ビットコイン価格と中国情勢の関係を解説
ビットコイン(BTC)は、市場での需要と供給によって価格が決まります。なかでも、中国市場は影響力が強く、ビットコインの価格が大きく変動する要因となることが何度となくありました。また、ビットコインの相場はほかの暗号資産(仮想通貨)の価格に影響を及ぼすこともあります。そのため、暗号資産取引に興味があるなら中国市場の動向はしっかりと押さえておくべきでしょう。
本稿では、暗号資産市場に影響を与える中国情勢について解説していきます。
中国の動向がビットコイン価格に影響
中国は暗号資産(仮想通貨)の取引が早くから行われた地域の1つです。
特に、ビットコインの人気はとても高く、実際の取引も活発でした。2017年1月頃には、中国が世界の取引シェアのおよそ90%を占める状況になったほどです。
その後、中国政府はビットコインをはじめとした暗号資産への規制を強化するようになりました。2017年9月にはICOによる資金調達を禁止したほか、中国国内の3大暗号資産交換業者を閉鎖させました。
この動きによって、ビットコインの中国人民元建の取引シェアが激減しました。
それでも2021年5月頃まではビットコインのマイニング(採掘)シェアで世界のトップを占めていたことや、売り手と買い手が直接取引するOTC取引(相対取引)が多く行われているとされたことで、中国はビットコイン価格への大きな影響力を持っていました。
しかし、中国政府が発出した2021年5月のマイニング禁止令によって、当時、史上最高値を記録するほど上昇していたビットコイン価格は急落しました。同年6月には国内の大手銀行やオンライン決済業者に対して、ビットコインなど暗号資産の取引や利用を辞めるように指示したほか、9月には暗号資産を使った決済や関連サービスを全面禁止すると発表しました。
こうした動きにより、中国では取引シェアやマイニングのシェアがなくなりました。
中国情勢が市場に与えた事例
中国におけるビットコインの人気の高さは、市場に大きな影響を与えるものでした。過去の出来事を例にして、中国市場がどのようにビットコインの相場を動かしてきたかを見ていきましょう。
2013年の暴落
2013年12月、ビットコイン価格は一時約12万7,800円という過去最高値をつけました。ところが、同年12月5日に中国政府が国内銀行に対してビットコインの取り扱いを禁止する通達を出したのです。この通達の影響から、中国にある暗号資産交換業者の一部がサービスを停止する事態に陥りました。その結果、中国市場を中心にビットコイン市場全体が混乱して価格は40%近く下落して、1BTC=約6万9,000円にまで至りました。
2017年の暴落
2017年に入った直後、ビットコイン市場に多くの日本人が参加するようになりました。そうした市場の変化もあり、2017年1月には2013年以来の最高価格を更新します。ところが、中国人民銀行がビットコインの暴騰を警戒し、警告と規制を行いました。これが原因となり、ビットコイン価格は一時的に急落します。しかし、ビットコインに対する需要の高まりから、価格の下落は安価でビットコインを購入するチャンスとして市場に受け止められました。結果、中国以外のユーザーによって買い支えられる形で高騰していきます。2017年1月には中国国内のビットコイン取引量は約1億3194万BTCであり市場の約95%を占めていたものの、同年2月には約145万BTCで市場の25%まで下がってしまいました。
2017年9月に中国政府が暗号資産(仮想通貨)取引およびICOを全面的に禁止すると、メディアを通じて発表しました。中国市場は大きく縮小することが予想されたため、ビットコインの価格は急落したのです。世界有数の取引量を誇っていた暗号資産交換業者が閉鎖や海外移転を強いられたこともあり、ビットコイン価格の暴落につながったといわれています。この時1BTC=約55万円だったものが、31万円前後まで下がりました。ただ、その後9月末になると約47万円まで価格を戻し、2017年12月には235万円まで急上昇しました。
2019年の急騰と急落
2019年10月、80万円付近で推移していたビットコインはわずか半日で105万円の高値まで価格が急騰しました。中国の習近平国家主席が暗号資産の基盤技術であるブロックチェーンについて言及したという報道が出たことで、買いが進んだのが原因とされています。
しかしその後の11月には、中国銀行上海本部が「暗号資産取引の撲滅に向けて監督を強化する」という文書を公表した事や、海外の大手暗号資産交換業者の上海事務所が閉鎖されたという報道などから相場は急落しました。
2021年の暴落
