ビットコインのマイニング(採掘)とは? 個人でのやり方や仕組みを解説
暗号資産(仮想通貨)を手に入れる方法の1つに「マイニング(Mining)」があります。日本語で「採掘」を意味するマイニングは、「ブロックチェーンに新しい取引データを連結する時に、内容に間違いや不正がないかを膨大な計算によって検証し、その検証の対価として新しく発行される暗号資産を受け取る」ことです。
暗号資産のマイニングは、金や銀を掘るイメージになぞらえてそう呼ばれていますが、実際にはコンピューターで暗号資産の取引の承認・確認作業を行うことを指します。
この記事では暗号資産のマイニングについてその仕組みや方法を解説します。
マイニングの仕組み
マイニングが必要になるのは、前述のとおりビットコインの取引が正しく行われたかを確認するためです。
日本円等の法定通貨であれば銀行取引は銀行が承認します。しかし中央管理者がいない暗号資産(仮想通貨)の取引は、第三者であるマイナー(=マイニングする人、採掘者)が取引の正当性を検証します。
世界中で行われたビットコインの取引は、マイナーによって集められ、「ブロック」と呼ばれるデータの塊にまとめられます。各ブロックには、複数の取引データ「トランザクション」が含まれ、これをブロックチェーンに追記することで取引記録は更新されます。ブロックは平均して約10分ごとに生成され、新しいブロックが既存のブロックチェーンに連鎖されることで取引の履歴が一つに繋がっていきます。
新しいブロックをネットワークに追加するためには、マイナーはプルーフ・オブ・ワーク(PoW)に成功しなければなりません。これは、特定の難易度の条件を満たすハッシュ値を見つけ出す計算競争です。この計算において、変更可能な「ナンス値」を持つブロックのハッシュ関数を用いて、適切なハッシュ値を見つける必要があります。最初にこれを成功させたマイナーは新しいビットコイン(ブロック報酬)を獲得することができます。
重要なポイントは、「約10分間に1回のサイクルで行われるマイニング」というプロセスが完了するたびに、各ノード(マイナー)が検証するブロック(=トランザクション群)がただひとつに決定されるという点です。各ノードが同じブロックをそれぞれ検証し、完了次第、ノードが保持する分散型取引台帳(=ブロックチェーン)における最新ブロックが更新されます。中央管理者がいない分散ネットワークであっても分散型の取引台帳が自律的に構築されています。
ハッシュ値とナンス値の役割
マイニングにおいて、マイナーはブロックをネットワークに追加するための特定の条件を満たすハッシュ値を見つける必要があります。このハッシュ値は、ブロックヘッダーに含まれるさまざまな情報から計算されますが、マイナーにとってナンスはその中で唯一変更可能な部分です。
マイナーは、ブロックヘッダーを構成するナンスを何度も変更することで新しいハッシュ値を計算し、ビットコインのシステムが要求する特定の形式に合うものを求めます。
そして、適切なハッシュ値を最も早く見つけたマイナーが報酬を受け取り、新しいブロックがブロックチェーンに追加されます。
ハッシュ関数は入力した値に対して、まったく別の値(=ハッシュ値)を出力するという関数で、ハッシュ値から元の入力した値を知ることは非常に難しいという特徴を持ちます。
例えば、ビットコインではSHA-256というハッシュ関数が用いられていますが、このハッシュ関数に「DMM」という値を入力すると
「25F0F2B3C3A7EE2320155EC701726BAC70102B7913EA2AB94DB8DC28BED6A4EB」
というハッシュ値が返ってきます。
SHA-256のハッシュ関数に「DMM」を入力すると、いつも同じハッシュ値が出力されます。また、ハッシュ値から「DMM」を復元することは、ハッシュ関数の代入した値に対して全く別の値(=ハッシュ値)を出力するという特性上、困難です。
一方、小文字で「dmm」を入力すると
「DB948C52D1088E8542D212CD9D885C71D2F70C99987EA06943BF4E84E6DB51DF」
というハッシュ値が返ってきます。このように小文字にしたり、1つ文字を変えたりするだけで返ってくる値は全然違うものになるのです。
ビットコインのマイニングでは、ハッシュ関数に様々なナンス値を試し、ハッシュ値が指定されたターゲット値よりも小さくなるようなナンス値を見つけ出す必要があります。
例えば、ターゲット値が多くの先頭ゼロから成る場合、これを満たすハッシュ値を発見することが求められます。マイナーは、ほぼランダムに分布するハッシュ値からターゲットのハッシュ値を探し出す必要があるため、大きな計算能力を要します。
