ETH(イーサリアム)、ハッシュレートとシステムアップデートは何を示唆するのか

Daily Market Report 2021/09/17

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大型アップデート下で上昇するハッシュレート

ETHハッシュレート: https://etherscan.io/より、ETH価格:当社終値仲値、当社作成

上図は、過去1年間(期間2020/9/1~2021/9/15)のETHハッシュレート及びETH/JPY価格推移を表している。

ハッシュレートは2020年後半から2021年年初にかけて堅調に推移した後、5/20に当時の過去最高値を記録した。その後は中国のマイニング規制強化の影響で低下する流れとなった。

その流れを引き継ぎ、1ヶ月ほど下落基調となった後に6/26に底値をつけ、再度上昇基調へと転じた。8/25には再び最高値を更新し、現在に至るまで堅調な上昇が続いている。

ハッシュレートと価格には一定の正の相関関係があり、ハッシュレートがピークを付けた5/3にはETH/JPY = 36万円を記録した。その後、持続的なハッシュレートの上昇を確認しながら、ETH/JPYの価格は上値追いが継続するも、ハッシュレートがピークアウトすると、ETH/JPYの価格も後追いする形で下落に転じた。

しかし、ハッシュレートは6/26に底値をつけて、再度の上昇転換となった。ETH/JPY価格も、ハッシュレートの上昇傾向を確認するかのように、7/20にダブルボトムをつける形で遅れて上昇転換を示すこととなった。

現在は1ETH = 40万円前後で推移しており、5月高値の90%ほどの価格帯に位置している。

以下において、ハッシュレートに影響する市場環境の整理と、今後のETH/JPY価格のシナリオついて検討を行う。

ETH2.0へのシステムアップデートの”遅延”とNFT市場がマイナー参加を後押し

PoWからPoSへの移行が進まない現状
イーサリアムネットワークでのスケーラビリティ問題等を解決するため、2020/12からイーサリアム改善提案(ETH2.0)に伴う大掛かりなシステムアップデートが段階的に進行中である。

そして、このETH2.0には枝分かれした複数のフェーズがある。その一つに、マイニング方法を、マイナー同士が計算能力を競うPoWから、ETH保有量に応じてユーザーが取引認証の権限を持つPoSへと変化させるプロジェクトがある。

このPoSへの移行は、マイナーの報酬消滅を意味しているが、PoSへの本格的な移行はあまり進んでいない(下図参照)。

PoSへの移行は開発者の間で2015年から提案されており、マイニング関連企業からはそれを懸念する声もあったが、実際にはその想定より”遅延”しているのが事実である。

また、ETH2.0への段階的なフェーズの一つとして、PoSへの移行を本格的に促すシステム「difficulty bomb(※)」の実装が今年12月に導入されると公式に発表されている。
(※)difficulty bombとは、PoSへの移行のため、PoWを実質的に無効化するため、マイニング難易度を段階的に引き上げていく仕組み

https://cryptoquant.comより当社作成

NFT市場の恩恵

https://www.theblockcrypto.comより当社作成

上図は、過去30日間にgas代(※)を最も多く消費した上位5プラットフォームを表している。
(※)gas代とは、イーサリアムネットワーク内での取引のためのトランザクションの承認・記録を行う際に、Blockの生成処理を行う掘削するコストであり、それらはマイナーに支払われる仕組みになっている。

赤色で表しているのは、NFTマーケット関連のプラットフォームである。

OpenSea一つとっても過去30日間に、35,000ETHがgas代として使用されており、NFT市場がgas代の消費に大きく寄与していることが分かる。

これらの大型プラットフォームからの収益はマイニングを行うマイナーの報酬源の1つとなっている。

また、億円単位の高額取引も珍しくないNFTにおいて、NFT取引ユーザーはその取引を迅速に実行させるため、マイナーに対してプラスアルファの高額な報酬を支払っているケースがあり、それがマイナーの報酬増加の一因ともなっているようだ。

イーサリアムネットワークは8/4のシステムアップデート(London)により、ユーザーが支払った手数料から、マイニングを行ったマイナーへの報酬割合が減額される仕組みに変更されているが、マイナー報酬は反対に増加しており、NFT市場がマイナーへのマイニング報酬に与えている影響は決して小さくないと言えるだろう。

