イーサリアム(ETH)-1月の市況からみる今後の展望-
Daily Market Report 2022/2/24
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まず初めに、1月における暗号資産市場について振り返る。
yahoo!financeより当社作成
上図は、当社取扱い暗号資産について1月の安値記録日と前回その価格を下回った日(前回記録日)、そして、前回記録日から1月の安値記録日までの日数を記載したものである。
上図から読み取れるように、1月は市場の低迷により主要な暗号資産の価格は軒並み下落し、1年ぶりの安値を付けた銘柄も5銘柄存在し、時価総額1位を誇るBTCは1/24に185日ぶりに377万円と安値をつけた。
ETHについても1/24には約177日ぶりとなる安値25万円を記録し、昨年11月に付けた過去最高値54万円から50%以上値を落とす動きとなった。
この価格の下落については複数の要因が挙げられるが、その一つに米国の政策金利引き上げを織り込む動きが挙げられるだろう。
U.S. Department of the Treasury(アメリカ合衆国財務省)より当社作成
上図は米国10年債利回りを表したグラフである。
2021/12/14~12/15に開催されたFOMCにて、年に3回以上の利上げが行われるとの見方が強まった事により、暗号資産を含む高リスク資産からの資金の引き上げのムードが高まったといえるだろう。
さらに、2022/1/5にはFOMCの議事要旨が公開されると、事前に予想されていた以上に景気刺激策を縮小する可能性が判明し、多ければ7~8回の利上げが行われる可能性も予想された(1/20 Bloomberg)ことから、高リスク資産からの資金の流出が加速することとなった可能性が考えられる。
続いて、1月における暗号資産市場の下落要因として、ウクライナ情勢悪化懸念という地政学リスクの顕在化が挙げられるだろう。
U.S. Energy Information Administration(アメリカ合衆国エネルギー情報局)より当社作成
上図はWTI原油先物(期近限月)の価格推移を示したグラフである。
上図が示す通り、原油先物価格は新型コロナウイルスオミクロン変異株の流行もあり、2021/11に一旦は価格を大きく落としたが、12月になると原油価格は反発し、価格が上昇した。
これは、2021/12/2に開催されたOPECプラス(石油輸出国機構)による会合の直前に、オミクロン変異株は重症化確率が高くないことが判明し、産油国が石油の増産に応じる姿勢を見せなかった結果、原油不足が予測され、原油先物の価格は大きく上昇した(2022/1/5 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)事が理由の一つだ。
加えて、原油価格の高騰は、ロシアによるウクライナ進攻の可能性の高まりという情勢も理由の一つとする見方もあるようだ。
BP Satistical Review of World Energy 2021より当社作成
上図は英BP社が発行する年間レポートより作成した2020年の石油生産量を示したグラフである。
現在、OPECプラスに所属するロシアは石油生産量で世界3位であり、原油・石油製品価格に大きな影響を与える国といえるだろう。
このままウクライナとロシアの緊迫した関係が続くとなると、原油価格の上昇も長引き、1バレル100ドルに達するとの考えを示す主張も存在する(2022/2/3 Bloomberg)。
以上のポイントから、1月における暗号資産市場全体としては、米国の金利は市場が想定した以上に引き上げられる可能性も高く、原油価格上昇の見込みも高いことから、無理に高リスクな暗号資産への投資は控えられ、暗号資産市場全体の価格が下落したと考えられるだろう。
・ETHの今後の展望
前述の通り、1月における暗号資産市場の下落要因は今後の市場にも影響を与える見込みがあるが、ETHには好材料も多く、今後の展望について触れる。
Ethereum.orgより当社作成
まず、Ethereumブロックチェーンのコンセンサスレイヤー(本稿では旧称の「Ethereum2.0」という)への移行準備が着々と整っていることが挙げられる。
Ethereum2.0は現行のEthereumブロックチェーンにおいて課題であるガス代(手数料)の高騰、トランザクション、セキュリティ、マイニングにおけるCO2排出量等を改善することを目的としている複数のアップデートの総称である。
昨年2021/12/9頃に実施されたハードフォーク「Arrow Glacier」はEthereum2.0リリース前の最後のディフィカルティボム拡張とされており、仮にこのままの状況で開発が進んだ場合、2022/6頃にEthereum2.0の一環としてリリースされる「The Merge」アップデートによりPoS(プルーフ・オブ・ステーク)が導入されることとなる。
PoSの導入によって深刻化しているガス代やトランザクション問題は解決され、加えて現Ethereumブロックチェーンで運用されるPoW(プルーフ・オブ・ワーク)と比較すると99.95%もの電力を削減できる(出典:イーサリアム財団)とされており、CO2排出量の軽減にも絶大な効果をもたらすだろうといわれている。
2022/2現在、Ethereum2.0に向けて行われる「The Merge」アップデートの明確な日程は明かされていないが、6月中のアップデートに延期がなければETHにとってはこの上ない好材料となるだろう。
・過度な期待には注意が必要
Ethereum2.0がもたらす影響は大きいが、一方で過度な期待には注意が必要である。
Ethereum2.0への移行には課題が多く、スケジュールが後ろ倒しになり続けてきた経緯がある。「フェーズ0」と呼ばれる初期段階は予定より1年近くの遅れで実装され、本来2021年中に実装予定だったPoSについても計画は遅れ、未だ実装されていない。
また、来年以降に予定されているトランザクション問題を根本から解決する「Shard Chains」アップデートに関してもスケジュールが後ろ倒しになる可能性は否定できず、延期の発表が行われれば市場はネガティブに捉えるだろう。
さらには、前述した米国債利回りの上昇やウクライナ情勢等の地政学リスクも大きな懸念材料である。
ウクライナ情勢に至っては2022/2現在、原油価格の上昇のみならず、ウクライナ、ロシアの両国が世界的に大きなシェアを占める天然ガスや穀物等の価格も上昇している。
今後リスクオフムードが長続きし、投資先として債権や先物市場が大きな注目を浴びるとなると、当然、暗号資産市場全体から資産が流出し、ETHが控える好材料を打ち消してしまうことや、市場への反応が鈍くなる可能性も十分に考えられるだろう。
(2/22 午後7:00時点)
・銘柄別価格前日比 (%)
社内データより作成
2/23の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は0.23%、中央値は0.16%、標準偏差は1.73%となった。
最大上昇銘柄はMONA/JPYの5.11%、最大下落銘柄はENJ/JPYの2.44%。
最大上昇銘柄のMONA/JPYは、前回安値の101円ラインにレジスタンスされたあと、反発上昇している。
最大下落銘柄のENJ/JPYは、前回安値の161円ラインを下抜け、戻り目をつけたあとレジスタンスされ、再度下落したような印象だ。
・24時間 ボラティリティ (%)
社内データより作成
2/23の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は7.92%、中央値は8.35%、標準偏差は1.78%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はQTUM/JPYで12.41%。一方、最もボラティリティの低かった銘柄はBTC/JPYで5.60%となった。
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