暗号資産(仮想通貨)における長期保有(ガチホ)のメリットとデメリット
短期的な価格の浮き沈みには翻弄されず、大幅な価格上昇を期待してじっくりと時間をかけて臨むのが長期保有(ガチホ)です。暗号資産(仮想通貨)が将来的にさらに普及し、より多くの人たちから高く支持されると見込んで投資します。
期待通りの推移を辿れば非常に大きな成果を享受できそうですが、デメリットや気をつけるべきポイントとしてはどのような点が挙げられるのでしょうか?このコラムでは、暗号資産における長期保有について説明します。
暗号資産(仮想通貨)の長期保有(ガチホ)とは
暗号資産業界では、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産を購入後、売却せずに長期保有することを「ガチホ」すると呼びます。保有期間に決まった定義はありませんが、いったん買ったら1年〜数年、あるいは10年、20年といったタームで保有し続けることを指します。
購入後に評価損を抱えたために、やむを得ず長期保有している状況を「塩漬け」とネガティブな意味を込めて表現する場合がありますが、ガチホは意識的に長期保有し、ポジティブなニュアンスで使われます。
「ガチホ」は英語で「HODL」と大文字で使われることが多い言葉です。HODLは2013年にビットコインに関する投稿の中で、あるユーザーが「I AM HODLING」と、ビットコインを保持する意思表示した際に「Hold(保有)」の綴りを間違えたことで広がりました。
暗号資産は株式や債券といったその他の資産に比べて値動きが激しいという特徴があります。そのため、短期的な上げ下げに一喜一憂せず、時間を味方につけるというのが長期保有の発想です。長期的に暗号資産の価値が高まっていくというストーリーが大前提となっています。ただし、まだ誕生してから歴史が浅い暗号資産では、現在は上昇していたとしても、長期保有の間に価格が大きく下落してしまうリスクも考えられるでしょう。
一方で、長い歴史を有する株式投資においては、長期保有の有効性が実証されています。たとえば米国株(NYダウ)は過去20年間で約3.8倍になっており、いずれのタイミングで投資していても利益が発生していたことになります。
その点、暗号資産は筆頭格のビットコインでさえ10数年程度の歴史しかないうえ、誕生から数年間はあまり流通していなかったこともあり、長期投資が暗号資産において有効かどうかはまだ判明していません。
長期保有(ガチホ)のメリット
暗号資産(仮想通貨)を長期保有する場合のメリットについて説明します。メリットとしては次の3点が挙げられます。
・相場を気にする必要がない
・専門知識がほとんど必要ない
・手数料コストを抑えられる
相場を気にする必要がない
長期保有を前提とした投資戦略の場合、短期的な下落を気にする必要がないというのが大きなメリットとして挙げられます。ボラティリティが大きい暗号資産では、短期取引では常に相場に張り付いていなければ、利益を出すことは難しいでしょう。
専門知識がほとんど必要ない
一旦、購入した後は、ひたすら保有を続けるだけであれば、さまざまな投資戦略を駆使する必要はありません。暗号資産でもテクニカル分析やファンダメンタルズ分析といった手法はありますが、長期的に値上がりすれば利益につながるため、専門知識はそれほど必要にはならないでしょう。
手数料を抑えられる
短期取引では、売買を繰り返す必要があるために、その都度手数料がかかります。一方で、長期保有の場合は取引頻度が少ないため、手数料を抑えることができます。
長期保有(ガチホ)のデメリット
一方で、長期保有のデメリットは以下の3点が挙げられます。
・値上がりしない可能性
・経営破綻やハッキングの可能性
・資金の回転効率が悪い
値上がりしない可能性
長期的に値上がりすることを見込む長期保有戦略ですが、必ず値上がりするという保証はありません。2023年4月現在、リップル(XRP)やライトコイン(LTC)など比較的メジャーな銘柄でも、2017年末にあった暗号資産(仮想通貨)バブルに記録した最高値を下回っているのも事実です。
暗号資産交換業者が経営破綻する可能性
2022年11月には海外の大手暗号資産交換業者が経営破綻した際、出金が停止され、預けていた暗号資産を引き出すことができなくなりました。その後、日本法人では出金対応がされましたが、2023年4月現在では海外法人でいつ出金が可能になるかはわかっていません。
過去には暗号資産発行元の企業や団体が破綻し、価格が暴落してしまう銘柄もありました。そうなってしまうと、価格が戻ることが難しくなってしまうでしょう。
資金の回転効率が悪い
長期保有の戦略をとっていると、同じ資金で次々と新たな収益を狙っていくということはできません。そのため、資金の回転率が悪いといえるでしょう。レバレッジ取引などで下げ局面で利益を狙う投資もできません。短期的な値動きに一喜一憂する必要がないのが長期保有のメリットである一方で、機敏な動きで利益を狙うといった点ではデイトレードのような短期取引の方が向いているといえるでしょう。
関連コラム:「暗号資産(仮想通貨)でデイトレードを行う際のメリットとデメリット」
もしもビットコインを長期保有していたら?
