暗号資産(仮想通貨)のセンチメント分析とは

仮想通貨
センチメント分析
2024-06-26 更新

暗号資産(仮想通貨)市場のボラティリティは高く、変動があるたびに投資家のセンチメント(心理状態)に大きな影響を与えます。暗号資産にはさまざまな価格分析手法がありますが、投資家の心理を示すセンチメントは市場動向を理解する上で不可欠です。投資家全体の意識が過熱気味なのか、それとも冷え込んでいるのかを把握することで、より効果的な投資戦略に活かすことができるでしょう。

本記事では、暗号資産のセンチメント分析の基本から、資金調達率やSNSの動向に至る具体的な指標、さらには機関投資家や著名人の影響をどのように考慮するかまで詳しく解説します。

センチメント分析とは

センチメント分析は、テクニカル分析ファンダメンタルズ分析と同様に、相場分析方法の一つです。SNSの投稿やグーグルなどでのインターネット検索、取引高などさまざまな要素を組み合わせて投資家が相場に対して強気なのか、弱気なのかを推し量る分析手法です。

感情は短期的な動きに左右されやすく、センチメント分析も短中期的な分析指標として用いられます。

特に、株式や債券などよりもボラティリティが高く、市場も相対的に小さい暗号資産(仮想通貨)は、トレーダーはセンチメントに影響されやすいと考えられます。株式も小型株の方がセンチメントに大きく影響されることが知られているため、よりリスク選好度が高い暗号資産では重要な要素でしょう。

特にSNSでの情報のやり取りが盛んな暗号資産は、SNSにおける著名人の発言によって価格が大きく変動することもあり、ソーシャルメディアやニュースが暗号資産トレーダーの感情や大衆心理を推し量る参照先として知られています。

また、暗号資産では、FOMOが相場分析でたびたび取り上げられるため、センチメント分析は重要でしょう。

FOMOとは、「Fear of Missing Out」の略語で「取り残されることへの恐怖・不安」と訳される言葉です。「自分だけトレンドに取り残されているのではないか」という心理から、乗り遅れまいとする買いが集まる現象で、特にSNSなどで情報の流れが速くなったことで注目されています。

センチメント分析に使う指標はいくつかありますが、ある一つの指標だけで判断するとダマシに遭うこともあるでしょう。そのほかの数値データやソーシャルメディアなど複数要素を組み合わせるのが良さそうです。

さらに、相場の過熱状況を推し量る手法にはオシレーター分析も知られています。こうした他の手法と組み合わせることで、相場の過熱感をより正確に把握できるでしょう。

センチメント分析では、プログラミングで感情データを取得し、価格との組み合わせで分析をするツールを提供する企業もあります。ただし、後述するように、個人トレーダーでもWebページなどで公開されているセンチメント指標を参考にすることが可能です。

関連コラム:
オシレーターとは?暗号資産(仮想通貨)のチャート分析で必須の知識

暗号資産(仮想通貨)のセンチメント指標

暗号資産(仮想通貨)のセンチメント指標として、有名なものに「恐怖&強欲指数(Fear and Greed Index)」があります。株式でも使われる「恐怖&強欲指数」ですが、暗号資産でも同様に投資家のセンチメントを強気の順に「極度の強欲(Extreme Greed)」「強欲(Greed)」「中立(Neutral)」「恐怖(Fear)」「極度の恐怖(Extreme Fear)」の5段階で示します。

具体的には0から100までの数値で示され、100~75が「極度の強欲」、75~55が「強欲」、55~45が「中立」、45~25が「恐怖」、25~0が「極度の恐怖」となっています。

100に近いほど投資家の心理状態が加熱しており、適正価格を超えて取引が行われていると判断されます。反対に0に近いほど必要以上に売り込まれていると捉えられます。

指標は、価格の変動性、モメンタム、取引高のほか、ソーシャルメディアのデータを組み合わせて、ビットコインや暗号資産(仮想通貨)市場に対する投資家の市場心理を総合的に把握します。

例えば、「極度の恐怖」は、投資家が市場の動向を心配しすぎている兆候であり、底を打っている可能性と捉えることができます。

反対に、センチメントが「極度の強欲」を示し、強気に傾きすぎている状況は、市場が天井に近く、まもなく調整の時期を迎えると推測されます。

例えば、2024年3月5日に過去2年間で最高となる90ポイントの「極度の強欲」を示した際には、その後の3月13日に史上最高値となる73,000ドルをタッチした後に4月中旬には一時60,000ドル付近まで下落し、調整局面を迎えました。

「恐怖&強欲指数」以外のセンチメント分析では、Google トレンドの検索ボリュームで特定のキーワードの需要を調べることも有効です。

Google トレンドでは、ワードの相対的な検索ボリュームが示されます。「buy bitcoin」などポジティブなワードの相対的な検索ボリュームが高い時は投資家心理が強気になっていることを示し、「bitcoin dead」などネガティブなボリュームが増えている時は市場心理が落ち込んでいると捉えられます。

