ビットコインの分析で重要な移動平均線とは?トレンドラインについても解説
移動平均線は、チャート分析における基本ツールです。ビットコイン(BTC)などの暗号資産(仮想通貨)においても、トレンドの方向性や転換点を判断するために使われます。短期から長期にわたる移動平均線を分析することで、暗号資産取引を進めるうえでの有効な判断材料となるでしょう。この記事では、移動平均線とは何か、さらにチャート分析で重要なトレンドラインについても紹介します。
移動平均線は平均的な価格変化の推移
移動平均線とは、一定期間の価格の平均値を計算し、その推移を1本のラインで結んだものです。価格がどのようなトレンド(価格の方向性)を示しながら変化しているのかを判断するモノサシとして考案されました。
暗号資産(仮想通貨)の価格は常に一定ではなく、上下しながら推移します。目先の変化を見ているだけでは、その方向性を見定めるのはなかなか困難です。しかし、移動平均線を使うことによって、日々の変動は気まぐれであっても、その動きの平均値に注目して価格の流れを掴むことができます。
つまり、移動平均線の向きに注目すれば、価格の変化や方向性が見えてくるということです。上向きになっていれば上昇トレンド、下向きになっていれば下落トレンドだと解釈できます。
短い期間の平均値になっている移動平均線は短期的な価格の方向性、長い期間のものは長期的な価格の方向性を示しています。こうしたことから、移動平均線は短期、中期、長期の3本を組み合わせて判断するのが一般的です。
具体的に一例を挙げると、5日間ごとの平均値の推移を示したのが5日移動平均線、25日間ごとの平均値の推移を示したのが25日移動平均線です。価格は見る人によって異なることはないため、誰にとっても同じ指標が提供されます。
たとえば、日足(1本のローソク足が1日の始値、高値、安値、終値を示しているチャート)では5日移動平均線、25日移動平均線、75日移動平均線の3本が表示されているケースが主流となっています。そして、週足(1本のローソク足が1週間の始値、高値、安値、終値を示しているチャート)では13週移動平均線、26週移動平均線、52週移動平均線、月足(1本のローソク足が1カ月間の始値、高値、安値、終値を示しているチャート)では12カ月移動平均線、24カ月移動平均線、60カ月移動平均線などが使われます。
一口にトレンドといっても、その勢いには少なからず違いがあります。特に強い上昇トレンドを迎えていると判断されるのは、長期の移動平均線の上に中期の移動平均線、短期の移動平均線、価格の推移の順に並んでいて、いずれも右肩上がりを示している「パーフェクトオーダー」と呼ばれる局面です。その状態に変化がない限り、価格の上昇が続く上昇トレンドにあると見る考え方があります。
反対に下落トレンドのときには、下から順番に価格、短期の移動平均線、中期の移動平均線、長期の移動平均線の順番になると言われています。
ビットコインで重要視される移動平均線
ビットコインの移動平均線では、200週移動平均線(200週MA)に言及されることが度々あります。株式などと同様に5日、25日といった短期で分析することも一般的ですが、長期的に価格が上昇すると信じている投資家やトレーダーには200週の期間を重視する人も多いようです。
2024年2月時点、過去の価格推移を見ると、ビットコイン価格が大きく下落した際にも200週MAで反発してきています。ただし、2022年に海外の大手暗号資産交換業者が経営破綻したことで広がった「暗号資産冬の時代」の際には、200週MAを割り込んでいます。
ビットコイン投資家に人気の「ストック・トゥー・フロー(S2F)モデル」でも、200週MAが引用されています。これは半減期の需給に注目しているため、200週=3.8年と、約4年に一度訪れる半減期サイクルに関連していると考えられます。
移動平均線の種類
移動平均線は、計算方法によって単純移動平均線、指数平滑移動平均線、加重移動平均線に分けられます。これらは直近の価格への比重の置き方が異なります。
単純移動平均線
単純移動平均線(Simple Moving Average:SMA)は、算術平均で算出された値で作成されます。つまり、一定期間の価格(始値や終値、高値、安値)を合計して、その参照した価格の数で割ります。
指数平滑移動平均線
指数平滑移動平均線(Exponential Moving Average:EMA)は、単純移動平均線よりも直近の価格を重視した指標です。
計算式は次のようになります。
EMA=前日EMA+(当日終値―前日EMA)×α
α(平滑化定数):2÷(X+1)
X:期間(任意)
EMAの初期値:終値のX日単純平均
直近の価格に比重を置いた指数平滑移動平均線を使うことで、単純移動平均線よりも売買のシグナルがより素早く掴めるとされています。しかし、トレンド転換が素早くわかるなどの利点がある一方で、ダマシにあいやすいというデメリットがあります。
加重移動平均線
