主要国の政治経済が仮想通貨に及ぼす影響

政治経済
2018-10-31 更新

その国の中央銀行が発行して流通量もコントロールしている円やドルのような法定通貨とは違い、ブロックチェーンに参加している人たちが集団で管理している非中央集権型の仮想通貨は、特定の国もしくはグローバルな政治経済の影響をあまり受けないような印象も抱きます。しかし、実際のところはどうなのでしょうか? 

過去を振り返りながら、政治経済と仮想通貨との関係性について探ってみたいと思います。

法定通貨には主要国の政治経済が大きく影響するが…

円やドルのような法定通貨の為替相場には、各国の政治経済の動向が影響を及ぼしがちです。過去を振り返っても、1995年にクリントン政権下で当時のルービン財務長官が「強いドルは米国の国益にかなう」との政策を打ち出し、その後はドル高・円安基調が鮮明になりました。

また、経済情勢に応じて実施される中央銀行の金融政策も然りです。たとえば、米国経済が好調に推移していることを踏まえてFRB(連邦準備制度理事会=米国の中央銀行に相当)が利上げ(政策金利の引き上げ)を実施すると、ゼロ金利政策を維持している日本との間で金利差が拡大します。

その結果、利息を期待できない日本と比べて金利が上がった米国のほうがいっそう魅力的な運用先だと考える投資家が増えます。すると、円を売ってドルを買う動きが活発化し、円安・ドル高が進みやすくなります。

近年は自国通貨を自分勝手な方向に誘導するのは好ましくないというのが国際的な風潮となっていますが、それでも事実上、中国の人民元のように政府が意図的に自国通貨の価値をコントロールしているケースもあります。さらに、2018年の夏にはトルコリラが記録的な急落を示しましたが、同国が強権的な大統領制に移行したり、米国との対立が表面化して経済面への悪影響が懸念されたりしたことがその原因と考えられています。

こうした法定通貨とは対照的に、仮想通貨はいずれの国の管理下にも置かれていませんし、そもそも金利が関わってこないので金利差のような概念がないと言えるでしょう。しかしながら、過去を遡って検証してみると、特定の国や世界的な政治経済の動向が仮想通貨の価格に大きなインパクトをもたらしたケースが散見されます。

キプロス危機がもたらしたビットコイン価格の高騰

地中海の東部、トルコの南に位置する島国のキプロス共和国をご存じでしょうか? 実は、この四国の半分程度の面積にとどまる小国において、2013年に深刻な金融危機が発生しました。

その引き金となったのは、いわゆるギリシャショックです。2009年10月に政権が交代したのを機に、ギリシャでは財政赤字が公表していた水準よりも大幅に膨らむことが発覚し、瞬く間にその影響が周辺国にも波及しました。

キプロスもその例外ではなく、同国の銀行が行っていた融資や債券投資で巨額の不良債権が発生し、ついにはEU(欧州連合)やIMF(国際通貨基金)に支援を求めました。厄介だったのは、高金利と税制優遇によって海外から多額の資金を集めていたことです。いわゆるタックスヘイブン(租税回避地)だったわけです。

2012年6月に同国はEUに支援を求めたのですが、その代わりにキプロス国内の預金者にも資金ショートの穴埋めのための負担(預金額のカット)を強いられました。その結果、当然ながら同国内は大パニックに陥りました。 

2013年3月に銀行が約2週間ぶりに営業を再開したところ、預金の引き出し制限や海外への送金制限といった措置が取られている中で、人々は窓口やATMに殺到しました。そのような光景を目の当たりにし、ギリシャショックの波及に伴って同じようなことが連鎖するのではないかと、他のユーロ圏に住む人々も考えました。

そして、顕著になったのがユーロからビットコインへと資金を避難させる動きです。2012年末に1BTC=14ドルだったその価格は一時1BTC=266ドルまで上昇し、当時としての史上最高価格を記録しました。

一方、2018年夏にトルコリラが暴落した局面では対照的な動きが観測されました。同国の大統領による恐慌政治や米国との関係悪化などが招いたものですが、これを機に株式などのリスク資産からいったん資金を回収する動きが強まり、ビットコインからの流出も顕在化したのです。

それに伴って、ビットコインの価格はその年の最安値に接近しました。2017年に驚異的な高騰を記録したこともあって、よりハイリターンを求める資金が大量に流入し、それらがいったんリスク回避の動きを示したのかもしれません。

真相はともかく、こうした世界的な政治経済の動きがビットコインをはじめとする仮想通貨の価格動向にも影響を及ぼしうることは紛れもない事実だと言えそうです。

仮想通貨に最も大きな影響を及ぼすのは中国政府か?

