インフレ高進、軍事侵攻長期化。変わりゆく世界でのBTC(ビットコイン)の立ち位置は?
Daily Market Report 2022/3/23
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・BTC(ビットコイン)、保ち合い放れの日は近い?
Bloombergより当社作成
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上図は2021/1/1から現在までの暗号資産時価総額とBTC/USDの価格を比較したグラフである。
2022年の暗号資産は3か月を経過した時点で、保ち合い推移が続く展開となっている。
暗号資産時価総額は年初から概ね1.5~2.0兆ドルでの保ち合い推移、BTC/USDも概ね35,000~45,000ドルでの保ち合い相場が継続していることがわかる。
2月24日にロシアによるウクライナの軍事侵攻を契機に、マーケットはリスクオフとなる相場が繰り広げられ、有事の安全資産とも呼ばれる金(ゴールド)は2020年のコロナショック時の高値まで上昇した。
また、コロナ変異株による景気後退懸念と生産障害から需給逼迫が生じていた原油(WTI先物)は2008年ぶりの高値となっている。ドル円に関しても、米国政策金利引き上げとウクライナ侵攻長期化を織り込む上昇が続き、2016年ぶりの高値となった。
あらゆるアセットが地政学リスクとインフレ高進の余波を受ける流れで、暗号資産は底が固いのか、上値が重いのか、どちらとも決まらずに、はっきりしない相場推移と言えるだろう。
しかし、暗号資産時価総額も一定の価値を維持していることから、暗号資産市況から資金流出が生じているとは考えにくいかもしれない。
次に、ウクライナへのロシア侵攻という地政学的リスクの勃発を受けて、BTCが貴金属や主要な株式と比較してどのような位置にいるかを確認してみる。
※TはTrillionで兆、BはBillionで十億
Bloombergより当社作成(3/22時点)
表のとおり、BTCの時価総額は貴金属や主要な株式との対比では世界9位に位置していることがわかる。
昨今の米株高を牽引したハイパーグロース株の代表格である米テスラ社を下回るものの、世界有数の投資家であるウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社・米バークシャーハサウェイ社の時価総額を上回っている。
軍事侵攻本格化前(2/15のレポート)時点とBTCの順位は変わらず、現在も既存金融資産に匹敵する存在感を示していることが上図から読み取ることが出来るだろう。
今後のBTCの問題は、現在の保ち合い相場を脱してどちらに放れるかであるが、以下の指標から、示唆される相場展開を確認したい。
・期待インフレ率
・銅
・月別変動率
・BTC vs 期待インフレ率
Bloombergより当社作成
上図は2021/1/1から2022/2/16(軍事侵攻前)までのBTC/USD価格と、米国の期待インフレ率の比較をしたグラフである。
期待インフレ率とBTCは右肩上がりに上昇しており、中央銀行による増大した資金供給がBTCとインフレ率を共に押し上げたことが考えられるだろう。
金融緩和によるインフレ回避を目的として、インフレヘッジ資産としてのBTCに注目が集まっていたが、11月に期待インフレ率が2.76%でピークを迎えて以降、期待インフレ率は低下傾向で推移しており、同時にBTCの価格も下げていることがわかる。
しかし、今回の軍事進攻というトリガーが状況を変えた可能性がある。
Bloombergより当社作成
上図は、2021/1/1から現在までのBTC/USD価格と、米国の期待インフレ率の比較をしたグラフである。
インフレ高進が進む中で、軍事侵攻という地政学リスクが加わることになり、期待インフレ率はデータのある1998年以降で最高値を付ける事態となった。
今月のFOMC(米国連邦公開市場委員会)で政策金利を0.25%引き上げるとともに、年内7回の利上げを示唆したが、市場参加者が予測する物価変動率である期待インフレ率の高騰ぶりをみると、FRBの打ち出す現状の金融政策は、インフレを適正水準に管理できないとマーケットは判断したようだ。
