Web3の重要要素とされるDePIN(分散型物理インフラネットワーク)とは

DePIN
2024-05-25 更新

近年、暗号資産(仮想通貨)をインセンティブ(報酬)として利用する次世代型ビジネスモデルの一つとして、DePIN(分散型物理インフラネットワーク)と呼ばれるブロックチェーンプロジェクトやサービスが注目されています。

また、DePINは、これまでは実現が難しいとされていた新しいプロダクトを開発できる仕組みであることも話題になっています。

この記事では、DePINとは何か、その仕組みや具体的なユースケース、将来性について解説します。

DePINとは?

DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Network:分散型物理インフラネットワーク)とは、一言でいえばトークンを使ってコミュニティにインセンティブを与え、物理的なインフラネットワークを一から構築する分散型アプリケーション全般の名称です。

例として、DePINの一つのジャンルである「Drive-to-Earn」を説明します。Drive-to-Earnではまず、専用のドライブレコーダーを使用します。

専用のドライブレコーダーを購入したユーザーは、それを取り付けた車でドライブすることで、自身の車で運転した地形情報をネットワークに送信します。地形情報を提供する報酬として、ユーザーはトークンを受け取ることができます。

一方、ユーザーからの地形情報を収集したサービス提供者側は、この情報を地図アプリに反映します。このサービスでは、ユーザーからリアルタイムで新しい地図情報を取得し自動的に地図アプリの情報を更新することで、質の高い地図アプリのサービスを提供することができます。

このように、DePINはブロックチェーン技術を活用して現実世界のなんらかの物理的なインフラやデバイスを使用したネットワークを構築し、トークンによるエコシステムを利用しながらネットワーク全体の質を向上させます。

DePINのように、トークンをインセンティブとしてサービス設計するブロックチェーンプロジェクトは以前から存在しますが、Web3.0により構築可能な新しい分野のキーワードとして改めて注目されるようになり、暗号資産(仮想通貨)をメインストリームにする最初のユースケースになる可能性があるとも考えられるようになってきました。

物理的なインフラネットワークの例としては、ワイヤレスネットワークのWiFiホットスポットから、家庭用太陽光発電ネットワーク、前述したドライブレコーダーを活用したモビリティによる世界地図の構築等々、アイデア次第であらゆるものを含めることができるのがDePIN分野の特徴です。

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新しいビジネスモデルを開発するDePIN

DePINは、暗号資産によるインセンティブを利用し多くの参加者の足並みを揃えることで、これまでは実現が難しかった新しいプロダクトを開発できる一つの手法と考えられるようになりました。

莫大で中央集権的な先行資本に頼る必要がない点や、仕組みのみで規模を拡大できるようにすることで、従来のモデルではできなかった規模のインフラの構築を可能にすると期待されています。

DePINの思想のもとに作られた分散型アプリケーションは、大規模なプロダクトを集団で開発するよう、貢献者を奨励するためにトークンによる報酬はゲーム化され、一方でプロダクトの使用によってトークンは消費される仕組みを持ちます。

DePINは、少数ではなく多数によって統治されるグローバルなインフラ革命であり、参加者の誰もが共有できる新たな経済参加の時代を可能にします。

また、DePIN は、すべての参加者が自分の属しているコミュニティに貢献し、提供するサービスに対して収入を得ることができる活動であり、これらの仕組みがこれまでの企業が管理するWeb2の時代からコミュニティが管理・所有するWeb3へのパラダイムシフトを物理的に具現化したものの一例として期待されています。

DePINの仕組み

DePINはブロックチェーン技術を活用して、ネットワーク全体での制御と責任の分散を実現するシステムです。仕組みの中核となるのは、「トークンに基づくエコシステム」と「ハードウェア」です。

トークンに基づくエコシステムとは、参加者がコンピューティング能力やインターネット接続、ストレージ機能など、なんらかのリソースを提供することで報酬を受け取ることができる仕組みのことです。

一方で、DePINにおいてハードウェアは、デジタルであるブロックチェーン領域と物理環境をつなぐ役割を担います。

ハードウェアは、クラウドネットワーク用のサーバーであったり、ワイヤレスネットワーク用のアクセスポイントであったり、データ収集用のセンサーやスマートフォンあるいはエネルギーネットワーク用のソーラーパネルなどさまざまです。これらのハードウェアは、DePINのサービスを実現する有形資産です。

DePINに必要なハードウェアは、DePINの用途によってまちまちであることも大きな特徴の一つです。このハードウェアの多様性が、DePINの汎用性と幅広い分野での活躍の可能性があることを示しているといっても過言ではありません。

DePINにおけるハードウェアは、汎用性のあるものから専用ドライブレコーダーのようなものまで多岐にわたり、場合によってはデプロイや保守、操作をするための組織やオペレーターが必要になることもあります。

このように組織やオペレーターあるいはハードウェアを購入してまで参加するユーザーは、DePINにとっては欠かせない存在であり、ネットワークの健全性と拡大に積極的に貢献してくれることから、その能動的な行動に対してトークンを報酬として支払うことが重要になります。

