暗号資産(仮想通貨)に大きく関与する世界のキーマンとは?
ビットコイン(BTC)の生みの親はサトシ・ナカモトとされていますが、その正体はいまだに不明です。そして、彼とは別に暗号資産(仮想通貨)の世界にはグローバルにその名を知られる人物が幾人か存在しており、彼らの一挙手一投足が価格の推移に大きなインパクトを及ぼすことも少なくありません。
具体的には、どのような立場のどういった人物が注目されているのでしょうか? 主だった人たちを列挙するとともに、彼らが過去に与えた影響や今後の見通しなどについても紹介しましょう。
暗号資産(仮想通貨)に関わる著名人の発言が価格に影響を及ぼす
投資家に憶測や思惑をもたらすキッカケの一つとなっているのが、暗号資産業界における著名人の発言です。
著名人にはブロックチェーンの開発者や投資家、さらには規制当局の幹部などが挙げられます。
開発者による発言は、ブロックチェーンプロジェクトがより使いやすくなったり、セキュリティが向上したりするなど、将来の期待が高まることで価格に好影響を与える場合があります。反対に期待を下回ると、価格の下落につながることもあるでしょう。
著名な投資家による将来の価格予想に関する発言は投資行動に影響を与え、ビジネス分野ではユースケースの拡大や縮小が起こり、当該プロジェクトの価格を左右することにもなります。
一方で変化の早い暗号資産業界では、過去に影響力を持った人物が数年後には、表舞台から姿を消しているといったことも珍しくありません。2023年3月時点での著名人、キーマンにはどういった人物がいるのかをみていきます。
暗号資産(仮想通貨)に深く関わる著名な開発者
オープンソースプロジェクトであるビットコインに関連する著名な開発者として挙げられるのが、ブロックストリーム社を創業した暗号学者のアダム・バック氏です。同氏が発表した「ハッシュキャッシュ(Hashcash)」論文をもとに、ビットコインのコンセンサスアルゴリズムであるプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)は作られました。
ハッシュキャッシュのアイデアがビットコインに採用されていることから、業界ではアダム・バック氏を「暗号資産の父」と呼ぶ声のほか、サトシ・ナカモト本人なのではないか、という噂がありますが、バック氏は否定しています。
バック氏が経営するブロックストリーム社はビットコイン・コアやライトニング・ネットワーク、シュノア署名といったビットコインの重要技術に取り組んでおり、ビットコインコミュニティの発展に大きく貢献しています。バック氏は2019年に福岡県で開催されたG20財務省・中央銀行総裁会議の関連セミナーに、海外の中銀総裁などと並んで招待されていることからも重要な人物であることがわかるでしょう。バック氏はTwitterなどで頻繁に発言しており、ビットコイン支持者としてコミュニティへの大きな影響力を持っています。
アルトコインの著名開発者
一方、アルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産)の開発者としては、イーサリアム(ETH)の生みの親であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏がまず挙げられます。彼は19歳にしてイーサリアムのプラットフォームを考案し、スマートコントラクトと呼ばれる新技術を開発しました。
2023年3月現在、イーサリアムは数多くある暗号資産の中で最もユースケースの広がりがあるプロジェクトといえます。分散型金融(DeFi)やNFT(ノンファンジブル・トークン)の多くがイーサリアムのブロックチェーンをもとに作られているためです。DeFiやNFTは2020〜2021年ごろから、暗号資産業界だけでなく、業界外でも話題となっているため、イーサリアムの開発の進展が大きく注目されています。その開発の中心人物であるブテリン氏の発言や同氏が発表する開発のロードマップが関連銘柄の価格や投資家の行動に大きな影響を与えています。
ブテリン氏以外では、ポルカドット(DOT)を創業したギャビン・ウッド氏も重要です。ウッド氏はブテリン氏とともにイーサリアムを共同創業した人物で、ウェブ3財団の代表を務め、「ウェブ3」という言葉を広めた人物の一人でもあります。
ウッド氏はポルカドットの普及を進めることによって分散型のウェブ世界を実現しようとする代表的人物として、発言や行動が注目されています。
暗号資産(仮想通貨)を大量保有する著名投資家
暗号資産を大量保有している投資家の発言も、価格の動向に影響を及ぼす可能性が考えられます。たとえば、ウィンクルボス兄弟(Tyler & Cameron Winklevoss)はFacebookに自分たちのアイデアを盗まれたと訴え、6,500万ドルの賠償金を得たことで有名になった双子です。彼らはそのお金をビットコインに投資し、世界有数の大量保有者となっています。米ハーバード大学出身のウィンクルボス兄弟は、海外の大手暗号資産交換業者を運営し、強気の暗号資産投資家として知られているほか、ビットコインETFを申請するなど関連事業にも積極的に投資しています。
暗号資産業界の動向を知るという点でヘッジファンドやベンチャーキャピタルも重要です。暗号資産ファンドであるギャラクシー・デジタル・ホールディングスを率いるマイク・ノボグラッツCEOは、価格予想や業界予想の発言が度々メディアに取り上げられます。過去にはテラフォームラボといった新しいプロジェクトにも積極的に投資したこともあり、業界の動向を見据えている人物として投資家が一挙手一投足を注目する人物です。
ノボグラッツCEOは、2022年12月に米大手マイニング(採掘)会社の施設を約90億円で購入し、マイニングビジネスにも参入しました。そのほかにも機関投資家向けカストディ企業を買収するなど、暗号資産に関して多方面に影響を広げています。
