FATF

各国規制に影響を及ぼすFATFと暗号資産(仮想通貨)の関係とは?

暗号資産(仮想通貨)とFATFの関係

FATFとは、マネーロンダリング対策の国際協調を進めるために設立された政府間会合で、フランス・パリのOECD(経済協力開発機構)事務局内にFATFの事務局が設置されています。2018年6月時点で、OECD加盟国を中心に35か国・地域および、2つの国際機関が加盟しています。FATFとはFinancial Action Task Forceの略語で、日本では「金融活動作業部会」と呼ばれることが多くなっています。

1989年の設立当初は、麻薬犯罪に関連するマネーロンダリング対策を主な目的としていましたが、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ以降はテロ組織への資金供与対策についても国際的な協力体制の推進に取り組んでいます。各国の外交当局や金融監督当局、警察当局などの関係者が出席しており、日本からは財務省、警察庁、金融庁、法務省、外務省の関係者が会合に出席して意見交換を行っています。

FATFでは、マネーロンダリングやテロ資金供与対策の国際基準(FATF勧告)を作るための国際的な枠組みとして運営されています。FATF勧告は、加盟国だけにとどまらず世界190以上の国および地域に適用されます。FATF勧告の履行状況は、加盟国同士で相互審査が行われます。FATFは、各国の金融制度作りの政策に大きな影響力を有していると考えられます。

2015年以降、ビットコインを初めとした暗号資産(仮想通貨)の移転が迅速かつ容易に可能であり、匿名での利用も可能であることから、FATFはテロ組織や犯罪組織の新たな資金源となりうることを危惧していると考えられます。2015年には、暗号資産(仮想通貨)の規制に関するガイダンスを発表しました。この2015年のガイダンスの影響を受け、日本では2017年に改正資金決済法が施行されています。各国の仮想通貨規制政策を占う上でも、FATFの動向に注目する必要があるでしょう。

FATFの暗号資産(仮想通貨)に関するガイダンスの内容とは

FATFは、2015年に初めて暗号資産(仮想通貨)に関するガイダンスを公表しました。ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)がマネーロンダリングやテロ資金供与のきっかけになることを懸念し、仮想通貨交換業者を当局への登録・免許制の下に置くことを要求しました。

さらに、顧客の本人確認や疑念のある取引の当局への届出、記録保存の義務などを盛り込んだガイダンスでした。これらは、以前から既存の金融システムの安定化のためにFATFが要求してきたことであり、同様の内容を仮想通貨交換業者にも求めたということになります。

当ガイダンスでは、ただ暗号資産(仮想通貨)を厳しく取り締まるべきと主張しているわけではありません。あくまで、各国当局が自国のリスク評価に応じて、マネーロンダリングやテロ資金対策の義務を課すことを求めているのです。暗号資産(仮想通貨)自体の禁止を各国の選択肢として否定はしないものの、暗号資産(仮想通貨)をアンダーグラウンドへ追いやる危険性を鑑みて、リスクを軽減するような措置を講じる手もあると述べています。 FATFのガイダンスは、分散的な暗号資産(仮想通貨)関連プロダクトやサービスにより、大きなリスクがあると述べています。

FATFのガイダンスが2015年に発表されたことを受けて、一部の国では暗号資産(仮想通貨)への規制整備に乗り出しました。日本も例外ではなく、2015年には金融審議会に設置された「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」で規制のあり方について協議が行われ、FATFの要求に応えるのに加えて、利用者の保護等に関する措置、財務規制などの対応が必要であることが確認されました。

その結果、2017年4月に改正資金決済法が施行されました。さまざまな改正事項が盛り込まれてはいるものの、特に暗号資産(仮想通貨)についての記述が新設されたことから、「仮想通貨法」という呼び方もされています。また、それに伴って「仮想通貨交換業に関する内閣府令」が設けられるなど、暗号資産(仮想通貨)およびその交換業に対して法的規制が導入されました。改正資金決済法では、おおむねFATFのガイダンスに沿った形で、マネーロンダリング防止態勢の整備義務、顧客資産の分別管理、利用者に対する適切な情報提供などを求めています。

さらに2018年になって、FATFは暗号資産(仮想通貨)の犯罪利用を防止するべく、新たな措置を講じる方針である旨が報道されています。 2月にパリで開催された総会の議事録によれば、暗号資産(仮想通貨)によるマネーロンダリングやテロ資金源となるリスク、各国の規制措置について改めて検討されたようです。2018年6月現在で詳細は明らかにされていませんが、規制措置が要求される可能性もあります。日本では、2019年にFATF第4次対日審査が控えており、さらなる対策強化が行われることも考えられます。

FATFの暗号資産(仮想通貨)に対する動きの特徴

以上のように、FATFでは暗号資産(仮想通貨)が犯罪組織やテロ組織の資金源となることを懸念し、各国の規制強化を求めています。利用者にとっては、仮想通貨交換業者への登録時に本人確認が義務づけられますが、セキュリティ面の向上が期待されます。長期的に見れば、暗号資産(仮想通貨)が社会的に定着していく上で踏むべきステップを踏んでいると考えられます。

暗号資産(仮想通貨)をいたずらに禁止するリスクをFATFは認識しているため、今後も規制と利用者保護の両面から、各国のリスク評価に応じて暗号資産(仮想通貨)を適切に取り扱うことを求める可能性が高いと言われています。

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