PoSに移行したイーサリアム、今後の動向は?
暗号資産(仮想通貨)「イーサリアム(ETH)」は、分散型金融(DeFi:Decentralized Finance)への応用やNFT(ノンファンジブルトークン)の発行規格として利用されていることから、今後の動向が注目されています。コンセンサスアルゴリズムを「プルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)」から「プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)」へ移行したことで、今後はエネルギー消費やスケーラビリティ問題が解決されるため、ますます利用されることになるでしょう。
この記事ではイーサリアムの将来性や今後の動向を紹介します。
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さらなる発展を目指す暗号資産(仮想通貨)、イーサリアムとは?
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イーサリアムは、暗号資産(仮想通貨)というだけでなく、さまざまなアプリケーションを構築できることから「ワールドコンピューター」と称されることがあります。あらゆる取引(契約)を自動実行する仕組み「スマートコントラクト」を備えており、ビジネスで活用したい企業からも注目されています。
ただし、イーサリアムは、人気が高まるに連れて、トランザクションの処理が遅れ、手数料が高騰する「スケーラビリティ問題」や、PoWのコンピューター処理に伴う過大な電力消費が問題になっていました。DeFiの利用などでは、イーサリアムのスマートコントラクトを利用した金融アプリケーションが多く使われています。そのために、大量のイーサリアムのトランザクションを処理しなければなりません。スケーラビリティ問題が起きると、ただ送付するだけで、多額の手数料がかかってしまいます。エネルギー消費が過大であることも企業が利用に尻込みする要因となるでしょう。
こうした問題を解決するため、「マージ(統合)」と呼ばれるアップデートが進められ、2022年9月にコンセンサスアルゴリズムがPoSに正式に移行されました。
「マージ(The Merge)」とは
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イーサリアムのメインチェーンと並行してPoSが実装された「ビーコンチェーン」が2020年12月からテストされてきました。マージが日本語で「統合」という意味を示す通り、マージはメインチェーンとビーコンチェーンが統合されることを意味します。
イーサリアムが「マージ」されることでPoWからPoSへとコンセンサスアルゴリズムが移行しました。PoSによって、エネルギー消費で問題となっていた「マイニング(採掘)」が不要になり、代わりにイーサ(ETH)を預け入れる(ステーク)ことによってブロックチェーンネットワークを運用するため、マイニングがなくなり、エネルギー消費量が99%削減できると予想されています。ただ、スケーラビリティを改善する「シャーディング」は2023年後半に完了する予定です(2022年9月現在)。手数料高騰への対処やエネルギー問題への本格的な解決はシャーディングを待つ必要があります。
マージ後には、ETHの発行数が減少することで、インフレ率も低下します。これまでのPoWでは、1日あたりのETH発行数は12,000ETHでしたが、マージ後は1,280ETHへと、約90%減少します。
「マージ」は以前、「イーサリアム2.0」と呼称されていました。しかし2022年1月にイーサリアム財団は、統合後には単一のイーサリアムネットワークとなることや、「ETHをETH2.0と交換する必要がある」などの詐欺が横行したことなどを理由に、イーサリアム2.0という名称を廃止しました。従来の「イーサリアム1.x」を「実行レイヤー」、「イーサリアム2.0」を「コンセンサスレイヤー(ビーコンチェーン)」に名称を改め、実行レイヤーとコンセンサスレイヤーを「マージ」するというアップデートが行われるという説明がされています。(出典:イーサリアム財団)
今後のアップデート
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イーサリアムの共同創業者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏は2022年7月、マージを含めたアップグレードとして、「サージ(Surge)」、「バージ(Verge)」、「パージ(Purge)」、「スプラージ(Splurge)」の5段階のアップグレードを明らかにしています。
マージが完了した現在は、2023年後半にシャードチェーンを実装する「サージ(Surge)」が行われる予定です。当初はシャードチェーンをマージよりも早く実装する予定でした。ただ、競合のレイヤー2(セカンドレイヤー)ソリューションが台頭したことで、PoSへの移行を早く行うべきだとして、予定が変更されました。
シャードチェーンでは、データベースを分割して処理することで、負荷を軽減させる「シャーディング」という仕組みを実装します。シャーディングによってデータサイズを小さくすることで、より多くの人がイーサリアムネットワークに参加・実行することが可能になるほか、攻撃の対象となる範囲が縮小するためにセキュリティが向上するとされます。
バージ(Verge)では、「バークルツリー(Verkle Tree)」という仕組みが導入されます。ブテリン氏によると、バークルツリーによって証明サイズを大幅に小さくすることで、イーサリアムのストレージが最適化され、ノードサイズも削減されます。イーサリアムのスケーラビリティをより向上させることにつながります。
パージ(Perge)では、バリデータに必要なハードディスク容量を削減し、ブロックチェーンを検証するプロセスが効率的になります。ブテリン氏によると、「ノードに履歴を保存する必要がなくなる」とのことです。このフェーズによって、イーサリアムは1秒あたり10万トランザクションを処理できるようになるようです。
