BTC(ビットコイン)の行方を日経平均から読み解くと

Daily Market Report 2021/06/16

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上放れのBTC、一ヶ月ぶりの高値圏へ

BTC/JPY 日足 Bidチャート(当社取引ツールより作成)
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約一ヶ月にわたって、400万円を前後した攻防となっていたBTC/JPYであるが、エルサルバドルでの法定通貨化(6/9 CoinPost)やテスラ社の決済再開報道(6/14 CoinPost)が好感されたこともあり、足元を固めつつある印象だ。

上図は、BTC/JPYの日足チャート(期間:2021年4月上旬~現在)である。
5月中旬の急落後のBTC/JPYは強弱材料の発表に振り回される展開となった。
5月中旬に、テスラ社のBTC決済中止や、中国での規制強化の報道を受けたことで急落したBTC/JPYは、5/19には2月以来となる300万円台前半の価格帯まで下押した(上図黄矢印①)。しかしこの日にテスラ社CEOがTwitterにてBTCを保持するニュアンスの投稿を行ったことで、BTC/JPYは下げ止まり、翌日は反発上昇となった(5/20 CoinPost)。

5/28には米国における暗号資産取引の報告義務提案の報道を受けてBTC/JPYは反落した(5/29 CoinPost)。その後、再び戻り相場となるが、6/4にテスラ社CEOがTwitterにてビットコインから離れることを示唆する投稿を行ったことで(6/4 coindesk JAPAN)、上値重い展開となり、370万円台まで下落した(上図黄矢印②)。
この時点では5/18高値と6/4高値を結んだ、下方向の赤矢印のレジスタンスライン(赤線)が市場参加者に意識されていたかもしれない。

しかし、6月上旬にエルサルバドルでの法定通貨採用の報道を受けると、準備金としての実需や同様の動きが諸外国にも波及するとの期待感からかBTC/JPYは上昇。
テスラ社の決済再開報道や世界的な投資家であるポール・チューダー・ジョーンズ氏が、BTCがポートフォリオの分散化に有効であり、個人資産の5%をBTCに充てている可能性を示唆した(6/15 CoinPost)ことも相まり、このレジスタンスライン(赤線)を上抜け、一ヶ月ぶりに440万円台を回復した(上図黄矢印③)。

レジスタンスライン上抜け後のBTC/JPYは、長期的なモメンタムを示す200日移動平均線(MA200)に頭を抑えられており、今後はMA200を上抜ける事が出来るのかが注目されている。

この一か月の相場は、一国や一企業によるBTCの規制、採用を巡る報道といった突発的な強弱材料に踊らされており、値動きが繰り返されることを前提とするテクニカル分析は難しいとする見方もあるかもしれない。

しかし上図の日足チャートをみても、相場の底打ちを示唆する長い下髭陰線下落局面に出現していたことや、最初の下落(上図黄矢印①)から徐々に安値を切り上げていたこと、また、6/4のテスラ社CEOがビットコインに関連し、ひびの入ったハートの絵文字をTwitterにてツイートするなど、弱気材料に対して、浅い下押しで相場は応えていたことから、悪材料に対しては反応しづらくなっている(≒上方向へのエネルギーを蓄えていた)とみることも可能である。

また、BTC/JPYに限らず、強弱材料の発表に振り回された相場は過去にもあり、そこでの値動きは今後の値動きを予想するうえで一つの参考となりうるかもしれない。例えば2019年7月~10月の日経先物は強弱材料に左右された相場である。当時の日経先物を見ながら、今後のBTC/JPYの展開を考えてみよう。

材料に左右される相場とは

日経先物ラージ期近つなぎ足:Tradingviewより当社作成
(期間:2019.06.27~2019.09.17(日付は日本時間))

上図、2019年8月の日経先物もまた、材料に左右された相場の典型例ともいえる。当時の主な悪材料は、
①米中間の貿易関税を巡るトランプ前大統領と中国商務省の応酬(米中貿易戦争)
②世界の金融ハブである香港における混乱(逃亡犯条例の香港適用)
③英国のEU離脱問題(ブレグジット)
があった。

当時の値動きと強弱材料を簡単に振り返ると、8月の急落の発端は①トランプ前大統領がTwitterにて対中関税の上乗せを発表したことにある。マーケットは急落したが、その後、前米大統領が中国に電話を入れたとTwitterに投稿したことで、米中間の対話が示唆され、下げ止まったかにみえた。しかし、そのような事実はないと中国が公式に否定し、その後も応酬が続いたことで揉み合い相場となった。

8/13には、米国が従前より示唆していた、一部品目の関税の増税を延期したことが好感され、戻り基調となった(強材料)が、8/23には中国が報復措置である、対米関税の上乗せを発表。これに対してトランプ前米大統領がTwitterにて当初予定していた関税を5%引き上げると発表(弱材料)し、週明け8/26には、日経先物は二番底となった。

しかし、情報戦の中での相場は、上値は重いながらも、下値は限られており2万円割れの局面では下支えが入る動きがみられた。9月に入り、②の逃亡犯条例が撤回されたことや、③の英国のEU離脱期限が先送りになったことが同タイミングで発表されたことを皮切りに、200日移動平均線を上抜ける強い上昇が始まった。①の材料もトランプ前米大統領が「中国が協議再開を求めてきた」と好材料を発表したことも上昇を維持することに繋がった。

