移動平均線とトレンドラインから何がわかる?

移動平均線
2018-10-31 更新

移動平均線は、価格の変化とともに、チャート上にあらかじめ表示されているケースが多くなっています。これはどういった数値の推移を示したもので、どのようなことを判断する目安となるのでしょうか? チャート分析の基本の一つである移動平均線について理解しておけば、仮想通貨の取引を進めるうえで有効な判断材料となってきます。

移動平均線とは、平均的な価格変化の推移

仮想通貨の価格は日々変化するものですが、その動きは常に一定ではなく、派手に上下することもあれば、小幅にとどまることもあります。こうした目先の変化を見ているだけでは、その方向性を見定めるのはなかなか困難です。

そこで、価格がどのような傾向を示しながら変化しているのか、そのトレンド(価格の方向性)を判断するモノサシとして考案されたのが移動平均線です。日々の変動は気まぐれであっても、その動きの平均値に注目して特徴を掴むという発想に基づいた指標です。

つまり、移動平均線の向きに注目すれば、価格の変化の方向性が見えてくるということです。上向きになっていれば上昇トレンド、下向きになっていれば下落トレンドだと解釈できます。

具体的に移動平均線とは、一定間隔ごとの価格の平均値を日々計算し、その推移を1本のラインで結んだものです。一例を挙げると、5日間ごとの平均値の推移を示したのが5日移動平均線、25日間ごとの平均値の推移を示したのが25日移動平均線です。

短い間隔の平均値になっている移動平均線は短期的な価格の方向性、長い間隔のものはもっと長いスパンの方向性を示しています。こうしたことから、移動平均線は短期、中期、長期の3本を組み合わせて判断するのが一般的です。

たとえば、日足(1本のローソク足が1日の始値、高値、安値、終値を示しているチャート)では5日移動平均線、25日移動平均線、75日移動平均線の3本が表示されているケースが主流となっています。そして、週足(1本のローソク足が1週間の始値、高値、安値、終値を示しているチャート)では13週移動平均線、26週移動平均線、52週移動平均線、月足(1本のローソク足が1カ月間の始値、高値、安値、終値を示しているチャート)では12カ月移動平均線、24カ月移動平均線、60カ月移動平均線の組み合わせになっているのが通常です。

一口にトレンドと言っても、その勢いには少なからず違いがあります。特に強い上昇トレンドを迎えていると判断できるのは、長期の移動平均線の上に中期の移動平均線、短期の移動平均線、価格の推移の順に並んでいて、いずれも右肩上がりを示している局面です。その状態に変化がない限り、価格の上昇が続くと判断できます。

価格と移動平均線との位置関係で投資家心理がわかる

実は、価格と移動平均線との位置関係から、その仮想通貨を保有している投資家の損益状況が浮き彫りになってきます。たとえば、価格が5日移動平均線よりも上に位置している場合、過去5日間の平均購入コストを上回っていることを意味します。つまり、過去5日間のうちにその仮想通貨を購入していた投資家は利益が出ているわけです。

反対に、価格が5日移動平均線を割り込んでいた場合、過去5日間のうちにその仮想通貨を購入していた投資家は損失を抱えていることになります。しかも、さらに価格が低下して25日移動平均線も割り込んでしまう状況となれば、過去25日間のうちに買った投資家まで損失を被ってしまいます。そうなると、見切りをつけて売ってしまう動きが活発化し、本格的な下落トレンドへと転じる可能性が高まるのです。

こうして移動平均線は実際にその仮想通貨を保有している投資家の心理状態をくっきりと映し出すうえ、保有していない投資家にも注視されています。そのため、価格が移動平均線付近まで接近すると特徴的な動きを示しがちです。

強い上昇トレンドが続いている局面でよく見られるのは、一時的に価格が下げに転じても5日移動平均線付近まで接近した時点で再び上昇基調に戻るというパターンです。「まだまだ上昇しそうだけど、できれば少しでも安い価格で買いたい」と思っていた投資家が5日移動平均線に近づいたのを機に殺到するからです。言い換えれば、「上昇トレンドが途絶えていないから、5日移動平均線は割り込まないだろう」という思惑があると言えます。

また、2本の移動平均線の動きに着目して、買いや売りのタイミングを見計らっている投資家も少なくありません。短期の移動平均線がもっと長い間隔の平均値を示した移動平均線を下から上へと突破するゴールデンクロスという現象が発生すると、価格の上昇が本格化しやすいという法則性に基づくものがその一例です。

つまり、ゴールデンクロスは典型的な買いのシグナルだとされているのです。ゴールデンクロスが発生するまで短期の移動平均線がもっと長い間隔の平均値を示した移動平均線よりも下に位置していたということは、目先の価格が低迷していた(目先の平均値が低下傾向にあった)ことを意味しています。

もっと長い間隔の平均値を示した移動平均線は、低迷前から買っていた投資家の平均購入コストであり、その付近まで価格が戻してくると「やれやれ売り(トントンの水準になったのを機に手仕舞う動き)」が活発化しがちです。したがって、短期の移動平均線が長期の移動平均線を割り込むと、そう簡単には上抜くことができないもので、それを果たしたゴールデンクロスは、力強い上昇を示唆していることになります。

