暗号資産が浸透している韓国市場。今、注目を集めているのはXLM(ステラ・ルーメン)?
Daily Market Report 2022/3/8
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・韓国国内の買い意欲は概ね高め、価格に先行している可能性も?
ETH/JPY日足ベース Tradingviewより当社作成(期間:2021.1.21~2022.3.7)
ETH(イーサリアム)のチャート・価格情報はこちら
上図は、2021年1月下旬から現在までの当社ETH/JPY終値(桃線)と韓国大手取引所2社のETH/KRWの平均価格を当時のKRW/JPYレートで円換算したもの(白線)、およびそれらの乖離率(下部の緑図)である。
暗号資産市場において、一物一価の法則は必ずしも成立せず、その代表的な例として韓国取引所と諸外国との価格乖離が挙げられる。
韓国はCBDC(中央銀行デジタル通貨)の実証実験へのサムスン電子の参加や(2021/8/12 CoinPost)、野党「国民の力」による暗号資産課税緩和の提案など(2021/10/12 CoinPost)、概ね暗号資産の推進に好意的な市場といえるだろう。
その一方で、韓国外の取引所への送金と国外からの韓国内取引所の口座開設は厳しく制限されており、この裁定取引の困難さが、価格乖離の一因にもなっていると考えられる。
上図のチャートをみても、2021年1月下旬と8月の数日間を除き、当社価格よりも韓国取引所での価格が0%~20%高くなっており、韓国国内におけるETHへの買い意欲が、高いままで推移してきたことが確認できる。
先に、韓国内の暗号資産への市場心理に繋がるファンダメンタルズを確認しておきたい。
直近半年間の韓国国内における暗号資産の好材料、悪材料は以下の通りとなる。
<好材料>
・野党「国民の力」による暗号資産課税緩和の提案(2021/10/12 CoinPost)
・韓国教師信用組合によるビットコインETF投資計画の報道(2021/10/26 CoinPost)
・金融委員会(FSC)副委員長による暗号資産のICO禁止を見直しの検討(2021/11/24 CoinPost)
・大統領選の候補者(民主党)によるオリジナルNFT付与(2022/1/4 CoinPost)
・サムスン電子による購入者特典としてのNFT配布(2022/2/15 CoinPost)
・大手金融機関によるデジタル資産ETFサービスの検討(2022/2/21 CoinPost)
・行政機関による、210億円相当のメタバース投資(2022/2/28 CoinPost)
<悪材料>
・法令を背景とした、暗号資産取引所の廃業加速(2021/9/25 CoinPost)
・経済副首相兼企画財政部長官による2022年からの暗号資産取引への課税表明(2021/10/8 CoinPost)
まず、悪材料を確認する。法令を背景とした廃業加速や、暗号資産課税については、いずれも昨年10月時点までに公表された内容であるため、既に現在の市場心理に織り込まれていると考えてよいだろう。
そのうえで、好材料をみると、それらは10月以降の発表であり、悪材料より後に公表された内容である。このことから韓国国内の暗号資産をとりまく市場心理は悪化から改善へ向かっている段階であると考えることもできそうだ。
なお、韓国では3月9日に大統領選を控えており、新政権の暗号資産への推進姿勢によっては市場に一定の影響を及ぼす可能性も考えられるため、注目しておきたい。
次に、上図チャートの詳細をあたり、韓国国内の取引参加者の動きを推察する。
2021年2月から3月末にかけて韓国取引所での価格が上方乖離しているが、これは韓国国内の取引参加者が買い優勢だったと言い換えることができる。
ETH/JPYの価格は4月から5月上旬にかけて急上昇するが、乖離率は3月よりも縮小していることから、この間に取引参加者は利益確定に動いていたことが伺える。
5月中旬に一旦のピークを迎えたETH/JPYは一転急落するが、5月下旬に22万円から30万円までの反発をみせている。この反発の直前に乖離率が再び20%まで上昇し、直後に下落していることから、反発直前に反発狙いの買いを入れ、反発時に利益を確定したと考えられる。
7月から8月にかけてのETH/JPYの価格上昇では、買いに走らず、見送っていたようだ。
その後、9月に下落時に上方乖離が発生し、11月の史上最高値を更新後から乖離率が縮小していることから、9月に押し目買いを入れて、最高値更新を確認してから、利益を確定したとみることができる。
