネル*、相対力指数(いずれもトレンドフォロー戦略)を使用する。なお、バックテストのサンプル期間は2015年初~2022/8/19、時間足は4時間、レートはドルベースとする。
*ドンチャンチャネルとは、リチャード・ドンチャン(Richard Donchian)によって考案されたバンド系指標である。一定期間の最高値と最安値更新をトリガーとするトレンドフォロー戦略として知られている。
結論を先に述べると、3つのセル・アンド・ホールド戦略の中で最も市場反応度(平均利益率)の良い結果が得られたのは10日と20日RSI(相対力指数)のトレンドフォローシグナルであった。
つまり、RSIを用いて、パラメータを20日とした状態でローソク足40本分の取引をすることにより、高いパフォーマンスを発揮する可能性があることが分かった。
なお、今回の分析結果は上記に記載の期間による過去のパフォーマンスであり、当然、今後の価格形成においても同様なパフォーマンスとなることを言っているのではないので、注意が必要だ。
図1:TradingView(https://jp.tradingview.com/)より当社作成
単純移動平均線の平均利益率(売りのみ)
図1は、SMA(単純移動平均線)と終値のデスクロスを売りトリガーとする市場反応度を示したものである。
図1を見ると分かるように、4時間足において10日~80日SMAは良い参入シグナルとは言えない。仕掛け後の経過日数で見た1トレード当たりの平均利益率は右肩下がりで低下傾向にある。
最大利益率は、80日SMA参入後の5日経過で得られた0.23%。次に、40日SMA参入後10日経過の0.21%という結果が得られた。この2つのパラメーターがセル・アンド・ホールド(売り)戦略の参考指標となる。但し、平均利益率は全体的に減少傾向にあるため、短期的な指標として活用する必要があるだろう。
図2:TradingView(https://jp.tradingview.com/)より当社作成
ドンチャンチャネルの平均利益率(売りのみ)
図2は、4時間足における一定期間の最安値割れを売りトリガーとする市場反応度を示したものである。
図2を見て分かるように、80本足を使用した平均利益率は仕掛けから30日経過後に反発し、40日後に最大利益率となる0.32%まで上昇している。この日柄で言えば、トリガー発動から30日経過後(平均利益率-0.83%)に売ったとすると、40日経過後(平均利益率0.32%)に1.15%の利益を得るという想定となる。
しかし、10本~80本足いずれも仕掛け後の日数が経過する毎にリターンが減少傾向にあるため、有効なセル・アンド・ホールド戦略とは言い難い。
40日経過後を見ると、20本足と40本足、80本足のリターンは揃ってピークを迎え、その後は各折れ線とも一斉に減少するという変則性が確認できる。
つまり、カウンタートレードへシフトしていれば、80本足を使用したトリガーから40日経過後(平均利益率0.32%)に買って、100日経過後(平均利益率-3.45%)に3.77%(0.32% – (-3.45%) = 3.77%)の平均利益を得られる想定となる。
図3:TradingView(https://jp.tradingview.com/)より当社作成
相対力指数の平均利益率(売りのみ)
図3は、4時間足におけるRSI(相対力指数)の売られ過ぎ圏(30%以下)脱出を売りトリガーとする市場反応度を示したものである。80本の場合は、十分なサンプル数が得られなったため省略とする。
図3を見て分かるとおり、40本足を使用した場合の平均利益率は取引開始から15日経過後に最大利益率となる4.75%のピークを迎えた。20本を使用した場合は仕掛けから40日後に2.10%(最も長い期間リターンを維持)。10本を使用した場合では仕掛けから15日後に0.70%のピークを迎えた。いずれもその後のリターンは減少傾向にある。
この推移から考えられることは、4時間足のRSIの市場反応度は、短期的にはトレンドフォロー戦略として意識され、長期的には一般的な活用法であるカウンタートレードへシフトされやすいという点である。
40本足で遅れたカウンタートレードを仕掛けるとするならば、ピークとなる15日経過後(平均利益率4.75%)に買うことで、40日経過後(平均利益率0.31%)に4.44%の平均利益(4.75% – 0.31% = 4.44%)を得ることになる。
また、20本足の場合はピークとなる40日経過後(平均利益率2.10%)に買うことで、80日経過後(平均利益率-1.65%)に3.75%(2.10% – (-1.65%) = 3.75%)。10本足の場合は15日経過後(平均利益率0.70%)に買って、70日経過後(平均利益率-2.02%)に2.72%(0.70% – (-2.02%) = 2.72%)の平均利益を得られる想定となる。
以上の傾向より、セル・アンド・ホールド戦略に有効なポイントは次の4点となる。
・40日SMAは仕掛けから10日経過後までやや有効であったこと
・80日SMAは仕掛けから5日経過後までやや有効であったこと
・20日RSIは仕掛けから40日経過後まで有効であったこと
・40日RSIは仕掛けから15日経過後まで有効であったこと
・現在の位置関係
図4.BTC/JPY 4時間足 Bidチャート(当社取引ツールより作成)
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図4は、BTC/JPYの4時間足における40日SMAと20日RSIの推移を示している。
20日RSIが8/22 20:00足(確定)に売られ過ぎ圏(30%以下)を脱出したことで、売りトリガーが発動した(図4①参考)。発生から40日経過後にあたる8/29 08:00足(図4④参考)までは、下落水準(290万円前後)を維持する可能性も考えられる。
また、終値は8/25 04:00足(確定)で40日SMAをデスクロスし、売りトリガーが発動した(図4②参考)。発生から10日経過後にあたる8/26 16:00足(図4③参考)までは、下落が優位となる。
終値が下向きの40日SMAより上で推移していることで、再びデスクロスする可能性があることを踏まえると、下落水準を維持する時間がさらに延長することも考えられる。
・結論
4時間足におけるセル・アンド・ホールド戦略では40日SMAと80SMA、20日RSIと40日RSIのトレンドフォローが有効である可能性が考えられる。現在のBTC/JPYは、295万円台で推移しており、40日SMAは右肩下がりに推移している。且つ、20日RSIは中立水準である50%を上回っているため、まだ下落の余地があるだろう。
(8/26 午前5:00時点)
・銘柄別価格前日比(%)
社内データより作成
8/25の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は0.21%、中央値は-0.36%、標準偏差は1.62%となった。
最大上昇銘柄はXTZ/JPYの4.29%、最大下落銘柄はXYM/JPYの-1.86%。
最大上昇銘柄はXTZ/JPYは、2021年から機能している223.5円付近のレジスタンスラインを上抜け、高値を更新。短期上昇トレンドを形成している。
最大下落銘柄はXYM/JPYは、今年5月から機能している6.3円付近のサポートラインを下抜け、更に下げ幅を拡大させた。
・24時間ボラティリティ(%)
社内データより作成
8/25の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は4.18%、中央値は3.99%、標準偏差は1.80%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はETC/JPYで7.75%。
一方、最もボラティリティの低かった銘柄はZPG/JPYで0.58%となった。
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