暗号資産(仮想通貨)にかかる税金とは?税額の計算や確定申告の方法を解説
ビットコインをはじめ、暗号資産取引の初心者の方が見落としがちな要素が、暗号資産に課される税金です。また、暗号資産取引を資産運用のひとつとして考えている方にとっても見逃せない知識でしょう。暗号資産で得た利益は確定申告を行わなければ無申告加算税か重加算税が課され、悪質と認められると脱税とみなされる可能性があります。確定申告が必要なケースや必要ないケースがある他、節税できる場合もあります。ここでは暗号資産の課税について紹介していきます。
※本稿で記載している内容は一般的な解説となります。税務申請の詳細に関しては、必ず税務署または税理士へご相談ください。
暗号資産(仮想通貨)の利益は「雑所得」として課税される
ビットコインなどの暗号資産は、売買や買い物、他の暗号資産との交換など何もせず保有しているだけでは課税対象になりません。個人の場合、暗号資産の取引などで得た利益(所得)は、原則として日本の所得税の課税対象となります。そして、総合課税の「雑所得」として確定申告を行い、納税する必要があります。
総合課税と分離課税の違い
所得税法で課税対象となる所得は、給与所得や事業所得をはじめ10種類に分類されており、種類によって税率や控除の仕組みが異なります。所得税は、各種の所得金額を合計して所得税額を計算し、確定申告により納税することが「総合課税制度」によって決められています。
また一部所得については他の所得金額と合計せず、分離して税額を計算し、確定申告で納税する「申告分離課税」が採用されています。「申告分離課税」は、株式などの譲渡所得、一部先物取引による雑所得などが挙げられます。上場株式などの配当所得は「申告分離課税」を選択できます。
暗号資産が該当する「雑所得」は、給与所得・事業所得・利子所得などほかの所得区分に含まれないものとなっています。 例えば、副収入や公的年金、作家業を本業としていない人が受け取る原稿料や講演の謝金などが該当します。
また雑所得は税率が設定されていないため、ほかの所得区分と合算した所得金額に課税されます。所得税の課税率は累進課税となっており、最高で45%(所得額が4,000万円を超える場合)を税金として支払う必要があります。
課税計算方法としては、以下のようになります。
・「所得金額 × 税率 - 控除額 = 所得税額」例えば、所得金額が800万円の場合は以下の通りです。
・800万円 × 0.23 - 63万6,000円 = 120万4,000円(所得税額)また、住民税についても注意が必要なことを覚えておきましょう。住民税は1月1日時点で該当の市区町村に住所がある方に対して課される税金で、所得税の計算で算出した額に一律10%が住民税として課されます。
いくらの利益(所得)から課税対象となるのか?
会社員など給与所得者の場合、暗号資産の売買などで約20万円以上の利益(所得)が発生すると、その利益に対して所得税がかかり確定申告を行う必要があります。給与所得者以外、個人事業主の場合は基礎控除額の38万円を上回る利益が発生していると、確定申告を必要とします。扶養されている方(学生や主婦)の場合も、扶養控除額の38万円以上の利益が出ていると課税対象となる可能性に注意しましょう。
これらは、暗号資産に限らず、フリーマーケットアプリを利用した個人的な取引による所得、副業などで複数の給与所得があると確定申告が必要な所得額が変わる可能性があります。不安な方は税務署や税理士に相談するなどの対策を行いましょう。
暗号資産(仮想通貨)に関する所得の計算方法
前述したように、暗号資産は単に保有しているだけでは課税対象になりません。では、どのような場合に課税対象となるのでしょうか?6つのケースとそれぞれの計算方法について紹介します。
暗号資産(仮想通貨)の売買差額による利益