加重移動平均線(Weighted Moving Average:WMA)も指数平滑移動平均線同様に、単純移動平均線よりも直近の価格に比重を置いた指標です。ただし、指数平滑移動平均線の方がより直近の価格に比重が大きくなります。
価格と移動平均線との位置関係で投資家心理がわかる
価格と移動平均線との位置関係から、その暗号資産(仮想通貨)を保有している投資家の損益状況が浮き彫りになってきます。たとえば、価格が5日移動平均線よりも上に位置している場合、過去5日間の平均購入コストを上回っていることを意味します。つまり、過去5日間のうちにその暗号資産を購入していた投資家は利益が出ているわけです。
反対に、価格が5日移動平均線を割り込んでいた場合、過去5日間のうちにその暗号資産を購入していた投資家は損失を抱えていることになります。しかも、さらに価格が低下して25日移動平均線も割り込んでしまう状況となれば、過去25日間のうちに買った投資家まで損失を被ってしまいます。そうなると、見切りをつけて売ってしまう動きが活発化し、本格的な下落トレンドへと転じる可能性が高まるのです。
こうして移動平均線は、実際にその暗号資産を保有している投資家の心理状態をくっきりと映し出すうえ、保有していない投資家にも注視されています。そのため、価格が移動平均線付近まで接近すると特徴的な動きを示しがちです。
強い上昇トレンドが続いている局面でよく見られるのは、一時的に価格が下げに転じても、5日移動平均線付近まで接近した時点で反発し、再び上昇基調に戻るというパターンです。「まだまだ上昇しそうだけど、できれば少しでも安い価格で買いたい」と思っていた投資家が5日移動平均線に近づいたのを機に殺到するからです。言い換えれば、「上昇トレンドが途絶えていないから、5日移動平均線は割り込まないだろう」という、投資家の思惑があるといえます。
ゴールデンクロスとデッドクロス
また、2本の移動平均線の動きに着目して、買いや売りのタイミングを見計らっている投資家も少なくありません。短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上へと突破する「ゴールデンクロス」という現象が発生すると、価格の上昇が本格化しやすいという法則性に基づくものがその一例です。
この法則性から、ゴールデンクロスは典型的な買いのシグナルだとされています。ゴールデンクロスが発生するまで短期の移動平均線が長期の移動平均線よりも下に位置していたということは、目先の価格が低迷していた(目先の平均値が低下傾向にあった)ことを意味しています。
長期の移動平均線は、低迷前から買っていた投資家の平均購入コストであり、その付近まで価格が戻してくると「やれやれ売り(購入した資産が下落した後に、相場の回復によって買値に近づいたために売却すること)」が活発化しがちです。したがって、短期の移動平均線が長期の移動平均線を割り込むと、そう簡単には上抜くことができないもので、それを果たしたゴールデンクロスは、力強い上昇を示唆していることになります。
一方、逆に短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下へと突き抜けるのが「デッドクロス」という現象で、こちらは売りのシグナルといわれています。前述と同じように再度上抜くのは容易ではないため、一気に売りが増えて価格が下がりやすくなるのです。
ただ、移動平均線は一定間隔ごとの平均値を集計しているというその特性上、どうしても目の前の価格の推移よりも遅行する(タイムラグが発生する)ものです。このため、ゴールデンクロスやデッドクロスも真のベストタイミングよりも若干遅れてしまう傾向があるといわれています。こうしたことから、少なくとも週足や月足のゴールデンクロスやデッドクロスはあまり参考にしないほうが賢明かもしれません。
移動平均線を使った分析指標
テクニカル分析では、前述したSMAやEMA、WMAを使ったり、組み合わせたりした、さまざまな指標が考案されています。代表的なものをご紹介します。
MACD
MACD(Moving Average Convergence Divergence:移動平均収束拡散または移動平均収束乖離:通称マックディー)は、2つの移動平均線を利用して、売買ポイントや相場の周期を予測するテクニカル指標です。以下の式で計算します。
MACD=短期EMA―長期(中期)EMA
MACDには短期の価格変動が示され、MACDがプラスの時には短期的に上昇トレンドであり、マイナスの時には下落トレンドとなります。プラスの値が大きいほど短期的に強い上昇トレンドにあると判断され、反対にマイナスの値が大きいと、下落トレンドが強くなります。
MACDは上昇相場のタイミングを図るためのゴールデンクロスが他の指標よりも早く出ることが利点です。
GMMA
GMMA(Guppy Multiple Moving Average:複合型移動平均線)は、指数平滑移動平均線を12本用い、「短期線」、「中期線」に6本ずつ分けて、各ラインの位置関係や形状からトレンドの状況や強弱を判断するテクニカル分析です。オーストラリアの投資家であるダリル・グッピー(Daryl Guppy)氏が考案しました。
