暗号資産(仮想通貨)のファンダメンタルズ分析、テクニカル分析とは?
暗号資産(仮想通貨)をはじめ、価格の相場が変動する投資対象において、その先行きを見通すために用いられているのがファンダメンタルズ分析とテクニカル分析です。これらはどういった観点からどのようなことを精査するものなのでしょうか?それぞれの概要やメリット、注意点について説明します。
ファンダメンタルズ分析とはどんなものか?
ファンダメンタルズ分析とは、世界各国の経済情勢、各企業の業績や財務の状況をもとに、それらの本質的な投資価値を見極め、投資対象としてどれだけ期待できるのかを判断する価格分析手法です。
例えば株式投資では、各国の経済成長率(GDP=国内総生産)の推移や物価上昇率、失業率(雇用統計)、財政収支、経常収支などといった外的要因と、企業の四半期ごとの決算結果や月次の売上報告、バランスシート(B/S=貸借対照表)などの内的要因に注目します。
株式投資におけるファンダメンタルズ分析では、株価に影響を及ぼしやすいマクロ(世界やその国)の経済環境や個別企業の業績・財務に対する評価が大きなカギを握ってきます。また、FXでは為替相場に影響を及ぼす要因となるグローバル経済の動向やその通貨を発行する国々の経済に目を向けることになります。
暗号資産(仮想通貨)のファンダメンタルズ分析とは
では、暗号資産(仮想通貨)のファンダメンタルズ分析においては、どういったポイントに注目すべきなのでしょうか?株式や為替といった既存の投資対象とは成り立ちやスキームが異なっているだけに、独特の視点が求められます。
暗号資産のファンダメンタルズを構成する外的要素の一つとして挙げられるのが、マクロ経済の動向や暗号資産に対する規制があります。
例えば、2013年にキプロスで金融危機が発生した際には、資産の避難先として注目されたビットコインの価格が暴騰しました。また、中国が暗号資産に対する規制を強化した際には価格の下落を誘発したことがあります。
暗号資産は株式などと同様にリスク資産と捉えられることも多いため、世界一位の経済大国であるアメリカの経済状況も価格へ影響します。2022年〜2023年にかけてはFRB(The Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)の金利動向が世界経済に大きな影響を及ぼしましたが、暗号資産市場も例外ではありませんでした。
さらに2023年には、長らく注目を集めるアメリカでのビットコイン現物ETF(上場投資信託)への承認期待が高まったこともビットコイン価格へ大きな影響を与えたと捉えられています。
次に、内的要因としてまず挙げられるのがビットコインの技術的動向です。特に「半減期」が挙げられるでしょう。「半減期」とは、ブロックを承認する「マイニング(採掘)」の報酬が半分になる仕組みです。ビットコインは、新規発行数量を半分にすることでインフレを抑える仕組みが導入されています。「半減期」は21万ブロックが生成されるごとに行われ、その周期はおおよそ4年に1回です。
暗号資産市場は、時価総額1位のビットコインの値動きに大きく影響される場合が多く、約4年に一度の半減期ごとに最高値を更新するアノマリーが確認されています。需要に対して供給が減少することで、価格の上昇圧力になると捉えられているためです。そのために、半減期の前後には価格の変動が大きくなる傾向にあります。
アルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産)では、流通する暗号資産の量を減少させる「バーン(焼却)」と呼ばれる仕組みが組み込まれているものもあります。流通量を減少させることで希少価値を高め、価格の下落圧力を抑えることが狙いです。
そのほかにも、ブロックチェーン上で取引や活動記録が透明化されている特徴から、暗号資産では「オンチェーン分析」と呼ばれるものがあります。これも一つのファンダメンタルズ分析と捉えることができるでしょう。オンチェーン分析には暗号資産交換業者への流出量やマイナー(採掘者)の動向などさまざまなものがあります。
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テクニカル分析とはどんなものか?
テクニカル分析とは、価格や各種指標の推移を記したチャートを用い、過去におけるそれらの法則性に着目して、今後の相場展開を推察するものです。先にも述べたファンダメンタルズは度外視し、チャート上に出ている情報のみで判断を下します。
テクニカル分析では、今後も過去に繰り返してきたパターンと同様の展開となるという前提に基づいて今後の展開を予測します。価格が過去と同じ道筋を辿りやすいのは、チャートに注目している投資家が非常に多く、それまでの展開について強く意識しているからです。
例えば、直近でつけた高値で手を出したものの、その後の下落で損失を抱えている投資家が多数存在したとします。その場合、高値水準付近まで価格が回復してくると、損失から開放された投資家から続々と売りが出やすくなり、上昇が途絶えてしまうというパターンが見られます。しかし、そういった売りに頭を押さえられることなく直近の高値を大きく上抜けば、テクニカル分析では上昇が本格化したと捉えます。
テクニカル分析で重要なのが、価格の方向性を図る「トレンド」を把握することです。トレンドを見極めるために「上値抵抗線(レジスタンスライン)」や「下値支持線(サポートライン)」という指標を使います。
もちろん、こうしてチャートにフォーカスを当てた判断はあくまで傾向分析にすぎないため、例外的なパターンもおのずと発生するものです。テクニカル分析では、そういった例外的なパターンを“騙し”と呼び、避けられないエラーとして認識しています。
暗号資産(仮想通貨)のテクニカル分析がファンダメンタルズ分析と一線を画しているのは、注目すべきポイントや具体的な分析方法が株式やFXなどとほとんど変わらないことでしょう。言い換えれば、それらの投資経験がすでにある人なら、すんなりと暗号資産のテクニカル分析が行えるわけです。
主に挙げれば、テクニカル分析で推察できるのは今後における価格推移の方向性と、現状の価格が割安か(割高か)否かについてです。先々で右肩上がりの展開が予想され、なおかつ現状の価格が割安との判定になれば、上昇が期待できるかもしれません。
関連コラム:
「暗号資産(仮想通貨)分析でのボリンジャーバンドを実例とともに解説」
「上値抵抗線(レジスタンスライン)、下値支持線(サポートライン)とは?」
ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析のメリットとデメリットは?
