ローソク足以外にもいろいろあるチャートの指標
仮想通貨の取引を行う際に欠かせないツールであるチャートには、ローソク足以外にもさまざまなタイプが存在しており、それぞれに特徴やメリットがあります。そして、こうしたチャート分析に用いる指標は2つのカテゴリーに大別できます。
それら2つにはどこに違いがあって、どのように使い分けるのが有効なのでしょうか? さらに、各々の具体例としてはどういった指標が挙げられるのでしょうか?
チャートはトレンド系とオシレーター系に大別される
仮想通貨をはじめ、株式や為替などの取引でも幅広く用いられているチャート分析の指標には、大きく分けて「トレンド系」と「オシレーター系」があります。それぞれの概要について簡単に説明すると、トレンド系は価格の推移にどのような傾向(トレンド)がうかがえるのかを検証し、それをもとに今後の展開を予想するための指標です。
これに対し、オシレーター系は相場の過熱感を客観的な数値で判断する指標です。目の前で取引されている仮想通貨の価格が割高なのか、それとも逆に割安なのかを把握する目安となります。指標の数値が一定以上なら買われすぎ(割高)、一定以下なら売られすぎ(割安)といったように判定します。
それぞれにはメリットとデメリットがあり、そういったことを念頭に置いて使い分けるのが理想的なのですが、トレンド系重視派とオシレーター系重視派の投資家が存在しているのも確かでしょう。これら2つの派閥は投資のスタンスが対照的だと言えます。
トレンド系重視派の大半は、足元の相場で発生している流れを重視し、それに沿って取引を進めていく順張り(トレンドフォロー)の投資を基本としているはずです。チャートによって上昇トレンドが始まっているのを確認したうえで、価格がさらに高くなることを期待して買うという投資行動をとります。
対照的にオシレーター系重視派には、割安(もしくは割高)な価格が適正な価格まで戻ることを期待して、逆張り(カウンタートレンド)の投資を仕掛ける人が多いようです。チャートにおいて割安と判断できる局面で買いを入れる一方、割高とみなせる局面ではレバレッジ取引で売りのポジションを建て、読み通りに価格水準の修正が発生した場合に利益が得られます。つまり、眼前で生じているトレンドとは逆方向の動きを期待するわけです。
トレンド系の指標で相場の方向性を判断する
では、トレンド系の指標としては、どのようなものが挙げられるのでしょうか? 最もメジャーな存在と言えるのが移動平均線で、ローソク足のチャートにも併記されているのが一般的でしょう。移動平均線は一定間隔ごとの価格の平均値を日々計算し、その推移をグラフ化したもので、その向きや価格との位置関係などからトレンドの状態を判定するようになっています。
そして、他にも「ボリンジャーバンド」や「MACD」などがトレンド系の代表的な指標です。そのうち、ボリンジャーバンドはジョン・ボリンジャー(John A. Bollinger)という人物が1980年代に考案したもので、「価格のほとんどは特定の範囲(バンド)内に収まる」という統計学の考え方に基づき、高校・大学受験でも目安にされている偏差値を用いています。
通常、仮想通貨の価格は移動平均線に寄り添うように推移し、大きくかけ離れた動きをするのはレアケースです。そこで、ボリンジャーバンドでは最も値動きが収まりやすい移動平均線を軸に、その次に収れんしやすい上のレンジ(価格帯)を+1σ(シグマ)、さらにその次の上のレンジを+2σ、同様に下のレンジについても-1σ、-2σと定めています。
偏差値で言えば、+1σは60で-1σは40です。そして、+2σは70で-2σは30です。そのことからも、価格は±1σに収まるケースがほとんどで、±2σまで達するのは珍しい現象だということをイメージできるでしょう。
+2σ〜-2σにおけるバンドの間隔(帯の幅)は広がったり縮まったりを繰り返しています。転換点が訪れると収縮し、上昇もしくは下落のトレンドが発生すると拡大するという傾向があるので、その動きに着目したトレードを仕掛けることができるわけです。
続いて、MACDは「移動平均収束拡散手法」とも呼ばれ、1979年にジェラルド・アペル(Gerald Appel)という人物が移動平均線による分析をさらにブラッシュアップして確立したものです。通常の移動平均線に用いられている単純平均ではなく、「直近についた価格のほうが今後の動きに与える影響力が強い」という考えに基づいて、「指数平滑移動平均」というものが用いられています。要は、直近についた価格の比重を高めた平均値となっているということです。
そのうえで、短期の「指数平滑移動平均」から長期のそれを差し引いた数値の推移をグラフ化し、その線に指標名と同じMACDという名称をつけています。さらに、MACDの移動平均線も表示して「シグナル」と命名し、これら2本の推移から相場の状況を分析するようになっています。
価格が下落している局面ではMACDがシグナルよりも下に位置していますが、やがて上抜く局面が訪れると、それが買いのサインであると判断できます。そして、MACDの上昇が緩慢になり、再びシグナルを割り込む局面を迎えたら、それを売りのサインと受け止めて利益確定を行うのです。
移動平均線で言えば、前者はゴールデンクロスで後者はデッドクロスです。しかし、MACDでは移動平均線でそれらの現象が発生する前にいち早く買いや売りのサインが点灯するので、より機敏に対処しやすいと言えそうです。
オシレーター系の指標で相場の過熱を把握する