暗号資産で利益を獲得するのにもっとも一般的なケースとして、日本の金融庁に登録済みの「暗号資産交換業者」を利用した「暗号資産の売買(取引)」が考えられます。この場合、暗号資産の購入額と売却額の差が利益となります。ここで重要な点は、「売却」が「日本円などの法定通貨への換金」を指していることです。暗号資産交換業者から出金した時点ではなく、暗号資産を日本円などの法定通貨と交換した時点で利益が確定したとみなされ課税されます。「ビットコインを売却して日本円に換金したけど、預けたままだから課税されない」ということはありません。
また、毎年1月から12月までに成立(約定)した取引が課税対象となります。例えばDMM Bitcoinであれば、2020年度の年間取引は、2020年1月1日7時0分0秒から2021年1月1日6時59分59秒までに約定した取引となります。
暗号資産(仮想通貨)に関する評価方法の届け出が必要
暗号資産は、売買のたびに「総平均法」と「移動平均法」というどちらかの評価方法で所得を計算し、この1年間の合計を所得額として申告する必要があります。国税庁では、どちらを評価方法とするか選択する届出書([手続名]所得税の仮想通貨の評価方法の届出手続)を配布しており、この届出書により評価方法を選定しなかった場合には、総平均法によって評価する旨が示されていることに注意しましょう。
「総平均法」と「移動平均法」「総平均法」は、1年間に購入した暗号資産の合計数量と購入金額の合計(=取得価額相当額)を元に総平均単価を計算するという方法です。また「移動平均法」は、暗号資産を購入するたびに、取得価額を算出し、1年間の平均取得単価を計算する方法です。実際の売却時の平均取得単価に近い単価で損益を計算する場合は、「移動平均法」による計算の方が正確に計算することができます。
確定申告には、DMM Bitcoinの「期間損益報告書」と「損益計算用データ」を活用しよう
DMM Bitcoinでは、確定申告に利用できる書類として「期間損益報告書」と「損益計算用データ」を用意しています。
DMM Bitcoinの「期間損益報告書」では、暗号資産(現物)の平均取得単価は「総平均法」で計算しています。「期間損益報告書」は、「PC版取引システム」の「メニュー」内の「報告書」からPDFファイルとしてダウンロードできます(スマートフォンやタブレットではダウンロードできません)。
ただし、DMM Bitcoin以外の暗号資産交換業者でも売買を行っている場合は、この「期間損益報告書」を確定申告にそのまま利用することはできません。国税庁の「仮想通貨に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和元年12月)」ページにある「仮想通貨の計算書(総平均法用)」(エクセル用xlsxファイル)を利用しましょう。
国税庁の「年間取引報告書を活用した仮想通貨取引に係る申告手続の簡便化(イメージ)」では、各暗号資産交換業者の年間取引報告書(DMM Bitcoinの場合は「期間損益報告書」)の記載内容を統一しており、「仮想通貨の計算書」で暗号資産の所得を自動計算できることが示されています。
「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和元年12月20日)」に従い、この計算書に各暗号資産交換業者の年間取引報告書にある金額を入力していくと、暗号資産の所得金額を算出できます。
またマイニングを行っており、DMM Bitcoinの口座に入庫したなどの場合は「損益計算用データ」をダウンロードし、自分で平均取得単価や損益を計算する必要があります。「損益計算用データ」には年間損益を計算するための「約定履歴(TRADE_RECORD_LIST)」と、ウォレット口座およびトレード口座の「キャッシュフロー履歴(CASHFLOW)」の2種類のデータが含まれています。
ビットコインで商品やサービスを購入
ビットコインなどの暗号資産で、商品やサービスを購入した場合、課税の対象となります。
保有する暗号資産で商品を購入した場合、保有する暗号資産を売却したとみなされます。この時の所得金額は、暗号資産の支払い数量の価格(譲渡価格)と、暗号資産の取得価格との差額になります。以下のケースを考えてみましょう。