ファンダメンタルズ分析のメリットは、暗号資産(仮想通貨)の技術面のアップデート動向やグローバルな経済情勢などを調べることで、価格が動いた背景を把握できることです。
前述したキプロスの金融危機にしても、テクニカル分析しか信じていないという人なら、そういった騒動が起きていることを認識しておらず、ビットコインの価格が急騰した理由がよくわからなかったかもしれません。
ただ、現実の価格はファンダメンタルズ分析に基づく予想とかけ離れた推移を示すことも少なくありません。特に短期的な価格の動きには、大口投資家による売買や著名な人物の発言を巡る思惑などが大きなインパクトを及ぼすことがあるからです。
加えて、暗号資産の歴史は株式や為替などと比べて浅く、振り返られる過去のデータも限られています。こうしたことから、ファンダメンタルズ分析の手法などもしっかりと確立されているとは言いがたいのが実情でしょう。
一方、テクニカル分析は価格の推移にフォーカスするため、視点がぶれにくいといえそうです。しかも、チャートはリアルタイムでデータが更新されており、個人投資家と大口投資家との間に情報格差も発生しません。
さらに、テクニカル分析ではエントリーやイグジットのタイミングまで判断できることも大きなメリットだといえるでしょう。ファンダメンタルズ分析では、価格がどちらの方向に動きそうだと予測できたとしても、具体的にいつ頃からいくらをめざすということは推察しづらいものです。
しかし、テクニカル分析にも難点はあります。先程も少し触れましたが、テクニカル分析しか見ていないと、価格が動いた背景がつかめず、特に過去の経験則の範疇を超えるような大きな変化があった場合に混乱をきたす恐れがあります。
どちらにも一長一短があるので、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の両面から価格の動向を観察し、今後の見通しを立てるのが良策でしょう。
暗号資産(仮想通貨)特有の要因も価格に大きな影響を与える
ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析とともに、暗号資産(仮想通貨)においては需給の見通しにも注目しておいたほうがよさそうです。特に、ビットコインは2,100万BTCと発行上限があらかじめ定められており、需給関係が価格に大きな影響を及ぼす可能性があります。
なぜなら、普及が進んで需要が拡大していけば、限られたパイを大勢の人々が奪い合う格好になり、その価格に対して上昇圧力がかかるからです。しかも、前述したようにビットコインには「半減期」が設けられており、このイベントが訪れることもファンダメンタルズに大きな変化をもたらすといえるでしょう。
もちろん、こうした話はビットコインに限ったものではありません。発行上限や「半減期」が定められているアルトコインにも同様のことがいえるでしょう。
もう一つ、暗号資産ではFUDについても軽視できません。FUDとは、Fear(恐怖)、Uncertainty(不確実性)、Doubt(疑念)の頭文字を組み合わせた言葉であり、もともとはアンチマーケティング手法の一種で、相手の不安を煽ることで自分が有利な状況で取引などを進めていくというものです。
意図的なものか定かではないケースも少なくありませんが、暗号資産はFUDに該当するような未確認情報が度々発信され、多くの投資家がパニックに陥ることで価格が急落するケースが過去に見られました。例えばイーサリアムの共同創業者の一人であるヴィタリック・ブテリン氏が死亡したというフェイクニュースがネット掲示板で流れ、イーサリアムの価格が一時15%も下落しました。その後、ブテリン氏自身がこのニュースを否定する投稿をSNSで発信し、価格は回復しています。
このように、FUDには根拠のない報道も多く混在しており、むやみに信用せず、冷静に事実関係を確認するように心がけたいところです。
まとめ
株式で巨額の富を築き、投資の神様と崇められるウォーレン・バフェット(Warren Edward Buffett)氏は、ビットコインに対して買いと売りのどちらのポジションも建てないと発言しているそうです。「ビットコインにはファンダメンタルズが存在せず、そのために適正価格がわからない」というのが理由です。
しかしながら、バフェット氏はビットコインのような暗号資産(仮想通貨)に対して、株式流のファンダメンタルズ分析を行おうとしたから、適正価格を判断できなかったのかもしれません。「株価はファンダメンタルズが裏づけした適正価格に回帰する」というのがバフェット氏の考えで、それよりも割安になっている銘柄を買うことで彼は成功を収めてきました。
ここまで見てきたように、ビットコインをはじめとする暗号資産におけるファンダメンタルズは、株式のそれとはかなり異なっています。また、株式と比べてはるかに歴史も浅く、ファンダメンタルズについて客観的な数値で評価できる指標も見当たりません。
こうしたことから、暗号資産に関してはバフェット氏が長年にわたって培ってきた知見や経験則が通用しないといえそうです。別の言い方をすれば、適正価格を評価する方法が確立されていて割高か割安かを判定しやすい株式とは違い、暗号資産は価格が一方向に大きく動きやすいとも考えられるわけです。
その流れを的確に読み解くためにも、暗号資産ならではのファンダメンタルズ分析を注視しつつ、テクニカル分析も併用して総合的な投資判断を下したいものです。
ビットコインのチャートの見方に関して興味を持たれた方は「ビットコインの買い時を見極めよう!チャートの見方や分析のしかた」もご参照ください。
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