ここまでの動きから、次の3点の相場特性が推定できる。

  • 突飛な悪材料は大きく反応するが、好材料もまた反応しやすく、繰り返される事で相場は反応しなくなってくる(出来高も減少する)
  • ある材料に対しカウンターが続くと、上値、下値が抑えられボラティリティが収縮してくる(トレンド発生へ至らない)
  • 情報相場の期間は約1か月

現在のBTC/JPYに当てはめてみると

  • テスラ社CEOの二回目の投稿では、下値が限られるなど、悪材料に反応しづらくなった
  • エルサルバドルでの法定通貨採用を好材料として反応した
  • 5月下旬から6月上旬にかけて値幅を縮めた
  • 最初の底から1か月後に370万円-440万円のレンジを上振れた

 となる。ある程度通ずる点があると考えることもできそうだ。

日経先物でみるBTC今後の展開は

日経先物ラージ期近つなぎ足:Tradingviewより当社作成
(期間:2019.06.27~2019.11.12(日付は日本時間))

上図は、前述の日経先物の上昇後の展開である。当時の日経先物は、8月~9月と各移動平均を挟んで大局的には揉み合っている状況であった。10月に発表された米国9月ISM製造業指数の50.0割れが発表され、急落した(上図赤矢印)が、一方で貿易摩擦が続く米国と中国が閣僚級協議で農産物や為替政策といった特定分野で部分的に合意するなど、8月の悪材料は収束に向かいつつあったため、下値も限定的であった。

テクニカルでは、50日、75日、200日移動平均線が収縮する価格帯で反発したことが伺える(上図黄矢印)。その後、下落後のアク抜け感や米中協議進展への期待感から再び上昇、月間を通じて相場はほぼ一本調子で上昇した。11月には日経先物は2万3千円台後半に乗せ、結果として2波目の長いN波動となった。

BTC/JPY 日足 Bidチャート(当社取引ツールより作成)

上図は、前述の日経先物の動き(N波動)を今後のBTCの動きに当てはめた一例である。

まずは第一天井となる、上昇後の上値の目途を想定したい。

前述の日経先物は底値から第一天井までの値幅は+10.7%のポイントであったが、暗号資産のボラティリティは株価指数と異なるため、上図チャートでは割合を当てはめず、以下の点に留意したうえで、直近高値から650万円と仮定した。

  • 急落前の戻り高値(日経では21,800、BTCでは648万円)を上回る価格であること
  • 当時の年内最高値(日経では22,350、BTCでは700万円)を下回ること

次に、何らかの悪材料により下押した場合のポイント(黄矢印)であるが、

  • 上昇幅の44%程度の戻り位置となること
  • 50日、75日、200日移動平均線の収束するポイントであること

に留意すると、500万円前後が戻り位置の目途と推定できる。

最後に、50日、75日、200日移動平均線を下支えとした上昇第二波の目途を想定する。

前述の日経先物では、第一波の+10.7%に対し、第二波は+12.3%の増加幅となった。第二波は第一波の約15%増し(12.3/10.7≒1.149)であるから、これをBTC/JPYに当てはめると、第一波の+106%に対し、第二波は+121.8%と算定できる。その場合、500万円(黄矢印)起点の+121.8%である1,109万円がターゲットプライスとなる。

この1,100万円の価格帯であるが、現在のドル円が110円前後で推移していることを踏まえると、10万ドルの心理的節目とも捉えることができそうだ。
BTC10万ドル付近のシナリオについては、当社記事(「BTC(ビットコイン)目標価格1080万円?~BTCドミナンスと市場サイクル~」参照)も合わせてみておきたい。

勿論、暗号資産と株価指数先物は異なる市場であることや、現在のBTC/JPYが200日移動平均線で反落し、今後も強弱材料に左右される相場が続く可能性は否定できない。
今後も神経質な展開が続く点には注意されたい。

(6/15午後8:00時点)

銘柄別価格前日比 (%)

社内データより作成

6/15の当社取扱い銘柄別終値の前日比は上記グラフの通り。

平均値は-0.14%、中央値は-0.82%、標準偏差は2.38%となった。

最大上昇銘柄はXEM/JPY6.54%、最大下落銘柄はXRP/JPY-2.25%

最大上昇銘柄のXEM/JPYは3日連続小幅高。営業日クローズ間際、日足の20日移動平均線までの乖離を埋めようとする動きが見られ、そのほかの銘柄より逸脱した。

最大下落銘柄のXRP/JPYは下落。営業日オープンから軟調地合いが続き、午後11時台に1時間足の50日移動平均線にあたる95円大台を割れると、一気に92円台まで下押す場面が見られた。暗号資産関連株の下落が手掛かり。

24時間 ボラティリティ (%)

社内データより作成

6/15の当社取扱い銘柄の24時間ボラティリティは上記グラフの通り。

平均値は6.87%、中央値は6.06%、標準偏差は2.08%となった。

最もボラティリティが高かった銘柄はMONA/JPY12.39%。一方、最もボラティリティの低かった銘柄はBTC/JPY4.58%となった。

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2021-06-16
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