材料豊富なETH(イーサリアム)-アップデート延期もイーサキラーに対する光明あり?-
Daily Market Report 2022/4/21
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NFT元年ともいえる2021年、ETHは価格を大きく伸ばす事に成功したものの、スケーラビリティ問題に直面し、低いトランザクションや高価なガス代といった課題も露呈した。
今回の記事では、ETHの持つ好材料や懸念材料を紹介する。
・延期された「The Merge」アップデート
かねてより期待されるイーサリアムブロックチェーンのPoS(プルーフ・オブ・ステーク)移行を担うアップデート「The Merge」は、3/24のマーケットレポート「ETH(イーサリアム)-成長の鍵を握る隠された好材料に注目!-」で紹介した段階において、テストが最終段階に突入している事が報告されていた。
その後も6月のThe Mergeアップデートに向け、4/8には「Shadow Fork」と呼ばれるテストが進行中である事が報告されていたが、4/13に突如The Mergeアップデートが2022年の3Q~4Qへ延期される事が発表された。
これは、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)への風当たりが強くなりつつある現状、イーサリアムキラーの出現や、スケーラビリティ問題等数々の課題を持つETHとしては価格の下落要因になり得たはずだが、市場の反応は意外にも冷静のようだ。
CoinGecko(https://www.coingecko.com/)より当社作成
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上図は、ETH、BTC、XRPの価格を4/1を起点として指数化したグラフだ。
The Mergeの延期が発表された4/12(世界標準時)の価格を見ると、ETHの価格は特に影響を受けた様子はなく、BTCと似た動きで推移した事がわかる。
下落要因となり得るThe Mergeアップデートの延期に対して市場が特に反応しなかった理由として、主に2つの要因が挙げられるだろう。
まず初めに、開発グループの一員Tim Beiko氏によるThe Mergeアップデート延期の発表と同時に、同氏が「イーサリアムのPoWは間違いなく最終章にいる」、「これ以上マイニング機器に投資しない事を強く提案する」とも発言した事がETHの価格を下落させなかった要因となったと考えられる。
加えて、3日後の4/15(世界標準時)に同氏はイーサリアムのアップデート進捗について、かなり詳細な報告と解説を複数にわたるツイートで行った。
4/16に至ってはBTCが下落する中、ETHの価格は僅かに上昇しており、同氏によるこれら一連の対応が、The Mergeアップデートの延期による懸念をむしろ期待に変えた可能性もあるかもしれない。
2つ目の要因としては、The Merge延期の理由が複数のバグを改善するためであるとされた事が挙げられるだろう。
4/7のマーケットレポート「サイバー攻撃による暗号資産価格への影響-過去の事例から振り返る」で記載した内容と重複するが、今年3/29にRonin Networkにて流出額が過去最大となる大規模なサイバー攻撃が発生した。
この事件が通常のハッキング事件と異なる点としては、たびたび報じられたことのある取引所等へのサイバー攻撃ではなく、ブロックチェーン自体の脆弱性を突かれた点にある。
イーサリアムブロックチェーンにおいてもPoS移行の最終段階として4/8に実施されたShadow Forkによるテストで複数のバグが発見されたが、アップデート前の最終段階のテスト環境でバグを発見できた事は、信頼性が最重要視される暗号資産分野においては、ある種ポジティブな事案と捉える事もできるだろう。
The Mergeアップデートは過去複数回延期されているものの、着々と前進しており、停滞理由や進捗についてもイーサリアム財団や開発者より逐一報告されている事から、現時点で求められる事は、不具合を取り除き、最善の状況でアップデートを実施することであると市場は判断したのかもしれない。
・取引高減少も再ブレイクの兆しを見せるNFT
また、再ブレイクの兆しをみせるNFTも、ETH価格の下支えとなった可能性もある。
THE BLOCKより当社作成
ETHの価格とNFTの盛況には連動性があるとされるが、ここでまずはNFT取引の現状について触れておこう。
上図は、2022/1初週より、1週間ごとのNFTの取引高を示したグラフだ。
2022/1は全ての週でNFTの取引高は1億ドルを超えていたものの、ここ10週間でみると取引高が1億ドルを超える週は4回しかない。
さらに過去を振り返ると、2021/8には一週間の取引高が10億ドルを超えた週もある事から、取引高の規模としても現在は全盛期の10%程度までに落ち込んでいるような状況だ。
また、現時点でのNFT取引は、非常に高額で富裕層向けである事も盛り上がりに水を差している。例えば、NFT最大手取引所のOpenSeaの3月の取引高は34億ドルであるが、取引高の10%以上を、1点で平均108ETH(4/18時点)にて取引されるBAYCと呼ばれるアートが占める。
このように、事実上富裕層しか手が出せない価格帯のNFTにおいて、その富裕層にすら飽きられているようにもみえるが、今後再ブレイクの予兆もあるかもしれない。
2022年に入り、国内、海外の企業においてもNFT取引に参入するケースが増加した。加えて、既に存在するウクライナの人道支援を目的としたNFTの存在や、今後数カ月以内に英国政府によるNFTの発行が予定される等、多岐にわたる用途も計画されており、富裕層以外にもNFTが広まる体制は一歩一歩、少しずつ整いつつあるといえるだろう。
また、NFTの再ブレイクによってETHの価格にポジティブな影響を及ぼす事も考えられるだろう。
THE BLOCKより当社作成
上図は、2022/1/2~2022/4/16までの銘柄別NFT取引高をパーセント表記で示した図だ。
2021年から現在にかけ、イーサリアムブロックチェーンの弱点であるスケーラビリティ問題を解決した「イーサリアムキラー」銘柄が勢力を伸ばしている事は大きな話題となった。
しかし、上図からわかる通り、NFTの分野においてイーサリアムキラー銘柄はETHから取引高シェアを奪うに至っていない。
性能で劣るETHは今回のThe Mergeアップデートの延期により、アップデートに至るまでの今後数カ月間、イーサリアムキラーに対して辛抱が迫られる事となるだろう。
しかし、NFTの再ブレイクがあるとすれば、The Mergeアップデートよりも前にETHの価格を上昇させる光明となるかもしれない。
(4/20 午後7:00時点)
・銘柄別価格前日比(%)
社内データより作成
4/20の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は-0.76%、中央値は-1.22%、標準偏差は3.21%となった。
最大上昇銘柄はXYM/JPYの10.68%、最大下落銘柄はXTZ/JPYの-3.08%。
最大上昇銘柄のXYM/JPYは急上昇。一時20円まで伸ばしたものの、17円(日足一目均衡表・雲上限、基準線、転換線、日足90日移動平均付近)で大引け。日足14日RSIが売られ過ぎ圏(25%未満)を脱出した。
最大下落銘柄のXTZ/JPYは、388円(日足一目均衡表・転換線、雲下限、ピボットポイント・S2付近)で引けた。日足14日RSIは50%へ回帰した。
・24時間ボラティリティ(%)
社内データより作成
4/20の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は9.14%、中央値は6.67%、標準偏差は10.84%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はXYM/JPYで49.44%。
一方、最もボラティリティの低かった銘柄はBTC/JPYで4.10%となった。
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