インフレ第二波と地政学リスクが法定通貨秩序に試練。BTCの価値が試される時代が来たか!?

Daily Market Report 2022/5/17

_

BTC vs 暗号資産時価総額

Bloombergより当社作成
BTC(ビットコイン)のチャート・価格情報はこちら

上図は、2021/1/1から現在までの暗号資産時価総額とBTC/USDの価格を比較したグラフである。

2022年の四分の一が経過した中、暗号資産時価総額とBTC/USDはともに保ち合い推移が継続していたが、BTCは節目の35,000ドルを割り込んだ。

ドル建て、円建てともに年初来安値を更新し、7週連続陰線を記録して下落リスクが大きくなっている。

BTCが7週連続で陰線を記録したことは過去に例がなく、2014年8月、9月の6週連続陰線の記録を更新し、過去ワーストクラスの価格推移となっている。

暗号資産時価総額も、過去最高値である2.97兆ドルから1.25兆ドルと1.72兆ドルの時価総額を喪失、円換算で約220兆円の価値を失う結果となった。

相場の下落を加速させる暗号資産市況の要因として、無担保型(アルゴリズム)ステーブルコインのUST(テラUSD)のドルペッグが外れ(デペッグ)、裏付け資産となるLUNA(テラ)の価値が99%安まで下落することでアルゴリズムを維持していた裁定機能が正常に働かず、売りが売りを呼ぶ信用収縮が加速した。

また、連想売りで主要ステーブルコインの値動きも不安定となり、ネガティブな情報で価格が一方向へ加速するFUD(恐怖・不確実・疑問というの頭文字)がマーケットを支配する構図になったといえる。

アメリカのイエレン財務長官は今回のステーブルコインのリスクに対して適正な規制の枠組みが必要であると言及しており、FRB(アメリカ連邦準備制度)も金融安定報告でステーブルコインに関わる償却リスクの脆弱性について警鐘を鳴らすこととなった。

今回、暗号資産特有の下落と想起させるが、本当はどうであるのかを確認するために、

・世界株価指数
・期待インフレ率
・米国CPI

以上の別指標との比較で暗号資産の立ち位置を確認したい。

BTC vs 世界株価指数

Bloombergより当社作成

上図は、2021/1/1から現在までのBTC/USDとMSCI指数(※)の価格を比較したグラフである。
※MSCI指数…約70か国の株式市場を対象とした指数の総称であり、全世界の株式指数を俯瞰する場合のベンチマークとして使用される。

グラフを確認すると、世界株価指数、BTCともに今年の四半期に推移していた価格帯を下回った価格まで下落していることがわかる。この価格は2021年1月から世界株価指数やBTCに投資していた投資家のパフォーマンスは、概ね0ないしはマイナス圏に位置していることを意味する。

コロナショック以降の世界は、際限のない法定通貨発行により資産インフレを生み出した。その結果が世界株価指数やBTCの価値向上に寄与していたが、現在はコロナショックを受けた大規模金融緩和の弊害というインフレ高進に加え、ウクライナ侵攻という地政学的リスクを世界は受け止めなければならず、食品、エネルギー価格高騰という負の影響を家計に与えている。

負の影響からの脱却を目指すために、金融政策の転換ステージに現在位置しており、5/5のFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)では0.5%の政策金利引き上げと月950億ドルの保有資産縮小・量的引き締めを発表した。

インフレを抑え込むことを優先事項とする中で、金利引き上げと量的引き締めはこれまでの資産インフレには負の圧力が強まる可能性も考えられるだろう。

前回、2018年にパウエル議長の量的引き締め期間中は、米国株価指数は当時の最高値から20%程下落することとなった。

しかし、前回と今回の量的引き締めで異なる点は、金融政策を止めればインフレが加速する段階に位置しているということである。

2018年当時はインフレについての懸念はほぼなく、株価については20%の価格下落で落ち着いたが、インフレを止めるための2022年の金融政策の規模感は2018年の倍の規模での政策実施であることから、最高値から20%以上の株価下落も視野に入るであろう。

現在、BTCは最高値から50%程下落しているが、最高値から80%の下落を過去に3度経験(2013/11~2015/1、2017/12~2018/12、2019/1~2020/3)しており、過去最高値69,000ドルから13,800ドルへの80%下落も考慮する必要性があるかもしれない。

BTC vs 期待インフレ率

Bloombergより当社作成

上図は、2021/1/1から現在までのBTC/USD価格と、米国の期待インフレ率の比較をしたグラフである。

期待インフレ率の上昇時にBTCは右肩上がりに上昇しており、中央銀行による増大した資金供給がBTCとインフレ率を共に押し上げたことが考えられる。

金融緩和によるインフレ回避を目的として、インフレヘッジ資産としてのBTCに注目が集まっていたが、4月に期待インフレ率が3.02%でピークを迎えて以降、期待インフレ率は低下傾向で推移しており、同時にBTCの価格も下げていることがわかる。

インフレヘッジとして価値を強めてきたBTCであるが、足元の価格推移においてはその役割に疑問符がつく。しかし、期待インフレの推移が示す通り、インフレ高進化は依然2021年当時を大きく上回る数値であることは事実である。

