円安・円高は暗号資産(仮想通貨)と関係する?

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2022-08-24 更新

法定通貨の場合は、たとえばドルが売られて円が買われるとドル安・円高が進み、逆のパターンではドル高・円安になるという“綱引き”が繰り広げられています。2022年6月には、1ドル=136円台に突入するなど、およそ4半世紀ぶりとなる記録的な円安となりました。

円安の要因としては日本の金融政策やアメリカの金利上昇、原油高などが影響しています。
では、暗号資産(仮想通貨)と円安や円高といった為替の間には何らかの関係性があるのでしょうか? この記事では日本円や米ドル、株価などのほか暗号資産同士の間でも関連性について解説します。

暗号資産(仮想通貨)と法定通貨の間に関係性はあるのか?

ビットコイン(BTC)をはじめとする暗号資産(仮想通貨)の価格は、それを買いたい人たち(需要)と売りたい人たち(供給)のバランスによって決まります。国家が発行・管理している円やドルなどの法定通貨の場合は、必要に応じて発行国の政府が為替相場に介入し、過度な通貨高や通貨安を阻止することがあります。一方で暗号資産にはいずれの国も関わっていないので、こうした介入とは無縁です。

ビットコインなどの暗号資産はネットワークに参加している人々によって分散管理されていることや時価総額が低かったために、過去には、法定通貨などとは関連性があまりないとされたこともありました。

ただ、すでにビットコインの時価総額は約80兆円(2022年5月時点)にまで達しており、他のオルタナティブ(株式などの古典的な資産の代替)投資の選択肢と肩を並べるようになっています。著名投資家がポートフォリオに数パーセント組み入れるという報道も出ているとおり、他資産との関係性が出てきていると考えられます。

円安と暗号資産(仮想通貨)価格の関係

まずは日本円との関係を考えてみます。

ビットコインは通常はリスク資産とされており、法定通貨に対する逃避資産となることもあります。つまり円安が続くと想定されれば、ビットコインをはじめとした暗号資産(仮想通貨)に資金が振り向けられることもあります。

「デジタルゴールド」と呼ばれることもあるビットコインは、安全資産として金(ゴールド)よりもヘッジになると考えられ、投資家の資金がビットコインに動くことがあります。

ただし単にリスクオフの状況で、円安になったからといってビットコインに資金が移るわけではありません。例えば2022年3月から5月にかけて円安が加速した際には、ロシアのウクライナ侵攻が長引くことで投資家はリスクを小さくしようとしました。そこで投資家に選ばれたのはビットコインではなく、金(ゴールド)でした。金はビットコインよりも流動性が高いことで優位になることがあります。流動性が金よりも低いとされるビットコインは売られるという事態になりました。

このように、円安という要因だけでビットコインに資金が集まるとは必ずしも言い切れません。実際には暗号資産ごとの割安感による押し目買い、マクロ動向による影響も考えられます。円安は複数要因の一つと見ておくのがいいでしょう。

円高と暗号資産(仮想通貨)価格の関係

「有事の円買い」という言葉が有ります。世界的に大きな災害や紛争などが起きた際に、資金の逃避先として日本円が買われることを意味します。円の需要が高まれば、円高になります。

円高は、ドルが売られることと関連し、リスクヘッジとしてビットコインに資金を逃すことに繋がります。

ただ、円安と同様に、円高になったからといってビットコインが必ずしも買われて上昇するわけではありません。過去の傾向を見ると、円高ドル安が一気に進むと、時間差でビットコインが連れ安となることもありました。

ビットコインは米ドルと逆相関の関係にある!?

米ドルとビットコインについては、は逆相関の関係にあると指摘する声があります。

2020年の米ドル/円と米ドル/BTCのチャートを比較したところ、確かにドル高が進むとビットコインの価格が下がるという傾向がうかがえました。反対にドル安が進むとビットコインの価格が上昇しました。米ドルの価値が高まるのに伴って、「ビットコイン→米ドル」に交換する動きが活発化し、逆に米ドル安が進むと「米ドル→ビットコイン」という流れが生じていると考えられます。

しかし、こうした相関関係については、さまざまなメディアが報道していますが、投資においては複数要因の一つとして参考程度にしておくのがいいでしょう。

実際に2021年に入ると、ドル高とビットコイン高が同時に進むという現象も起きました。

ビットコインと米国株の相関性

一方、米国株式市場の代表的な株価指数であるS&P 500とビットコインが正の相関関係にあるとの説も出ています。ビットコインの認知が高まり始めた2012年頃からのその傾向がうかがえるようになり、特に2022年4月には相関性が過去最高を記録しました。
これは、2020年7月ごろから、ビットコインへ機関投資家が流入してきている影響が大きいとされています。機関投資家がビットコインを米国株と同様にリスク資産と見て投資していたためです。反対に、安全資産とされる金(ゴールド)とビットコインの間では逆相関が顕著になっていました。

