BTC(ビットコイン)、インフレヘッジ資産の時代に終止符か。金利とアノマリーから転換点をチェック
Daily Market Report 2021/09/30
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・フィボナッチ・タイムゾーン34週目まで弱気相場継続か!?
Tradingview(https://jp.tradingview.com/)より当社作成
上図は直近一年(2020年9月から現在)のBTC/USDの週足チャートである。
BTC(ビットコイン)の過去最高値である価格64,899ドル(図白丸印)を付けた4/12の週を起点とし、1、2、3、5、8、13、21、34週目にフィボナッチ・タイムゾーン(縦橙色線)を示した図となる。
多くのテクニカル分析は、チャートの縦軸(価格)を予測する手法として有名だが、フィボナッチ・タイムゾーンは、フィボナッチ数列から時間というチャートの横軸(時間)に焦点を当て、時間の経過によるトレンドの状態変化を見極め、トレンドの転換点を把握することを目的とした手法である。
上図から、
- 過去最高値からフィボナッチ・タイムゾーン5週目ラインで下落相場の一番底を付ける
- フィボナッチ・タイムゾーン8週目ラインで下落相場の反発上昇が一巡
- フィボナッチ・タイムゾーン13週目以降、5週間に渡る上昇相場を形成
- フィボナッチ・タイムゾーン21週目で相場は反転し下落相場へ突入
ということが読み取れ、フィボナッチ・タイムゾーンで示したラインが相場の転換点と価格変動が期待できるポイントであることがわかる。
フィボナッチ・タイムゾーン21週目には、中南米エルサルバドルによるビットコイン法(Ley Bitcoin)の施行が行われたが、弱気筋にとって売りの格好の材料となり、52,945ドル(白色横線)で相場は下落へ反転する展開となった。
さらに直近9/24には、中国人民銀行をはじめとする、中国国内の計10機関が暗号資産に関係する全ての業務を違法行為とみなす、と表明したことにより、下落速度は加速。現在は直近高値である高値52,945ドルから20%超まで値を下げる展開をみせている。
中国からの暗号資産に対する警告や取り締まりは過去にも2013年、2017年、そして2021年と4年周期で発せられてきており、長期的な悪材料とはなりえないとの声も聞かれる。
しかしながら、2021年5月の国務院による金融安定発展委員会によってマイニングと取引の禁止という声明が出された状況とは異なり、今回は最高人民検察院といった司法機関も加わることで、中国は違反した法人、個人に対して刑事罰も辞さない姿勢を示しており、BTC(ビットコイン)の相場は弱気派が大勢である状況が継続する地合いであるといえそうだ。
週足単位でみると、次の転換点が予測される週は、過去最高値である価格64,899ドルを付けてから34週目にあたるラインの「12/6の週」となる。
「12/6の週」まで下落相場は続くのか、別角度から暗号資産の動向を確認していきたい。
・暗号資産時価総額 vs 10年債券利回り
Tradingview(https://jp.tradingview.com/)より当社作成
上図は直近一年(2021年1月1日から現在)の暗号資産時価総額と米国の10年債券利回りの比較をしたグラフである。
図を見ると、2021年8月頃まで暗号資産時価総額と10年債券利回りの関係は、
- 米国金利の上昇→暗号資産時価総額の増加
- 米国金利の下落→暗号資産時価総額の下落
といったように概ね順相関の関係を示してきたことがわかる。
これは、コロナショック後に始まった金融緩和によるインフレを回避するインフレヘッジを目的として、BTC(ビットコイン)をはじめとした暗号資産に注目が集まり、マネーが流入した結果であると考えられる。
しかし9月に入り、順相関であった10年債券利回りとの関係には、
- 米金利上昇→暗号資産時価総額の下落
といった変化が生じている。これは、市場が金融緩和によるインフレのヘッジとしての選好ではなく、金融政策の正常化を視野に入れた、「テーパリング」と「利上げの開始」が意識され、上値の重い展開が継続している可能性がある。
9/21、22に行われたFOMC(連邦公開市場委員会)によってマーケットはタカ派色を強め、9/28のマーケットではテーパリング(量的緩和縮小)観測をきっかけに、国債利回りは全年限で上昇した。10年債券利回りも一時1.55%まで急上昇する場面がみられ、米国株式市場では、ダウ工業株30種平均は今年3番目の下落率となる569ドル安まで下げる相場となった。
上記のようなリスク回避モードが漂う中、10年債券利回りは急騰し、対してインフレヘッジ資産としての暗号資産は、暗号資産時価総額は上値の重い展開が続いている。
また、BTC(ビットコイン)をはじめとする暗号資産のインフレヘッジ資産としての価値が低くなった根拠として、インフレ市況に強い商品相場の動向をみていきたい。
・CRB指数 vs 米国10年債券利回り
Tradingview(https://jp.tradingview.com/)より当社作成