では、今後のETH/JPYの行方はどのようになるだろうか。

ETH/JPY 日足 Bidチャート(当社取引ツールより作成)
ETH(イーサリアム)のチャート・価格情報はこちら

上図は、4/1を起点とするETH/JPYの日足チャートである。

日足チャート上ではトレンド判断に用いられるオシレーター系のテクニカル指標からは明確なトレンドは見出しづらい。

そこで、今後のETH/JPYシナリオを前述したファンダメンタルズを踏まえて整理する。

<シナリオ1>:上昇シナリオの場合

上昇シナリオの場合、上値目処は43.6万円(黄線)となる可能性がある。

上昇シナリオにおいては、マイニングによる高水準な報酬が引き続き期待され、それがETH/JPYにも好影響を与え続ける展開を想定する。

ハッシュレートとETH/JPYが完全に連動しているという訳ではないが、一定程度の相関関係を保ちながら、ETH2.0へのアップデートによるPoWからPoSへの移行が緩慢となる状況が継続するのであれば、ETHのハッシュレートに連れ高する形で、価格上昇へ寄与する可能性も考えられる。

上昇となれば、まずは9/3の高値43万円が視野に入ってくるだろう。また、この価格帯は4,000ドル(約44万円)というドル建て価格での心理的節目でもあるため、価格達成による一時的な売り圧力の増加には警戒しておく必要があるかもしれない。

引き続き、8/4のシステムアップデート以降にマイナーの報酬増額の主要因となったNFT市場の活性化が継続するならば、上図青線のような上昇トレンドが継続する可能性がある。

トレンドラインに沿った上昇が継続すれば、5月に付けた史上最高値である47万円を上回り、更なる高値追求も視野に入るかもしれない。

<シナリオ2>:下落の場合

明確なETH/JPYの下落トレンドは見受けられないが、小幅下落となれば上図白線部分で落ち着く展開が一つ考えられる。ここは、8月に揉み合いをしていた32.5万円~36.5万円のレンジである。

このレンジを下抜けるような動きとなった場合、レンジ下限の32.5万円あたりが、サポートからレジスタンスに変化し、下降トレンド入りを警戒するべきかもしれない。

また、12月に予定しているアップデート(difficulty bomb)が延期などなく無事に実装されることとなれば、それがハッシュレートの下落圧力となる可能性には注意が必要だ。

6月中旬以降は、概ねハッシュレートとETH/JPYはともに上昇する正の相関が続いてきたわけであるが、ハッシュレートのピークアウトによるETH/JPYの調整の可能性には留意しておきたい。

ハッシュレートがピークアウトした前回の動きを参考とするならば、下落に転じた5/20から5/30までのETH/JPY価格のレンジが目安となるだろう。この期間においては、20万円近辺で一度サポートされており、同様の値動きを踏襲するシナリオを想定すると、20万円~23万円を目安とする前回のサポートラインへの後退も見えてきそうだ。

(9/16午後8:00時点)

銘柄別価格前日比 (%)

社内データより作成

9/16の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。

平均値は-1.42%、中央値は-1.49%、標準偏差は0.90%となった。

最大上昇銘柄はXEM/JPY0.21%、最大下落銘柄はXRP/JPY-2.86%

最大上昇銘柄のXEM/JPYは、3日連続小幅続伸。値動きに乏しく、19円前後の狭い値幅で揉み合う展開が続いた。

最大下落銘柄のXRP/JPYは、早朝から軟調に推移。一時121円をつけたものの、その後はジリジリと下げ、午後10時頃と17日午前5時頃に一段と下落。120円を割り、117円台と9/14の終値に近い価格となった。

24時間 ボラティリティ (%)

社内データより作成

9/16の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。

平均値は5.40%、中央値は5.28%、標準偏差は1.31%となった。

最もボラティリティが高かった銘柄はOMG/JPY8.13%。一方、最もボラティリティの低かった銘柄はBTC/JPY2.80%となった。

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2021-09-17
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