ビットコイン(bitcoin)におけるムーアの法則とは
インターネットが本格普及する30年以上も前に、半導体技術の飛躍的な発展を予言していた人物がいます。それはIntel共同設立者の一人であるゴードン・ムーア氏で、今日に至るまでの技術革新は彼が唱えた法則に従って進んできました。
一見、ゴードン・ムーア氏が提唱した法則とビットコインとの間にはまったく何の関連性も見当たらないように思われます。ところが、奇しくもビットコインが誕生してから現在に至るまでの価格の推移は、半導体技術発展のピッチと見事にシンクロしているというのです。今後もその法則通りに推移していくなら、ビットコインはいつまでにどれだけの上昇を遂げているのでしょうか。

ムーアの法則とは
ムーアの法則とは、半導体業界における技術革新のスピードに関する経験則です。Intel創業者の一人であるゴードン・ムーア氏が唱えたことがその名の由来で、1965年に発表した論文上で、「半導体の集積密度は18カ月で2倍になる」と指摘しました。
半導体の集積密度とは、同じ面積のシリコンウェハ(基盤)上に構成できる半導体素子(トランジスタ)の数を意味します。ムーア氏は、微細化技術の進展で半導体素子の小型化が進み、同じ面積上に構成できる数が18カ月ごとに2倍に増えていくと唱えたのです。
18ヵ月で2倍というペースは、指数関数的に数量が拡大していくことを意味しています。指数関数とは、「ねずみ算」のように倍増していくパターンを定式化したものです。「ねずみ算」とは、「1組のねずみの夫婦から毎月1回、オスとメスの子ねずみが6匹ずつ生まれ、子ねずみからも同じペースで子ねずみを生まれるなら、果たして12カ月後には何匹に増えているのか?」といった状況を計算する和算です。実際に計算せずとも、まさに爆発的に増えていくことは容易に想像できるでしょう。
ムーア氏の説に基づけば、半導体の集積密度は1.5年後に2倍、3年後に4倍、4.5年後に8倍、6年後に16倍、7.5年後に32倍に達する計算になります。
ムーア氏のこの提唱には、特にエビデンスや理論的・技術的な裏づけがあったわけではありません。ところが、驚くべきことに半導体の技術革新のペースは、ムーアの法則と概ね合致しています。
集積密度自体の改善ピッチは鈍化しているものの、法則について言及した当時にはまだ誕生していなかったマイクロプロセッサ(超小型処理装置)のスペックはまさにそのピッチで向上しています。こうしたことから、今なおムーアの法則は特別視されており、取り立てて半導体業界では開発計画を策定する際に強く意識されているようです。
なお、ゴードン・ムーア氏はムーアの法則を唱えた3年後の1968年に、ロバート・ノイス氏などとともにNM Electronics社を設立しました。同社はその後、Integrated Electronicsを由来とするIntelへと社名を変更します。
Intelに関しては、ほとんど説明の必要がないかもしれません。世界屈指の半導体メーカーで、大半の情報機器に同社の製品が搭載されていると表現しても、けっして過言ではなさそうです。ゴードン・ムーア氏は1975~1987年にかけて、同社の2代目社長兼CEO(最高経営責任者)務めました。
余談ですが、1965年に「集積密度は18カ月で2倍になる」と宣言した際に、「価格は変わらない」とも述べていたことに関しても、まさしく先見の明があったと言えるのではないでしょうか。1990年にゴードン・ムーア氏は、ジョージ・ブッシュ米国大統領(当時)からナショナル・メダル・オブ・テクノロジー(米国国家科学賞)が贈られています。
ビットコイン(bitcoin)におけるムーアの法則とは
閑話休題。そろそろ、ビットコインとムーアの法則の関係性について言及することにしましょう。2017年8月、ビットコインからビットコインキャッシュが分裂し、その直前にはさまざまな憶測が飛び交い、その中にはかなり悲観的なものも見受けられました。
ところが、いざフタを開けてみると分裂後もビットコインの価格は上昇傾向を示し、史上最高価格を更新しました。もっとも、今から思えばそれは2017年における躍進ステージの序章にすぎず、2017年後半の急騰はさらにその比ではなかったわけですが……。
ともかく、そのようなタイミングで世界中から注目を浴びたのは、ビットコインの投資家でハーバード大学の研究者でもあるデニス・ポルト氏による分析でした。
「ビットコインは誕生以来、価格が8カ月ごとに2倍になっている。今後もテック業界のゴールデンルールに従うなら、ビットコインの価格は10万ドル(1ドル=109円で換算して1,090万円)に達する可能性がある。ゴールデンルールは回路上のトランジスタの数について述べたものだが、あらゆるデジタルテクノロジーに適用できる」