実は、キプロス危機が発生した2013年の暮れにある国の政府が打ち出した政策によって、ビットコインの価格は急落を余儀なくされています。それまでは史上最高価格を更新し続けてきたのですが、中国政府が金融機関によるビットコインの取り扱いを一切禁止する措置を発表したのです。

中国政府がこのような策に踏み切ったのは、同国内の富裕層がビットコインを介して資産を海外へと移転させていたからです。富裕層は資産を人民元だけで保有していることに危機感を抱いており、リスクを分散させるために外貨建て資産へのシフトを求めていました。

しかし、中国政府は国内資産が流出することに目を光らせてきたので、富裕層はビットコインを経由して国外への脱出を図ったわけです。そこで、その取り扱いを禁じたのですが、それに伴ってビットコインの価格は2013年の12月18日に1BTC=541ドルにまで暴落し、同月の初めにつけた1,240ドルの半値以下になりました。

ビットコインにおける人民元建ての取引量はピーク時に市場全体の90%にまで達していましたが、以後は急低下して足元では1%にも満たないとの観測もあります。さらに、中国政府は国内での人民元と仮想通貨の取引やICO(仮想通貨の発行による資金調達)、マイニングを禁止し、どんどん締め付けを強化しています。

中国ではICOもブーム化していたのですが、その中では詐欺まがいの行為も横行していました。また、相対的に安い電気料金を背景にマイニングも盛んに行われていましたが、これらの動きも封じ込めようとしたのです。

もっとも、こうした措置は結局のところ、いわゆる“いたちごっこ”をもたらすのが宿命かもしれません。それまで中国内で活動していた仮想通貨関連事業者やマイナーの多くは国外へ拠点を移して活動を続けていますし、地下ルートを通じてビットコインをはじめとする仮想通貨への交換も続いているとの観測もあります。

そういった情勢を踏まえて中国政府がいっそう取り締まりを厳格にするという見方があり、現に同国系のICOプロジェクトが海外に移転した後に中国国民向けに勧誘を行っていることを強く非難しています。

しかしながら、その一方では、むしろ逆効果となりかねないと判断して規制の緩和に転換するとの説も出ています。いずれにせよ、今後も中国政府の対応がビットコインをはじめとする仮想通貨の価格にも大きく影響しうることは確かでしょう。

政治献金にも仮想通貨が用いられる時代に

政治の世界が仮想通貨のほうに歩み寄っていく、という現象も見られています。すでに米国では2014年の米連邦選挙委員会によるガイドラインによって、議会の候補者が政治献金として仮想通貨を受領することが可能となっていました。

これを受け、コロンビア特別区では2015年から仮想通貨による選挙献金が認められています。さらに2018年7月には米州務長官がコロラド州において、ビットコインのような仮想通貨を政治献金に用いることを承認しました。

ただ、同国内では逆行する動きも見られます。カリフォルニア州の選挙管理当局はビットコインをはじめとする仮想通貨での献金を禁じました。仮想通貨は追跡が難しく、透明性に疑義があるというのがその理由です。

政治献金における仮想通貨の活用については世界的にもさまざまな議論が出ており、今後も試行錯誤を重ねながら本格的な導入が検討されることになるでしょう。

ちなみに、選挙活動に仮想通貨による献金を用いた史上初の候補者は米国のアンドリュー・ヘミングウェイ(Andrew Hemingway)氏だったと言われています。2014年のニューハンプシャー州知事選に出馬し、ビットコインによって約2割に相当する献金を獲得したものの、共和党内の予備選で対立候補に敗れたそうです。

一方、米国は仮想通貨を巡る犯罪行為にも目を光らせています。2018年4月から米国とカナダの証券規制当局はともに、「Operation Crypto-Sweep(仮想通貨一掃作戦)」なるものを実施しました。

その作戦の内容は、北米における仮想通貨に関するサギ行為などの不正を取り締まるというものです。ワシントンポスト紙が5月に同作戦に関するスクープ報道を行い、明るみになりました。

また、同年7月にはドナルド・トランプ大統領が大統領令に署名し、仮想通貨に関するサギ行為の調査指針の策定などに携わるタスクフォースを結成しました。それに先駆けて同年2月には、米司法省が仮想通貨を含むサイバー犯罪のタスクフォースを組織しています。

こうしてサギ行為を国家が厳しく取り締まることは、仮想通貨の世界の健全化につながります。したがって、仮に目先では何らかの動揺が生じたとしても、中長期的には仮想通貨の価値向上に結びついていくことが期待できそうです。

今後も主要国政府の動向を注視しておきたい

今後も引き続き、仮想通貨を巡る主要国の動きがその価格に影響を与えかねないことはほぼ間違いないでしょう。特に中国政府に関しては、いっそうの規制強化に踏み切る可能性が考えられる一方で、急激に態度を軟化させることもありえないことではなさそうです。

もはや完全に無視したり、力尽くで駆逐したりできない規模まで仮想通貨が普及しているだけに、中国政府としても難しい判断を迫られているのかもしれません。ともかく、今後も同国の対応が価格を左右しうることを意識しておいたほうがいいでしょう。

中国が何らかのアクションを起こせば、他の新興国でも同じような規制などが実施されるのではないかという観測も飛び交いがちです。そして、それらが憶測にすぎなかったとしても、価格には反応が見られることも少なくないのです。

また、ハイパーインフレに見舞われて苦し紛れの策を打っているベネズエラはともかく、イランやロシアなどでも国が仮想通貨を発行するという構想が浮上しています。こうした話も、既存の仮想通貨の価格に何らかのインパクトを及ぼすかもしれません。

米中貿易戦争をはじめ、グローバルに見渡してみても、政治的な波乱含みの局面を迎えているのが実情です。仮想通貨の取引においても、主要国の政治動向をきちんと観察しておくことが重要な意味を持ってきそうです。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

関連記事

今、仮想通貨を始めるなら
DMMビットコイン