ビットコインの長期保有を続けたことを想定すると、実際に利益が出るのかをシミュレーションしてみましょう。
2011年3月に日本初の暗号資産交換業者が現れ、その際の終値は1BTC=74円でした。
2023年4月末現在で、1BTC=約380万円です。
もしも、74円で1BTCを購入し、現在まで保有し続けていたら380万円の価値になっています。
上記のグラフでは、本記事を執筆している2023年4月25日までの間で、ビットコインを保有することで利益が出た日数を表しています。このグラフでは88%の期間で利益が出ていることが示されています。
しかし、ボラティリティが大きい暗号資産(仮想通貨)では、価格が急落することもあります。実際に新型コロナウイルスの経済不安が広がった2020年3月には、わずか数日で50%も価格が下落しました。
このことが長期保有戦略の魅力と怖さを物語っています。長期的には価格が上昇している者の、何度となく大きく下げる局面を経験すると、投資家からは「価値が0になるのではないか」と不安の声が度々上がります。ビットコインでは0になるほどの下落はありませんが、暗号資産によっては価値が99%下落した銘柄もあります。
これまでのビットコインの歴史を振り返ると、比較的早い段階から保有していた人は史上最高価格の前後で売っていれば膨大な利益を得たことになります。しかし、史上最高価格の前後で買った人は今なお辛抱の日々が続いているかもしれません。
結局、暗号資産の短い歴史の中では、投資を開始した時期と利益確定を行う時期によって大きく結果が異なってくるということしか判明していません。2008年のリーマンショックを乗り越えてさらに上昇し続けてきた株式と同じような結果が得られると考えるのは過大な期待だと言わざるをえないでしょう。
コツコツと少しずつ買い増していくのも一考
しかしながら、暗号資産(仮想通貨)の将来性を完全に否定してしまうのも乱暴な話かもしれません。ビットコインはあらかじめ発行上限が2,100万BTCに限定されていますが、2023年4月現在、すでに1,900万BTC以上がマイニング(採掘)の報酬として配らました。
上限に達した後も流通するものの、その希少性が高まることは確実で、そうなるとビットコインの価格には上昇圧力がかかると考えるのが自然です。
ただ、マイナー(採掘者)に支払うマイニングの報酬を半額に引き下げる「半減期」がほぼ4年間隔で訪れます。その後はマイニングで得られる利益が減少し、価格に対する上昇圧力は緩やかになっていきます。マイニングは2140年に上限に達すると見込まれているため、長期的に見るとビットコインの価格上昇は緩やかになると予想されています。
したがって、そういった将来を展望して中長期の視点で投資するという方法もあるでしょう。しかし、先述したように急に大きく価格が動きやすいという特性を踏まえれば、ずっと保有したままではなく、まとまった利益が得られそうな局面では利益を確定させたうえで再投資を行うという継投策的な中長期トレードも考えられます。
また、エントリーのタイミングにしても、大きく下げた直後ならまだしも、特に高値圏に位置している局面ではなかなか判断がつきにくいものでしょう。タイミングを見定められないなら、細かく分けて何度もエントリーするのも一案です。
面倒でなければ毎月、そこまで手をかけたくないなら四半期ごとか半年ごとといったペースで毎回定額ずつ資金を投じ、積立感覚で定期的に暗号資産を買っていくのも一考です。そうすれば、価格が低迷している局面で多めに入手できる一方、高値圏では控えめの量にとどまって結果的に取得コストを抑えられ、先々で価格が上昇に転じた場合に大きな恩恵を受けられる可能性があります。
一方で、天井圏でイグジットするのは現実的にかなり難しいことでしょう。その場では、「さすがに過熱しているかも?」と思いながらも、「まだまだ上がるかも?」と期待してしまうのが人情だからです。