マイニングで最初に正しいナンス値を見つけたマイナーは、新規ビットコインとそのブロック内の全トランザクション手数料を含む報酬を得ます。このプロセスは プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)と呼ばれる、分散型ネットワークで合意形成を得るための仕組みです。
マイニング報酬について
マイニングを行った報酬では「トランザクション手数料」と「マイニング報酬」の2つが得られるようになっています。トランザクション手数料は取引データである「トランザクション」作成時に設定されるものです。マイナーは利益を大きくしようとするために、高額なものから優先的に選択して認証作業を行います。マイニング報酬は、マイニングに成功したマイナーに対して、報酬として与えられるものです。
ビットコインではブロックが平均で約10分ごとに生成されており、一番初めにブロック生成に成功したマイナーには、「マイニング報酬」として新規発行されたビットコインが支払われます。
マイニング報酬は、約4年に一度訪れる半減期で半分に減少するようになっており、ビットコインのインフレを軽減しています。
ビットコインの発行量は2100万BTCとされており、2140年ごろに新規発行が終わるとされています。ビットコインの発行が終了してからのマイニング報酬は、トランザクション手数料のみとなります。
マイニングの種類
暗号資産(仮想通貨)のマイニングには、一人で行うソロマイニングと複数人で行うプールマイニング、事業者と契約して報酬を得るクラウドマイニングの3つがあります。
ソロマイニング
ソロマイニングはその名の通り一人でマイニングする方法で、気軽にできそうなイメージがありますが、高価な機材を揃える必要があり、専門知識が必要です。
ビットコインのような、多くのマイナーがマイニングに参加している暗号資産ではソロマイニングは不可能に近い難易度となります。
マイニングを成功させるためには世界中のマイナーと競う必要があり、多くのマイナーが参加するビットコイン等では、一般的に使うコンピューターでは太刀打ちできないからです。
また、開発されたばかりで、まだ競争が激しくないアルトコインではソロマイニングが可能な場合もあるものの、最新のブロックチェーンネットワークはプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)という仕組みが主流で、マイニング自体が存在しません。
プールマイニング
プールマイニングとは自分のパソコンのマシンパワーをインターネット経由で提供することで間接的にマイニングに参加して、計算力の大きさに応じて報酬を受け取るサービスのことです。また、マイニングを行う集団のことをマイニングプールといいます。
プールマイニングは専用のソフトをインストールするだけで始めることができますが、計算力に応じて報酬を分け合うため、それなりの機材が必要です。さらに参加するマイニングプールを選ぶ作業が生じるために、ある程度のマイニングの知識が必要でしょう。
クラウドマイニング
クラウドマイニングは大規模な施設を建設してマイニングを行っている企業やマイニングプールにお金を出して代わりにマイニングしてもらい、配当という利益を得る方法です。
クラウドマイニングは自分で実際にマイニングする必要がないためソロマイニングのように高価な機材も、専門知識も不要です。
マイニング機材の購入や設置が必要ないため、始めやすい反面、投資のリターンはサービスプロバイダの効率と市場の状況に大きく依存します。また、クラウドマイニングサービスの中には詐欺的なものもあるため、提供者を慎重に選ぶ必要があります。
マイニングに関する指標や知識
マイニングでどのくらい利益が出るのかを事前に把握するために必要な指標である、ハッシュレートやディフィカルティ等を理解しておきましょう。
ハッシュレート
ハッシュレートはマイニングの採掘速度のことを指します。
ハッシュレートの単位はH/sで表され、1秒間に1回ハッシュ関数が計算されると1H/sとなります。
ビットコインにおけるマイニングは、10分の間に世界中のマイナーが一斉に計算を行い、ナンス値を見つけ出します。
自分でマイニングする時は、自分がどのくらいのハッシュレートを出せるのかと、マイニングしたい暗号資産でトータルどのくらいのハッシュレートがあるのかを知っておく必要があります。
ビットコインのハッシュレートは2024年2月には、1秒あたり、800エクサハッシュ(1エクサ=100京)を超える状況となっています。
