上値抵抗線、下値支持線とは?
テクニカル分析の基本を知っている投資家は、チャート上に「本来なら超えてはならない一線」というものがあること意識しています。上値抵抗線、下値支持線と呼ばれるもので、これらを突破するのは一大事で、大きく流れが変わった合図だと判断します。
では、上値抵抗線(レジスタンスライン)、下値支持線(サポートライン)とはどうやって形成されたラインなのでしょうか? その描き方や役割などについて説明します。

上値抵抗線、下値支持線とはどんなもの?
上値抵抗線と下値支持線は、テクニカル分析において売買のタイミングを計るうえで重要な目安となってきます。上値抵抗線は隣り合った高値同士、下値支持線は隣り合った安値同士を結んだトレンドラインのことです。
トレンドラインはその名称からもイメージできるように、価格のトレンド(方向性)を示したものです。上値抵抗線付近まで価格が上昇すると下落に転じやすく、逆に下値支持線付近まで下落すると反発しやすいという特性があります。
このように法則的な動きを示しやすいのは、テクニカル分析の基本的な知識を身につけた投資家が上値抵抗線と下値支持線を意識しながら取引しているためです。「そう簡単には上値抵抗線(下値支持線)を突破しない」と思われやすいからこそ、その水準に近づくとそれまでの流れとは逆の投資行動に出る人が増えるのです。
もっとも、これらの水準は絶対に突破できないわけではありません。そういった場合は、流れが大きく変わったと判断します。
上値抵抗線を突破した場合は、上昇圧力がかなり強いと判断でき、逆に下値支持線を割り込んだ場合は、本格的な下落局面を迎えた可能性が高いとみなせます。
こうしてトレンドが転換した後は、再びトレンドラインを引き直す必要が出てきます。すると、新たな上値抵抗線と下値支持線が明らかになるわけです。
それまで目安にしてきた上値抵抗線と下値支持線も、役割がなくなったわけではありません。上昇トレンド入りした場合はかつての上値抵抗線が新たな下値支持線の役割を果たし、下落トレンド入りした場合はかつての下値支持線が新たな上値抵抗線として機能することになるのです。
移動平均線が上値抵抗線、下値支持線の役割を果たすことも!
トレンドラインだけではなく、移動平均線が上値抵抗線や下値支持線として機能しているケースもよく見られます。移動平均線とは、一定間隔ごとの価格の平均値を日々計算し、その推移を一本のラインで結んだものです。
たとえば、5日間ごとの平均値の推移を示したのが5日移動平均線、25日間ごとの平均値の推移を示したのが25日移動平均線です。日足チャートの場合は、これら2本の移動平均線を用いて分析を行うケースが一般的だと言えます。
上昇トレンドに入った価格は、これら2本の移動平均線よりも上の水準で推移するものです。そして、上昇の勢いが強い局面では5日移動平均線を大きく超えていきます。
その後、かい離が進みすぎると反落するものの、5日移動平均線付近で再び上昇に転じます。またしてもかい離が大きくなれば下落し、5日移動平均線付近で反発するというパターンを繰り返しているうちは、上昇トレンドに陰りなしと判断していいでしょう。
つまり、5日移動平均線が下値支持線として機能しているということです。やがて5日移動平均線を割り込む局面も訪れるものですが、そこから先が正念場となります。
5日移動平均線を突破してしまったものの、25日移動平均線付近で下げ止まれば、まだ上昇トレンドが途絶えてない可能性が考えられます。再び5日移動平均線を上抜いていけば、強気のスタンスを継続してよさそうです。
しかし、25日移動平均線さえも割り込んだ場合は、トレンドが完全に転換した可能性が高まってきます。そこから先は下方向に価格が動くことを前提に、戦略を練り直したほうが無難でしょう。
下落トレンドの最中では、今までの説明とは正反対の展開となってきます。まず、価格は2本の移動平均線よりも下の水準に位置しているはずです。
そのうえで、小刻みの反発を繰り返すものの、5日移動平均線をなかなか突破できません。ようやく上抜いたとしても、今度は25日移動平均線の水準で跳ね返されてしまいます。
上昇トレンドに転換したと可能性が高まるのは、価格が25日移動平均線を上抜いたタイミングです。ちょうどその頃には5日移動平均線が25日移動平均線の上抜くゴールデンクロスという現象が発生しがちで、典型的な買いのシグナルだと判断できます。
相場の天井、底ではネックラインも意識しておこう
価格が極限まで上昇し尽くした状態を天井(さらに言えば大天井)、逆に下落し尽くした状態を底(大底)と呼んでいます。そのような局面では、チャートがダブルトップやダブルボトムというパターンを描きやすくなります。
ダブルトップとは、価格の上昇がいったんピークアウトとして下落した後に反発するものの、すぐに失速して直近の高値を超えられずに下落し、2つ目の天井を形成するというチャートの形状のことです。ダブルトップを描いた場合は、最初の山を形成した後の安値の水準を割り込んだ地点が売りを判断すべきタイミングとなります。
その正反対の形状がダブルボトムで、価格が安値を記録してから反発し、再び下落に転じるものの、直近の安値付近で反発して本格上昇するチャートの形状のことです。直近の安値を大きく割り込まなかったことは、上昇の勢いが強いということを物語っています。
チャートがこのパターンを描くと、本格的に底打ちして上昇トレンドに向かう可能性が高いと考えられます。ダブルボトムでは、いったん反発した際につけた高値の水準を突破した地点が買いのタイミングです。
