ETH(イーサリアム)、先行する指標は?
Daily Market Report 2021/06/22
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5月以降、イーロンマスクのマイニングを懸念するツイート(5/13)に始まり、中国が、国内の暗号資産取引(6/21 CoinPost)やマイニングに対する取り締まりを強化している報道(6/21 REUTERS)等も散見され、ビットコインをはじめ暗号資産市場全体の下落に拍車をかけている。
マイニングにおいて、中国は主要なプレイヤーであり、その動向は暗号資産の価格に影響を与えると考えられる。また、ハッシュレートも過去のデータからは暗号資産価格に関連している可能性も否定できず、一つのパラメータとして着目に値する。
このため、今回はマイニングとそのコストであるエネルギー価格をキーワードにイーサリアムの価格について分析してみる。
まずは、以下の関係について分析を行った。
①イーサリアムとハッシュレート
②イーサリアムと石炭価格
③イーサリアムとエネルギー企業の株価
①ETH×HASHRATE~ハッシュレートは価格の後追い~
ETH価格とETHハッシュレート(TradingviewおよびEtherscanより当社作成)
ETH(イーサリアム)のチャート・価格はこちら
上図は、ETH/USD価格とハッシュレート(※)の日足チャート(期間:2021年初~現在)である。
※ハッシュレート:マイニング(採掘)する際の採掘速度を指す言葉。マイニング時に必要な演算速度を表す。ハッシュレートは、コンセンサスアルゴリズムにPoW(Proof of Work、プルーフ・オブ・ワーク)を採用する暗号資産(仮想通貨)に共通する用語。ハッシュレートは変動し、大幅な変動は暗号資産の市場価格にも影響するといわれている(https://bitcoin.dmm.com/column/0197より引用)。
年始から5/12まで価格とハッシュレートは共に上昇していたが、5/12のETH/USDの下落後は、その後を追うようにハッシュレートも下落に転じている。
現在も価格、ハッシュレート共に下落トレンドが継続している。天井付近(上図赤丸)での値動きからETH/USDの価格が、ハッシュレートに先行していることが分かる。
②ETH×COAL~6月も石炭は高騰~
ETH価格と深セン証券取引所CNI COAL INDEX(Tradingviewより当社作成)
上図は、ETH/USD価格と深セン証券取引所における石炭のインデックス日足チャート(期間:2020年6月~現在)である。
中国は大量の電力消費を伴うマイニングプールを抱えていることから、資源価格との関連性がないとは言えないだろう。
昨今のニュースで取り上げられている通り、中国市場における石炭の需要は高く、ETH/USDと同じタイミングとなる5月に石炭は下落したものの、再び息を吹き返し、高値圏を維持している。一方のETH/USDも反発したものの、再び上昇継続とはならなかった。
5月まで両者は同調した動きとなっているが、6月に入ってから様相が変化しているようだ。
③ETH×エネルギー企業株価~先行指標となるか?~
ETH価格とオーストラリア証券取引所ASX Global Oil & Gas Limited株価(Tradingviewより当社作成)
上図は、ETH/USD価格とオーストラリア証券取引所で取引されている資源開発事業者の株価の日足チャート(期間:2020年6月~現在)である。
株価の下落は4月から始まっているが、この間もETH/USDはぐんぐんと上昇し、5/12の高値を迎えた。5/12以降はETH/USDは下落に転じており、軟調な展開が続いている。上図の値動きから事業会社の株価は先行して動いていたと言えそうだ。
上記、①ハッシュレート、②石炭価格、③エネルギー企業の株価の3指標については、ETHの価格が相場を牽引していたように見えるということであろう。
コモディティ(ここでは石炭)の値動きを先回りする傾向にある株式投資家、そして石炭価格の上下に影響されるマイナーは、イーサリアムの値動きにセンシティブであるとという構造が見えてくるのではないだろうか。
BTCはじめ、いくつかのブロックチェーンはマイニングによって取引が支えられているが、例えば、ビットコイン一つとっても、一日のマイニングから得られる収益は144回(24H*60/10)*6.25BTC*¥3,500,000(BTC価格)の31億5千万円となっており、そのおよそ65%が中国のシェア(5/6 cointelegragh)となっている。かたや、その消費電力量は、2024年には296兆5900億Wh(ワット時)に達し、1億3000万トンものCO2(二酸化炭素)が排出されるとの予測(4/26 東洋経済)もあり、生活インフラである安価な電気料金を一部のマイナーのみが享受しているような状況と、二酸化炭素排出量等の面から中国政府も介入を余儀なくされたと言えそうだ。
中国は、オーストラリアにとって最大の貿易相手であり、石炭や天然ガスなどのエネルギー資源も中国に輸出している。オーストラリアと中国の関係悪化も資源価格高騰を背景とした中国国内におけるマイニング抑制の一因かも知れない。
中国の動向が今後も鍵となりそうだが、中国マイナーの没落とハッシュレートの低下はETH/JPYにとって、ネガティブ材料として顕在化してくる可能性は高いかもしれない。
一方で、グローバルな視点から見ると、中国一強の終焉からマイナーの分散化が進み、より安定的なハッシュレートが維持される局面となる可能性もある。この場合は、悪材料が転じて好材料となり、ETH/JPYに再度、見直し的な買いが集まる局面も想定しておくべきであろうか。
(6/21午後8:00時点)
・銘柄別価格前日比 (%)
社内データより作成
6/21の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。
平均値は-18.39%、中央値は-19.10%、標準偏差は3.39%となった。
最小下落銘柄はBTC/JPYの-11.49%、最大下落銘柄はQTUM/JPYの-24.89%。
6/21の当社取扱銘柄は全面安となった。
前週の米国利上げ観測を嫌気した東京市場の株安から、円やドルに資金が向かうなか、中国メガバンク3行とアリペイが中国人民銀行の指示により、暗号資産決済の即時停止と関連サービスの提供禁止を表明したことで(6/22 REUTERS)、暗号資産市場でのリスクオフが加速した。
最小下落銘柄のBTC/JPYは2週間ぶりの安値となった。午後9時にマイクロストラテジー社が4.89億円相当のBTC買い増しを発表したことや(6/22 CoinPost)、 米国株式市場におけるショートカバーの動きから、下げ幅を縮小する局面もあったが、米国市場が引けると再び売り優勢となった。
最大下落銘柄のQTUM/JPYは続落7日目にして、3/15以来の安値圏。QTUM財団はシンガポールに本社を置いているが、中国系のIT企業とも関わりが深いことから、今回の悪材料に対する感応度が高かったようだ。
なお、東南アジアを拠点とするOMG/JPYも連想売りされたのか、下落率2位となっている。
・24時間 ボラティリティ (%)
社内データより作成
6/21の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。
平均値は21.69%、中央値は22.09%、標準偏差は4.03%となった。
最もボラティリティが高かった銘柄はQTUM/JPYで29.86%。一方、最もボラティリティの低かった銘柄はBTC/JPYで13.57%となった。
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