2021年は中国政府が暗号資産に関する厳しい姿勢を全面に打ち出した年でした。前述したように、5月には中国国内のマイニングを禁止する命令を発表し、6月には銀行やオンライン決済業者に暗号資産の取引を止めるように指示。さらに9月には暗号資産を使った決済や関連サービスを全面禁止し、ビットコインやアルトコインの価格は軒並み下落しました。
年 | 出来事 |
---|---|
2013年 | 中国政府が国内銀行に対してビットコインの取り扱いを禁止する通達 |
2017年 | 中国人民銀行がビットコインの暴騰を警戒し、警告と規制 |
2019年 | 習近平国家主席がブロックチェーンに言及 |
2021年 | 中国政府がマイニング禁止令や暗号資産の取引をやめるよう指示 |
中国でビットコインが規制された理由
かつて、中国によるビットコインの市場シェアは圧倒的なものでした。ところが、政府の規制などが原因で、シェアを大きく失っています。
中国政府がビットコインの規制に乗り出した背景について3つの観点から解説します。
デジタル人民元の影響
2021年に規制を厳しくしたのは2022年の北京五輪で正式に発行される中央銀行デジタル通貨(CBDC)が影響したことが大きいでしょう。
中国の中央銀行である人民銀行は、暗号資産について「通貨として市場で流通させることは容認できない」とも発言しています。ビットコインがデジタル人民元と競合することで、デジタル人民元の普及を妨げてしまう可能性を危惧しているのでしょう。
暴落や詐欺による被害の防止
ビットコインは一般的な投資対象である株式やFXなどと比較すると、ボラティリティ(資産価値変動の激しさ)が大きいため利益を増やしやすい面がありますが、変動が激しいということは、暴落などで資産を失ってしまう可能性も高くなります。
中国国内でビットコイン投資が過熱してしまうと、暴落によって巨額の損失を抱える人がたくさん現れる懸念がありました。中国国内の投資家がビットコイン投資で大損をしないように、中国政府が規制に乗り出したという面もあります。
また、新しい暗号資産を発行することで資金を集めるICOが乱立していたことやマネーロンダリングの懸念も規制の理由とされています。中国政府はICOの大部分について金融詐欺であると指摘しており、投資家が詐欺行為で被害に遭わないようにする狙いもあったのでしょう。
国が直接管理できない
中国政府は中国国内からの資本流出を止めるために、厳しい資本規制を実施しています。その規制の抜け穴として利用されていたのがビットコインだったのです。
ビットコインは匿名性が高く、法定通貨における中央銀行のように管理を行う組織が存在しません。そのため、ビットコインの普及により、中国政府の資本規制が効力を失うことを警戒したといわれています。もし、ビットコインが人民元よりも普及するような状況になれば、人民元の価値や需要を維持するのが難しくなるでしょう。そうした事態を防ぐこともビットコインを規制する目的の1つといえるでしょう。
中国の規制による今後の影響
中国の暗号資産投資家の多くは相対取引を行なってきましたが、2021年9月の規制によって相対取引も不可能になってしまいました。
2021年12月現在では、暗号資産の取引やマイニングといったサービス全般が禁止され、中国は暗号資産を遮断しています。
中国でマイニングを行なっていた業者も、カザフスタンなどの電力が安価な国に移転するなど、急速に「中国離れ」が進んでいます。
そのため、中国によるビットコインへの直接的な影響は、政府が規制を見直さない限りは少なくなりそうです。
影響があるとすれば、中国経済の動きによるものがあります。2021年11月から12月にかけて、中国の不動産開発大手である恒大集団の債務危機問題が起きた際には、世界経済全体が金融危機への警戒感を示したことで、暗号資産市場でも売りが進みました。
まとめ
ビットコインの価格は中国の規制状況によって乱高下するという事態を何度となく経験してきました。しかし、2021年12月現在は、中国政府は暗号資産市場を切り離しています。政府の対応が変更になることで、再びシェアを取り戻す可能性もゼロではありませんが、数年内に大きな方針転換がされるとは考えにくいでしょう。
今後の影響としては、恒大集団の債務危機のように経済全体に大きな影響が出る時などが注目ポイントになりそうです。
ビットコインに関する世界のニュースについて興味を持たれた方は「ビットコインや暗号資産(仮想通貨)取引の注目ニュースをまとめて解説」もご参照ください。
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