ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析とは?
仮想通貨をはじめ、価格の相場が変動する投資対象において、その先行きを見通すために用いられているのがファンダメンタルズ分析とテクニカル分析です。これらはどういった観点からどのようなことを精査するものなのでしょうか? それぞれの概要やメリット、注意点について説明します。

ファンダメンタルズ分析とはどんなものか?
ファンダメンタルズの直訳は「経済の基礎的条件」で、これではなかなかピンとこないかもしれません。ファンダメンタルズ分析とは、世界や各国の経済情勢、個々の企業の業績や財務の状況をもとに、それらの本質的な投資価値を見極め、投資対象としてどれだけ期待できるのかを判断するものです。
たとえば、世界や個別の国のファンダメンタルズを分析する場合には、経済成長率(GDP=国内総生産)の推移や物価上昇率、失業率(雇用統計)、財政収支、経常収支などといった指標をモノサシに用います。企業の場合は四半期ごとの決算結果や月次の売上報告、バランスシート(B/S=貸借対照表)などに注目し、ファンダメンタルズが良好か否かを判定しています。
株式投資におけるファンダメンタルズ分析では、株価に影響を及ぼしやすいマクロ(世界やその国)の経済環境や個別企業の業績・財務に対する評価が大きなカギを握ってきます。また、FXでは為替相場に影響を及ぼす要因となるグローバルな経済やその通貨を発行する国々の経済に目を向けることになります。
では、仮想通貨のファンダメンタルズ分析においては、どういったポイントに注目すべきなのでしょうか? 株式や為替といった既存の投資対象とは成り立ちやスキームがかなり異なっているだけに、独特の視点が求められてくると言えそうです。
仮想通貨のファンダメンタルズを構成する要素の一つとして挙げられるのがテクノロジー面でしょう。仮想通貨の価値を支えているのは、ブロックチェーン技術への信頼です。ハッキングによる被害などが明らかになれば信頼が揺らいでファンダメンタルズが悪化し、逆に最新技術の導入によってセキュリティが強化されればファンダメンタルズは向上します。
また、中央銀行が集中管理しているドルや円のような法定通貨とは違い、分散管理の仮想通貨は非中央集権的であるだけに、世界的な政治経済の情勢や特定の国の動向は無関係であるかのように思われます。ところが、現実には少なからず影響を及ぼしているのです。
現に、キプロスで金融危機が発生した際にはビットコインの価格が暴騰しましたし、中国などが仮想通貨に対する規制を強化した際には価格の下落を誘発しました。今後も経済的な変化や主要国の動向が仮想通貨の価格に影響していくことになりそうです。
さらに言えば、アルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)では、取り扱う仮想通貨交換業者が増えることは流通範囲の拡大に結びつき、それに伴ってファンダメンタルズも向上すると受け止められるでしょう。ただし、ビットコインの場合は仮想通貨の元祖で最大の時価総額を誇っているので、ほとんど関係のないことと言えそうです。
テクニカル分析とはどんなものか?
テクニカル分析とは、価格や各種指標の推移を記したチャートを用い、過去におけるそれらの法則性に着目して、今後の相場展開を推察するものです。先にも述べたファンダメンタルズは度外視し、チャート上に出ている情報のみで判断を下します。
テクニカル分析では、今後も過去に繰り返してきたパターンと同様の展開となるという前提に基づいて今後の展開を予測します。価格が過去と同じ道筋を辿りやすいのは、チャートに注目している投資家が非常に多く、それまでの展開について強く意識しているからです。
たとえば、直近でつけた高値の地点において手を出したものの、その後の下落で損失を抱えている投資家が多数存在していたとします。その場合は同水準付近まで価格が回復してくると、損失から開放された投資家から続々と売りが出やすくなり、上昇が途絶えてしまうというパターンが見られます。しかし、そういった売りに頭を押さえられることなく直近の高値を大きく上抜けば、テクニカル分析では上昇が本格化したと捉えます。
もちろん、こうしてチャートにフォーカスを当てた判断はあくまで傾向分析にすぎないため、例外的なパターンもおのずと発生するものです。テクニカル分析では、そういった例外的なパターンを“騙し”と呼び、避けられないエラーと認識しています。
仮想通貨のテクニカル分析がファンダメンタルズ分析と一線を画しているのは、注目すべきポイントや具体的な分析方法が株式やFXなどとほとんど変わらないことでしょう。言い換えれば、それらの投資経験がすでにある人なら、すんなりと仮想通貨のテクニカル分析を行えるわけです。
主に挙げれば、テクニカル分析で推察できるのは今後における価格推移の方向性と、現状の価格が割安か(割高か)否かについてです。先々で右肩上がりの展開が予想され、なおかつ現状の価格が割安との判定になれば、大幅な上昇が期待できると言えるでしょう。
ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析のメリットとデメリットは?
