金価格との連動を目指すZPG(ジパングコイン)、今後の金価格とUSD/JPYの上昇の可能性は?
Daily Market Report 2022/8/5
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・金価格の上昇は一旦落ち着いたか
TradingView(https://jp.tradingview.com/)より当社作成
ZPG(ジパングコイン)のチャート・価格情報はこちら
上図は、2020年1月から現在までの金(ゴールド)価格(ドル建て)の週足チャートである。
まず本稿で記述するZPG(ジパングコイン)についてであるが、金1g=1ZPGとして、概ね金価格に連動することを目指しており、本物の金(ゴールド)と同様にインフレヘッジの手段としての機能が期待されるコモディティ(商品)トークンである。
2022年2月から株式会社デジタルアセットマーケッツで取扱いが開始され、当社では同年7月より取扱いを開始した。
なお、金価格と連動するように設定されていることから、本レポートでは日本円換算の金価格をZPGの価格として取り扱い、発行開始前のZPGのレートは存在しないが、レポートの都合上、円建ての金価格でZPGの過去の価格の代用を行う。
また、円建ての金価格をZPGと表現し、単純に金価格という場合にはドル建ての金価格を示すこととする。
まず金価格に影響を与える要因について整理する。
上昇側
・法定通貨からの逃避(不信感)
・インフレヘッジ需要(名目金利とインフレ率の差による実質金利の低下)
・経済成長による実需
・世界的な情勢不安(安全資産での需要)
下落側
・法定通貨の金利の上昇
・米ドル価値の上昇(金取引の基軸になるため)
・インフレ懸念の沈静化
・国際情勢の安定化
上昇・下落に関して以上のような事柄が考えられる。
ここで上図で金価格推移を確認すると、2020年3月のコロナショック頃から上昇し、感染拡大により世界経済への影響が懸念された8月頃にかけて急伸し、初の2,000ドルを突破した。
その後は米金利の上昇等により金価格は一旦下落に向かい、1,800ドル台で方向感を無くしたものの、ロシアによるウクライナ侵攻への懸念から有事の金買いの動きが強まった。
その流れにより2022年3月に再び2,000ドルを突破することとなったが、ウクライナへの侵攻が実際に開始されたのちは、下落に転じている。
その後、市場の目は米国の金融政策に移り、6/10、7/13発表の米消費者物価指数はいずれも予想を超える記録的な上昇となり、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ加速が意識され、金価格には強い逆風となったようだ。
しかし、足元では7/28に行われたFOMC(連邦公開市場委員会)で、パウエル議長が利上げペースの緩和について言及したことにより、ドル金利が低下しドル売りが加速、金価格は上昇に転じることとなった。
この際にコロナショック後のレンジ下限で反発しており、一旦は底打ちしたかに思え、再度レンジ内で落ち着く可能性もあるだろう。
一方で、ここから大きく上昇するかどうかにはまだ疑問符がつきそうだ。
過去に金価格が2,000ドルを超えた際はいずれも有事であった。
そのため金価格の大きな上昇には、新たな世界情勢不安やインフレ沈静化が進まず、景気後退が同時進行するスタグフレーションのような状況になるなどの、明確な材料が必要かもしれない。
・ZPGは為替の影響もあり堅調推移
TradingView(https://jp.tradingview.com/)より当社作成
上図は、2022年1月のレートを基準とした、金価格とZPG、USD/JPYの変動率を表した図である。
ZPGの価格は金価格の下落にも関わらず、上昇を続けている。
その原因の一つとして、上図でも上昇著しいUSD/JPYレートが挙げられるだろう。
まず、金価格は国際的に、1oz(トロイオンス)あたりのドル価格で示すことが一般的である。
1ozは約31.103gであり、ZPGの価格(=1gあたりの金価格)を表現するためには、
(1oz÷31.103g)×USD/JPYレート
という計算が必要になる。
そのため、円ベースであるZPGの価格にはUSD/JPYのレートの上下も大きく関わることとなる。
次に、そのUSD/JPYについて考えたい。
足元では米金利の上昇によりドル高が進行しており、今年7月14日にUSD/JPYは1998年以来となる139円まで一時上昇する場面もあった。
日本銀行が他にとり得る手段がなく金融緩和を選んでいるという点で、効果のない金融緩和を中央銀行が続けていることで、諸外国との金利差が意識され、円売りは根強いものとなっている。