「4月1日に200万円でビットコイン2BTCを購入し、10月1日に消費税込み18万円の商品を0.2BTCで購入したとします。商品購入時における交換レートは1BTC=110万円でした。」
- 【計算式】
- ・商品価格(消費税込み)- ビットコイン1BTCあたりの取得価格(個人の場合は総平均法) × 支払い数量 = 所得金額
具体的には、以下のような計算になります。
・商品価格 18万円 - (200万円÷2BTC) × 0.2BTC = 2万円(所得金額)
ビットコインと他の暗号資産(仮想通貨)の交換
保有するビットコインと他の暗号資産を交換した場合は、ビットコインで他の暗号資産を購入したことになります。前述した「ビットコインで商品・サービスを購入」と同様に、課税の対象になります。以下のケースを考えてみましょう。
「4月1日に200万円で4BTCを購入し、10月1日にイーサリアム10ETHを1BTCで購入したとします。この取引時における交換レートは1ETH=6万円でした」という状況では、以下のようになります。
・6万円×10ETH - (200万円÷4BTC) × 1BTC = 10万円(所得金額)
マイニング(採掘)で暗号資産(仮想通貨)を取得
マイニング(採掘)により暗号資産を取得した場合は、個人の場合所得税(雑所得)として課税対象となります。また、この時暗号資産の価格は、マイニングによる取得時点の時価で計算します。電気料金やパソコンなど、マイニングにかかった費用は必要経費として計上できる可能性があります。
ハードフォーク(分岐)で新規暗号資産(仮想通貨)を取得
暗号資産のハードフォーク(分岐)により新たに誕生した暗号資産を獲得した場合は、課税対象となる所得は発生しません。分岐時点での新規暗号資産の取得価格は「0円」です。しかし、この新規暗号資産を後々売却したり、商品の購入に使用したりした場合は課税対象となります。
所得税法上、経済的な価値があるものを取得した場合には、その時点における時価を基に所得金額を計算します。しかし、ハードフォークにより誕生した新たな暗号資産は、分岐時点においては取引相場が存在していないため価値を有していない状態となります。
相続・贈与による暗号資産(仮想通貨)の所得
被相続人からの相続・贈与などで暗号資産を取得した場合は、相続税または贈与税が課税されます。相続税法では、金銭に見積もれる経済的価値のある財産を相続または贈与により個人が取得した場合、相続税や贈与税の課税対象となります。
損失の扱いについて
暗号資産の取引で発生した損益は、暗号資産と同じ雑所得の中で通算できます。雑所得以外の所得区分の所得から損益通算(差し引くこと)はできません。また暗号資産の取引による所得は、総合課税の対象となる雑所得であるため、その損失を翌年以降に繰り越すことはできません。
「Symbol」への移行を考えているネム(XEM)保有者は税金の扱いに注意
日本でも人気がある暗号資産ネムは、次期ネムにあたる「Symbol」が2020年11月に運用開始予定です(2020年5月現在)。条件はあるものの、Symbolのポイントは、ネム(XEM)保有者に対して新規暗号資産「XYM」が配布される予定となっていることでしょう。現行のXEMはそのままで、1XEM:1XYMの割合でXYMが別途配布される予定です。
国税庁の「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和元年12月20日)」を見ると、Symbol運用開始時にXYM取引相場が存在せず価値を有していないとなった場合、XYMは同文書の「分岐・分裂で暗号資産を取得した場合」に該当する可能性があります。このためXYM取得時点では取得価格「0円」となる可能性がある一方、その後の価格変動次第では、安易に売買などを行って利益を得ると予想外の金額の税金を課せられる可能性がありえます。
またXYM取得時に取引相場が存在した場合は、取得時点の評価額(時価)となる可能性があります。評価額次第では、やはり課税額が大きくなる可能性に注意が必要です。不安な場合は、税理士や税務署に相談した方が安全でしょう。
そもそも確定申告とは?