ベンチャーキャピタリストのバリー・シルバート(Barry Silbert)氏も、比較的早期から大量のビットコインを保有していると言われています。同氏が2015年に設立したデジタル・カレンシー・グループは、ビットコイン投資信託や暗号資産メディア、融資業、暗号資産交換業者など、暗号資産に関わるあらゆる企業を保有しています。どの企業もその分野でのトップ企業です。そのため、シルバート氏が投資する企業についても、業界の将来を見据えているものとして注目を集めています。
ビジネス界からの影響が価格を左右
ビジネスパーソンとして大きな影響を暗号資産(仮想通貨)業界に与えているのは、イーロン・マスク氏が筆頭に挙げられます。世界で最も多くの資産を持つ個人投資家であるマスク氏は、Twitterでの発言を通じてビットコインやアルトコインの価格に影響を与えているとされています。
最近では2022年10月にマスク氏が440億ドル(6兆4,400億円相当)でTwitterを買収したことを受け、同氏が「好きな暗号資産の一つ」として公言していたドージコイン(DOGE)が急騰しました。過去にはマスク氏がTwitterのプロフィールに「#bitcoin₿」と追記したことでビットコインが急騰したこともあります。
また、マスク氏がCEOを務める電気自動車企業テスラが2021年2月、15億ドル分(当時1,600億円相当)のビットコインを購入したことを発表した上、テスラ製品の決済手段としてビットコインを導入すると発表したことを受けて、ビットコインは当時、4万8,000ドル(625万円相当)を初めて突破します。しかし一転して、ビットコイン決済の受け入れを中止すると、市場は急落しました。このように、ビジネス界の大物の発言は暗号資産価格に大きな影響を及ぼしています。
マスク氏ほど実際の価格に大きな影響を与えるわけではありませんが、Twitterの共同創業者であるジャック・ドーシー氏の動きも注目されています。ドーシー氏はTwitterの他に送金アプリや決済サービスを提供する企業を率いています。2021年11月にはTwitter CEOの座を退き、暗号資産事業に注力すると発言しました。2022年5月にはTwitterの取締役からも退いています。
ドーシー氏はアフリカでビットコインを普及させようと尽力しています。それは、ビットコインを人々が保有することで権威主義的な政府に立ち向かい、経済的自立につながるとドーシー氏が信じているためです。
ドーシー氏は、Twitter社のCEOを辞任した後、分散型SNS「ブルースカイ(Bluesky)」の構築にも取り組んでいます。Twitterは暗号資産界隈で盛んに使われているソーシャルメディアプラットフォームの一つですが、ビットコイン推進派であるドーシー氏の新しいSNSも、暗号資産界隈で積極的に使われるものになるとの期待が高まっているといえるでしょう。
規制側の重要人物
暗号資産(仮想通貨)はマネーロンダリングやテロ資金供与に使われる懸念から、世界各国の金融当局が規制を検討、実施しています。さらに2022年11月に海外の大手暗号資産交換業者が無計画な経営から経営破綻し、相場が暴落、複数の大手企業が倒産したことで職を失った人が多く出たこともあり、適切な規制を求める声が高まりました。
特に世界最大の経済大国であるアメリカでは、2023年3月現在は連邦政府レベルで暗号資産を規制する枠組みがありません。そうした状況の中で米証券取引委員会(SEC)が詐欺や違法な勧誘が行われている暗号資産プロジェクトを提訴するなどして、執行による実質的な規制が行われています。
2023年3月現在は、ゲイリー・ゲンスラー氏がSEC委員長に就いており、アメリカの規制の行方に関して発言が注目されています。
ゲンスラー氏は在職中に分散型金融やステーブルコイン、カストディ、上場投資信託、レンディングプラットフォームに関して政策を導入したいと述べています。アメリカの規制が整えば、暗号資産市場全体に影響が波及することが考えられるでしょう。
今後注目のキーマン
今後重要人物になると注目されているのが、人工知能チャットボット「ChatGPT」を開発したサム・アルトマン氏です。アルトマン氏は2021年に「ワールドコイン(Worldcoin)」という暗号資産プロジェクトを開始しており、2023年上半期に公式にリリースされる予定です(2023年3月現在)。
ChatGPTが2023年を通じて10億人を超えるユーザーを獲得するとの予想もあることから、ワールドコインも多くのユーザーに普及することを目指しているとのことです。アルトマン氏は2023年に自然言語処理やロボット工学を通じた人工知能の様々な取り組みを進めることが期待され、今後の動きに注目が集まっています。
まとめ
変化の早い暗号資産(仮想通貨)業界では多くのキーマンが出てきます。投資家やビジネスマン、開発者など、「この人だけをチェックしておけば間違いない」というわけにはいきません。
ただ、今回紹介してきた人物は多くがTwitterで多くのフォロワーを抱えています。Twitterで多数のフォロワーを抱える著名人たちの発言は、その真偽は抜きにして大きな影響を及ぼしやすいことは間違いないといえるでしょう。結局、「何らかのサプライズ発言→投資家の思惑を誘引→暗号資産の価格急変」という図式が成り立っているわけです。
しかも、いい意味と悪い意味のどちらにおいても、サプライズの度合いが大きければ大きいほど、価格へのインパクトが強まります。そのうえで、急激に極端な動きを示した後には、すぐさま反対方向へと流れが変わるケースも少なくないのが実情でしょう。
すでに上昇が顕著になってから下手に後追いすると、逆流に飲み込まれる恐れがあります。中長期的な予想のようにすぐさまシロクロがつかない内容のものを別とすれば、著名人の発言が招いた価格の急変は長続きしないと割り切ったほうが無難かもしれません。
暗号資産のニュースについて興味を持たれた方は「ビットコインや暗号資産(仮想通貨)ニュースの見方は?」もご参照ください。
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