ただし、直近のFOMCで利上げペースの緩和が示唆されたこともあり、米金利上昇によるドル高が先々沈静化し、USD/JPYに関しては上昇が落ち着く可能性もあるだろう。
他方、実質実効為替レートを確認すると円自体の要因にも気を配る必要があることがわかる。
・実質実効為替レートでは円の実力が失われている。
日本銀行(https://www.stat-search.boj.or.jp/index.html)より当社作成
上図は、1970年からのUSD/JPYと実質実効為替レートの推移を示したものである。
まず、実質実効為替レートは物価変動や貿易量などを加味して為替レートを調整した数値で、円の対外的な購買力を測る指標である。
数値が高いほど対外購買力があると判断される。
現在の実質実効為替レートは、固定相場制であった1970年と同様の水準にあり、1995年のピーク時から比べると半分以下まで落ち込んでいる。
過去にもUSD/JPYが130~140円に上昇する場面はあったが、実質実効為替レートは今ほど低い値ではなかったことを考えると、円そのものの実力が低下していると考えられるだろう。
特にUSD/JPYでは有事に円買いとなりやすい傾向があったものの、先のウクライナ危機では円安方向に動いたことが印象深い。
日本は貿易収支が長らく製造業の輸出を柱とした黒字であり、需給関係から円の価値が毀損されにくい構造持っていた。
しかし、足元では、ウクライナ情勢や感染症対応による制限などによる原油・物価高が貿易赤字を拡大させている。
今年1月に赤字であった経常収支は2月以降黒字に転じているものの、4月に大幅に黒字幅を縮小しており、再度赤字となる可能性も考えられる。
そうなれば、対外的に稼げない国としての印象を強めかねず、円を売る動きが強まる可能性もあろう。
円安となる場合、インバウンド消費による外貨の獲得が期待できるが、感染症により入国制限などもあり、現状では大きく期待できそうにない。
また、内需に関しては円安進行による輸入物価高騰で、国内消費意欲が押し下げられることが考えられ、経済状況の停滞が円売りを誘う一要因になる可能性もある。
以上より、大きく円高に転換するイメージは描きにくく、むしろさらなる円安進行に警戒感が必要かもしれない。
最後に、ZPGについてまとめる。
金価格については、米利上げペース緩和による下落の可能性がある一方、ウクライナ危機や感染症対策など世界情勢の不安定さも残っていることから、目先のレンジ上限を試す可能性も考えられそうだ。
他方、USD/JPYに関しては、上述の通り円単体の要因に注目すると円安に振れやすい状況が続くと考えられる。
以上から、ZPGを保有することにより、USD/JPYの上昇(円安ドル高)+金価格の上昇と、二重の恩恵を受ける可能性も考えられ、停滞する日本経済へのヘッジとして一考の余地があるかもしれない。
(8/5 午前5:00時点)
・銘柄別価格前日比(%)
社内データより作成
8/4の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は-2.32%、中央値は-3.16%、標準偏差は2.53%となった。
最大上昇銘柄はENJ/JPYの4.69%、最大下落銘柄はETC/JPYの-6.75%。
最大上昇銘柄のENJ/JPYは、今年5月の暴落以後の高値圏まで上昇。これまでローソク足実体では突破しきれなかった85円の節目を抜けたことで上昇に勢いづいた。一時95円と5月以来の高値圏まで上値を伸ばした。急な動きは一段落したが、大きく値を崩しておらず、高値更新を狙った堅調な推移になるか注目したい。
最大下落銘柄のETC/JPYは冴えない値動き。7月後半から日足一目均衡表・転換線が下値を支えていたが、本日はその水準を下抜けてクローズを迎えた。転換線は急角度で上昇しており、本日以降の値動きから目先のレジスタンスに転換するかどうかを確認したい。
・24時間ボラティリティ(%)
社内データより作成
8/4の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は6.06%、中央値は5.55%、標準偏差は2.95%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はENJ/JPYで14.74%。
一方、最もボラティリティの低かった銘柄はZPG/JPYで1.48%となった。
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