続いて、暗号資産が課税対象となるケースがわかったところで、次は納税方法について見ていきます。
会社員などほとんどの給与所得者は、年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了するため、確定申告の必要はありません。しかし給与所得者の場合、前述したように、暗号資産の売買などで約20万円以上の所得が発生すると、所得税がかかり確定申告を行う必要があります。また、個人事業主の場合は38万円を上回る利益が発生していると、確定申告を必要とします。
所得税の確定申告とは、毎年1月〜12月までの1年間で得たすべての所得を計算し、翌年の受付期間(2月16日〜3月15日)に国に支払う税金を申告・納税するという手続きです。
給与所得のある会社員であれば、会社から発行された源泉徴収票が確定申告の際に必要となります。あるいは、ビットコインなどの暗号資産の投資で得た利益を計算して、確定申告会場に行けば税務署や申告用の会場で申告用紙に記入することもできます。
また、税務署の開庁時間は平日の午前8時30分から午後5時までのため、確定申告は平日に行うことになります。自治体によっては、確定申告期間中に土曜日や日曜日にも申告できる日を設けることもあるので、事前に確認しておくと良いでしょう。
税務署や申告会場に行くのが面倒なら、国税庁の国税電子申告・納税システムであるe-Taxを利用すると、インターネットで確定申告を完了できます。ただし、この方法では、マイナンバーカードとそれを読み込むカードリーダーが必要になります。
経費を計上し、節税対策を行う
ビットコインなど暗号資産を売却し利益を出した場合、そのすべてが課税対象になるわけではありません。取引に要した経費に関しては控除対象となる可能性があるため、きちんと申告しましょう。
例えば、売却した暗号資産の取得価格、暗号資産交換業者に対し売却時に支払った手数料、インターネット関連費用、暗号資産の取引を行うパソコンなどが、暗号資産の売却に必要な経費として認められる可能性があります。また、これらは暗号資産の取引に100%使っているわけではない場合、使用頻度に応じて按分します。
また、暗号資産はどれだけ値上がりしても、何もせず保持し続けているだけであれば課税対象となりません。これも節税の一種といえるでしょう。
暗号資産の取引で得た利益や損失は、1年間の間であれば差し引きできます。ビットコインで利益が出ている一方、別の暗号資産では損失が出ているという場合は、損失の出ている暗号資産を日本円に換金することで、納税額を少なくできます。
このほか、個人事業主として青色申告をすることで、ビットコインで発生した利益が「事業所得」として認められる可能性があります。条件としては、営利性や継続性、事業遂行の有無が問われるほか、「事業用資産としてビットコインを保有・決済手段として利用している」「ビットコインの利益によって生計を立てている」などがあります。
なお事業所得の場合は、他の所得区分との損益通算が可能です。雑所得では、同じ雑所得のものとしか損益通算できないものの、事業所得はそうした制限を受けません。
暗号資産税制の今後の動向
確定申告というと面倒に思う方もいるかもしれませんが、暗号資産を使った資産運用を行う上で税金について少しでも理解しておくと安心して取引を行えます。
暗号資産の税制は、株式など他の資産運用手段に見られるような税制上の優遇措置が未整備な状況にあります。しかし、ビットコインが誕生してから10年以上が経過した2020年現在、日本では暗号資産税制の改善を求める動きがあります。
たとえば、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は、暗号資産を申告分離課税の対象とし、譲渡損失の損益通算や繰越控除を認める「税制改正要望書」を2019年7月に金融庁に提出しました。同じく7月に、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)も「2020年度税制改正に関する要望書」を公開し、暗号資産による少額決済の非課税扱い、暗号資産取引で発生した利益の課税を20%の申告分離課税とすることなどを求めています。
このような取り組みを通して、今後、暗号資産税制に改善が見られると、株式投資やFX界隈の投資家の暗号資産市場への参加が促進され、暗号資産取引の活性化が望めるかもしれません。
暗号資産に関する法律について興味を持たれた方は「暗号資産(仮想通貨)の法律改正を解説」もご覧ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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