“The Merge”はETC(イーサクラシック)の追い風に?

Daily Market Report 2022/8/19

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・直近1ヶ月はETCの強さが際立つ

CoinMarketCap (https://coinmarketcap.com/)より当社作成
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上図は、7/17(終値)から8/17(終値)の直近一ヶ月間での当社取り扱い銘柄の騰落率(/JPY)ランキングである。

足元では、インフレ先行指標でもある、原油価格の代表的な指標のWTI原油先物価格が1バレル90ドルを下回り、ウクライナ危機前の水準まで下落しピークアウトを迎えている。

油価高騰による物価上昇などに対する沈静化の兆しとなり、先々のインフレ沈静化期待から米金融引締ペースの減速や米景気のソフト・ランディングなども連想され、米国株価は7月後半から堅調な推移を辿った。

暗号資産市場もそのリスクオンムードを受け、全般的に底堅い値動きを辿っている。

その中でもとりわけETCが顕著な上昇を示しており、上図で上昇率2位のQTUM(クアンタム)や3位のETH(イーサリアム)の3倍強の上昇率を記録している。

まず、上昇率2位のQTUMの上昇率の高さについては、8/1にネットワークのアップグレードとハードフォークが行われたことが一要因だろう。

ハードフォークが行われる際には、暗号資産の機能性が上昇することが好感され、一般的には価格が上昇する傾向がある。

実際にQTUMは7/27~7/29にかけて最大で1.4倍程度まで価格を伸ばしている。

ハードフォーク直前には減速したものの、ハードフォーク後も6月から7月にかけてのレンジ上限であった500円以上の水準で推移しており、ハードフォークがポジティブな影響を与えたと見ることができそうだ。

次に、上昇率3位のETHについては、当社レポートでもこれまで度々取り上げている、“The Merge”アップデートが価格上昇の主な要因だろう。

今回のアップデートでは、フォークの可能性(詳細は当社レポート:ETH(イーサリアム)のアップデート“The Merge”は価格推移にどう影響するか 参照)もあり、現物のETHでは買いが先行しているため、高い上昇率となったものと考えられる。

さて、ETCに関しては、上記の2銘柄のように銘柄自体のアップデートといった材料は見当たらない。

しかし、ETHのアップグレードによる、マイニングの仕組みの変更がETCの価格形成に大きな影響を及ぼしているようだ。

まず、現在、暗号資産のマイニングでは、GPU(グラフィックスプロセッサ)を使用したマイニングと、ASIC(特定用途向け集積回路)を搭載した装置によるマイニングが行われている。

暗号資産の代表であるBTCではASICが、アルトコインではGPUが主流とされている。

GPUについては、元々PCの画像処理用のパーツであったため、マイニング以外の用途において需要があり、他の暗号資産のマイニングにも転用が可能である。

一方のASICについては、マイニング以外の用途が無いことに加え、特定の銘柄に特化していることから他の暗号資産のマイニングへの転用は基本的に対応していない。

今回のETHのアップデートはPoW(プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(プルーフ・オブ・ステーク)への移行となり、大きな変更点として承認作業にマイニングが不要となる

そのため、ETHマイナーは事業の撤退もしくは、別の暗号資産のマイニングへマイニングパワーを移すこととなることが予想される。

ETHでは、GPUマイニングが主流とされているが、大手マイニングリグメーカーからはETH専用のASICマシンも多くリリースされており、ASICマシンでのマイニングもある程度の規模があると推測される。

ASICマシンは前述の通り基本的に銘柄間での流用ができないものの、元々一つの暗号資産であったETHとETCでは流用可能であることが多く、ETCがASICマシンを使用したマイナーの受け皿として機能する可能性もある。

ここで、マイナーの数と正比例の関係にある、ETCのマイニング難易度を確認すると、現在過去最高値を更新した水準(500T以上)を維持しており、過去にない規模でマイナーの流入があることが推測できるだろう。

必ずしもマイナーの参入が価格上昇に結びつくわけではないが、マイニングの活性化により価格にポジティブな影響が与えられる可能性もある。

また、7月27日には、大手マイニングプールのAntPoolがETCエコシステムへの支援を表明しており(7/27 CoinPost)、ETC/JPYはその後の2日間で約1.7倍の上昇を記録するなど強い値動きを続けている。

“The Merge”に向けてマイナーの参入が続くのであれば、現状ではETCの価格上昇に寄与しやすい状況であると言えそうだ。

ただし、懸念事項としては、ETHのアップグレードが度々延期を繰り返してきたことが挙げられる。

もし、“The Merge”が延期され、ETHにおいてPoWが維持されるのであれば、あえてETCへ参入するインセンティブは低下することとなる。

そうなった場合、ETHアップグレードを前提に上昇した部分があるETCは下落リスクに曝されることとなるだろう。

過去にロビンフッド銘柄としてETCが急上昇した経緯(2021/5/6 CoinPost)があり、ETCは投機的側面が強く変動リスクが大きいことも注意しておきたい。

“The Merge”の行方はETHだけではなくETCの命運も握っているとも言え、今後の動向には要注目だろう。

最後にテクニカル面から上値の目処を考察する。

・週足ダブルボトムの完成で高みを目指す展開に

ETC/JPY 週足Bidチャート(当社取引ツールより作成)

上図は、ETC/JPYの2021年11月から現在までの週足チャートに、ダブルボトム形状を図示したものである。

現在、年初来高値水準(3/29 6,337円)手前まで上昇しているETC/JPYであるが、大台の6,000円に乗せることができず、足踏み状態である。

2021年11月と2022年3月の2度、6,000円で上値が跳ね返されており、しっかりと上抜けることが出来るか否かが上伸のポイントとなりそうだ。

6,000円を上抜けた場合には、ダブルボトム形状を描くこととなる。

その場合、3/28週高値(6,337円)をネックラインと見れば、2番底である6/13週安値(1,651円)との値幅分の上昇が見込まれる。

今回であれば、 6,337円 +(6,337円 – 1,651円)≒11,000円 がターゲットプライスとなり、力強い上昇となるだろう。

反対に、今回の上昇局面でネックラインを上回ることが出来なければ、再度3,000円台への調整も覚悟しておく必要がありそうだ。

(8/18 午後9:00時点)

・銘柄別価格前日比(%)

社内データより作成

8/18の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。

平均値は0.79%、中央値は0.57%、標準偏差は0.84%となった。

最大上昇銘柄はIOST/JPYの2.34%、最大下落銘柄はADA/JPYの-0.64%

最大上昇銘柄のIOST/JPYは、1.792円でオープンし、1.834円でクローズとなった。反発したのは、17日営業日で-6.47%と最大下落銘柄でもあったためだろうか。依然と雲(日足の一目均衡表)の中を推移しており、方向感が掴めない。しかし、雲の先端が縮小していることから、この雲を抜けるとトレンド発生が発生するかもしれない。

最大下落銘柄のADA/JPYは、71.842円でオープンし、71.384円でクローズとなった。日足の一目均衡表では、遅行線がチャートにかかり、三役好転が崩れたところである。雲上限の69.8円付近での値動きに注目だ。

・24時間 ボラティリティ(%)

社内データより作成

8/18の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。

平均値は3.76%、中央値は3.39%、標準偏差は1.68%となった。

最もボラティリティが高かった銘柄はQTUM/JPYで6.86%

一方、最もボラティリティの低かった銘柄はZPG/JPYで0.69%となった。

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2022-08-19
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