ビットコインとブロックチェーンの関係は?その仕組みを解説
ビットコインとブロックチェーンは同じタイミングで誕生したため、両者はしばしば混同されがちです。両者は何がどう違うのかよく分からないと感じている方もいるのではないでしょうか?そこで、ビットコインとブロックチェーンの違いについて解説していきます。
仮想通貨「ビットコイン」とは何か?
まずはビットコインについて解説していきましょう。世界で一番有名な仮想通貨といえるビットコインは、どんな特徴や歴史を持つのでしょうか?
ビットコインは発行者や管理者が存在しない電子的な存在
ビットコインは、日本円や米ドルなどの法定通貨とは異なり、紙幣や貨幣といった実体が存在しない電子的な存在です。また、電子的な通貨という点では電子マネーやゲーム内のコインと似ているものの、ビットコインには発行者や管理者が存在しない点が違います。特定の国・中央銀行・企業に依存せず、価値を備え、支払いや価値の保存などを目的として世界中で流通していることが、ビットコインの大きな特徴といえるでしょう。
実は、ビットコインが機能する前までは、管理者が存在しないインターネット上の電子通貨は実現不可能だと考えられていました。なぜなら、インターネット上のデータは容易に複製できてしまうからです。管理者不在の電子通貨を実現するには、同じ電子通貨をコピーして複数の人に送ったり、決済を行ったりする「二重支払い問題」を解決し、防ぐ必要があるのです。
例えば、Aさんが1BTC持っており、AさんからBさんに1BTCの支払いをする場合、Aさんが自分の「1BTC」というデータを複製し、BさんとCさんにそれぞれ1BTを支払うことができてしまうというケースが「二重支払い問題」です。
この問題の克服は難しく、ビットコイン以前にも類似の試みは存在しましたが、どれも成功していません。だからこそビットコインは、管理者不在の電子通貨=仮想通貨として注目を集めるようになったのです。
「サトシ・ナカモト」とビットコイン
ビットコインが誕生するきっかけとなったのは1本の論文でした。論文のタイトルは「ビットコイン:P2P 電子通貨システム」です。2008年10月31日に「Cryptography」という暗号学のメーリングリストで、何の前触れもなく投稿されたこの論文は、10ページにも満たないコンパクトな構成でした。その時のメールは、現在でも閲覧できます。
執筆者は「サトシ・ナカモト」という人物です。日本人のような氏名ですが、何者なのかその正体は一切不明です(2019年8月現在)。国籍や性別、個人なのかグループなのかさえ、分かっていません。
そして、サトシ・ナカモトの論文には、いくつかの暗号技術と経済的なインセンティブ(人々の行動を変化させるような要因)を組み合わせることによって、政府や金融機関のような「信用された第三者機関」がいなくても、二者間での直接的なオンライン送付を可能にする仮想通貨の仕組みが記されていました。
ビットコインは2009年に運用が開始された
この論文をベースとして、2009年1月8日にビットコインのソフトウェアがリリースされ、ネットワークが稼働し始めます(サトシ・ナカモトによる告知メールも、現在でも閲覧可能)。リリースから現在に至るまで、ビットコインは致命的なシステムダウンを経験していません。特権的な管理者がおらず、誰にも止められないビットコインは次第に技術者の間で話題となり、それを支える「ブロックチェーン」技術にも注目が集まっていきました。
ブロックチェーン技術の特徴的な性質は、中心的な管理者がいないにもかかわらず、稼働開始時から現在に至るまで、すべての取引履歴が改ざん不可能な形で記録されており、知識さえあれば誰でも取引履歴を閲覧できる点だといえるでしょう。
ブロックチェーンは、ビットコインを支える技術
ビットコインを支える中核技術、ブロックチェーンはどのような仕組みになっていて、どのような分野で使われているのでしょうか?
ブロックチェーンとは?
