下落相場の中、強さを見せたTRX(トロン)。その背景と今後の動きは?
Daily Market Report 2022/6/28
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・2022年上半期の価格推移
Tradingviewより当社作成
上記は、2022/1/1を起点とする当社取り扱い銘柄の騰落率を表した比較チャートである。
現時点では、全銘柄が年初来の価格より下落していることがわかるが、TRX(トロン)の強さが際立っている。
暗号資産を取り巻く状況は、米連邦準備理事会(FRB)による急速な金融引締め、ロシアがウクライナ領土へ侵攻したこと、テラUSD(UST)に見られるステーブルコインへの不安感、相次ぐ出金停止、stETHの価格低下などのネガティブなニュースが暗号資産市場全体の下押し要因としてあげられるだろうか。
このように市場全体が相関を持って下落する中、相関に従わない動きを見せる2つの銘柄が目立った動きをしている。それはETCとTRXである。
1.ETC:3月下旬の上昇に特徴がある(上図青)
2.TRX:5月以降の強さに特徴がある(上図黄)
本稿では、現在も強さを見せるTRXの要因と今後の値動きについて考察する。
なお、ETCについてはDaily Market Report 2022/5/31「ETC(イーサクラシック)、上昇の足は早い?ボラティリティに注目」参照されたい。
・TRXに関するニュースと価格推移
TRX/JPY 日足Bidチャート(当社取引ツールより作成)
TRX(トロン)のチャート・価格情報はこちら
上図は、TRX/JPYの日足チャート(期間:2022/4/19~現在)にニュースを記したものである。
2022年5月以降、TRXが他の銘柄ほど下落しなかった要因は、以下のようなファンダメンタルズが要因ではないだろうか。
①トロン基盤のステーブルコイン「USDD」を発表(4/21 トロン創設者Justin Sun氏のツイート)
②トロン基盤のステーブルコイン「USDD」がローンチ TRX前週比+35%に(5/5 CoinPost)
③仮想通貨トロンのネットワークが急成長、DeFi預け入れ総額3位に(5/31 CoinPost)
④トロンのステーブルコインUSDD、一時0.91ドルまで下落──価格維持に20億ドル投入(6/14 coindesk)
⑤トロンDAO、追加で30億TRXを引き出しへ(6/17 CoinPost)
以下、各概要である。
①トロン基盤のステーブルコイン「USDD」を発表
・USDTのように発行プロセスをブロックチェーン上で行う非中央集権・分散型
・完全な裏付け資産を持たず、ユーザーが裁定取引を行うことで米ドルとのペッグを保つ仕組みが特徴
・Justin Sun氏のツイート後、TRXの価格は約1時間でおよそ13%上昇
②トロン基盤のステーブルコイン「USDD」がローンチ TRX前週比+35%に
③仮想通貨トロンのネットワークが急成長、DeFi預け入れ総額3位に
・5月の1カ月間で40%以上増加
・トロンの預け入れ総額が躍進している大きな理由の一つとして、「USDD」が5日にリリースされたこと
④トロンのステーブルコインUSDD、一時0.91ドルまで下落──価格維持に20億ドル投入
・ドルペッグを逸脱し、0.91ドルまで下落
・Justin Sun氏は、暗号資産トロン(TRX)のショートの資金調達率が、暗号資産取引所バイナンスでマイナス500%に達しているとツイート
・トロンDAOリザーブ(※USDDのカストディアンで、価格の安定を維持する役割を担う組織)は「ショートに対抗するために20億ドルを投入」
・「買い(ロング)」に使うために20億ドルを投じたと説明
⑤トロンDAO、追加で30億TRXを引き出しへ
・6/15 大手取引所バイナンスから25億TRX(15億ドル相当)を引き出す方針を表明
・6/16 追加で30億TRX(18億ドル相当)を引き出す方針を発表
・「ブロックチェーン業界と仮想通貨市場全体を守るため」と前向きな説明
4/21から約2か月間、下落場面はあったもののTRX特有の前向きなファンダメンタルズ要因が優位となり、そのため他の銘柄ほど下落せず、独自の強さを見せたのではないだろうか。
最後にテクニカル分析の観点から、今後の短期的な値動きについて考察する。
・9円がサポートラインとなるか
上:TRX/JPY 4時間足Bidチャート
下:スローストキャスティクス(14,3,3)
(当社取引ツールより作成)
上図は、TRX/JPYの4時間足チャート(期間:6/16 20:00~現在)である。
6/18の安値を起点とするサポートライン(白線)と9円付近に位置するレジスタンスライン(オレンジ線)に挟まれた三角保ち合いを形成していたが、6/27に上へブレイクしている。
ブレイク後は三角保ち合いのレジスタンスライン(オレンジ線)で反発が確認でき(上図赤丸部分)。オレンジ線はレジスタンスラインからサポートラインに転換した可能性も考えられる。
その場合、上昇シナリオとしての短期的なターゲットプライスは、直近高値の9.4円が想定できるだろう。
そして、このまま9円付近を維持できるようになれば、USDDが0.91ドル下落する前の価格帯である10円台も視野に入ってくるのではないだろうか。
一方でオシレーターを見てみると、スローストキャスティクス(14,3,3)が買われすぎ水準となっており、過熱感が確認できる状況となっている。
このため、短期的には利益確定売りを含めて売りが出やすい地合いと考えておくことも必要かもしれない。
オレンジラインの9円でサポートされない場合は、6/27の上昇がダマシとなり調整を強める展開には注意が必要だろうか。
下落シナリオとしては、9円を割り、三角保ち合いのレジスタンスライン付近(8.75円)まで下落する可能性も考えられるだろう。
上昇、下落ともに9円付近での値動きに警戒したい。
(6/28 午前7:00時点)
・銘柄別価格前日比(%)
社内データより作成
6/27の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は-1.79%、中央値は-3.16%、標準偏差は2.98%となった。
最大上昇銘柄はXTZ/JPYの5.98%、最大下落銘柄はBAT/JPYの-5.25%。
最大上昇銘柄のXTZ/JPYは、6/18以降、上昇トレンドで順調に伸びているが、目先には一目均衡表の厚い雲(日足)があり、ここを超えられるか注目である。
最大下落銘柄のBAT/JPYは、6/14以降、上昇トレンドであり、現在一目均衡表の雲(日足)の中に位置している。このまま上抜けしたいところだが、スローストキャスティクス(14,3,3)は80と買われすぎ水準を示している。
・24時間ボラティリティ(%)
社内データより作成
6/27の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は7.44%、中央値は7.31%、標準偏差は2.25%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はXTZ/JPYで12.50%。
一方、最もボラティリティの低かった銘柄はMONA/JPYで2.18%となった。
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