暗号資産時価総額120兆円を喪失。悲愴論広がる中、注目される12/6週。BTC(ビットコイン)の明るい材料は?

Daily Market Report 2021/12/09

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BTC(ビットコイン)、年末ラリーは来るのか!?

Bloombergより当社作成
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上図は2021/1/1から現在までの暗号資産時価総額とBTC/USDの価格を比較したグラフである。

BTC/USDは、11/10の取引で過去最高値を更新し、69,000ドルまで上昇。暗号資産時価総額も、11/10の取引で一時3.0兆ドルまで増加し、過去最高値を更新した。

年末にかけて価格が上昇していくアノマリーを示す、年末ラリーを想起させる価格上昇であったが、12月に入り暗雲が漂う展開をみせることとなる。

12/4の取引で、13時から14時のニューヨーク市場、欧州市場、東京市場が休日で流動性の低いアジア時間のタイミングで暗号資産マーケットは下落。BTC(ビットコイン)は一時20%を超える下落率となり、3.0兆ドルまで増加した暗号資産時価総額も一時1.88兆ドルまで急落した。

2021年の中で、中国が行った暗号資産の預け入れ禁止や取引の禁止、そして中国国内でマイニングを行うことへの締め付けが強化された5月は、暗号資産時価総額が当時の最高値から50%を超える下落となったが、今回の急落は、5月に次ぐ30%超の下落率となっている。

今回の調整で失った暗号資産時価総額120兆円は、現在のBTCの時価総額やTesla社の時価総額に匹敵するが、それだけ暗号資産市場のすそ野の広がりを感じさせる事象であったとも言えるだろう。

BTCにフォーカスしてみると、年末に向けてBTCは再度過去最高値を超えられるのか、それとも強気相場の息切れとなるのか。

以下の指標から、示唆される相場展開を確認したい。

・期待インフレ率
ハッシュレート
フィボナッチ・タイムゾーン

BTC vs 米期待インフレ率

Bloombergより当社作成

上図は2021/1/1から現在までのBTC/USD価格と、米国の期待インフレ率の比較をしたグラフである。

暗号資産の代表格であるBTCが高騰した一つの要因として、コロナショックをトリガーとした過去に例をみない金融緩和が挙げられる。

グラフから、期待インフレ率とBTCは右肩上がりに上昇しており、中央銀行による増大した資金供給がBTCとインフレ率を共に押し上げたことが考えられる。

金融緩和によるインフレ回避を目的として、インフレヘッジ資産としてのBTCに注目が集まっていたが、11月に期待インフレ率が2.76%でピークを迎えて以降、期待インフレ率は低下傾向で推移しており、同時にBTCの価格も下げていることがわかる。

期待インフレ率上昇に伴い、BTCも上昇した2021年であったが、コロナウイルス変異型オミクロン株が、WHO(世界保健機構)により最も警戒レベルの高い変異型に指定された(11/27 日経新聞)ことにより世界株式市場の同時株安が招かれ、暗号資産市場も下落した。

加えて、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長がテーパリング(量的緩和縮小)の加速を示唆した(12/6 Bloomberg)ことを受け、コロナショック以降の過剰流動性相場が終焉に向かうとの見方による警戒心が、株式市場を始めとしたマーケットのボラティリティを高め、暗号資産市場にも影響を及ぼすこととなった。

今後の金融政策の行く末は、12/14~15に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)で意向が示されることとなるが、期待インフレ率の低下ぶりをみると、止まらないインフレリスクに対して本腰を上げることを市場関係者は警戒していると思われる。

2021年のインフレヘッジ資産として価値を高めてきた暗号資産が今後も成長を続けるためには、別角度の材料が必要なのかもしれない。

別角度の指標として、法定通貨別でのBTCの価値の変化を挙げたい。

BTC/USD vs BTC/TRY

Bloombergより当社作成

上図は2021/1/1から現在のBTC/USD価格とBTC/TRY(トルコリラ)の比較をしたグラフである。

トルコのエルドアン大統領は、インフレ抑制のために政策金利の引き下げを実行することを公言(11/17 Bloomberg)しており、他諸国とは異なるアプローチでの金融政策の実施により、TRY/USDの価格は年初来から40%を超える下落率となっている。

トルコリラの動きはインフレ懸念の上昇による米国利上げ観測から、堅調なドルに対峙する形で、新興国の通貨が売られる象徴的な動きとして捉えておく必要があるかもしれない。

グラフから、BTC/USDは価格帯が9月の価格水準まで下落しているのに対して、BTC/TRYは12/4の下落の影響が軽微で現在も最高値近辺で推移していることがわかる。

BTC/TRYの価値が高まっている背景には、ドルを除く法定通貨の価値棄損を危惧する中で、トルコリラの所有からBTCへ退避する流れが一部あったかもしれない。

コロナショック以降の世界は、際限のない法定通貨発行により資産インフレを生み出した。

金融政策の転換で、コロナショック前の経済に巻き戻すことができるのかは未知数であるが、法定通貨の信認低下圧力は強くなろうか。

この場合、アフターコロナ禍を見据えても、BTCは法定通貨の代替案としての価値を見出す序章にいる可能性もあると言えるかもしれない。

BTC vs ハッシュレート

Bloombergより当社作成

上図は2021/1/1から現在のBTC/USD価格とハッシュレートのグラフである。

5月に中国が行った暗号資産の規制強化により、中国金融機関の暗号資産の預け入れ禁止や取引の禁止、そして中国国内でマイニングを行うことへの締め付けが強化されたことで、マイニング業者は撤退を余儀なくされ、一部は海外移転など戦略の転換を強制される事態となった。