一方、オシレーター系の指標には「RSI」や「ストキャスティクス」、「モメンタム」、「サイコロジカルライン」などがあります。RSIは米国のJ.W.ワイルダー(John Welles Wilder Jr.)という人物が考案したもので、「相対力指数」とも呼ばれ、一定期間中における上昇幅と下落幅から価格変動の強弱を数値化し、それに基づいて買われすぎか売られすぎかを判断するようになっています。
個々の仮想通貨によって違いは出てくるものの、一般的にはRSIが20~25の水準を割り込むと売られすぎで、70〜80を超えてくると買われすぎだと言われています。ただし、相場の急変に弱いのがRSIのデメリットで、価格が一方向に極端な動きを示した場合はRSIが前述した水準を簡単に突破してしまうことがあります。
言い換えれば、RSIは上昇・下落のピッチが比較的緩やかな局面、一定のレンジ内でもみ合っている局面などで用いるのが有効です。また、仮想通貨によってRSIの推移にも特徴が出てくるので、その点も過去の推移を検証してあらかじめ把握しておくのが賢明でしょう。
次にストキャスティクスは、ジョージ・レーン(George Lane)という人物が1950年代に開発した指標で、一定期間中における高値と安値に着目して買われすぎか売られすぎかを判断するようになっています。まず、一定期間中に記録した高値や安値と比べて、目の前でつけている価格がどのような水準に位置しているのかを数値化します。そして、「%K」と「%D」という2本のラインを表示し、それらの位置関係などから買いや売りのサインを察知します。
ストキャスティクスにおける買いのサインは、「%K」が「%D」を上抜くという現象です。これに対し、「%K」が「%D」を割り込むと売りのサインと判定します。RSIと同様に、ストキャスティクスも急激な価格変動は苦手としており、比較的緩やかな推移を示している局面で活用すべき指標だと言えるでしょう。
一方、モメンタムは一定期間中における価格変化の度合いに注目して考案された指標で、「当日の終値-n日前の終値(※n日は9~14日の範囲内で定める)」という式で算出した数値をグラフ化しています。価格がほぼ一定のピッチで上昇している局面では横ばい傾向を示し、頭打ち気味になると下降するという特性があります。
価格が上昇している局面でモメンタムがゼロラインを突破したら買いのサインで、逆に価格が下落している局面でモメンタムがゼロラインを割り込んだら売りのサインとなります。
残るサイコロジカルラインは目の前の相場に対する投資家の心理状態を数値化したもので、「n日間のうちで上昇した日 ÷ n × 100(%)」という計算式で算出されています。パラメータ値であるnには12が用いられるのが一般的です。
サイコロジカルラインは0~100%の範囲内で推移し、25%以下になると売られすぎで、75%以上に達すると買われすぎであると判断できます。25%を割り込んでいたサイコロジカルラインがその水準を上抜いたら買いのサインです。そして、75%を超えたサイコロジカルラインがその水準を割り込んだら売りのサインとなります。
複数のチャートから総合的に判断するのが基本
オシレーター系だけでなくトレンド系の指標にも、弱点が存在しています。ボリンジャーバンドはバンドの幅が狭くなってきたらトレンド転換のサインとなるものの、すぐにその局面は訪れるとは限りません。「そろそろ買いのチャンスが近づいた」ということはわかっても、それがいつなのかを特定しづらいのです。
MACDにしても、移動平均線よりも早く転換点を察知しやすいのは確かですが、それでも売買のサインが出るタイミングは若干遅れ気味になります。さらに、MACDに限ったことではありませんが、売買のサインが点灯したにもかかわらず、期待した通りの相場展開とならないケースも出てきます。いわゆる“だまし”という現象で、チャートにおける法則性は100%の精度ではありません。
このように、トレンド系にしてもオシレーター系にしても一長一短があるものです。その一方で、それぞれが強みとしているポイントが異なっています。
だからこそ、最適なのはトレンド系とオシレーター系の両方を活用することです。ボリンジャーバンドとMACDを併用するのがその一例でしょう。バンドが収縮し始めたら、MACDでゴールデンクロスが出現するのを待ち構えるわけです。
もちろん、MACDとストキャスティクスや、MACDとRSIといった組み合わせも有効だと言えます。それぞれの動きを観察しながら、双方において好機が訪れたと判断できる場面だけに的を絞れば、タイミングを見誤るリスクは自然と抑えられるでしょう。
いろいろ試して自分に合った指標を選び抜こう
同じトレンド系に属していてもボリンジャーバンドとMACDではかなり趣が異なりますし、使いやすさに関しては個人の好みも関わってくるだけに、自分にぴったりな指標はそれぞれで違ってくるものです。まずは主要なものを一通り試してみて、その中からわかりやすくて自分好みであるものを選び出すとよいでしょう。
ただし、その際はどのような投資手法を用いるにせよ、トレンド系とオシレーター系を組み合わせるのが理想だと言えます。そのうえで、双方のメリットの部分に注目した活用を行うのが効果的でしょう。
加えて、特にオシレーター系は仮想通貨ごとに割高・割安水準などの数値に違いが出てくるので、過去の推移をきちんと検証しながら、自分なりに調整を加えていくことが求められてきます。最初のうちは大変な作業かもしれませんが、慣れてくれば指標をもとにスピーディーで的確な判断が下せるようになるのではないでしょうか。
テクニカル分析について興味を持たれた方は「実際にチャートを用いて買いと売りの判断をしてみよう」もご参照ください。
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