上図は直近一年(2021年1月1日から現在)のCRB指数と米国の10年債券利回りの比較をしたグラフである。(CRB指数とは、原油や金といった商品19品目で構成され、物価や景気の判断材料として使用される指数となる。)
暗号資産時価総額とは異なり、CRB指数は上昇基調を崩すことなく推移していることがわかる。
今週には原油相場が2018年ぶりに80ドルまで上昇、その他のエネルギー価格や食品相場も高騰しており、CRB指数はインフレの足音が近づきつつある状況を織り込んだ推移をしている。
高インフレ時に選好されるヘッジ資産としての商品相場が上昇基調を続ける中で、暗号資産時価総額が停滞している状況をみると、やはり暗号資産のインフレヘッジ資産としての側面はやや弱まっているように思える。
・BTC(ビットコイン)vs 米国10年実質金利
Tradingview(https://jp.tradingview.com/)より当社作成
上図は直近一年(2020年1月1日から現在)のBTC(ビットコイン)と米国の10年実質金利の比較をしたグラフである(実質金利は、10年債券利回りをBEI(市場の期待インフレ率)で引いて算出したものである)。
通例として、実質金利がプラスの場合は金融市場が引き締め状態であり、マイナスの場合は金融市場が緩和的であることを示し、リスク資産の売買判断を行う上での目安となる指標である。
上記で示した通り、BTC(ビットコイン)のインフレヘッジ資産としての性質が低下している以上、今後のBTC(ビットコイン)の動向はリスク資産の選好度合いを確認できる実質金利と逆相関する動きをみせる事が想定される。
直近では実質金利はマイナスであるものの、そのマイナス幅を縮小させており、同時にBTC(ビットコイン)も下落幅を加速させていることがわかる。
金融市場が緩和方向から引き締め方向へ舵をきったとの思惑から、当面のBTC(ビットコイン)は上値の重い展開が続く可能性がある。
・BTC(ビットコイン)10月アノマリーはポジティブ
Bloombergより当社作成
上図は2016年から2021年9月29日までのBTC(ビットコイン)の月別騰落率を可視化したヒートマップである。
月別騰落率を確認すると、9月は直近5年間、2016年以外はマイナスとなっており、2021年の相場でもアノマリー通りに弱含んだ推移をしてきたことがわかる。
金融引き締めの思惑やチャイナリスクを受けて、BTC(ビットコイン)は岐路に立たされている状態といえるが、10月の月別騰落率は力強い上昇推移をみせてきたことがわかる。
世界中の国々が金融緩和を実施するに至り、法定通貨の地位低下を危惧する声が聞かれる。
米国は10/18までの債務上限の引き上げを実施しなければ資金を使い果たす、実質のデフォルト(債務不履行)に至る可能性があり、共和党は反対姿勢をとっている。イエレン米財務長官は、債務上限の引き上げに失敗すればドルの地位が傷つくと警告を発しており、時代は通貨の信認問題に発展する段階に達してきたといえるであろう。
信認問題をBTC(ビットコイン)が解決するのかは未知数ではあるが、11月にはBTC(ビットコイン)にとって2回目の大型アップデートとなるTaproot(タップルート)という好材料が控えている(Daily Market Report 2021/08/03「BTC(ビットコイン)、ESGマネーと大型アップデートTaproot(タップルート)は救いとなるか」参照)。
これまでもBTC(ビットコイン)は多くの弱気局面に直面しながらも、誕生から日数を重ねる毎に過去最高値を更新してきたことは事実であり、段階を踏まえながら2021年には一国の法定通貨になるまでに至った。
今回も弱気局面も乗り越え、再度高値更新を試すのか注目される。
(9/29 午後8:00時点)
・銘柄別価格前日比 (%)
社内データより作成
9/29の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は0.52%、中央値は-0.71%、標準偏差は3.51%となった。
最大上昇銘柄はOMG/JPYの11.67%、最大下落銘柄はETC/JPYの-1.66%。
最大上昇銘柄のOMG/JPYは+11%超の独歩高。特段明確な材料は見られないが、OMG/JPYは8月から一度も40日移動平均線を下回っておらず、他の暗号資産が失速する中でも着実に下値を切り上げている。
最大下落銘柄のETC/JPYは3日連続の陰線。9月半ばより、10日移動平均線に上値を抑えられているが、9/21以降は下髭を連発するなど、5,000円前後の価格帯での底堅さも意識されているようだ。
・24時間 ボラティリティ (%)
社内データより作成
9/29の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は7.84%、中央値は7.04%、標準偏差は3.94%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はOMG/JPYで18.91%。一方、最もボラティリティの低かった銘柄はMONA/JPYで3.42%となった。
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