強まるFRBのジレンマ。ETH(イーサリアム)の価格はCIE(共通インフレ期待指数)にヒント?
Daily Market Report 2022/8/3
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・7月のFOMCはインフレ指標の鈍化を認め、大幅利上げ懸念が後退
Bloombergより当社作成
左軸:米国雇用統計 非農業部門雇用者数
右軸:ISM製造業景気指数
ETH(イーサリアム)のチャート・価格情報はこちら
上図は、2018年1月からのISM製造業景気指数と米雇用統計の非農業部門雇用者数を表示したものであり、これらは基本的に景気の善し悪しを判断する際に用いられる指標である。
一般的には景気が後退すれば、FRB(米連邦準備理事会)が抑えようとしているインフレにはブレーキが掛かるため、FRBの利上げも頭打ちになる可能性から重要な経済指標となる。
図の直近部分に着目すると、景気の先行指標となる製造業景気指数と遅行指標となる雇用者数が共に縮小しており、景気後退の始まりが示されている可能性が高いことがわかる(矢印箇所)。
更に、FRBが利上げを決める要因となるインフレリスクを図る指標の一つが、時間あたりの前月比賃金上昇率だ(下図)。
賃金上昇率は、今年の1月、2月は前月比+0.6%、+0.7%と強い上昇率を示したが、直近三ヶ月は+0.3%と頭打ちの様相を示している。
Investing.com(https://jp.investing.com/economic-calendar/average-hourly-earnings-8)より当社作成
これらを受けて、7/27のFOMCにおいてFRBは人件費高騰によるインフレリスクの減少を認識し、利上げには慎重になる姿勢を示したようだ。
このような背景からFRBによる大幅利上げ観測が後退し、株式をはじめとしたリスク性資産は上昇し、株式市場と相関を強めている暗号資産市場も連れ高となっている。
・長期的な期待インフレ率は高水準にあり
FRB公開資料より当社作成
左軸:SPF調査の10年先PCE
右軸:ミシガン大学の消費者物価調査
上図は、FRBが年4回発表しているCIE(共通インフレ期待指数)を表したものだ。
青線がSPF(フィラデルフィア連銀の経済調査「サーベイ・オブ・プロフェッショナル・フォーキャスターズ」)調査の10年先PCE(個人消費支出)を反映したもので、オレンジ線がミシガン大学の消費者物価調査を反映したものである。
図を見ると、現在のCIEは2008年来の高い水準にあることから、未だインフレ懸念は残されていることがうかがえる。
今までFRBは、インフレを図る指標としてBEI(ブレークイーブンインフレ率)と呼ばれる、価格変動の激しい商品価格やエネルギー価格を省いた、市場中心のコアインフレ指標を重要視していた。
しかし、コロナによるサプライチェーンの遅延やロシアとウクライナの戦争に起因するコストプッシュ型のインフレ実情を把握するために、食品価格やエネルギー価格を加えた一般消費者目線のインフレ指数であるCIE(共通インフレ期待指数)を重要視する方向にFRBはシフトしている。
従って、FRBは長期的な期待インフレを重視しつつあり、そしてCIEが未だ高水準であることから、現在のインフレが一時的であるとは言い難いということを表している。
高水準にあるCIE指数は、インフレ抑制のために積極的な利上げが行われる材料となる一方で、景気指標から伺えるリセッションのシグナルからは、FRBが利上げに慎重にならざるを得ないことがうかがえる。
つまり、FRBはかなり厳しい局面にたっており、ジレンマを抱えていることがわかる。
このジレンマを市場が見透かすようであると、金融市場に波乱が巻き起こる可能性には注意したい。
米国経済の状況はこの二面性を兼ねている中で市場は過度な金融引き締め(利上げ)はメインシナリオとせず、楽観ムードの中、株式市場の上昇と併せて暗号資産市場も6月下旬以降は底打ちの兆候がある。
しかし、CIE指数の高止まりは懸念材料でもあるため、ETH/JPYをはじめとする暗号資産市場の先行きに油断はできないだろう。
・テクニカル的には上昇トレンド継続か
当社取引ツール(ETH/JPY Bidチャート)より作成
上図は、ETH/JPYの(6/26~執筆時点)4時間足チャートである。
直近の値動きを見ると、7/22に付けた高値B(223,400円ライン)を付けたあと、安値C(179,580円ライン)を形成し、高値B(223,400円ライン)を更新する形で高値D(223,500円ライン)を形成しており、チャネルラインⅰとⅱの中を推移するように短期反発局面を形成していることがわかる。
また、直近の下値目標には、上図丸部分で形成した三尊のネックラインであるレジスタンスラインⅳ(200,000円ライン)が構えている。ここを反発ラインとしつつ、安値C(179,580円ライン)を基準としたチャネルラインiiが切り上がっていき、安値E(ⅳ:200,000円ライン)→高値F(チャネルⅰ:250,000円付近)という上昇トレンドを形成してくるかどうかに注目だ。
その一方で、CIEの高止まりや米GDPが2四半期連続で前年割れというマクロ環境を考慮すると、下落シナリオも十分に意識したいところだ。
下落のシナリオを歩む場合の下値目標としては、現状はレジスタンスラインⅳ(200,000円ライン)の下抜け→安値C(179,580円ライン)下抜けという順序が試金石となるだろうか。
現在のインフレ高進が深刻な景気後退を伴うスタグフレーションを伴う等の悲観的な見方が市場に広がれば、一気にチャネルiiiまでの下落も想定できるだろう。
(8/2 午後10:30時点)
・銘柄別価格前日比(%)
社内データより作成
8/2の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は-0.09%、中央値は-0.60%、標準偏差は2.28%となった。
最大上昇銘柄はETC/JPYの8.12%、最大下落銘柄はOMG/JPYの-3.09%。
最大上昇銘柄のETC/JPYは8/1の12%下落からの反発上昇を見せた。
最大下落銘柄のOMG/JPYは約300円をレジスタンスとし、4日連続の下落となっている。
・24時間ボラティリティ(%)
社内データより作成
8/2の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は7.75%、中央値は8.00%、標準偏差は3.51%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はETC/JPYで19.01%。
一方、最もボラティリティの低かった銘柄はZPG/JPYで1.78%となった。
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