ハードフォークで一時上昇!2018年ビットコインキャッシュの動き
2018年にビットコインキャッシュは2度のハードフォークを実施しました。特に11月のハードフォークでは、価格が一時的に上昇したのです。ビットコインから分裂する形で生まれたビットコインキャッシュは、仮想通貨市場で注目を集める銘柄の一つだと言えます。ビットコインキャッシュは、誕生の段階から「ハードフォーク」と深い関わりを持っているのです。今回は、ビットコインキャッシュの2018年における価格推移とハードフォークの概要を紹介しつつ、その価値や将来性について見ていきましょう。

1. なぜビットコインキャッシュが生まれた?2018年以前の動き
ビットコインキャッシュは、2017年8月1日にビットコインから分裂することで生まれた仮想通貨です。ビットコインが抱える問題への対応方法について、多数派とは異なる意見を支持する人々がビットコインキャッシュを誕生させました。当時のビットコインは、処理するべき取引情報が過剰になっており、送金が遅延する「スケーラビリティ問題」に直面していました。この問題を解決するためにビットコインが選択したのは「segwit(セグウィット)」と呼ばれる処理データを小さくする技術の導入だったのです。ところが、特定のコミュニティからは「Big Block(ビッグブロック)」と呼ばれるブロックチェーンのブロックサイズ自体を大きくする方法が提案されました。最終的に両者の折り合いはつかず、ブロックサイズ拡大を主張する人々はビットコインキャッシュという新しい仮想通貨を支持するようになったのです。
ビットコインキャッシュは、ビットコインから分裂したこともあり、とても流動性が高い仮想通貨だと言われています。ビットコインほどではありませんが、支持者も多く市場での取引も活発です。また、ブロックサイズの上昇に伴って送金処理の速度も向上しており、スケーラビリティ問題も緩和されています。ただ、ブロックサイズが大きいためにフルノード(すべての取引データを保有する人)を立てにくいというデメリットも抱えているのです。
2. 2018年ビットコインキャッシュの価格推移
ビットコインキャッシュの価格は、2018年1月上旬までは高値で推移していました。ところが、その後は長く下落傾向が続いています。ビットコインキャッシュの価格推移を詳しく見ていきましょう。
2-1. 1月~9月の価格推移
2018年1月上旬、ビットコインキャッシュの価格は1BCH=30万円前後で推移していました。仮想通貨市場全体が活況になっていたこともあり、誕生以来の最高値を記録したのです。しかし、1月下旬に入ると価格が急落し、1BCH=20万円程度で推移するようになります。2月に入ってからも下落トレンドは継続し、1BCHの価格は10~15万円の間を揺れ続けました。4月に入ると下落基調はさらに明確になり、ついに1BCHは6万円台にまで急落してしまいます。5月に入ると価格は上昇に転じ、一時は1BCH=20万円近くまで値を戻しました。ただ、それも長くは続かず5月29日には再び下落し、価格が10万円を割り込みます。その後、6~7月は7~12万円台を推移しつつ小康状態となりました。8月中は価格の下落が進んでいき、9月にはついに1BCH=5万円を下回ってしまったのです。
2-2. 10月~12月の価格推移
ビットコインキャッシュの価格は10月に入ってからも5万円前後が維持され、横ばい状態が続きます。11月上旬には価格上昇の兆しが見え、1BCH=7万円台まで値を戻しました。これはビットコインキャッシュのハードフォーク(互換性のないアップデート)を控えていたため、「新しい仮想通貨が誕生するのではないか」との期待感から、買い注文が増えていたことが原因だと言われています。11月16日にはハードフォークが実施されたものの、その後は価格の下落が続きました。11月下旬には1BCH=2万円台まで価格が落ち込み、12月中旬には1万円を割り込んでしまっています。
3. 2018年5月のビットコインキャッシュのハードフォーク
2018年5月にはビットコインキャッシュのハードフォークが行われました。このハードフォークによって、ビットコインキャッシュの機能や仕様に変更が加えられたのです。ハードフォークの実施によって、どのような変更が行われたのかを解説します。
3-1. ハードフォークで変更された点
2018年5月のハードフォークによって大きく変更された点は2つあります。それは、「ブロックサイズの拡大」と「スマートコントラクトの実装」です。それまでビットコインキャッシュのブロックサイズは8MBでしたが、ハードフォークによって32MBまで拡充したのです。ブロックの大きさはそのまま処理できるデータの量に比例します。そのため、ブロックサイズが4倍になったことで処理可能なデータが増え、取引件数の増加による処理の遅延を抑えられるようになりました。
その一方で、新たに実装されたスマートコントラクトは、ブロックチェーンに記録されるデータのなかに「契約」が含まれるようになるというものです。契約の内容がブロックチェーンに記録されることで、書き換えがとても困難になるというだけではなく、自動で決済することも可能になります。イーサリアムなどのアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)にはすでに実装されていた機能であるものの、ビットコインにはない機能として注目されていたものでした。スマートコントラクトの機能を持ったことにより、ビットコインキャッシュはビットコインとの差別化をより明確にしたと言えます。
3-2. ハードフォーク実施前後の価格変動
ビットコインキャッシュのハードフォークは、2018年5月15日に完了しました。その直前の4月中旬から、ハードフォークによって新しい仮想通貨が誕生する可能性への期待感から価格が上昇していました。これはハードフォークによって価格が上昇するという期待から、ビットコインキャッシュが買われていたためです。しかし、5月6日時点では1BCH=19万円台でしたが、15日当日には15万円台まで下落しました。価格上昇の期待感からビットコインキャッシュを購入していた人々が利益確定のための決済を行ったために、上昇していた価格が戻っていったのでしょう。