こうしたことを踏まえて、将来的に期待通りの価格上昇を示した場合のイグジットの戦略においても、分散を念頭に置くのが1つの手でしょう。価格の上昇が過熱気味になってきたら、少しずつ分けて売っていくのです。
そうすれば、早く利益を確定しすぎたと後悔するリスクを抑えながら、上昇が途絶えるギリギリの地点まで粘ることが可能です。ピタリとタイミングを見極められない場合、まずは“打診買い”や“打診売り”で少しずつ様子を見ていくというのも投資のテクニックです。
短期売買から途中で長期保有に切り替えるのは禁物
最初から長期保有を考えていたならともかく、気がつけばそうなっていたという投資家が少なからず存在しているようです。たとえば、「派手に値上がりしているのですぐに利益が出ると思ったけど、買った途端に値下がりしたので、ちょっと様子を見てみよう」と考えるわけです。
そして、さらに価格が下落して含み損が大きくなっていくと、「売ったら損が出てしまうし、長い目で見ればもっと値上がりする気がするから……」と思い、そのまま我慢して保有し続けます。当初は「すぐに利益が出ると思った」のですから、明らかに短期トレードで臨んでいるはずです。
にもかかわらず、損失を確定したくないという切実な思いによって、「長い目で見ればもっと値上がりする」という中長期トレードの視点から自分自身の行動を肯定しているのです。このケースでは、「すぐに利益が出ると思った」という予測が外れた時点でいったん損切りするのが原則です。
そのうえで、「長い目で見ればもっと値上がりする」と本心から思っているなら、最初から長期保有のスタンスで買い直せばいいのです。最初に定めた方針や予想に関する前提を自分の都合のいいように途中で変更することは、投資の世界では禁物とされています。
なぜなら、そういった優柔不断な投資行動は、えてして好結果をもたらさないからです。短期トレードで入ったなら、たとえそれが損切りという苦渋の選択であっても、あくまで短期トレードとしてのイグジットを考えるのが鉄則となってきます。
もっとも、長期保有で臨んだところ、いきなり目の前で史上最高価格を大幅に更新するような状況になれば、躊躇なくさっさと利益を確定してしまっても差し支えないでしょう。それはうれしい誤算であり、自分への言い訳で作戦変更するケースとは根本が異なっているからです。
さらに上昇すると思っているなら、いったん利益を確定させたうえで再びエントリーすれば、長期保有のスタンスを崩したことにはならないはずです。先にも述べたように、ビットコインを比較的初期に買って史上最高価格で売り抜けるのは容易ではないので、長期保有の場合は途中で利益を確定させながら取り組むのが現実的でしょう。
まとめ
誰しも本音では、「短期間で劇的な価格上昇を遂げる」というパターンを最も期待しているのではないでしょうか?しかし、現実にそのようなことは滅多にないので、短期トレードで利益を積み重ねていくか、時間を味方につけて長期保有で臨むといった選択を行っています。
どちらが有効でどちらが非効率であるといった判定がつくものではなく、それぞれに一長一短があり、その人の適性も関わってくるでしょう。実際に投資を始める前に、どちらで臨むのが自分にとって合っているのかをよく考えてみることが大切です。
いずれにしても、繰り返しになりますが、ポジションを建てている最中に短期トレードから長期保有へ作戦を変更するのは好ましくありません。含み損を抱えた場合、多くの人は「もう少し我慢すれば上昇するかも?」と思いがちですが、さらなる下落に巻き込まれて損失が膨らんでしまうことが少なくないのです。
相場急変に対する対処法についても詳しく知りたい方は「ビットコインの相場急変に対する対処法は?過去の動きと今後の予想」もご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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