ブロックチェーンはそもそも、「信用された第三者機関」を必要としないビットコインを実現しようと考案された技術です。ビットコインは、ブロックチェーンという仕組みをベースに流通している状態で、ビットコイン=ブロックチェーンではありません。
さらにブロックチェーンでは、中心的な管理者に依存せず、書き込まれたデータが改ざんされていないことが数学的に証明されているため、一種の分散データベース(分散型台帳技術)として注目されています。
ここでの書き込まれたデータとは、仮想通貨などの取引データのことを指しています。これら取引データは「トランザクション」と呼ばれており、ブロックチェーンでは複数のトランザクションを集めた「ブロック」というデータの固まりごとに処理しています。そして、このブロックがチェーン(鎖)のように繋がったデータ構造であるため「ブロックチェーン」と呼ばれているのです。
ビットコインにおけるブロックチェーンの仕組み
P2P(ピアツーピア)ネットワーク
ブロックチェーンは、ノード(コンピューター)が対等な立場で接続された「P2Pネットワーク」であることを基本としています。「P2P」とは「Peer to Peer」(ピアツーピア)の略語で、P2Pネットワークは仮想通貨に限らず、広く利用されている代表的なモデルのひとつです。
電子署名と公開鍵暗号方式
具体的には、以下のような計算になります。
管理者のいないP2Pネットワークにおいて、仮想通貨の所有権を証明し、送金トランザクションを作成するための仕組みが「電子署名」です。電子署名とは、署名者本人しか知らない「秘密鍵」という暗号鍵を用いてデータに署名することで、そのデータの送信者が確かに本人であることを証明する機能を備えます。その後、受信者は秘密鍵に対応した暗号鍵である「公開鍵」を使って署名されたデータを検証し、検証に合格したという結果を基に送信者が本人であると確認できるのです。秘密鍵と公開鍵は唯一のキーペアであり、このペアを用いた暗号化方式は「公開鍵暗号方式」と呼ばれています。
そして、この証明機能は署名する本人しか秘密鍵を知らない前提の上で成り立っているので、秘密鍵は他人に知られてはいけません。なお、ブロックチェーンのネットワークでは、各ノードが自分の秘密鍵を管理しています。
ハッシュ関数
電子署名を経て作成され、P2Pネットワークに通知されたトランザクションは後述の「マイナー」(採掘者)と呼ばれるノードによって、ブロックに集約されます。マイナーがブロックを生成するためには、ハッシュ関数を利用した膨大な計算を繰り返し、ある条件を満たす「ナンス」(nonce)という特別な数値を見つけなければなりません。
ハッシュ関数とは、入力値がわずかでも異なると、まったく異なる値が出力される関数のことです。例えば、ビットコインに使われているハッシュ関数「SHA-256」を使って「DMM Bitcoin」と「dMM Bitcoin」を計算するとまったく異なる値が出てきます。
入力値 | 出力値 |
---|---|
DMM Bitcoin | dead1d383e5f0dedd4eae8b3b13a834480c41f66fec87e992db1a67ecea8ab89 |
dMM Bitcoin | a6610a2427bc04bd9e70bce8d2e14838b51346cc355af8c9b9c93417166aaa4f |
さらにハッシュ関数は、出力値から入力値を予測(逆算)できないという一方向性を備えています。
マイナー(採掘者)と採掘報酬
それでは、マイナーの役割を解説しましょう。マイナーは「複数のトランザクション」と「最新ブロックのハッシュ値」、「ナンス」などのデータを入力値として、ハッシュ計算を行う競争に参加しています。この計算作業は「ある数値を下回るハッシュ値を得る」という条件をクリアし、ブロックを生成できるまで繰り返されます。入力値として変更される値はナンスだけなので、ナンスを変更しながら総当たりで計算が行われているのです。
そして、もっとも早く条件をクリアし、ブロックの生成に成功したマイナーには採掘報酬として、ビットコインが与えられます。ハッシュ計算を繰り返しながらブロックの生成を試み、報酬を獲得するまでの一連の作業がマイニングと呼ばれています。
不正防止の仕組みとしても機能するマイニング
マイニングは、不正防止の仕組みとしても機能しています。なぜなら、マイニング競争に勝ち抜くための計算量と計算コストは膨大であるため、不正を行うよりも素直にマイニングを行い、ビットコインを報酬として獲得した方が経済的なメリットが大きいからです。このような経済的なインセンティブは、ネットワークに対する不正を防止する役割を担っています。
マイニングを経て新たに生成されたブロックは、他のノードに検証され、問題がなければ最新ブロックとして既存ブロックチェーンに接続されます。この検証と更新作業は分散しているノードが独立して行っているため、ルールに基づいたマイニングのプロセスによって自律的に同じ内容のデータベース(分散型台帳)が構築されているのです。
オープンソースソフトウェア
ビットコインなど仮想通貨の基盤であるブロックチェーンの多くが、「オープンソースソフトウェア」としてソースコードを広く公開している点も重要でしょう。オープンソースとは、商用・非商用問わず、ライセンスで定められた範囲において、ソースコードの改編や再配布を行えるソフトウェア開発手法を指します。ライセンスに従っていれば、誰でもブロックチェーンのソースコードに修正を加えたり、何らかの理由でフォーク(分岐)したりできます。
オープンソースソフトウェアであるおかげで、世界中の技術者たちがブロックチェーンをより良いものにするための改善を続けられるのです。
ブロックチェーンは、仮想通貨以外の利用法も提案されている
ブロックチェーンに書き込まれたデータは改ざんが困難であり、取引履歴を誰でも閲覧できるという点で透明性が高いため、様々な領域での応用が期待されています。例えば、食料品を原材料から小売店で販売されるまでの流通過程を、ブロックチェーンで管理することで産地偽造の対策や生産過程の透明化などに役立ちます。また、改ざんできないという性質を利用して、不動産や権利関係の情報をブロックチェーンに記録することで、公的な証明システムとして利用も可能です。
まとめ
ビットコインは、インターネット上で流通する発行者や管理者のいない仮想通貨です。2008年にサトシ・ナカモトによって考案され、2009年に稼働し始めて以降、現在に至るまで一度も停止していません。その中核技術として使われているのがブロックチェーンであり、ビットコインと近しい存在ではあるものの、同じものではありません。
ブロックチェーンは改ざんが困難で透明性の高い分散型のデータベースとしても注目されており、物流や公証システムなど、幅広い領域での応用が期待されています。今後、ブロックチェーンが私たちの暮らしをどのように変えていくのは注目に値するといえるでしょう。
ビットコインについて詳しく知りたい方は「ビットコインの系譜」もご参照ください。
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