4. 2018年11月のビットコインキャッシュのハードフォーク
ビットコインキャッシュは2018年11月にもハードフォークが行われました。これは同年5月に実施されたものとは異なる性質を持っていたのです。ここからは、2018年11月のハードフォークによる変更点や価格および使用への影響などについて解説します。
4-1. ハードフォークの概要
2018年11月に実施されたハードフォークは、ビットコインキャッシュを管理するソフトに関するルール変更が理由でした。開発チームの一つである「Bitcoin ABC」主導で行われた変更だったのですが、ほかの開発チームからは賛同を得られなかったのです。Bitcoin ABCは、ビットコインキャッシュの誕生に関わった開発チームの一つでした。ブロックチェーンの管理者のうち、約50%がBitcoin ABCのソフトを採用しています。そのため、ビットコインキャッシュの開発に携わるチームのなかでも、主要な立場を維持しているのです。だからこそ、Bitcoin ABCが提案したハードフォークが大きな波紋を呼び、ほかの開発チームとの対立はビットコインキャッシュの分裂にまでつながってしまいました。
4-2. 5月のハードフォークとの相違点
2018年5月のハードフォークでは、ビットコインキャッシュのアップデートのみが行われたものの、11月のハードフォークではブロックチェーンが分裂することになりました。11月のハードフォークはBitcoin ABCが提案・主導したものです。ところが、同じく開発チームの一つであった「Bitcoin SV」が強力に反対しました。その理由としてあげられたのは、Bitcoin ABCの提案が「ビットコインの理想に反する」という点でした。ビットコインから分裂したビットコインキャッシュは、開発者や支持者の多くが「ビットコインキャッシュこそ真のビットコインである」という確信を抱いているのです。そうしたなかで、ビットコインの理想に沿わないアップデートを行おうとするBitcoin ABCに対して反発が起こったわけです。
もちろん、ビットコインキャッシュ分裂に一役買ったBitcoin ABCとしては、決して理想に反することを実施しようとしたのではないのでしょう。しかし、お互いの主張に落としどころは見つからず、結局は分裂に至ってしまいました。この分裂の影響で、仮想通貨交換業者のなかには一時的にビットコインキャッシュの取引・出庫を停止するところもあったのです。
4-3. ハードフォークで変更された点
Bitcoin ABCが主導したアップデートのおもな内容としては、「OP_CHECKDATASIG」と「canonical transaction ordering」という2つのコードの追加による仕様変更がありました。OP_CHECKDATASIGとは、取引データ以外のデータをブロックチェーンに取り込める仕様であり、スマートコントラクトの実装が可能になるというものです。もう一つのcanonical transaction orderingはトランザクションの格納方法の一種です。これを採用することによって、長期的に見た場合にブロックの承認速度が向上する可能性があると言われています。
5. 2019年以降ビットコインキャッシュはどうなる?今後の予想
ビットコインキャッシュは、2018年12月頃から価格の下落が続いてきました。これから先の値動きを予想することで、購入するかどうかを判断するためにも、2019年のビットコインキャッシュについて押さえておきましょう。
5-1. 流通量は増加するのか
仮想通貨にとって、流通量の拡大というのは大きな課題です。どれだけ優れた機能を備えていても、保有者が増えていかなければ価値を高めることができないからです。その点でいえば、ビットコインキャッシュの流通量が増大する可能性が期待される理由として、ビットコインキャッシュはほかの仮想通貨と比較して、取引手数料が安いという利点があります。これはブロックサイズの拡大によって、送金速度が向上したことも影響しているのです。また、ビットコインキャッシュは2018年のハードフォークを経て、スマートコントラクトの機能を加えることが可能になりました。
スマートコントラクトは決済手段としての利便性を高める仕組みだと言われており、ビットコインキャッシュが活用される将来に向けた下準備が整いつつあるのです。特にビジネス面での決済手段として、スマートコントラクトの機能が役立つ可能性が期待されています。
5-2. 価格は回復するのか
2019年1月中は、ビットコインキャッシュの価格はほぼ横ばいの状態が続いています。急激な価格上昇が起こるという兆候は見られず、価格の上昇については長期的に見守る必要があるでしょう。ただし、ビットコインキャッシュのハードフォークにも関わったBitcoin.comのCEOロジャー・バー氏は「ビットコインキャッシュの将来的な展望は明るい」と語っています。少なくとも、ビットコインキャッシュの将来性に期待を抱いている人はいるため、ここですぐに結論を出してしまうのはもったいないことでもあるのです。
6. 2018年のビットコインキャッシュの動きを参考にしよう!
ビットコインキャッシュは今後、流通量の増加や実用性の向上などが期待されている仮想通貨です。これから購入を検討している場合は、2018年の値動きを参考にしつつ、今後の展望について考察や予測していくことが重要でもあります。ビットコインキャッシュを取り巻く状況をよく理解したうえで、どう向き合っていくべきかを考えてみましょう。
ビットコインキャッシュについて詳しく知りたい方は「ビットコインキャッシュの価格は今後上がる?取引タイミングや注意点」もご参照ください。
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