暗号資産(仮想通貨)での分散投資を解説
投資や資産運用では、分散投資が基本です。一つの資産だけに投資していると、リスクが大きいため、複数の資産に分散させる必要があります。
通常は株や債券、国内株や外国株といった資産で分散投資するとされますが、ここで暗号資産(仮想通貨)は対象になるのでしょうか。本記事では暗号資産と分散投資の必要性の他に、ビットコイン(BTC)以外にもイーサリアム(ETH)やリップル(XRP)など多くの暗号資産が発行されている状況下において、暗号資産同士での効果的な分散投資についても解説します。

分散投資がもたらすメリット

分散投資とは、投資や資産運用におけるリスクを軽減するための手法です。
投資においては「リスク=危険」ではなく、「リスク=不確実性」を意味しています。たとえば、一般的にリスクがほぼゼロに等しいとされる預貯金は利息が得られやすい仕組みになっています。ただし確実性の高い反面、利息の利率は非常に低くなっています。
これに対し、暗号資産の価格は大幅に上昇したり、反対に下落したりする可能性が高いものです。ただし確実に起こるのではなく、「不確実性=リスク」が高い投資商品です。
このように、リスクが高い投資対象は、不確実性が高い代わりにハイリターンを期待できます。逆にリスクが低ければ低いほど、収益が手元に入る可能性が高くなるものの、預貯金の利息が象徴するように、得られる利益は少なくなります。
不確実性をできるだけ軽減しつつ、全体的な収益性も確保するために行うのが分散投資の目的です。タイプの異なるさまざまな投資対象に資金を分散することで、全体的なリスクとリターンのバランスを図ります。
分散投資の種類

では、具体的にどのような投資対象に分散するのが効果的なのでしょうか? 最も基本的なものとして挙げられるのは、次のようなものです。
- 国内株式
- 外国株式
- 国内債券
- 外国債券
- 国内不動産(J−REIT)
- 外国不動産(グローバルREIT)
- コモディティ
この中でも代表的なものが国内株式と外国株式、国内債券と外国債券です。外国株式や債券、不動産については米国といった特定の地域でまとめたものや先進国、新興国で分類されることもあります。一般的に、先進国の株式よりも新興国株式の方が値動きが大きく、利回りも高いケースが多いですが、不確実性が高く、リスクも高い商品とされます。
J―REITやグローバルREITとは、不動産に小口から投資できるように整備された投資信託です。投資家から資金を集めて不動産に投資を行い、家賃収入や売却益から投資家に分配金を支払います。
コモディティは原油のようなエネルギー、金をはじめとする貴金属、小麦などの穀物といった商品市場で取引されているものの総称です。
一般的に債券の方が株式よりもリスクが低く、REITは両者の中間とされます。また、コモディティは株や債券とは異なる値動きをします。暗号資産はこれらに比べてリスクが高い資産と言えるでしょう。

株と債券に暗号資産(仮想通貨)も組み入れる流れ

それでは暗号資産はポートフォリオ(保有する金融商品の組み合わせ)に組み入れるべきなのでしょうか?
世界的に見渡せば株式と債券を運用の中核に据えている投資家が多いのが現状です。しかし最近では、大物投資家や海外の大手金融機関などがポートフォリオに暗号資産を組み入れたり、それを公言するニュースが報じられたりしています。
著名投資家のポール・チューダー・ジョーンズ氏は2021年6月、アメリカでのインフレが長期的な傾向であるとして、ビットコインはインフレリスクを回避するための重要な資産だと発言しました。同氏はポートフォリオの5%をビットコインで保有することを推奨しています。この他にも2021年4月にアメリカの大手投資銀行も、機関投資家向けのポートフォリオにビットコインを組み入れました。
分散投資では、「コア」と「サテライト」という戦略が用いられることがよくあります。先進国の株式や債券への投入資金の比率を高くして運用の「コア」に位置づけたうえで、一部の資金を「サテライト」として新興国株式などに振り分けて、リスクを抑えながらも利益を得ようとする戦略です。
ポール・チューダー・ジョーンズ氏の発言のように、暗号資産も「サテライト」としての位置づけで、資金の一部を投じる流れが出てきているようです。
相関係数からみる暗号資産(仮想通貨)の分散投資