根強い物価上昇の背景にあるのは、現在もなお続くコロナ変異株の影響による供給連鎖が途絶えてしまう点や、原油や天然ガスをはじめとした商品市況の急騰等にあるだろう。
金融政策は経済ショックには対応できるものの、現在問題視されている供給側のショックに対する影響は大きくないと考えることができよう。
世界はコロナ禍という病に加え、地政学リスクを抱えることとなり、根強いインフレが恒常化した先に見える未来は、法定通貨の希薄化・価値の減少と考えることもできる。
インフレヘッジとして価値を強めてきたBTCであるが、足元の価格推移においてはその役割に疑問符がつく。
2022年以降、改めてGOLDと並びインフレヘッジ資産としての特性が現れてくるのか。または、送金手数料の安さからウクライナへの寄付に使われたような実需への転換が巻き起こるのか。引き続き目が離せない展開が続く。
・BTC(ビットコイン) vs 銅
Bloombergより当社作成
上図は、2017年1月からの銅価格とBTCの価格比較をしたグラフである。
グラフを見ても分かる通り、銅とBTCは同じような値動きとなっており、高い相関を示してきた。
大きなサイクルとして具体的には、下記のとおりとなる。
BTCは大きな上昇と下落を繰り返しながらも、世界経済の成長に寄り添って銅と同様な値動きで推移していたことがわかる。
銅価格は、かつて2008年のリーマンショック発生の1か月前に急落。2020年コロナショックでも1か月前に価格はいち早く下落しており、世界経済を占う道標と言われている指標である。
BTCをはじめとした暗号資産の今後の動向は、世界経済の先行指標であり炭鉱のカナリアとも呼ばれる銅が鍵となる可能性があるだろう。
銅は長らく保ち合い相場が続いていたが、軍事侵攻をきっかけにコモディティ市況は上昇軌道に乗ったか、銅も最高値を更新することとなった。
景気先行指標としての銅の役割は、地政学的リスクの顕在化から単純に需要予測を現すものでなくなってしまったという可能性は懸念されるが、過去と同じように先行性を持つと仮定すれば、銅が上放れしたという事実は、金融引き締めを実行する真っただ中の悲観論が渦巻くマーケットにとって希望の光といえるかもしれない。
景気の先行指標である銅の上昇によってBTCは保ち合いを上抜けし、再度上昇軌道へ乗ることは可能であろう。
・BTC(ビットコイン) vs 月別変動率
Bloombergより当社作成
上図は、BTC/USDの2011年から2022年までの月別騰落率である。月別騰落率をみると、3月に上昇した(月足が陽線で確定した)年は2013年、2019年、2021年のみである。月のアノマリーを考えると3月は上値の重い展開となる月が多かったようだ。
アノマリーの例で、日本では年金基金や生命保険などの機関投資家の多くが3月に本決算を迎えることもあり日経平均が下がりやすいという定説など、市場関係者の投資心理に影響を与えることもあり、需給がアノマリー通りの方向へ振れる可能性も考えられるだろう。
いずれにせよ3月相場の行方が、今後の暗号資産市場の行く末を問うこととなりそうだ。
(3/22 午後6:00時点)
・銘柄別価格前日比(%)
社内データより作成
3/22の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は6.13%、中央値は4.15%、標準偏差は4.92%となった。
最大上昇銘柄はETC/JPYの17.76%、最小上昇銘柄はMONA/JPYの0.74%。
最大上昇銘柄のETC/JPYは上昇トレンドに転換しており1日の騰落率は底値から20%近く上昇している。
最小上昇銘柄のMONA/JPYは、中長期下落トレンド中であるため、上昇には力がないように見える。
・24時間 ボラティリティ(%)
社内データより作成
3/22の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は8.65%、中央値は6.80%、標準偏差は4.20%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はETC/JPYで19.01%。
一方、最もボラティリティの低かった銘柄はBAT/JPYで4.16%となった。
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