デニス・ポルト氏はこのような主旨の予測を披露し、多くの識者や投資家がどよめきました。無論、テック業界のゴールデンルールとは、ムーアの法則のことを意味しています。ただ、それは「18カ月で2倍」というピッチであり、ビットコインの価格上昇スピードのほうが断然早く、それまでのパターン通りなら、2年目(8ヵ月×3=24か月)で8倍になる計算になります。
実は、その大胆予測さえも大幅に上回るペースで、ビットコイン価格は早くも2017年末に同年8月の水準の約4.7倍に達する上昇を遂げました。しかし、2018年を迎えた途端に流れは一変し、2月初旬には6,800ドル台まで下げています。
その後に1万ドルを突破する局面が訪れたものの、2カ月弱の短命に終わり、以降も軟調な展開が続いてきたと言えます。もしも、「8カ月で2倍」というビットコイン版・ムーアの法則がまだ成り立っているのだとしたら、そろそろ本格的な反騰局面に突入してもよさそうなところでしょう。
とにかく奇妙なことに、ビットコインには何らかのパターン性が感じられる側面があります。思えば、ビットコインには4年に1度のペースで半減期が設定されているのも、ムーアの法則との間に何らかの関係性があると言えるのかもしれません。
半減期とは、もともと2,100万BTCというビットコインの発行量の上限が定められているにもかかわらず、マイニング(採掘)競争が激化して新規発行が加速し、ビットコイン価格の希薄化(価値の低下)が進むのを抑えるための措置です。半減期が訪れると、その度にマイニングの報酬が50%下がってしまうように設定されています。おのずとマイニングに対するモチベーションは低下し、参加者の減少によって新規発行数を抑えられるわけです。
今や4年もすれば、コンピュータのスペックがすっかり陳腐化する時代。逆から見れば、わずか4年のうちにその処理能力が飛躍的に向上しているわけです。もしも半減期を設けていなかったとしたら、とうの昔にビットコインは発行上限に達していたかもしれません。
PCのCPUはムーアの法則に沿って、相変わらず「18カ月で2倍」のペースで処理能力が向上しているのです。処理能力が高まるほどマイニングに要する時間は短縮化されるので、そのことを見越していたかのように報酬が50%カットされて、マイナーのやる気を削ぐことで巧みに制御されています。
ムーアの法則によるビットコイン(bitcoin)今後予想
半減期によって過度なマイニングが制御されているとはいえ、ビットコインは総発行量に2,100万BTCという上限が定められており、やがてはそのリミットに到達する日が訪れます。2033年には総量の99%が発行済となり、2140年頃には692万9999番目のブロックが生成されて、ついに2,100万BTCに達して発行がストップする見込みです。
新たな発行ができなくなるということは、いったい何を意味するのでしょうか? ここで連想されがちなのが金(ゴールド)です。金は有史以来の人類共通の財産であり、グローバルにその価値が認められてきました。まだその域まで達していない側面もあるでしょうが、ビットコインも法定通貨と違ってグローバルに共通の価値で流通しています(法定通貨との交換レートによる影響は生じますが……)。
そして、金の価値を支えてきたのが希少性です。人類がこれまでに採掘した金の総量は約17万トンとされており、これはオリンピックの公式プールで約3杯分の量に相当します。これに対し、国際的な金の調査機関であるWGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)の調査によれば、地球上に残存している金の埋蔵量は約7万トン前後で、プールにして約1杯半分にすぎません。
もしも、金が再生可能な貴金属でなかったとしたら、希少性がいっそう高まって、今頃は信じられないような高値をつけていたかもしれません。発行上限が定められているビットコインに感じられるのも、それと類似している希少性です。
上限に近づくにつれて、「もはや新規発行量はわずかだ」という心理的なプレッシャーが募って、ビットコインに対する需要が刺激される可能性が考えられます。つまり、それは価格上昇圧力として作用するわけです。
その一方で、今まで以上に決済などにおいて、ビットコインを利用できる機会が拡大していることでしょう。ビットコインがもっと日常生活において身近な存在となり、新規の供給量が限られている状況下において巷で使用される量(需要)が拡大すれば、こちらも価格の上昇材料となりそうです。
こうした背景が想定される中で、「8カ月で2倍」というビットコイン版・ムーアの法則が今後も成立していくなら、「2021年2月までにビットコインの価格は10万ドルを超える」とデニス・ポルト氏は考えているようです。
