米国政策金利がBTCに与える影響は?過去の状況から振り返る
Daily Market Report 2022/5/25
_
FRED(Federal Reserve Bank of St. Louis)、CoinGeckoより当社作成
BTC(ビットコイン)のチャート・価格情報はこちら
2022/3、米国FF金利(政策金利)の誘導目標は2018/12以来、3年3カ月ぶりに引き上げられた。
現在のFF金利誘導目標は75-100bps(bps=ベーシスポイント)であるが、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)によると、次回6/15開催予定のFOMCでは125-150bpsへの引き上げ、さらに年内最終の12/14には98.3%の確率で200-325bpsになると予測されている。
一般的に、政策金利の引き上げは、暗号資産市場や株式市場に悪影響を及ぼすとされているが、本稿では実際に過去の米国政策金利の動向と市場の動きを比較し、今後のBTC価格の動向について考察する。
・2017~2018年のFF金利引き上げ時のケース
CoinGeckoより当社作成
上図は、2017/3~2018/12のうち、BTC/USDの価格をFF金利誘導目標の引き上げが実施された日を100として指数化し、前後15日間の推移を表したグラフだ。
まずは、当時の状況を振り返ろう。2017/3/16、当時50-75bpsに設定されていたFF金利誘導目標が75-100bpsに引き上げられた。
その後、FF金利は2018/12/20まで計7度の引き上げが繰り返し行われ、最終的に225-250bpsまで上昇しており、結果として1年9カ月の間に175bpsも引き上げられている。
2020/3から2022/3までの2年間、そして2008/12から2015/12までの7年間で一度もFF金利の引き上げが行われておらず、2017/3から2018/12までの引き上げがいかに短期間で実施されたかがわかるだろう。
一方、BTCの価格は2017/3/16に行われた1度目の利上げ(上図黄線)の際は2日後までに20%程度の下落という反応を見せたが、計7度の誘導目標の引き上げにおいて、15日間で20%以上下落した回数は2回しかなかった。
The Wall Street Journal(Dow Jones & Company)、Nasdaq、CoinGeckoより当社作成
続いて、米国株式の動きも見てみよう。
上図は、BTC/USD、ナスダック100指数、ダウ平均株価終値を2018/3~2018/12に行われた計7度の利上げ日を100として指数化し、前後15日間(休場含む)の価格推移の平均値を算出したグラフだ。
上図の通り、2017~2018年における前例では米国株式の場合は利上げによる下落幅はおよそ2%程度となっており、BTC以上に下落幅が少なかった事がわかる。
もちろん、利上げ発表後15日にという超短期間においては、直ちに米国株式やBTCが暴落する事は無かったと確認できる。
・2022年のFF金利引き上げ時のケース
2022/3より3年3カ月ぶりにFF金利の誘導目標引き上げられたが、この際の動向も確認しよう。
The Wall Street Journal(Dow Jones & Company)、Nasdaq、CoinGeckoより当社作成
上図は、FOMCにてFF金利誘導目標の引き上げが公表された2022/3/17と5/5の終値を起点として100として指数化し、前後15日間のBTC、ナスダック100指数、ダウ平均株価の推移を表したグラフだ。
2022/3、前回最後の利上げから3年3カ月ぶりとなるFF金利の引き上げが行われたが、この際はBTCや株価は下がるどころかわずかに上昇しつつ推移していた。
2022/5/5にはBTCが大きく下落したものの、こちらのケースでは暗号資産テラ(LUNA)の大暴落によって暗号資産市場全体が大きく下落していた期間と重なるため、利上げの影響だけで、BTCが大幅に下落したとは考えづらいかもしれない。
このように考えられる理由には、BTCと米国株式の相関関係が高まっている点が挙げられるだろう。
The Wall Street Journal(Dow Jones & Company)、Nasdaq、CoinGeckoより当社作成
上図は、ナスダック100指数とBTC/USDおよびダウ平均株価とBTC/USDの相関係数を表したグラフ(実線=2022年、点線=2018年)であり、1に近づくほど相関関係が強まり、-1に近づくと逆相関となる。
2018/1/2~2018/12/31では、BTC/USDの相関係数はナスダック100指数で最大0.78、ダウ平均株価で最大0.85となっていたが、2022年においてはナスダック100指数で最大0.92、ダウ平均株価で最大0.89となっており、現在は高い相関関係にあるといえる。
実際、2022/5の利上げによって米国株式市場は下落しており、高い相関関係にあるBTCもつられて下落してはいるものの、BTCが単独で大幅に下落した要因としては、やはりテラ(LUNA)による暗号資産市場全体の下落と考える方が自然かもしれない。
よって、6月以降に予測されるFF金利誘導目標の段階的引き上げについても、この相関係数が維持された場合は、BTCのみが単独で暴落するとは考えにくいだろう。
・想定外の誘導目標引き上げや長期的な推移には注意!
