NFT取引高が半年ぶりの高水準。ETHにとってBTCに対する追い風となるか
Daily Market Report 2022/5/12
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現在、暗号資産市場は大きな下落相場となっているが、ETH/BTCは2021/5以降、1年近く0.06~0.08で推移している。
本稿ではETH/BTCに焦点をあて、今後、ETHがBTCに対して優位性を示すことができるのか。そして、2018年2月以来の水準である1ETH=0.1BTCまで差を縮小できるかどうかについて考察する。
THE BLOCKより当社作成
上図は2021/8~現在までのカテゴリー(アート・コレクション、ゲーム)ごとのNFT週間取引高を記載したグラフだ。
2/10のマーケットレポート「イーサリアム(ETH)、 NFTの盛況との価格連動性に注目」でも解説した通り、NFTはETHの技術を使用して発行されるケースが多く、2021年のNFTの盛況はETHの価格にも好影響を及ぼしたと考えられるだろう。
上図より、今年のNFTの動向としては、第一四半期には取引高も減少傾向にあったものの、4月に入ると一転して週間取引高が大きく増加している事がわかる。
特に、4/17~4/23週における取引高は3億6967万ドルを記録しており、これは昨年11/7~11/13週以来、約半年ぶりの水準だ。
また、内訳としては、ゲーム分野での取引高は過去最低水準にまで落ち込んだが、アート・コレクション分野では昨年8/29~9/4以来、約8カ月ぶりの高水準となった。
ETH/BTC 週足Bidチャート(当社取引ツールより作成)
ETH(イーサリアム)のチャート・価格情報はこちら
一方、上図は2022/1/1~2022/5/9におけるETH/BTCの週足チャートの推移だ。
昨年1月にはETHは対BTC比で1ETH=約0.02BTCだったものの、同年12月になると1ETH=約0.088BTCと、およそ3.6倍もの上昇を見せた。
これにはNFTの流行もETHにとって大きな追い風となったことが考えられるだろう。
実際、2021/1の初週は300万ドル程度だったNFTの週間取引高は、2021/9には10億ドルにまで達しており、取引高が少ない期間においても企業によるNFT参入が発表される等、話題は尽きなかった。
しかし、今年4月のNFTの取引高は前述の通り半年ぶりの高水準であるにも関わらず、上図からわかる通りETH/BTCは今のところ大きな上昇は見られない。
このように、取引高が低水準となっていたNFTが再び勢いを取り戻しつつある状況だが、以前のようにNFTの盛況がETHの価格に好影響を及ぼす環境ではなくなってきているかもしれない。
・ETHのNFT取引における優位性は薄れたのか
THE BLOCKより当社作成
上図は2022/1/2より、週ごとにおけるNFT取引に占める各銘柄の割合を表した図だ。
既知の通り、ETHはスケーラビリティ問題によってガス代が高騰しており、一度のNFT取引に多額の手数料が要求される事から、近頃はより安価な手数料で取引が可能である「イーサリアムキラー」と呼ばれる銘柄(ソラナ(SOL)、アバランチ(AVAX)、フロー(FLOW)、ポリゴン(MATIC)など)に注目が集まっている。
しかし、ETHは手数料が高額であるとはいえ、時価総額の高さや暗号資産として古くから運用されている事もあり、新興銘柄と比較しても信頼度の高い銘柄といえるだろう。
実際、上図からわかる通りETHは80%以上のNFT取引に使用される銘柄となっており、現時点ではNFT分野における独占体制を築いている状況であるともいえる。
また、イーサリアムキラーが話題になってからもETHのNFTにおける独占体制が引き続き維持され続けている事から、今後すぐにETHのシェアが失われるとは考えにくいだろう。
CoinGecko(https://www.coingecko.com/)より当社作成
続いて、ETHとイーサリアムキラー銘柄の価格の比較について見てみよう。
上図は、ソラナ(SOL)、アバランチ(AVAX)、フロー(FLOW)、ポリゴン(MATIC)のETHに対する2022/3/1の終値を100として指数化したグラフだ。
4月に入りNFTの取引高が増加してからは、SOLのみETHのパフォーマンスを一時上回る期間こそあったものの、他の銘柄はETHに対して優位性を保つ事はできていなかった。
さらに、5月に入ってからは全ての銘柄がETHのパフォーマンスを下回っている。
よって、以上の事から、NFTにおけるETHの優位性は薄れていないと考える事が妥当だろう。
・NFTの現状に着目する
THE BLOCKより当社作成