もちろん、ゴードン・ムーア氏自らがかねてからコメントしているように、ムーアの法則が永遠に通用することはまずありえないでしょう。 最終的には物理的な限界が生じ、基板上に搭載できる半導体の数には必ず限界が生じます。ビットコインの価格にしても、仮にまだまだ「8カ月で2倍」のペースが続いたとしても、いつかは失速するタイミングが訪れることでしょう。
とはいえ、すでにその局面を迎えていると考えるのは、かなり乱暴な発想であるようにも思われます。とりあえず、デニス・ポルト氏の予測が的中したか否かに関しては、日本が東京オリンピック・パラリンピックの熱狂からようやく冷め始めた頃に、はっきりと決着がつくことになりそうです。ひょっとしたら、デニス・ポルト氏の読みに懐疑的な人のみならず、彼自身も仰天するような展開が待ち受けているかもしれません。
まとめ
ムーアの法則はIntel創業者の一人であるゴードン・ムーア氏が1965年に唱えたもので、「半導体の集積密度は18カ月で2倍になる」と宣言し、半導体業界における技術革新を見事に予見しました。
そのスピードをはるかに凌ぎ、実に「8カ月で2倍」という驚異的なピッチで価格が高騰していくのがビットコイン版のムーアの法則です。この説が真実であれば、2021年2月までにビットコインの価格は10万ドルを超えている計算となります。
この先、もともと2,100万BTCと定められている発行量の上限に近づいていくのは必然で、それに伴ってビットコインの希少性が高まっていくのも確かです。その一方で、今まで以上に身近な決済手段として普及すれば、自然と需要も拡大し、需給バランス的にも価格上昇が促されるようにも思われます。
こうした状況を冷静に見極めつつ、客観的な視点でビットコイン価格の動向を見守りたいところです。
ビットコインの価格変動について詳しく知りたい方は「ビットコインの最高値は?誕生から何倍に?過去の歴史を紹介」をご参照ください。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
関連記事
-
量子コンピューターの登場でビットコインの暗号は破られる?
量子コンピューターの開発が進み、広く使われるようになれば、ビットコインなどで使われている暗号は破られるのでしょうか? 現段階での不安を解消すべく、ビットコインで使われている暗号技術を詳しく見てみましょう。
-
リップルの国際会議Swellとは?XRP価格は今年も下落?
「Swell」は毎年10月〜11月ごろに開催される、リップル社が主催する年次の大型イベントで、イベントの前後でXRPの価格に影響を及ぼすとされています。本記事ではそもそもSwellは過去にどういった発表がされてきたのか、なぜ価格に影響するとされているのかを解説します。
-
世界中で本格化! 中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは?
暗号資産とも、電子マネーとも異なるCBDCは、なぜ今話題となっているのでしょうか。CBDCの役割や今後の動きについて解説します。
-
仮想通貨は暗号資産に?その影響と今後を探る
2020年5月1日から改正資金決済法が施行されたのに伴い、名称が国際標準である「暗号資産」に統一されました。今回は、暗号資産へと呼称が変更された理由について詳しく解説します。
-
ビットコイン詐欺、手口を見抜いて身を守るには?
2016年以降に「国民生活センター」へ報告されている暗号資産(仮想通貨)関連の詐欺やトラブルの事例を踏まえ、詐欺に遭わないための基礎知識や対策を紹介していきます。
-
ビットコインの時価総額の今と今後について
ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)が、世界中でどの程度の規模で流通し、どれだけの資金を集めているのか、いわば人気ぶりをうかがえる情報が時価総額です。時価総額から具体的に何が分かり、どういった視点から観察するのが有効なのか説明します。
-
暗号資産(仮想通貨)にかかる税金とは?税額の計算や確定申告の方法を解説
ビットコインをはじめ、暗号資産取引の初心者の方が見落としがちな要素が、暗号資産に課される税金です。ここでは暗号資産の課税について紹介していきます。
-
ビットコイン投資のポイントは?なぜ暗号資産(仮想通貨)に投資するのか
ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)は、比較的新しいアセットクラス(資産クラス)です。今回はビットコインや暗号資産への投資において、知っておきたいポイントを株式市場との関連も整理しながら解説していきます。
今、仮想通貨を始めるなら
DMMビットコイン