世界的な金融情報発信機関であるBloombergでも、ビットコイン価格のピークがS&P 500 におけるPER(株価収益率=業績予想と現状の株価水準を比較した指標)のそれと一致していることを指摘する記事が報じられたことがあります。

ただ、おおまかに見れば相関性があるように見えても、目を凝らして観察してみると連動が強まっている局面と弱まっている局面があるのも確かです。S&P 500とビットコインの相関性についても、あまり鵜呑みにしないほうがいいかもしれません。

金価格との逆相関

前述したように、金価格とビットコインの逆相関性を指摘する意見があります。燃えてなくならない実物資産であるうえ、世界共通の価値を有することから「有事の金」といわれ、金価格は地政学リスクが高まったり金融市場でショックが発生したりするなどの局面で上昇傾向を示しやすいという特徴があります。

デジタルゴールドと呼ばれるビットコインも同様に、マーケットでは安全資産として扱われることもあります。ただ、ビットコインと金は2021年とロシアのウクライナ侵攻の最中の2022年4月に逆相関関係を示しました。これは、ビットコインと金とのボラティリティの違いにあるといえそうです。

高いボラティリティを持つビットコインが、大きく変動するリスクを避けようとする心理の中で、ビットコインが急落した場合に金を買うといったように、安全資産同士で、資産を動かしていると想定できるためです。お互いを補完し合うことで、負の相関関係になっているとも考えられます。

参考コラム:
BTC(ビットコイン)とGOLD(ゴールド)は逆相関、逃避的な資産として補完的か

暗号資産(仮想通貨)同士の相関性

暗号資産(仮想通貨)同士の関係性に注目した分析もあります。たとえば、ビットコインとイーサリアム(ETH)との間に高い相関性が見られるというのです。

両者のチャートを見比べると、確かにそのような傾向がうかがえます。時価総額1位と2位の暗号資産の2大巨頭として、これら2つを選択する投資家が圧倒的だからなのかもしれません。

ただ、時価総額ではこれらに大差をつけられているライトコイン(LTC)も、ビットコインとの相関性が高いという指摘もあります。確認してみると、チャートの形状もかなり似ています。

ただし、2017年にはビットコインのみならず多くの暗号資産が大幅上昇を遂げましたが、この局面ではイーサリアムとライトコインはどちらもビットコインとの相関性が低下しました。なぜなら、並行してビットコインからアルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産)に乗り換える動きも活発化したからです。

その結果、ビットコインには売りが出る中でアルトコインは買われるという展開になり、それぞれの推移の連動性が薄れました。

他にも、ビットコインとビットコインキャッシュ(BCH)が逆相関の関係にあるとの説があります。比較するとそのように見えるのも確かですが、あまりにも検証可能な期間が短すぎるので、結論づけるのは早計だといえそうです。

まとめ

これまで見てきたように、暗号資産(仮想通貨)と、円安と円高の影響について、単純に答えを出すのは危険です。円安・円高という一要因だけで、ビットコインに資金が動くわけではなく、複数要因の一つと捉えるのがいいでしょう。ドルや株などとの相関関係についても確実なことは言えそうにありません。

したがって、現時点ではあまり相関性のことは意識しないほうが無難かもしれません。仮に相関性が高くなる局面があったとしても一過性の現象にとどまり、やがてまったく関係のない推移に変化してしまう恐れも出てくるでしょう。

現状においてはまだ不確かなものであり、複眼的な分析が肝心となってきます。一つの事象だけに囚われず、幅広い視点で臨むのが今後の展開を見通す際の鉄則でしょう。

需要と供給のバランスから世界的な経済情勢まで、ビットコインをはじめとする暗号資産の価格変動には多様な要因が関わってきます。それらを冷静に紐解いていくことが今後の道筋を見定めるヒントとなってきます。

いくつもの要因が絡み合っていて判断が難しい局面では、テクニカル分析に目を向けてみるのも一考でしょう。チャート上の価格や指標の推移から、今後の方向性を見出すのです。
そして、そうやって自分なりの分析法を追求していくことが暗号資産への投資の面白みともなるかもしれません。まだ歴史の浅いものであるだけに、暗号資産とともに投資家自身も知見を高めながら成長できるというのも暗号資産投資の醍醐味ではないでしょうか。

テクニカル分析について興味を持たれた方は「暗号資産(仮想通貨)取引でのローソク足の見方は?種類やパターンを解説!」もご参照ください。

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