以上より、次の取引傾向が伺えるだろう。
・価格の上昇局面よりも早い段階で買いに動き、急な上昇時には利益を確定する
・急落時に的確な買いを入れ、反発時にすかさず利益を確定する
・必ずしも価格の上昇時に買うのではなく、見送ることもある
・価格上昇のピークを確認した場合には買いを控える
これらの傾向は、つまり、韓国市場の参加者が、銘柄の適正価格の想定や、相場動向の識別を的確に行い、高い精度で取引を行っていることの示唆ともいえるだろう。
このことから、韓国国内の乖離率を参考に銘柄選択や売買タイミングを決めるのも一つの暗号資産投資の判断方法として捉えることもできるだろう。
現在のETH/JPY価格は30万円前後を推移しているが、乖離率は昨年10月水準であり、韓国国内の取引参加者はETHに戻ってきていないと推察できるだろうか。
今、韓国市場で注目の集まっている銘柄は何なのか。
そこで、KRW(ウォン)建てのシェアの高い銘柄順にピックアップしたのが、次のランキングである。
CryptoCompare(https://www.cryptocompare.com/)
3/7午後8:12に取得したデータより、当社作成
上図ランキングをみると、XLM(ステラ・ルーメン)が31.90%と、他の銘柄より群を抜いて高いシェアを誇っていることが確認できる。
前述のETHは11位となっており、やはりあまり選好されていないようだ。
同様に、XLM/JPYの当社終値と韓国取引所を比較してみよう。
・XLM/JPYの価格は昨年10月以降下落も一定の上方乖離
XLM/JPY日足ベース Tradingviewより当社作成(期間:2021.1.21~2022.3.7)
XLM(ステラ・ルーメン)のチャート・価格情報はこちら
上図のXLM/JPYの当社取引レートと韓国取引所のレートの推移をみると、2021年3月の上昇時の大幅買い越しは前述のETH/JPYと同様だが、11月以降のXLM/JPYの価格下落時にも一定の上方乖離を保っていることが確認できる。
11月以降のXLM/JPYの価格下落の根拠については、XLMをCBDC(中央銀行デジタル通貨)として採用しているウクライナ情勢の不安定化が背景にあるといえよう。詳細は2/25のレポートを参照されたい。
2/25のロシアの侵攻により、ウクライナ情勢が緊迫化してからも、価格の下落とは対照的に韓国国内のプレミアムは5%程度乗っており、決して韓国内の人気は衰えておらず、買い意欲につながる何らかの意図があるといえ、注目しておきたい。
XLMの買い意欲を支えている一つの要因として、ウクライナ国立銀行が、ロシアの侵攻による戒厳令下でも安定と流動性を維持できている点が挙げられるだろう(3/3 JETRO、3/4 日本経済新聞)。
また、ウクライナのCBDC採用に積極的な姿勢や、暗号資産での募金呼びかけ(Twitter)のように、政府の暗号資産への積極的な姿勢もまた、韓国国内の取引参加者に共感され、支持されているのかもしれない。
(3/7 午後11:00時点)
・銘柄別価格前日比(%)
社内データより作成
3/7の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は-4.36%、中央値は-4.14%、標準偏差は1.00%となった。
最小下落銘柄はXRP/JPYの-2.76%、最大下落銘柄はOMG/JPYの-5.84%。
最小下落銘柄のXRP/JPYは、一目均衡表の転換線(1時間足)付近でオープンし、雲の下に抜けるもボリンジャーバンド(-2σ)に阻まれた。その後、雲の上を抜ける上昇を見せたが、ボリンジャーバンド(+2σ)がレジスタンスラインとなったようだ。
最大下落銘柄のOMG/JPYは、一目均衡表の転換線(1時間足)上でオープンし、23時頃まで上昇下落を繰り返すも、雲の下で押し返され、午前1時から午前6時の5時間で約8%下落した。
・24時間 ボラティリティ(%)
社内データより作成
3/7の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は8.75%、中央値は8.74%、標準偏差は0.85%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はMONA/JPYで10.08%。
一方、最もボラティリティの低かった銘柄はXRP/JPYで6.86%となった。
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