ジャクソンホール議長講演×BCH(ビットコインキャッシュ) ~テーパリングの明言先送りで波及サイクル転換となるか~

Daily Market Report 2021/08/30

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ジャクソンホールが上昇転換へのきっかけ

BCH/JPY 1時間足 Bidチャート(8/22 午前0時~8/29 午後8時、当社取引ツールより作成)
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上図はBCH/JPYの1時間足チャートである。

BCH/JPYは、8/24から8/26にかけて一目均衡表の雲を下抜け、下落トレンドへの展開を伺わせるような動きをした。

その後、8/27昼頃には65,000円の底値を付けると下値模索方向から一転し、同日23時には雲の中まで買い戻される流れとなり、上昇方向が継続し同日中に雲を上抜けるまで回復した。

足元では、雲をサポートとしながらレンジを形成後、明確に上放れをする展開となっている。

転換のきっかけとなった要因として、8/27の23時から23時30分にかけて(上図黄色破線)、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長のオンライン講演(「パウエル議長、テーパリングを年内に開始し得る-利上げは急がず」(8/27 Bloomberg))があげられる。

講演内容は、米国中央銀行が実施している金融緩和政策のうちの債券購入プログラムについて、購入ペースを縮小する”テーパリング”を、年内に開始する可能性に言及した。一方で、テーパリング開始日程やテーパリングに要する期間の見通しを“明言”することは見送られた。

この、「明言先送り」が、金融緩和政策の縮小(正常化)ペースの緩慢化を示唆する内容となったことから、暗号資産の価格上昇要因として、BCH/JPYは一時74,000円台まで上昇した。

「未曽有の金融緩和政策」によるポジションの巻き戻しに対する警戒感は薄れたようだ。

テーパリングの明言先送り:波及サイクル再拡大なるか

FRBバランスシート(2020/7/1~2021/8/25週実績値FREDより、2021/8/25以降見通し当社作成)
BCH/JPY(2020/7/1~2021/8/25週データ当社終値仲値)

上図は、FRBバランスシートの推移(上図灰色面)およびBCH/JPYの価格推移(上図青色線)、ならびに今後の見通し(上図黄色点線枠)を重ねたものである。

金融政策における緩和経路の波及効果を検証する際、一般的にはリスク度合いの低い資産・商品から価格上昇効果が浸透した後、リスク度合いの高い資産・商品の価格上昇効果へと波及する。

そのため、資産価格上昇における波及時期は、リスク度合いの高い資産・商品ほど遅れて現れると言われている。

一方で、資産価格下落における波及時期の観点では、金融政策の緩和経路から縮小経路への“巻き戻し”となることから、一般的にリスク度合いの高い資産・商品から先行して影響を受けることとなる。

暗号資産のリスク度合いは、先進国債券や先進国大型株式といった伝統資産と比較し、相対的にリスク度合いの高い資産と言え、取り分け暗号資産市場におけるBCHのリスク度合いは、BTCやETHといった基軸銘柄のリスク度合いと比較し、相対的に高い銘柄と言える。

そのため、BCHの資産価格は、価格上昇における波及時期が相対的に遅く、価格下落における波及時期が相対的に早く現れると考えることが出来るだろう。

また、FRBのバランスシートは、米国中央銀行が実施している金融緩和政策のうち、債券購入プログラムを行った結果、新たな購入債券の実績を累計しバランスシートへ加算したものから、これまで購入した債券が満期を迎えて償還され、バランスシート外へ減算した結果である。

したがって、FRBのバランスシートは、米国中央銀行が行っている金融緩和政策の進捗度合いを確認する指標として、市場参加者に利用されている。

以上から、FRBバランスシートの推移とBCH/JPYの価格推移を並べることにより、金融政策の緩和進捗状況と、緩和経路を通じたBCH/JPYへの波及効果を確認してみることとした。

これまでの推移は、以下のとおりとなる。

① 波及準備期:2020/3/23米連邦公開市場委員会(以下、FOMC)にて、中央銀行が債券購入プログラムに加えて米国債券の無制限購入を表明し(2020/3/23 Bloomberg)、実際にその効果が現れ始めたのが2020年後半となる7月以降となった。

FRBバランスシートの拡大が開始され7兆米ドルを超えた一方で、BCH/JPYは保ち合いの域を出ず波及の恩恵を受ける前の“準備期間”であったと言える。

② 波及拡大期:2020年10月以降は、債券購入プログラムが進捗しFRBバランスシートが順調に拡大を続ける中、BCH/JPY価格がようやく連れ高となり、価格上昇方向へのトレンドが発生した。