分散投資をする際の基準の一つに「相関係数」があります。相関係数は2つの資産に連動性があるかどうかを図る指標です。+1〜−1で表され、+1に近づくほど正の相関(2つの資産が同じような値動き)を示し、−1に近づくほど負の相関(2つの資産が反対の値動き)を示します。
前述のように、分散投資では全体的なリスクとリターンのバランスを図るのが目的です。特に相関係数が0付近からマイナスの資産を組み合わせて運用すれば、特定資産の値下がりを他の資産で打ち消すことができます。
アメリカの代表的な株価指数であるS&P500、金(ゴールド)、米ドルと、ビットコインとのそれぞれの相関係数を見てみましょう。

上図にみられるように、2020年はビットコインとS&P500や金の相関は正の水準を示していましたが、2021年に近づくに連れて、金の相関はマイナスになり、S&P500も6月から負の相関を示すようになりました。
ここから、2021年後半は株式や金に対するリスクヘッジとして、ビットコインを保有することを検討する価値がありそうだと判断できます。ただし、相関関係は変動することが多いため、判断材料の一つと捉える方がいいでしょう。
関連コラム:
「主要国通貨と仮想通貨の相関関係」
暗号資産(仮想通貨)の2つの分散投資

暗号資産での効果的な分散投資として、下記の2つの方法を意識しましょう。
1つ目は、ビットコインだけでなく、イーサリアムやリップルなど「複数の暗号資産を持つこと」です。
一般的に暗号資産市場全体を長期の時間軸で見ると、ビットコインに連動するような値動きをしています。しかし短・中期では、ビットコインの上昇率に比べイーサリアムの上昇率が高かったり、リップルが単独で上昇したりする現象が見られます。暗号資産の歴史はまだ浅く、どの銘柄が値上がりするのかはまだわかりません。
ただし、俗に「草コイン」と呼ばれるものには、特に注意を払ったほうがよさそうです。草コインとはアルトコインの中でも時価総額が低く、知名度も低いものの総称です。一攫千金を期待できることを理由に一部の投資家が注目しがちですが、一般的にギャンブル性が高いと言わざるをえないものもあり、近づかないに越したことはないでしょう。
2つ目は、資金を投入するタイミングを複数回に分けることで購入価格を平均化してリスクを軽減させる「時間分散」というアプローチです。
暗号資産をはじめ、たくさんの人たちが参加してそれぞれの意向に沿って売買が行われているものは常に価格が上下しており、不確実性が高いと考えられます。そこで、投資時期を分散することで価格変動の影響を緩和するのが「時間分散」の狙いです。
「時間分散」では、ドル・コスト平均法という手法を用いるのが一般的です。これは、暗号資産のように価格が変動するものを定期的に定額ずつ投じて購入するという投資行動のことです。一定量ではなく一定額の購入に徹することで、結果的に価格が安い局面では購入する量が増え、逆に価格が高い局面では購入する量が減るため、購入価格を平準化できます。
まとめ

2021年頃から、著名投資家の中にも暗号資産を分散投資の対象としてみる動きが出てきています。
資産運用としては、株式や債券などをポートフォリオの中核としてしっかりと確立させ、何%を暗号資産に組み入れるのかを十分に検討した上で決めていくのがいいでしょう。
暗号資産の分散投資の方法としては、ビットコインだけでなく、イーサリアムやリップルなど複数の銘柄を検討するのも大切です。さらに投資する時期をずらすなどのリスク管理も検討しましょう。
暗号資産(仮想通貨)取引におけるリスク管理について興味を持たれた方は「暗号資産(仮想通貨)のトレードにはリスク管理が不可欠」もご参照ください。
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