BTC(ビットコイン)、価格上昇に必要な要素は?
Daily Market Report 2022/7/15
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・3月から定期的にレンジを切り下げる
BTC/JPY 日足 Bidチャート(当社取引ツールより作成)
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上図は、年内高値を記録した今年3月から現在までのBTC/JPYの日足チャートである。
BTC/JPYは今年3月に年内高値(約580万円)をつけてから、約100万円の値幅でボックスを形成しながら段階的に下落しており、およそ1ヶ月程度でレンジを一段階下げる動きが出ていることがわかる。
5月にはテラ(LUNA)ショック(300万円台まで下落)、6月にはセルシウスショック(200万円台まで下落)と、降って湧いたリスクイベントによって暗号資産市場から資金が流出し、BTCにおいても強い下落圧力にさらされた。
直近では6/13に大陰線が出現したのちにもう一段下のレンジ相場に移行しており、執筆時点(7/15)はちょうど1ヶ月が経過したタイミングで、何かしらの動きに警戒したい頃合いといえる。
足元では7/13発表の米CPIが歴史的な高い数字であったことから、米利上げが更に加速する見込みが強まっており、ドル買い意欲が高まっている様子だ。
EUR/USDではパリティ(USDとEURが等価=1.00となること)を達成、USD/JPYでは140円目前までドル高が進行しているが、その一方で米国株価や原油価格は金融引締加速による景気後退(リセッション)懸念により下落傾向にある。
米リセッション懸念が高まれば、リスク資産である暗号資産にも下押し圧力がかかることが明白で、7月後半に予定される欧米の中銀イベントが暗号資産が大きく下落するきっかけになる可能性について警戒が必要といえるだろう。
加えて、リスクイベントが直近2ヶ月連続して起こっており、思いもよらないところから悪材料が飛び出す可能性についても想定しておきたい。
他方、BTC自体の強気材料を考えると、目先に独自材料は見当たらず、しばらく先ではあるが、2024年に予定されている半減期の到来がわかりやすいイベントとなろうか。
半減期については一般的に、通貨発行量が減少するため流通量が逓減し、希少性の上昇から価格が上昇しやすいとされる。
BTCでは過去に発生した3回の半減期通過後に価格が上昇しているため、過去の例に習えば半減期はポジティブイベントとなると言えるかもしれない。
それに絡んで、デジタルゴールドとも呼ばれるBTCについて、希少性が高まることが価格上昇に結びつくかどうかと言う点について、レアメタル(ゴールド・プラチナ・パラジウム)の価格動向を元に考えたい。
・希少性のみで価格は決まらず
TradingView(https://jp.tradingview.com/)より当社作成
上図は、2012年からのゴールド・プラチナ・パラジウムの価格動向を示した図である。
まず、ゴールドとプラチナの関係であるが、プラチナはゴールドに比べ生産量が圧倒的に少ない上に、総産出量のおよそ7割が南アフリカ共和国、次いで2割程度がロシアとなり、たった2国で産出量のほぼすべてを占めている。
そのため、各国の政治情勢に左右される側面もあり、安定供給される鉱物とは言い難いことから、ゴールドよりも価格が高くなるとの認識が一般的であった。
しかし、現在ではプラチナはゴールドの半分程度の価格で推移している。
ゴールドは金本位制での貨幣価値の裏付け資産となった歴史があることや、宝飾品としての需要が高いことなど、人の営みに密接に関わっており価値があることが共通認識となっている。
プラチナにも宝飾品としての需要があるものの、自動車触媒用途がメインとなり自動車産業の動向に需給が左右されやすい。
また、ゴールドと異なり貨幣としての顔を持たない点が資産としての信用度に違いを生み、両者の価格水準に開きがある一因と考えられる。
他方、プラチナと用途の似通ったパラジウムについては2017年頃からプラチナを上回る価格となっている。
プラチナとパラジウムは、両者とも生産量がゴールドに比べ圧倒的に少なく、希少価値が高い点で共通している。
しかしながら、現在では、パラジウムの価格はプラチナ価格の2倍強にまで上昇し、ゴールドを超えるほどの価格である。
パラジウムについてはプラチナの代替金属として需要が高まったことや、生産量の約4割がロシアに依存していたことから、需給の逼迫により価格上昇が続いているようだ。
以上から、希少価値の高さが単純に価格の上昇に結びつかないことを示していると言えるだろう。
ここでBTCに目を移すと、グローバルな送金や決済、インフレヘッジでの用途があり一定の需要が見込まれる。
しかし、いずれも他銘柄での代替、もしくはより優れた性能をもつ銘柄もあり、必ずしもBTCである必要性が薄く、需要が高まっていく素地があるとも言いにくい。
例えば、ETH(イーサリアム)におけるDeFi関連需要や、ENJ(エンジンコイン)のようなゲームトークンなど、用途が明確な銘柄に関しては需要が高まったことが価格上昇の背景であろう。
BTCは暗号資産の代表であり、時価総額の大きさや流動性において他暗号資産銘柄を圧倒している点で、暗号資産市場の中では安定感があり選好されやすいと言える。
ただ、金融商品としては株や為替に比べれば発展途上であるため、投機的側面も強いと言えそうで、需給によらない動きになりやすいだろうか。
前述のBTCの半減期については、プラチナの価格動向を例にとると、希少価値が高まるからと言って必ずしも需要が高まり価格が上昇するわけではないと言えそうだ。
BTCが上昇に転じるには、地政学リスクの出口が見えインフレ懸念が後退した場合、または米国の景気後退が明確となり、利上げから利下げに切り替わるタイミング、及びそれらを市場が織り込み株式に底打ち感が出たタイミングなど足元のリスク回避的な市場ムードの改善もさることながら、需給関係の確立も必要とされそうだ。
しばらくは市場の注目が集まる米金融政策の行方や、それによる米国株の浮き沈みによる市場ムードの強弱に振り回されやすい状況が続くだろうか。
現在、BTC/JPYは280万円であるが、思わぬ出来事での下値急拡大にも警戒しながらの取引を心がけたいところだ。
(7/15 午前5:00時点)
・銘柄別価格前日比(%)
社内データより作成
7/14の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は3.87%、中央値は3.73%、標準偏差は2.10%となった。
最大上昇銘柄はETH/JPYの9.61%、最大下落銘柄はZPG/JPYの-0.30%。
最大上昇銘柄のETH/JPYは、昨日に引き続き堅調な値動き。欧州時間にはジリ安の展開となり、一時14.8万円割れの水準まで下押ししたもののすぐに反発するとその後は強い値動きを続けた。
終盤には7/9以来の水準である17万円手前まで強含んだ。
最大下落銘柄のZPG/JPYは、頭が重い値動き。ペッグ元である金価格は、13日のNY時間からじわじわと上値を切り下げる値動きが続いており、本日もその流れを踏襲した。
NY時間には若干持ち直しの兆しを見せているものの、上値が伸びず冴えない値動きを続けている。
・24時間ボラティリティ(%)
社内データより作成
7/14の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は6.69%、中央値は7.12%、標準偏差は2.16%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はETH/JPYで12.14%。
一方、最もボラティリティの低かった銘柄はZPG/JPYで1.56%となった。
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