過去の報道では検索ボリュームの増加がビットコイン価格の上昇と一致しているとの指摘もあり、インターネット上での検索からも投資家心理を読み解くことができます。

資金調達率、SNSやコミュニティの動きを調べる

ユーザーが自身で調べられるセンチメント指標に関しては、前述した指標や検索ワード以外に、資金調達率(ファンディングレート)やソーシャルメディアでの投稿があります。

資金調達率とは、暗号資産の無期限(永久)先物でポジションを保有する際に発生する費用のことです。市場では手数料に近いニュアンスで用いられます。無期限先物では、期限がないことから現物価格との価格が乖離してしまいます。そのため、現物価格と価格が乖離しないために資金調達率が用いられています。

無期限先物のビットコイン価格が現物価格を上回っている場合、ロングポジションはショートポジションに費用を支払います。一方で無期限先物の価格が現物価格を下回っている場合はショートポジションがロングポジションに費用を支払うことによって価格の乖離を修正しようとするものです。

市場の公平性を保つために導入されている資金調達率ですが、これがセンチメント指標の一つとして用いられています。

無期限先物価格が現物価格よりも高値で資金調達率がプラスの状態が続いていればロング(買い)ポジションが優勢であり、市場全体が強気になっていると捉えられます。料金を支払ってでも買いの相場だと判断していると読めるためです。反対に資金調達率がマイナスの場合はショート(売り)ポジションのトレーダーが多く、市場に恐怖感が蔓延していると捉えられます。

このため、資金調達率のプラスが続くと、その後に調整局面が訪れることが指摘されることがあります。過去にも2020年末頃から2021年の4月ごろまで資金調達率のプラスが続いた後に調整期間が訪れたことがありました。

ソーシャルメディアの投稿を調べることもセンチメント分析に役立ちます。暗号資産ではX(旧ツイッター)上での投稿が活発であり、株式市場と比較して、センチメント分析によるトレンド予測の精度が暗号資産では高いとする研究もあります。

一方で、暗号資産ではX以外にもテレグラムやレディット、ディスコードといったさまざまなSNSでコミュニティが形成されています。SNS内の投稿を閲覧することで、そのほかのユーザーが相場をどのように捉えているかを検証することが重要でしょう。

センチメントは機関投資家や著名人に影響される?

投資家の感情を示すセンチメントですが、必ずしも価格と同じ方向に動くわけではないことに注意が必要です。既知の情報は価格に織り込まれている場合があることや、センチメントには個人投資家や機関投資家など様々な主体があるためです。

S&Pグローバルのあるレポートでは、センチメントについて個人投資家のセンチメントは逆張り指標となり、機関投資家や経営陣のセンチメントでは順張りの結果を示すとしています。つまり専門家や大口投資家の動きにセンチメントは左右されやすいということでしょう。

暗号資産(仮想通貨)でも「クジラ」と呼ばれる大口投資家の動向に追随する投資家が多いために、同様にクジラの動きが重要と考えられます。

一方で、SNSという観点では、著名人による発言も市場への影響力を持っています。過去にテスラCEOのイーロン・マスク氏のツイートで価格が変動したことがあります。

2021年6月には、マスク氏がビットコインでのテスラ車の支払いを再び認める可能性をツイートしたことを受けて、ビットコイン価格が2週間ぶりの高値となりました。実際に大手暗号資産情報サイトの創業者であるボビー・オング氏が「マスク氏のツイートがセンチメントを変えるまで、週末の市場はさらなる調整局面にあった」と発言するほど、大きな影響力を持ちました。

さらには2022年10月にはツイッター(現X)を買収したことを受けて、同氏が「好きな暗号資産の一つ」と公言していたドージコイン(DOGE)の価格が急騰しました。このように、ボラティリティの大きい暗号資産はわずかなセンチメントの変化に影響されやすいといえるかもしれません。

関連コラム:
イーロン・マスク氏の行動から見る暗号資産(仮想通貨)の動向

まとめ

ボラティリティが大きいとされる暗号資産(仮想通貨)で、センチメント分析は重要です。市場全体が過熱気味なのか、それとも冷え込んでいるのかといった情勢を判断して投資戦略に活かしましょう。

恐怖&強欲指数などの数値データのほかにソーシャルメディアの投稿や著名人の発言など複数の要素を総合的に把握することが大切です。

さらには、センチメント分析だけではなく、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析と組み合わせて投資戦略を立てるといいでしょう。

テクニカル分析やファンダメンタルズ分析について興味を持たれた方は「暗号資産(仮想通貨)のファンダメンタルズ分析、テクニカル分析とは?」をご参照ください。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

関連記事

今、仮想通貨を始めるなら
DMMビットコイン