このような背景から、一時は85EH/sまで落ち込んでいたハッシュレートであるが、現在は165EH/sまで回復していることがわかる。

今回の調整局面において、BTC相場が落ち込む中でも、ハッシュレートの回復につながっている傾向は現在も継続しているようだ。

5月の水準(180EH/s)には至っていないものの、今後も中国から米国へのマイニング業者の移転トレンドが持続し、ハッシュレートの回復が進むならば、長期的にはBTCにポジティブな環境となる可能性もあるだろう。

BTC vs フィボナッチ・タイムゾーン

Tradingview(https://jp.tradingview.com/)より当社作成

上図は2021/1/1から現在のBTC/USDの週足チャートである。

BTC/USD価格64,899ドル(横白線)を付けた4/12週を起点とし、1、2、3、5、8、13、21、34、55週目にフィボナッチ・タイムゾーン(縦橙色線)を示した図となる。

多くのテクニカル分析は、チャートの縦軸(価格)を予測する手法として有名だが、フィボナッチ・タイムゾーンは、フィボナッチ数列から時間というチャートの横軸(時間)に焦点を当て、時間の経過によるトレンドの状態変化を見極め、トレンドの転換点を把握することを目的とした手法である。

また、縦軸(価格)を予測するために、7/19週の安値28,950ドル(横白線)と9/6週の高値、そして上昇の押し目となった9/20週の安値(0.00% 横青線)を結ぶフィボナッチ・エクスパンションを引いた図となる。

上図から、

・過去最高値からフィボナッチ・タイムゾーン5週目ラインで下落相場の一番底を付ける
・フィボナッチ・タイムゾーン8週目ラインで下落相場の反発上昇が一巡
・フィボナッチ・タイムゾーン13週目以降、5週間に渡る上昇相場を形成
・フィボナッチ・タイムゾーン21週目で相場は反転するも再度過去最高値へ上昇

となっており、フィボナッチ・タイムゾーンがトレンドの転換点となっていたことがわかる。

週足単位でみると、次の転換点が予測される週は、高値である価格64,899ドルを付けてから34週目にあたるラインの「12/6週」となる。

・上昇パターン

現在の11/8週で過去最高値を更新して以降、ローソク足は陰線を連続して形成しており、上値の重い展開となっている。

現在、フィボナッチ・エクスパンションの38.2%で踏みとどまっている状況であるが、前述のフィボナッチ・タイムゾーン34ライン(12/6週)で転換する可能性がある。

この場合は上昇方向へ向かう動きと言えることから、現在の51,000ドルの価格帯は押し目を拾う良い機会と言えるかもしれない。

次の転換点は、フィボナッチ・タイムゾーン55ライン(2022/5/2週)に位置しており、12月から来年5月までの長期の上昇トレンドが継続することが考えられる。

その場合、フィボナッチ・エクスパンション161.8%ラインである77,000ドルの大台が視野に入るであろう。

・下落パターン

チャートを確認すると、11/8週以降、3週連続してローソク足陰線を形成しており、依然として弱気派優位での相場展開は続いていることは事実であろう。

暗号資産は、新型コロナウイルス変異株の影響で急落する展開をみせてきただけでなく、今後の金融政策の動向に左右され、ボラティリティが高まる状況下にある。

フィボナッチ・タイムゾーン34ライン(12/6週)以降も調整が続く場合、フィボナッチ・エクスパンション38.2%を下抜けし、23.6%の45,500ドルから9月の上昇幅をすべて戻し、再度40,000ドルの価格帯へ巻き戻すことが警戒される局面であるといえるだろう。

12/6週が年末ラリーの始まりか、調整の継続かの転換点になることが想定されるため、注目される週となりそうだ。

(12/8 午後10:00時点)

銘柄別価格前日比 (%)

社内データより作成

12/8の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。

平均値は2.06%、中央値は1.80%、標準偏差は2.35%となった。

最大上昇銘柄はXRP/JPY5.70%、最大下落銘柄はBAT/JPY-3.19%

最大上昇銘柄のXRP/JPYは、午前中は下落し90.5円の安値を付けたが、そこから深夜帯にかけて100円台まで10%前後の上昇を記録した。

最大下落銘柄のBAT/JPYは、中期下落相場の最中にあり、午後8時に下髭の陽線で138円の安値を付けた後、9日朝方にかけては大きく反発上昇した。

24時間 ボラティリティ (%)

社内データより作成

12/8の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。

平均値は8.78%、中央値は8.53%、標準偏差は1.94%となった。

最もボラティリティが高かった銘柄はXRP/JPY12.83%。一方、最もボラティリティの低かった銘柄はMONA/JPY5.95%となった。

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2021-12-09
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