上図はNFT取引高に占めるNFTトークンの内訳を表したグラフだ。
4/16より新たに販売されたETHのNFTコレクション「Moonbirds」(上図緑棒)はNFT取引高に大きく寄与した。
具体的には4/10週のNFT取引高は228億ドルであったが、そのうちの172.9億ドルがMoonbirdsによる取引が占めており、割合としては全体の75%以上にも及んでいる事からも、この影響の大きさが伺えるだろう。
しかし、このMoonbirdsの取引も週ごとに縮小し、5/1週は24.19億ドルと、取引高は初週の14%程度にまで落ち込んでおり、NFT全体の取引高も同様に縮小した。
よって、この事から、4月におけるNFT取引高の増加はMoonbirdsによる一過性のものであったといえるだろう。
また、この際の取引高の増加は富裕層以外にはあまり注目されていなかった可能性もある。
Google広告及びGoogle Trendsより当社作成
上図はGoogle検索において2021/5~2022/5より、週ごとに世界で「NFT」と検索された回数を表したグラフだ。
「NFT」と検索された回数は2022/1/16週に記録した2,040万回が最も高かったが、その後は減少を辿り、2月からは横ばいとなっている。
前述の通り、NFTの取引高が半年ぶりの高水準を記録した今年4月においても、NFTの検索回数は伸びる事なく推移している事から、NFTの関心は薄れつつあるとも考えられるだろう。
この事が、ETHがイーサリアムキラー銘柄にこそパフォーマンスで上回っているものの、BTCに対しては差を埋める事ができていない理由の一つとして挙げられるかもしれない。
現状、NFT取引において最も活発に取引が行われており、知名度も高い「BAYC(Bored Ape Yacht Club)」からシェアを奪うようなNFTは生まれていない。
また、4月のNFT取引高の大幅な増加に貢献したMoonbirdsについても最低販売価格は21.3ETHとなっており、非常に高額である事から、NFT全体の流行の起点となりえるような存在であるとはいえないだろう。
2022/5/11時点では、1ETH=0.075BTCとなっている。今後、2018年2月以来となる1ETH=0.1BTCの水準まで上昇するためにNFTが貢献できる要素としては、単純な取引高の増加よりもGoogleでの検索回数等の増加に影響を与えるようなニュース・イベントの発表や、より身近なコンテンツになる事が求められるかもしれない。
(5/11 午後7:00時点)
・銘柄別価格前日比(%)
社内データより作成
5/11の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は-14.32%、中央値は-14.13%、標準偏差は4.16%となった。
最小下落銘柄はBTC/JPYの-4.69%、最大下落銘柄はENJ/JPYの-22.25%。
各銘柄で米国時間までは方向感に欠けた動きを続けていたが、米CPIの発表をきっかけに相場が大きく動くこととなった。
4月米CPIは前年同月比で8.3%と3月の8.5%から減速したものの、依然として高水準にあることでインフレ圧力が持続的であることが確認され、リスク資産が幅広く売られた。
最小下落銘柄のBTC/JPYは2021年6月以来の安値圏へ突入した。
BTC/JPYは、米CPIを受け410万円付近から385万円付近まで急落したが、380万円(≒29,000ドル)の節目を攻略し損ねると急反発し、イベント前の水準を一時的に回復した。
しかし反発の動きが一巡すると継続的に上値を切り下げることとなり、一時370万円割れまで下値を拡大し、下値不安が燻っている。
最大下落銘柄のENJ/JPYは、2021年5月以来の安値93.65円を更新し、一時70円台まで下落。
前述の通り米CPIをきっかけに暗号資産市場全体が下落に傾き、ENJ/JPYでは目先の下値目処であった、100円を明確に割り込んだことで下落が加速した。
BTC/JPYと似通った値動きではあるものの、アルトコインのリスク性の高さが嫌気されたのか、売り圧力が強く値幅を伴った下落となった。
・24時間ボラティリティ(%)
社内データより作成
5/11の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は29.37%、中央値は28.76%、標準偏差は7.05%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はENJ/JPYで43.30%。
一方、最もボラティリティの低かった銘柄はBTC/JPYで15.74%となった。
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