大局的なトレンドと直近のトレンドの両方を比較分析することでトレンド転換の可能性を捉えやすくなるとされています。
高値や安値を結ぶトレンドライン
移動平均線とともに、価格のトレンドを把握する際のツールとなるものがあります。それが「トレンドライン」と呼ばれるものです。トレンドラインとは、チャート上で高値同士、安値同士を1本のラインで結ぶことで、相場の方向性を分析するために引かれる線のことです。
そして、高値同士を結んだものを上値抵抗線(レジスタンスライン)、安値同士を結んだものを下値支持線(サポートライン)と呼んでいます。
上値抵抗線付近まで価格が上昇すると下落に転じやすく、逆に下値支持線付近まで下落すると反発しやすいという特徴があります。
こうした特徴は、投資家の多くがチャート分析を行って、トレンドラインを強く意識しながら取引に参加しているためです。「上値抵抗線に接近してきたから、そろそろ上昇は頭打ちとなるだろう」と考える人が増えれば、おのずと価格もその思惑に沿った推移を示しがちです。そして、その逆のパターンが下値支持線付近での反発をもたらす傾向となります。
しかし、現実には上値抵抗線をあっさり突破して上昇するケースも少なくありません。そのような場合は、ハードルを乗り越えての力強い動きだと多くの投資家が判断し、上昇トレンドが顕著になる確率が高くなります。
その反対に、下値支持線を大きく割り込んでしまった場合は、多くの投資家が「まだまだ下がり続けるかもしれない」という不安に怯えます。そうすると売りが続出して、本格的な下落トレンドへとシフトしていく可能性が高まります。
では、上値抵抗線をあっさり突破して上昇していった場合、その後の展開はどうやって見定めていけばいいのでしょうか?
まず、突破以降の価格の推移をもとに高値同士をラインで結べば、新たな上値抵抗線を引くことができます。下値支持線については、突破前まで上値抵抗線となっていたラインが代わって、その役目を果たすようになります。
下値支持線を割り込んでしまった場合も、分析の方法は共通しています。割り込んだ価格以降の安値同士を結んで新たに下値支持線を引き、かつての下値支持線を新たな上値抵抗線と位置づけます。
関連コラム:
「上値抵抗線(レジスタンスライン)、下値支持線(サポートライン)とは?」
2本のトレンドラインからわかるシグナルとは?
実際に上下にトレンドラインを引いてみると、それら2本のラインが交差するケースが出てきます。上値抵抗線と下値支持線の間で価格が上下動を繰り返し、次第にその振れ幅が小さくなってくることで三角形を形成します。
これを「三角保ち合い」と呼んでおり、いずれ価格は上値抵抗線か下値支持線のどちらかを突破することになります。まず、上に抜けた場合は「三角保ち合い上放れ」という現象で、本格的な上昇につながる可能性が出てきたと判断できます。
これに対し、下に抜けた場合は「三角保ち合い下放れ」で、逆に下落が続いていく確率が高まったと考えるのが無難です。どちらもなかなか方向感が定まらない展開が続いてきただけに、上か下のいずれかに道筋が示されると、価格がその方向に向かっていく傾向があります。
上下2本のトレンドラインが交差せず平行な状態になっているケースでも、価格が上値抵抗線を突破すれば、上昇トレンドに転換した可能性が出てきます。ただ、それまで高値を切り下げてきていた場合は、再び下げに転じて上値抵抗線を割り込むケースも少なくないので、さらに価格が直近の高値やその前の高値を超えていくのを確認してからエントリーしたほうが堅実でしょう。
同じく2本のトレンドラインが平行な状態になっているケースで、反対に下値支持線を割り込んだ場合は下落トレンドに入った可能性が出てきます。しかし、それまで高値が切り上がってきていたなら、すぐに反発することも考えられます。
まとめ
チャートから投資のヒントを読み解くテクニカル分析において、移動平均線やトレンドラインは基本となる判断材料です。ここまで見てきたように、どちらもけっして複雑なものではありません。
だからといってビギナーや投資経験の浅い方向けの初歩的な指標ということではありません。テクカル分析の知識のある投資家なら誰もが移動平均線やトレンドラインに注目していますし、これら2つを活用するだけでも十分な分析が可能です。
トレンドを見極め、いずれのタイミングで買いを入れて、いずれのタイミングで利益を確定させるのかを的確に予想できれば、相応の成果を得られる可能性が投資にはあります。暗号資産の場合もその例外ではありません。ここまで見てきたように、移動平均線とトレンドラインはそういった判断を下すうえで有効なツールとなってくるわけです。
価格分析手法についてさらに詳しく知りたい方は「暗号資産(仮想通貨)のファンダメンタルズ分析、テクニカル分析とは?」をご参照ください
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