ファンダメンタルズ分析のメリットは、仮想通貨の技術面のアップデート動向やグローバルな経済情勢などを調べることで、価格が動いた背景を把握できることです。前述したキプロスの金融危機にしても、テクニカル分析しか信じていないという人なら、そういった騒動が起きていることを認識していなくて、ビットコインの価格が急騰した理由がよくわからなかったかもしれません。
ただ、現実の価格はファンダメンタルズ分析に基づく予想とかけ離れた推移を示すことも少なくありません。特に短期的な価格の動きには、その仮想通貨の需要と供給のバランスや著名な人物の発言を巡る思惑などが大きなインパクトを及ぼすことがあるからです。
加えて、仮想通貨の歴史は為替などと比べて浅く、振り返られるヒストリカルなデータも限られています。こうしたことから、ファンダメンタルズ分析の手法などもしっかりと確立されているとは言いがたいのが実情でしょう。
一方、テクニカル分析は過去と現在の価格の推移だけにフォーカスし、他の情報には耳を傾けないので、視点がぶれにくいと言えそうです。しかも、チャートはリアルタイムでデータが更新されており、個人投資家と大口投資家との間に情報格差も発生しません。
さらに、テクニカル分析ではエントリーやイグジットのタイミングまで判断できることも大きなメリットだと言えるでしょう。ファンダメンタルズ分析では、価格がどちらの方向に動きそうだと予測できたとしても、具体的にいつ頃からいくらをめざすということは推察しづらいものです。
しかし、テクニカル分析にも難点はあります。先程も少し触れましたが、テクニカル分析しか見ていないと、価格が動いた背景がつかめず、特に過去の経験則の範疇を超えるような大きな変化があった場合に混乱をきたす恐れがあります。
どちらにも一長一短があるので、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の両面から価格の動向を観察し、今後の見通しを立てるのが良策でしょう。
仮想通貨特有の要因も価格に大きな影響を与える
ファンダメンタルズ分析やテクニカル分析とともに、仮想通貨においては需給の見通しにも注目しておいたほうがよさそうです。特にビットコインは2,100万BTCと発行上限があらかじめ定められており、需給関係が価格に大きな影響を及ぼす可能性があります。
なぜなら、普及が進んで需要が拡大していけば、限られたパイを大勢の人々が奪い合う格好になり、その価格に対して上昇圧力がかかるからです。しかも、ビットコインには「半減期」が設けられており、このイベントが訪れることもファンダメンタルズに大きな変化をもたらすと言えるでしょう。
「半減期」とは、以降のマイニング報酬が半分になる起点のことです。たとえば、成果が半分になるとマイニングの意欲もその分だけ削がれるため、単純に考えれば、新規発行数量が半分になってしまいます。「半減期」は21万ブロックが生成されるごとに訪れ、その周期はおおよそ4年に1回です。
もちろん、こうした話はビットコインに限ったものではありません。発行上限や「半減期」が定められているアルトコインにも同様のことが言えるでしょう。
もう一つ、仮想通貨ではFUDについても軽視できません。FUDとは、Fear(恐怖)、Uncertainty(不確実性)、Doubt(疑念)の頭文字を組み合わせた言葉であり、もともとはアンチマーケティング手法の一種で、相手の不安を煽ることで自分が有利な状況で取引などを進めていくというものです。
意図的なものか否かは定かでないケースも少なくありませんが、仮想通貨はFUDに該当するような未確認情報が度々発信され、多くの投資家がパニックに陥ることで価格が急落するケースが過去には見られました。その一例として挙げられるのは、海外の仮想通貨交換業者であるバイナンスに関する騒動です。
2018年2月にバイナンスは、緊急のメンテナンスを実施しました。すると、大手セキュリティソフト会社の創業者としても知られるジョン・マカフィー(John McAfee)氏がTwitter上で「バイナンスが破綻する」と発言し、それを真に受けた世界中の人たちが大混乱に陥ったのです。
実際には間もなくメンテナンスが完了し、再び仮想通貨の入・出庫や売買が可能となりました。マカフィー氏の発言は単なる憶測にすぎなかったということです。
また、仮想通貨の取り扱いに関する規制を強化する国が出るという推測報道の中にも、FUDではないかと思われるものが紛れ込んでいるようです。かつて中国では自国通貨の人民元から資金を避難させる動きが活発化し、ビットコインのほとんどの取引を同国が占めていました。
そこで、2017年に中国は規制を大幅に強化し、そのことはビットコインの価格にも大きな影響を及ぼしました。同じような展開を狙ってのことかどうかは定かでないものの、最近になってからも韓国やインドなども規制強化に踏み切るとの報道が飛び交いました。
そして、それらを悲観して仮想通貨の価格も下落したのですが、実際には韓国にしてもインドにしても、報道されていた内容と比べればはるかに軽微な規制にすぎなかったのです。このように、FUDではないかと疑われるような根拠のない報道も混在しているので、むやみにパニックにならず、冷静に事実関係を確認するように心がけたいところです。
株式とは異なる観点からの分析が求められる仮想通貨
株式で巨額の富を築き、投資の神様と崇められるウォーレン・バフェット(Warren Edward Buffett)氏は、ビットコインに対して買いと売りのどちらのポジションも建てないと発言しているそうです。「ビットコインにはファンダメンタルズが存在せず、そのために適正価格がわからない」というのが理由だそうです。
しかしながら、バフェット氏はビットコインのような仮想通貨に対して、株式流のファンダメンタルズ分析を行おうとしたから、適正価格を判断できなかったのかもしれません。「株価はファンダメンタルズが裏づけした適正価格に回帰する」というのがバフェット氏の考えで、それよりも割安になっている銘柄を買うことで彼は成功を収めてきました。
ここまで見てきたように、ビットコインをはじめとする仮想通貨におけるファンダメンタルズは、株式のそれとはかなり異なっています。また、株式と比べてはるかに歴史も浅く、ファンダメンタルズについて客観的な数値で評価できる指標も見当たりません。
こうしたことから、仮想通貨に関してはバフェット氏が長年にわたって培ってきた知見や経験則が通用しないと言えそうです。別の言い方をすれば、適正価格を評価する方法が確立されていて割高か割安かを判定しやすい株式とは違い、仮想通貨は価格が一方向に大きく動きやすいとも考えられるわけです。
その流れを的確に読み解くためにも、仮想通貨ならではのファンダメンタルズ分析を注視しつつ、テクニカル分析も併用して総合的な投資判断を下したいものです。
ファンダメンタルズ分析の元となる情報について興味を持たれた方は「ビットコイン価格相場にも影響!暗号資産(仮想通貨)注目ニュース」もご参照ください。
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