ダブルトップとダブルボトムのどちらも、これらのパターンを描いた際の価格の水準が重要な決め手となってきます。高値圏でダブルトップを確認できれば下落トレンド、安値圏でダブルボトムが完成すれば上昇トレンドに転換した確率が高いと判断できます。
そして、ダブルトップやダブルボトムを描いた局面では、ネックラインの存在も意識しておくと、本格反発・反落を判断する重要な手掛かりとなります。ネックラインとは、ダブルトップでは最初にピークアウトした後につけた安値の水準において、チャートの横軸に対して平行に引いたラインのことです。
ダブルボトムの場合は、最初に底打ちした後にいったん反発してつけた高値の水準で、チャートの横軸に対して平行に引いたものがネックラインとなります。どちらもネックラインを突破したことで、トレンドが転換したと判断します。
トリプルトップ、トリプルボトムではネックラインが平行でないことも
ダブルトップやダブルボトムと比べれば出現率は低くなりますが、トレンド転換の可能性がさらに高まるチャートのパターンというものが存在します。トリプルトップ(ヘッド&ショルダー=三尊天井)とトリプルボトム(逆三尊)と呼ばれるものです。
ダブルトップやダブルボトムでは2つの天井、底を形成しますが、トリプルトップとトリプルボトムはその名称通り、天井もしくは底が3つになります。「三度目の正直」という言葉もあるように、3回も天井をつけたうえで反落したのだから下落トレンド入りは確実、3回も底打ちしたうえで反発したのだから今度こそ上昇トレンド入りしたのは間違いないという判断になります。
ちなみに、トリプルトップがヘッド&ショルダーと呼ばれるのは、最初の天井と3つ目の天井が人体の肩、2つ目の天井が頭部に見えるからです。また、中央の主尊と左右の両侍から成る三尊像のシルエットに似ていることから、三尊天井という別名もあります。
価格がピークアウトした後に反発したものの、やがて再び天井をつけて下落し、さらにしつこく上昇に転じたものの、やがて失速して本格的な下落に転じるというパターンがトリプルトップです。このケースでは、反発前につけた2つの安値同士を結んだものがネックラインとなり、これを下抜いた時点が売りのタイミングとなります。
これに対し、価格が底打ちして間もなく反落し、すぐに切り返したものの、またも下落に転じ、3回目に底値をつけてようやく本格反騰に向かうというのがトリプルボトムです。こちらは、反落前につけた2つの高値を結んだものがネックラインとなります。
ダブルトップやダブルボトムにおいて、ネックラインは必ずチャートの横軸に対して平行になります。しかし、トリプルトップやトリプルボトムでは反発前の安値同士、反落前の高値同士を結ぶので、必ずしも平行にはならず、斜めになるケースも少なくありません。
いずれにしても、ネックラインを突破した地点が売買のタイミングとなってきます。3回も天井や底の水準を確認したうえで反対方向に動いているわけですから、トリプルトップとトリプルボトムはトレンドが転換した確率がかなり高いと考えられています。
大きく突破したら、相場の転換点到来を念頭に…
もちろん、あくまでチャートを用いたテクニカル分析は「そうなる可能性が高い」というものにすぎず、例外的なケースも少なからず発生します。買いのシグナルが点灯したにもかかわらずすぐ反落するなど、チャートには“騙し”と呼ばれる現象がつきものです。
とはいえ、それでも多くの投資家がテクニカル分析を用いているのは、「例外はあくまで例外」で、ありがちな傾向をきちんと把握しておくことが重要だからです。特にこの記事でフォーカスを当てた上値抵抗線と下値支持線は、極めて注目度が高いものだと言えます。
上値抵抗線や下値支持線を大きく突破した場合には、それまでとは流れが大きく変わってくる可能性が高まるのです。したがって、利益確定やロスカットを判断するうえで重要な目安となってくるでしょう。
もしも、上値抵抗線を突破した段階で買いを入れるチャンスを逃したら、一呼吸置いて次のタイミングを見極めます。価格はつねにジグザクの波動を描くものですから、上昇トレンドに入った後もいったん下げる局面が訪れることでしょう。
そして、上昇トレンドが崩れていなければ、それまで上値抵抗線だったトレンドラインが新たな下値支持線として機能しているはずです。その水準で下げ止まったのを確認してすかさず買いを入れれば、絶好のタイミングで“押し目買い”に成功したことになります。
この“押し目買い”とは、上昇中の株価がいったん下げた局面で買いを入れて、少しでも割安な価格で仕込むことです。仮想通貨のレバレッジ取引なら、チャートが正反対のパターンを描いた局面でも利益を狙えます。
下値支持線を割り込んで下落トレンドが鮮明になっている場合に、さらに下げることを見込んで売りを入れるという戦略です。このケースでも最初のチャンスを逃したら、いったん反発してかつての下値支持線(新たな上値抵抗線)付近で頭打ちとなったことを確認して売りを入れます。
このように、上値抵抗線と下値支持線はシンプルでわかりやすく、しかも非常に実用的な判断材料です。移動平均線とともに、つねにチェックするようにしたいものです。
テクニカル分析を使った取引方法に関して興味を持たれた方は「暗号資産(仮想通貨)でデイトレードを行う際のメリットとデメリット」をご参照ください。
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