こうしたDePINの仕組みがあってこそサービスは成り立つのであり、DePINのサービス拡大にとって重要な要素となります。

DePINの具体例

車を運転することで報酬が得られる「Drive-to-Earn」というジャンルでは、前述の具体例の他にも、たとえば特定の地域の交通量や道路状況などの貴重な移動データを収集するスマートフォンアプリを提供するサービスなどもあります。

このサービスでは、AIが搭載された無料カメラアプリを運転中にアクティブにしておくことで、スマートフォンのカメラからの移動データを処理し、匿名化されたインサイト(消費者の行動や思惑)に変換します。これらのインサイトを共有することで、ユーザーには報酬としてトークンが与えられます。

物理的なインフラとしてスマートフォンを利用し、オンチェーンネットワークに価値を提供することで報酬を発行するメカニズムは、まさにDePINの仕組みです。自動収集された地域の交通量や道路状況などのデータは他のユーザーに公開されますが、同サービスはDePINの仕組みによって苦労せずに生の移動データを収集し公開を可能にします。

IPFS(Inter-Planetary File System)など分散型ファイルシステムやクラウドの分野におけるDePINは、ファイルストレージ、リレーショナルデータベース、コンテンツデリバリネットワーク(CDN)、仮想プライベートネットワーク(VPN)などのサービスに応用されつつあります。

分散型クラウドネットワークでは、個人のコンピュータの余っているストレージスペースを収益化するサービスが登場しています。

ユーザーは分散型クラウドネットワークのDePINサービスに参加し、利用可能なストレージスペースをブロックチェーン上で追跡されるデジタルストレージのレンタルサービスに提供することで、DePINサービスに貢献し、その対価としてトークンによる報酬を得ることができます。

そのほかにも、5G(第5世代移動通信システム)やIoT(モノのインターネット)向け無線通信規格のLoRaWANなどワイヤレスネットワークの分野におけるDePINでは、個人が自宅にホットスポット(アクセスポイント)を設置することで、無線通信のカバレッジ(電波の届く領域)の拡大に貢献することができ、その対価としてトークンによる報酬が得られるサービスもあります。

さらには、さまざまな再生可能エネルギーを利用したエネルギーネットワークの分野で、電力網の信頼性と効率を向上させることを目的にDePINの仕組みが利用されています。

DePINによって、複数のグリーンエネルギー提供者をエネルギーネットワークで結びつけ、再生可能資源からのデータを共有しています。

DePINの将来性

DePINの進歩は、Web3の未来を構築する上で重要なステップになる分散型の仕組みであるともいわれています。しかし、それにはDePINのコンセプトが広く一般に理解され、より普及することが不可欠です。誰から見てもわかりやすく、より革新的なDePINプロジェクトが登場することで、暗号資産(仮想通貨)に対する興味や関心が今まで以上に高まるであろうという意見も少なくありません。

健全に発展したDePINプロジェクトは、コミュニティがインフラを構築・維持する際に協力する力を与え、集団的な努力によってコストを削減できる可能性が誰にでも実感できるサービスです。

こうした経験は、今までのブロックチェーン技術におけるサービスやアプリにおいては希有なことであり、DePINほど実用的で広く一般の人(暗号資産に興味がなかった人)にとってもわかりやすいサービスはあまりありませんでした。

初期のDePINは小規模かつ新興のトークンエコノミーでしかありませんでしたが、このビジネスモデルは通信、エネルギー、モビリティ、ストレージなどの多様かつ大規模な業界において有効であることが理解され始めたことから、より実用的かつ一般的なサービスの構築に利用されることが少しずつ見えてきました。

DePINの課題

しかし、DePINにも課題はあります。

ブロックチェーン技術によるプライベート・ネットワークの維持には、多額の運用コストがかかります。DePINのサービス開始時にはそれなりの経済的負担があるため、十分なリソースが得られない場合、ネットワーク・ホストを誘致し、ネットワーク運営を維持することは困難になる可能性もあります。つまり、たいていの場合はDePINのトークン価値が低い段階で、いかにユーザーを獲得することができるかが鍵となります。

DePINにおけるネットワーク参加者の収益性は、参加者にとって重要な動機付けです。DePINプラットフォームは、ネットワーク参加者の収益性を確保するために、報酬とコストの微妙なバランスを取る必要があります。

ユーザーとネットワーク参加者の両方からのエンゲージメント率が低い中で、このバランスを達成することは困難であることも否めません。

つまりは、DePINサービスは誰から見ても魅力的なものであることが必須となります。繰り返しになりますが、DePIN の成功はDePINのコンセプトが広く一般に理解され、より普及することが成功の鍵となるでしょう。

まとめ

暗号資産(仮想通貨)業界では、DePINがブロックチェーン技術をメインストリームにする最初のユースケースになると予測する意見も聞かれるようになってきました。

しかし、そうした時代が今後訪れるかどうかは、DePINがトークンエコノミーを活用したインフラの構築と運営を効率的に調整するシステムであるという認知度がより世間に広まることがまずは必要でしょう。

認知度が高まり、その仕組みを誰にも理解された上で、より魅力的なDePINサービスが登場することで、誰でも気軽に便利なサービスの一つとして選択することができる時代になれば、DePINが構築するサービスは本当に利用価値の高いものになるのではないでしょうか。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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