The Wall Street Journal(Dow Jones & Company)、Nasdaq、CoinGeckoより当社作成
上図は、BTC/USD、ナスダック100指数、ダウ平均株価を2021/10/1の終値を100として指数化したグラフだ。
今回、FF金利誘導目標の引き上げに対し、過去の事例から前後15日間のBTC/USDの価格推移について考察したが、注意すべき点は2つ存在する。
1つ目は、市場の想定以上にFF金利が引き上げられる事だ。
現在のFRBはタカ派が多いとされており、市場の予想市場に誘導目標が引き上げられる可能性もありえ、加えてFOMC開催以前の利上げ報道にも注意が必要だ。
実例としては2022/4/22、5/4開催予定のFOMCから1週間以上前に市場は利上げの可能性を受け、ダウ平均株価が2.8%下落したケースが挙げられる。
この際は、利上げ幅については想定通りではあったものの、FRBのパウエル議長より、「もう少し早く動く事が適切」と発言された事が市場に影響を与えており、今後もFOMCの開催以前からメディアの動向を注視する必要があるだろう。
続いて、注意すべき点の2つ目として、長期的な利上げによってBTCの上昇に蓋をしてしまう可能性がある点が挙げられる。
現在、BTCは長期的な下落傾向にあり、2022/5には最高値(775万円)を記録した2011/11から半値(326万円)近くまで価格を落としている。
前項で示した通り、利上げによって突然BTCが暴落する事は過去のケースではなかったものの、長期的な利上げにより、BTCにとって好材料が現れたとしても価格に反映されにくくなってしまう可能性も視野に入れておきたい。
FF金利誘導目標の引き上げに対して過度に警戒する必要こそないものの、長期的な金利動向には今後も注意が必要だろう。
(5/24 午後7:00時点)
・銘柄別価格前日比(%)
社内データより作成
5/24の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は-1.49%、中央値は-1.76%、標準偏差は3.78%となった。
最大上昇銘柄はETC/JPYの7.30%、最大下落銘柄はXEM/JPYの-7.30%。
最大上昇銘柄のETC/JPYは、前日に続いて大幅高となった。
日中は方向感なく3%程度の狭いレンジで推移していたが、午後10時に下押してから一転し、前日につけた高値付近まで値を伸ばした。
特にETC/JPYに明確な材料は挙がっていないものの、4月以降の相場で半値以下になっており、値ごろ感が意識されやすい価格帯ではある模様。
最大下落銘柄のXEM/JPYは大幅に続落。
6.5円付近に位置する5/14以降の価格レンジの下限まで下押した。ここで反発できずに下値模索の展開となりうるかが注目される。
・24時間ボラティリティ(%)
社内データより作成
5/24の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は9.11%、中央値は8.66%、標準偏差は3.17%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はXTZ/JPYで14.95%。
一方、最もボラティリティの低かった銘柄はBTC/JPYで4.37%となった。
◆本資料においてお客様に提供される情報は、株式会社DMM Bitcoinが収集・作成等したものです。
◆本資料は、一般的な情報提供を目的に作成されたものであり、暗号資産取引の勧誘を目的としたものではありません。
◆本資料は、本資料作成時点で株式会社DMM Bitcoinが信頼できると判断した情報を基に作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
◆本資料の情報によって生じたいかなる損害についても、株式会社DMM Bitcoinおよび本情報提供者は一切の責任を負いません。
◆本資料のグラフ・データ等は、過去の実績または作成時点での見通し・分析であり、将来の市場環境の変動や運用状況・成果を示唆・保証するものではありません。また、税金・手数料等を考慮しておりません。
◆本資料に関する著作権、知的所有権、その他一切の権利は、株式会社DMM Bitcoinまたは権利者に帰属します。お客様は、本資料に表示されている情報をお客様自身のためにのみ利用するものとし、第三者への提供、再配信、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。