インフレ高進が進む中で、軍事侵攻という地政学的リスクが加わることになり、期待インフレ率はデータのある1998年以降で最高値を付ける事態となった。

根強い物価上昇の背景にあるのは、現在もなお続くコロナ変異株の影響による供給連鎖が途絶えてしまう点や、原油や天然ガスをはじめとした商品市況の急騰等にあるだろう。

金融政策は経済ショックには対応できるものの、現在問題視されている供給側のショックに対する影響は大きくないと考えられる。

世界はコロナ禍という病に加え、地政学的リスクを抱えることとなり、根強いインフレが恒常化した先に見えるBTCの未来を確認するために過去の指標を確認したい。

BTC vs CPI

Bloombergより当社作成

上図は、1948/1/1から現在までの米国のCPI(消費者物価指数)グラフである。

2022年以降、更なるインフレの加速化により、改めてBTCはGOLDと並びインフレヘッジ資産としての特性が現れてくる可能性はある。

今回5/11の4月消費者物価指数は8.3%と市場平均より高い数値となったが、前月3月の8.5%より減速となった。一見すると今後の金融引き締めによりインフレ解消にむかう可能性も考えられるが、インフレにも波があり第二波、第三波へ向かう恐れもあるだろう。

過去事例をみると、金融政策は供給側の問題、そして軍事侵攻を解決できる万能なツールではない。現在はコロナ禍に加え、ウクライナ侵攻という地政学的リスクによるインフレ高進しているが、過去にも同様の事例はみられた。

グラフの1960-1980年の時代にインフレ率が突出して高くなった時代の背景を振り返ると、

・1960年代(第一波)ベトナム共産化阻止を名目としたアメリカ軍事介入。

・1970年代(第二波)アラブ諸国、イスラエルとの第四次中東戦争。経済制裁に伴う第一次オイルショック。

・1980年代(第三波)イラン革命、イランでの石油生産中断とOPEC原油価格引き上げによる第二次オイルショック。

以上の要因により、インフレ率は高進することとなり、不景気と物価上昇が重なるスタグフレーションにアメリカ経済は直面することとなった。

スタグフレーションの解消に向け、アメリカのレーガン政権は供給力重視の減税・規制撤廃・歳出削減・安定的マネーサプライを四本柱としたレーガノミクスを実行し、インフレーションは落ち着いたものの、高金利によるドル高と貿易赤字、財政赤字という双子の赤字を抱えることとなった。

結果として、ドル高と双子の赤字による世界経済の悪影響を防止することを名目に、当時のG5(アメリカ・日本・イギリス・ドイツ・フランス)によるドル安路線を図る、法定通貨への協調介入を進めるプラザ合意が行われた。

プラザ合意という法定通貨の価値操作が日本経済の長期経済低迷のきっかけになったという見解もあるが、40年ぶりのインフレ高進、地政学リスクに伴う世界バランスの不安定化を鑑みると、「歴史は繰り返さないが、韻をよく踏む」という格言通り、通貨価値再編の世界が到来する可能性もありえるだろう。

著名投資家であり、BTCを所有するレイ・ダリオ氏は今回のウクライナ侵攻を世界秩序を決定する戦争の序章であると指摘している。

ドルへのアクセスや西側諸国の金融システムを封鎖することによって経済制裁を実施してきたが、その後のロシア・ルーブルの動きをみると制裁の効果は一時的で、ウクライナ侵攻前に価格変動率が戻っている。

他国もドルの支配、金融システムから逃れ、基軸通貨であるドルが武器とならない世界、いわば中央集権でないBTCの利用拡大が加速していくことも考えられるかもしれない。

その場合、BTCが法定通貨の代替案としての価値を見出す序章から本編に移行する年になる可能性もあるだろう。

(5/17 午前6:00時点)

銘柄別価格前日比(%)

社内データより作成

5/16の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。

平均値は-3.91%、中央値は-3.36%、標準偏差は1.61%となった。

最小下落銘柄はMONA/JPY-0.51%、最大下落銘柄はXEM/JPY-6.86%

最小下落銘柄のMONA/JPYは当社取扱銘柄の中で唯一下げ幅を1%未満に抑えた。5/16の値動きを振り返ると、14時台に高値88.641円をつけたが、18時台に安値84.259円つけその後は振るわず推移した。

最大下落銘柄のXEM/JPYは7%近く下落。8時台に高値8.464円をつけた後は下がり続け5/17 午前1時台に安値7.2円。その後は方向感のない推移となった。

BTC/JPYが400万円台の水準で反落したのに追随して他銘柄も下落した格好となった。方向感が出るまでの間は、引き続きLUNA、UST関連や米国株式市場などの外部要因に注意しておきたい。

24時間ボラティリティ(%)

社内データより作成

5/16の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。

平均値は11.14%、中央値は11.05%、標準偏差は3.29%となった。

最もボラティリティが高かった銘柄はXEM/JPY20.28%

一方、最もボラティリティの低かった銘柄はMONA/JPY5.05%となった。

◆本資料においてお客様に提供される情報は、株式会社DMM Bitcoinが収集・作成等したものです。

◆本資料は、一般的な情報提供を目的に作成されたものであり、暗号資産取引の勧誘を目的としたものではありません。

◆本資料は、本資料作成時点で株式会社DMM Bitcoinが信頼できると判断した情報を基に作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。

◆本資料の情報によって生じたいかなる損害についても、株式会社DMM Bitcoinおよび本情報提供者は一切の責任を負いません。

◆本資料のグラフ・データ等は、過去の実績または作成時点での見通し・分析であり、将来の市場環境の変動や運用状況・成果を示唆・保証するものではありません。また、税金・手数料等を考慮しておりません。

◆本資料に関する著作権、知的所有権、その他一切の権利は、株式会社DMM Bitcoinまたは権利者に帰属します。お客様は、本資料に表示されている情報をお客様自身のためにのみ利用するものとし、第三者への提供、再配信、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。

2022-05-17
ページTOPへ