一方、逆に短期の移動平均線がもっと長い間隔の平均値を示した移動平均線を上から下へと突き抜けるのがデッドクロスという現象で、こちらは売りのシグナルと言われています。前述したように再度上抜くのは容易ではないため、一気に売りが増えて価格が下がりやすくなるのです。

ただ、移動平均線は一定間隔ごとの平均値を集計しているというその特性上、どうしても目の前の価格の推移よりも遅行する(タイムラグが発生する)ものです。このため、ゴールデンクロスやデッドクロスも真のベストタイミングよりも若干遅れてしまう傾向があるとも言われています。こうしたことから、少なくとも週足や月足のゴールデンクロスやデッドクロスはあまり参考にしないほうが賢明かもしれません。

自分でトレンドラインを引いてみよう

移動平均線とともに、価格のトレンドを把握する際のツールとなるものがあります。それがトレンドラインと呼ばれるもので、移動平均線とは違って最初からチャート上に表示されていないのが一般的です。

トレンドラインは、隣り合った高値同士、安値同士を1本のラインで結べば簡単に作成できます。そして、高値同士を結んだものを上値抵抗線(レジスタンスライン)、安値同士を結んだものを下値支持線(サポートライン)と呼んでいます。

なぜなら、上値抵抗線付近まで価格が上昇すると下落に転じやすく、逆に下値支持線付近まで下落すると反発しやすいという特徴があるからです。

投資家の多くがチャート分析を行って、トレンドラインを強く意識しながら取引に参加しています。「上値抵抗線に接近してきたから、そろそろ上昇は頭打ちとなるだろう」と考える人が増えれば、おのずと価格もその思惑に沿った推移を示しがちです。そして、その逆のパターンが下値支持線付近での反発をもたらします。

しかし、現実には上値抵抗線をあっさり突破して上昇するケースも少なくありません。そのような場合は、ハードルを乗り越えての力強い動きだと多くの投資家が判断し、上昇トレンドが顕著になる確率が高くなります。

その真逆で、下値支持線を大きく割り込んでしまった場合は、多くの投資家が「まだまだ下がり続けるかもしれない」という不安に怯えます。そうすると売りが続出して、本格的な下落トレンドへとシフトしていく可能性が高まります。

では、上値抵抗線をあっさり突破して上昇していった場合、その後の展開はどうやって見定めていけばいいのでしょうか? まず、以降の価格の推移をもとに高値同士をラインで結べば、新たな上値抵抗線を引くことができます。下値支持線については、突破前まで上値抵抗線となっていたラインが代わってその役目を果たすようになります。

下値支持線を割り込んでしまった場合も、分析の方法は共通しています。以降の安値同士を結んで新たに下値支持線を引き、かつての下値支持線を新たな上値抵抗線と位置づけます。

2本のトレンドラインからわかるシグナルとは?

実際に上下にトレンドラインを引いてみると、それら2本のラインが交差するケースが出てくるでしょう。上値抵抗線と下値支持線の間で価格が上下動を繰り返しているのですが、次第にその振れ幅が小さくなっている場合が該当します。

これを「三角保ち合い」と呼んでおり、いずれ価格は上値抵抗線か下値支持線のどちらかを突破することになります。まず、上に抜けた場合は「三角保ち合い上放れ」という現象で、本格的な上昇につながる可能性が出てきたと判断できます。

これに対し、下に抜けた場合は「三角保ち合い下放れ」で、逆に下落が続いていく確率が高まったと考えたほうが無難です。どちらもなかなか方向感が定まらない展開が続いてきただけに、上か下のいずれかに道筋が示されると、価格が一気にそちらに向かっていくことが多いのです。

上下2本のトレンドラインが交差せず平行な状態になっているケースでも、価格が上値抵抗線を突破すれば、上昇トレンドに転換した可能性が出てきます。ただ、それまで高値を切り下げてきていた場合は、再び下げに転じて上値抵抗線を割り込むケースも少なくないので、さらに価格が直近の高値やその前の高値を超えていくのを確認してからエントリーしたほうが堅実でしょう。

同じく2本のトレンドラインが平行な状態になっているケースで、反対に下値支持線を割り込んだ場合は下落トレンドに入った可能性が出てきます。しかし、それまで高値が切り上がってきていたなら、すぐに反発することも考えられます。

移動平均線とトレンドラインはテクニカル分析の基本

チャートから投資のヒントを読み解くテクニカル分析において、移動平均線やトレンドラインは基本中の基本とも言える判断材料です。ここまで見てきたように、どちらもけっして複雑なものではなく、理解しやすい内容だと言えるでしょう。

だからといってビギナーや投資経験の浅い方向けの初歩的な指標ということではありません。テクカル分析の知識のある投資家なら誰もが移動平均線やトレンドラインに注目していますし、これら2つを活用するだけでも十分な分析が可能です。

トレンドを見極め、いずれのタイミングで買いを入れて、いずれのタイミングで利益を確定させるのかを的確に予想できれば、相応の成果を得られる可能性が投資にはあります。仮想通貨の場合もその例外ではありません。ここまで見てきたように、移動平均線とトレンドラインはそういった判断を下すうえで有効なツールとなってくるわけです。

テクニカル分析についてさらに詳しく知りたい方は「上値抵抗線(レジスタンスライン)、下値支持線(サポートライン)とは?」をご参照ください。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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