スプラージ(Splurge)ではネットワークがスムーズに実行されることを保証する「小さな」アップグレードが予定されています。
過去のアップデート動向
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イーサリアムは、ヴィタリック・ブテリン氏が2013年に構想を発表し、2014年に開発がスタートしています。計画当初より大型アップデートを実施してきました。ここでは表組による紹介にとどめるため、アップデート実施前後の価格変動の詳細は過去のコラムをご確認ください。
日付 | 名称 | 概要 |
---|---|---|
2015年5月9日 | オリンピック (Olympic) |
イーサリアムのプレリリース版 (テストネット) |
7月30日 | フロンティア (Frontier) |
メインネットでジェネシスブロック生成。 運用開始 |
2016年3月14日 | ホームステッド (Homestead) |
スマートコントラクトおよび ネットワーキングを改善するための ハードフォーク |
7月20日 | ダオ フォーク (DAO Fork) |
2016年6月に発生した「The DAO事件」 を受けた議論の結果、ハッカーによる 資金移動自体をなかったことにする ハードフォークを実施 |
10月18日 | タンジェリン ホイッスル (Tangerine Whistle) |
2016年9月~10月にかけて、 イーサリアム・ブロックチェーンに対し 悪意のある第三者によるサイバー攻撃が 発生したため、手数料(Gas)に関する 仕様を変更するハードフォーク実施 |
11月22日 | スプリアスドラゴン (Spurious Dragon) |
2016年9月~10月に発生した攻撃に 対する対抗のため実施した、 2回目のハードフォーク。 将来の攻撃を防ぐための調整や、 リプレイ攻撃対抗が主目的 |
2017年10月16日 | ビザンチウム (Byzantium) |
大型ハードフォーク 「メトロポリス(Metropolis)」の一部。 メトロポリスは、ビザンチウムと コンスタンティノープルからなる。 匿名性を高める技術「zk-SNARKs」、 採掘報酬(マイナー手数料)の低減、 マイニング難易度調整メカニズム 「ディフィカルティボム」の延期などを 実施 |
2019年2月28日 | コンスタンティノープル (Constantinople) サンクトペテルブルク (St. Petersburg) |
2019年1月16日予定だった コンスタンティノープル(メトロポリス の一部)が延期されたため、まとめて実施。 コアプロトコル仕様、 スマートコントラクト関連仕様、 ディフィカルティボム延期などを含む |
12月7日 | イスタンブール (Istanbul) |
匿名暗号資産「Zcash」との 相互運用性改善、プライバシー関連 ソフトウェア開発向け仕様変更、 セカンドレイヤーのパフォーマンス向上、 手数料(Gas)関連の仕様変更を含む |
2020年1月2日 | ミュア・グレイシャー (Muir Glacier) |
マイニングの難易度調整メカニズム 「ディフィカルティボム」実施を延期 |
2020年10月14日 | ステーキング・デポジット・ コントラクト・デプロイド (Staking deposit contract deployed) |
ステーキングを導入 |
2020年12月1日 | ビーコンチェーン・ ジェネシス (Beacon Chain genesis) |
ビーコンチェーンがブロック生成を開始 |
2021年4月12日 | ベルリン (Berlin) |
特定のEVMの手数料(Gas)を最適化し、 複数のトランザクションタイプへの サポートを強化 |
2021年8月5日 | ロンドン (Istanbul) |
手数料(Gas)モデルを変更した EIP-1559を導入。手数料の払い戻し方法の 変更やディフィカルティボムの スケジュールの変更 |
2021年10月27日 | アルタイル (Altair) |
ビーコンチェーンの最初のアップグレード。 バリデータの管理方法や報酬体系を変更 |
2021年12月9日 | アロー・グレイシャー (Arrow Glacier) |
ディフィカルティボムの延期 |
2022年6月30日 | グレイ・グレイシャー (Gray Glacier) |
ディフィカルティボムの3ヶ月延期 |
関連コラム:
「イーサリアム分裂の歴史」
「イーサリアムの過去の価格推移を追う!今後の動きに影響する要因とは?」
「イーサリアムとは?特徴やこれまでの歴史をわかりやすく解説」
まとめ
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イーサリアムは「マージ」によってコンセンサスアルゴリズムがPoWからPoSに移行しました。課題とされていたエネルギー消費や、スケーラビリティ問題が改善されることが期待できます。
DeFiやNFT、GameFiといった新たな分野が生まれているブロックチェーン分野で、スケーラビリティ問題の解決は重要です。「イーサリアム・キラー」と呼ばれるライバルとの競争が激化する中で、アップデートによって利用に障害が少なくなることは、価格にも影響するかもしれません。
さらには、「サージ(Surge)」、「バージ(Verge)」、「パージ(Purge)」、「スプラージ(Splurge)」といった、新たなアップデートも明らかになっています。スケーリングに関するアップグレードは今後も続くため、情報収集は怠らないようにしましょう。
イーサリアムについて詳しく知りたい方は「イーサリアムの過去チャートから価格推移を追う!今後の動きに影響する要因とは?」もご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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