金との相関係数から読み解くBTC ~デジタルゴールドとしての役割について~

Daily Market Report 2022/6/9

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2022年も6月に入り、折り返しが見えてきた。今年は3年ぶりの米国政策金利の引き上げ、ロシアによるウクライナ侵攻、昨年末より続く新型コロナウイルス変異株の流行など、経済に大きなインパクトを与える事案も多かった。

このような中、採掘量が決まっており、通貨のように恣意的な増産はできないことから「デジタルゴールド」と呼ばれるBTCは、金と同様にリスクヘッジ資産としての役割をどの程度担っていたのだろうか。

本稿ではBTCと金や、その他代表的な指数との連動性について記載する。

BTC/USDとCME金先物の相関係数

CoinGecko、Nasdaq、WSJより当社作成
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上図は、2020/1/2~2022/6/3におけるBTC/USDとCME金先物(中心限月)における相関係数を表したグラフだ。

その性質からデジタルゴールドと呼ばれることもあるBTCではあるが、2020年から現在までの2年半の期間においては、S&P500やダウ平均株価等と比較すると、BTCが特段、金の価格と高い連動性があるとはいえないようにも見える。

実際、BTCと金の相関係数が0.9を超えた期間は約2年前となる2020年8月が最後となっていることから、BTCは金よりも定期的に相関係数が0.9を超えることのある米国の株価指数との相関性が高いといえるかもしれない

CoinGecko、Nasdaqより当社作成

一方、BTCと金の逆相関が高まっている状況から、突如急激に相関性を伸ばすケースも散見された。このケースはその他の指数においても確認できるものの、ほぼ逆相関の状況からの反転は金以外ではあまり見られない特有のケースといえるだろう。

これらの時期を振り返ると、2020/7はコロナウイルスの第2波に直面しており、経済に暗雲が立ち込めている状況であった。また、2020/12~2021/1も同様に、コロナウイルス第3波の急拡大の時期と重なっている状況でもあった。

対して、2021/6は蔓延するコロナウイルスに対して世界的にワクチン接種が進み、米国経済は好調な時期であり、2022/5はコロナウイルスよりも米国の政策金利の引き上げの方が今後の経済の鍵を握る状況となっている。

このように、2020年から過去4回の相関係数が急激に高まったケースのうち、主にコロナウイルスが原因とみられる状況が2回、コロナウイルスとは無関係と思われる状況が2回となっていた。

これらを踏まえ、ここで紹介した事例を図から確認してみよう。

CoinGecko、Nasdaqより当社作成

上図は、先に紹介したBTCと金の相関係数が急上昇する直前の日付を100として指数化し、その後30日間の価格推移を示したグラフだ(実線=BTC/USD、破線=CME金先物中心限月)。

上図より、2020/7と2020/12、コロナウイルスの影響によりBTCと金の相関係数が高まった際に双方の価格は上昇していることがわかる。

コロナ禍においてBTCと金の相関関係は急上昇した回数はこの2回であったものの、振り返ると、2020/7と2020/12はどちらも当時の経済活動に大きな影響を与えた局面でもあったといえるだろう。

「有事の金」ともいわれるように、資源としての採掘量が限られている金の価格がコロナ禍で上昇していたことは不思議ではないが、BTCの価格も上昇しており、実際にリスクヘッジ資産として一定の役割を担っていたと考えられる。

特に、2020/7の最大相関係数は0.96と、非常に高い数値を記録していたことは、BTCが「デジタルゴールド」としての側面を持っていたともいえるだろう。

続いて、2021/6と2022/5にもBTCと金の相関係数が高まっているが、これらの期間では、コロナウイルスの拡大もひと段落しているか、もしくは「ウィズコロナ」と呼ばれるコロナウイルスとの共存社会を形成する方向に舵を切る段階でもあった。

特に、2021/6は相関係数が-0.9の状況から急上昇してはいるものの、係数は最大で約0.5に留まっていたことには注意が必要といえるだろう。

この期間は、BTCがデジタルゴールドとしての役割によって金との相関係数が上昇したというよりも、中国でのマイニングが禁止されるタイミングと、コロナウイルスによる脅威がひと段落したタイミングが重なったことが要因であると考えられる。

これは、2022/5の相場状況も同様に株式市場、金価格が共に下落していることから相関係数が高まっており、このように、相関係数が高まる状況においても必然であるか偶然であるかについては状況を整理して考察する必要があるといえるだろう。

最後に、BTCと米国の主要株価指数の相関係数についても触れておきたい。

CoinGecko、WSJより当社作成

上図は、BTCとS&P500(赤線)の相関係数を表したグラフだ。

結論としては、BTCは金よりもS&P500等の米国株価指数との相関係数が高い期間の方が多いといえるだろう。

これは、BTCとの相関係数において、金の場合は2020/1から約2年半のうち約45%の期間で相関係数がマイナスであったが、S&P500の場合はマイナスである期間が約25%であることからも、BTCがデジタルゴールドとしての役割を担う状況は限られることを示しているだろう。

デジタルゴールドの異名を持つBTCは、現時点では金よりも米国の株価指数との連動性が高い状況である一方、過去2年間において、BTCが米国株価指数よりも金との連動制が高まる状況も複数回あったことは事実だ。

2022/6/8 15:00時点でのBTC価格は30,439ドル(406万円)である。

デジタルゴールドとしての役割は限られる状況にあるBTCだが、現時点では落ち着いているコロナウイルスが今後再拡大することなどによってBTCと金の価格が共に上昇し、相関係数が高まる可能性もあるかもしれない。

(6/8 午後7:00時点)

銘柄別価格前日比(%)

社内データより作成

6/8の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。

平均値は-0.85%、中央値は-0.75%、標準偏差は1.59%となった。

最大上昇銘柄はBAT/JPY1.92%、最大下落銘柄はXEM/JPY-4.21%

最大上昇銘柄のBAT/JPYは、4連騰となった。

BAT/JPYは5/12の急落で一旦の底値をつけてから、56円付近で跳ね返されつつも、着実に下値を切り上げている。

5連騰目にして56円の節目を突破できるのか要注目といえるだろう。

最大下落銘柄のXEM/JPYは、下落して始まり戻りも鈍く推移した。

XEM/JPYは6/4からの3日間で12%を超えるパフォーマンスを発揮したが、前日6/7は上げ幅を縮めていた。ここで調整すると見計らった短期筋の利食いに押されるような格好となった。

24時間ボラティリティ(%)

社内データより作成

6/8の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。

平均値は6.13%、中央値は5.81%、標準偏差は1.44%となった。

最もボラティリティが高かった銘柄はXTZ/JPY9.18%

一方、最もボラティリティの低かった銘柄はXRP/JPY3.12%となった。

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2022-06-09
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