上記にて記載した資産価格上昇の波及効果が、相対的にリスク度合いの高いBCHへと拡大した“波及拡大期間”であったと言える。

③ 一服期:2021年4月までFRBバランスシートの拡大とともに価格上昇したBCH/JPYであったが、2021/4/27~28開催のFOMCにて初めてテーパリングについての議論が言及されたことが、2021/5/19公表の4月FOMC議事要旨で確認できる。(5/20 Bloomberg)

前述のとおり、相対的にリスク度合いの高い資産と言えるBCH/JPYは直後から大幅な価格下落という形で影響を受けた。

また、この期間から金融政策の段階は、現状認識を金融政策の緩和拡大期間から“テーパリング準備期間”へと段階変更したことを、米国中央銀行よりアナウンスされたと捉えることが可能である。

では、ジャクソンホールの議長講演においてテーパリングの明言先送りとなったことを受け、BCHが今後どのようなシナリオとなるか、以下において整理する。

<シナリオ1_波及効果の一服継続>:価格下落方向へ

シナリオ1は、金融政策の現状認識“テーパリング準備期間”であることが継続し、足元の波及効果「③一服」の延長線となる「③’一服継続(青点線)」シナリオである。

テーパリングの明言先送りは、金融政策の現状認識を何ら変えることなく、引き続き“テーパリング準備期間”が継続することに伴う波及効果の「③一服」が延長し、「③’ 一服継続」へ引き継がれるシナリオとなる

この場合は、足元のBCHJPY価格がレンジを形成しながら、価格下落方向への値動きが継続する想定となるであろう

レンジを形成しながらであるため、緩やかな価格下落方向への動きとなろうが、当面の下値目途は、ジャクソンホールの議長講演前価格65,000円近辺となろうか。

<シナリオ2_波及効果の再拡大>:緩和効果の再認識で連れ高へ

次にシナリオ2は、金融政策の現状認識“テーパリング準備期間”から“金融緩和の拡大段階”へと再認識するアナウンス効果を発揮し、足元の波及効果「③一服」から「④波及再拡大」へ波及サイクルが転換するシナリオである。

パウエル議長はテーパリングの明言先送りに際し、テーパリングの要件と閾値、利上げに関するさらに厳しい指針について述べ、経済状況のデータによって、テーパリングが実現し、利回り曲線はスティープ化する可能性について言及した。

このことから、逆に言うと経済状況が低迷した場合は、テーパリングの開始が遅れ、金融政策の現状維持が長引くことを想定したシナリオとなる。

金融政策の “テーパリング準備期間”から“金融緩和の継続”となり、足元の波及効果「③一服」から「④波及再拡大」へ波及サイクルが転換する期間が始まることとなる。

この場合は、FRBバランスシートの拡大見通しとともに、BCH/JPY価格が連れ高する動きが再開することが想定できる。

直近で確認できる上値目途として、②波及拡大期で最初の上値となった8万円近辺と見ることが可能であろうか。

(8/29午後8:00時点)

銘柄別価格前日比 (%)

社内データより作成

8/29の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。

平均値は1.01%、中央値は0.20%、標準偏差は1.86%となった。

最大上昇銘柄はBCH/JPY5.17%、最大下落銘柄はBAT/JPY-0.60%

休日の暗号資産市場はまちまち。

先週末に開催されたジャクソンホール会議(シンポジウム会議)で、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は「テーパリングを年内に開始し得る―利上げは急がず」と慎重な発言をした(8/27 Bloomberg)ことで、米国債や暗号資産関連株含む米株、ゴールドなどが上昇、ドル(ドルインデックス)が下落した。

暗号資産市場はCMEビットコイン先物のラストレート(=49,045ドル)で頭打ち。

8/29にバイデン氏が「アフガンで今後24―36時間のうちに新たな攻撃受ける公算大きい」と情報を受け取った(8/29 Bloomberg)ことに加え、在アフガン米大使館が米国民に首都カブール空港周辺の退去勧告の声明を出した(8/29 Bloomberg)ことから、アフガン情勢を巡る地政学的リスクによる有事買いと思われる上昇も見られたが、ステーブルコインへのリスク回避的な赴きやTezos(テゾス)などのNFT関連銘柄、BTCドミナンス低水準下でのアルト等を物色される展開であった。

最大上昇銘柄のBCH/JPYは、68,000円(日足25日移動平均線付近)でオープンしてから一気に上昇。74,800円(日足25日移動平均線+1σ、8/23高値付近)で引ける形。

最大下落銘柄のBAT/JPYは、87円(日足一目均衡表・転換線)を上限目途下落。84円(ピボットポイント・S1付近)でしっかり支えられた。

24時間 ボラティリティ (%)

社内データより作成

8/29の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。

平均値は5.18%、中央値は4.44%、標準偏差は2.17%となった。

最もボラティリティが高かった銘柄はBCH/JPY9.7%。一方、最もボラティリティの低かった銘柄はMONA/JPY2.5%となった。

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2021-08-30
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