一方、一般的なCPUのハッシュレートは15H/s程度、GPUでは11MH/s(1M(メガ)=100万)程度です。ちなみにマイニング機器大手のビットメイン社が2024年1月に発売したASIC「Antminer T21」は190TH/s(1T(テラ)=1兆)程度となっており、いかに個人マイナーが太刀打ちできないかがうかがえます。
ちなみにAntminer T21はビットメイン社のフラッグシップマシンの廉価版であり、40万円以上の価格で販売されています。
ディフィカルティ
ディフィカルティはマイニングによりナンス値を見つける難易度のことです。
ディフィカルティは先述のハッシュレートを参照して、10分に1回ナンス値を見つけられるよう約2週間に一度調整されます。
基本的にビットコインのハッシュレートはCPUからGPU、ASICと右肩上がりに上がり続けているため、ディフィカルティが上昇し続けています。
マイナーにとっては、ディフィカルティが上昇すると1日あたりに得られる報酬額が少なくなり、これまで使用していた機器でのマイニングが難しくなることもあります。それでもマイニングを続けるのであれば機器を買い換えることも検討しなければなりません。
マイニングスクリプト対策
マイニングスクリプトとは、Webサイトのソースコード内に記載されたJava Scriptより、Webサイトにアクセスしたユーザーの承諾なしに暗号資産のマイニングを自動実行することです。
近年、暗号資産マイニングスクリプトが話題に上がることも多く、マイニングスクリプトの埋め込まれたWebサイトを訪問すると、トップページを開いただけでPCの速度が低下したり、スマートフォンのバッテリーが急速に減少したりといった問題が起こります。
マイニングスクリプトの実装されたWebサイトを訪問しただけでウィルスに感染されるわけではありませんが、PCやスマートフォンがサイト運営者の収益化に利用される等の被害が及びます。
マイニングスクリプトは広告ブロッカー、アンチマイニング拡張機能、セキュリティソフトウェアなどのセキュリティツールで対策できるので、用意しておくと良いでしょう。
損益分岐点
これまでお伝えしたように、ビットコインのマイニングには多額の電気代がかかります。
そのため、せっかくマイニングしたのに電気代や機器代の投資が赤字になってしまうということも考えられます。ビットコイン価格が下落するとマイニングの損益分岐点を割ってしまうことがあるからです。
損益分岐点を計算するにはコンピューターの計算能力やマシンの費用によって様々です。
マイニングプールではハッシュレートに応じた1日あたりの収益予測を出しているところがあります。中国の大手マイニングプールであるF2Poolによると、2024年6月時点で、1TH/sあたり、1日の収益は0.058ドルほどとなっています。
マイニングプールに参加する際は参考にするといいでしょう。
マイニングにも税金がかかる
マイニングによって暗号資産(仮想通貨)を取得した場合、個人であれば所得税(雑所得)の課税対象となります。給与所得のある会社員がマイニングで利益を得た場合、国税庁のWEBページ等で確定申告が必要になるかどうかを確認する必要があります。
また、暗号資産の取得価額は、マイニングによって取得した時点の価格(時価)です。機材購入費やコンピューターを稼働させるために要した電気代等、マイニングのために要した費用については経費として計上できる可能性があります。
関連コラム:
「暗号資産(仮想通貨)にかかる税金とは?税額の計算や確定申告の方法を解説」
まとめ
暗号資産(仮想通貨)は暗号資産交換業者で購入したり、人と交換したりする方法以外にもマイニングで手に入れることができます。
ビットコインのマイニングに個人で参入することは難しくなっていますが、プールマイニングやクラウドマイニング等、別の方法を検討したり、まだ競争の緩やかなアルトコインのマイニングに取り組んだりと、できることはたくさんあります。
マイニングに取り組む際はハッシュレートやディフィカルティについてよく理解し、電気代や機器代といった支出とマイニング報酬による収入を考慮して取り組むと良いでしょう。
ビットコインのマイニングの難易度調整についてより詳しく知りたい方は「ビットコインのマイニングが価格変動に影響?その理由は難易度調整」もご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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