ブロックチェーンのメインネットとは?テストネットとの違いも解説
暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンのニュースを読んでいると、「メインネットに実装された」や「テストネットが開始される予定」といった表現が出てきます。これらの用語は、主に開発状況を指しています。暗号資産やブロックチェーンはユーザーに公開される前や公開された後も開発が続けられており、メインネットやテストネットは、こうした開発状況に関する用語として頻出します。ブロックチェーンの開発状況は、投資家の期待値にも関連するため、価格への影響が出ることもあるでしょう。この記事ではメインネットやテストネット、またそれぞれの違いについても解説します。
メインネットとは
メインネットは「メインネットワーク」の略称で、実際に流通する暗号資産(仮想通貨)のトランザクションが行われる本番環境のネットワークのことです。ブロックチェーン上ではそれぞれ独自の暗号資産が流通しており、独自の暗号資産は「ネイティブトークン」と呼ばれています。
例えば、ビットコインネットワークとは、ビットコインのメインネットのことで、ビットコインがネイティブトークンです。ネイティブトークンは、メインネット上で取引手数料の他に、エコシステムのガバナンス、ステーキングなどに使われます。
ビットコインの他にも、イーサリアム(ETH)やエックスアールピー(XRP)など、多くの暗号資産にメインネットはあります。一方でベーシックアテンショントークン(BAT)をはじめとしたERCトークンのように、イーサリアムブロックチェーンを利用することで独自のメインネットを有さないものもあります。
独自のメインネットを持っていないことについては、メリットとデメリットがあります。
ブロックチェーンプラットフォームの中でトップのコミュニティを誇るイーサリアムメインネットを利用すれば、開発が容易になったり、既存のイーサリアムのセキュリティ環境を利用できたりするメリットがあります。
一方で、基盤となるブロックチェーンに依存するために、そのブロックチェーンの変更や問題点から直接影響を受けたり、ブロックチェーンが混雑することでガス料金(手数料)が高騰する影響を受けたりしてしまいます。
こうした他のブロックチェーンを利用する暗号資産の中にはメインネットを移行したプロジェクトもあります。トロン(TRX)は過去にイーサリアムのメインネット上で運用されていましたが、2018年に独自のメインネットであるトロンブロックチェーンを構築しました。
メインネットの役割と構成
メインネットでは、トランザクションを検証し、承認するための特定のコンセンサスアルゴリズムが適用されます。コンセンサスアルゴリズムには例えば、ビットコインで採用されているプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)やイーサリアムで採用されているプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)などがあります。
コンセンサスアルゴリズムに応じて、メインネットではマイナー(採掘者)やバリデーター(承認者)が存在します。PoWではマイナーがトランザクションを検証し、PoSではバリデーターがトランザクションを検証してブロックを生成・承認します。
こうした仕組みによってメインネットでは、スマートコントラクトや分散型アプリの開発などさまざまな操作が可能となります。
このプロセスは、世界中に分散された多数のノードによって支えられています。メインネットはこれらのノードと連携して、トランザクションの検証と処理を行い、ブロックチェーンの安全性と透明性を保持します。各ノードはネットワークのコピーを保持し、新しいトランザクションやブロックの正確性を確認することで、ネットワークの整合性を維持します。
ノードはブロックチェーンネットワークの基本的な構成要素であり、トランザクションの伝播、検証、そして場合によってはブロックの生成に関与します。一方で、マイナーやバリデーターは、これらのトランザクションを検証し、新しいブロックをネットワークに追加する特別な権限を持つノードです。このようにして、メインネットは多数のノードによって構成され、これらのノードが連携してトランザクションの検証と処理を行います。
ブロックチェーンはメインネットとして一般に公開された後も、開発や改良が続けられています。新しい機能のテストやセキュリティの強化など、変更を加える前にこれらを安全な環境で試すためにテストネットが利用されます。
関連コラム:
「マイニングに使われるプルーフ・オブ・ワーク(PoW)とは?意味や役割を解説」
「暗号資産(仮想通貨)のステーキングとは?PoSの仕組みと併せて解説」
テストネットとは
分散型で運用されているブロックチェーン、特にパブリックブロックチェーンでは、データの改ざんが行われにくい一方で、一度運用された場合には簡単には修正ができません。そのために、本番環境としてブロックチェーンを動かす前にテスト環境で運用を行う必要があります。このテスト環境のブロックチェーンのことを「テストネット(テストネットワーク)」と呼びます。
いきなり本番環境で運用をして、もしバグやエラーが起こると、ネイティブトークンを失ってしまうリスクがあります。そのためにも通常はメインネットで運用する前にテストネットで開発が行われています。
テストネットの大きな特徴の一つは、実際の価値を持たない擬似的なテストトークンを使用する点にあります。このシステムにより、開発者は貴重なネイティブトークンを消費することなく、アプリケーションやシステムのテストを自由に行うことが可能になります。
さらに、テストトークンの入手手段として、フォーセット(蛇口:faucet)と呼ばれる機能が提供されます。フォーセットを通じて、ユーザーは必要なテストトークンを簡単に取得でき、テストネットワーク上での様々な操作や開発を進めることができます。フォーセットはテストネットワークごとに複数存在することもあります。
テストネットを活用することで、開発者はスマートコントラクトや分散型アプリケーション(DApps)の開発、ブロックチェーン自体のアップグレード、ウォレットやその他の基盤技術のテストなど、幅広い用途に対応できます。さらに、テストネットはユーザー向けの教育や学習の場としても機能し、ブロックチェーン技術の基礎から応用までを体系的に学ぶサービスに使われています。
テストネットからメインネットへの展開事例
ブロックチェーン開発者が直面する最大の障害の一つは、テストネットからメインネットへの展開です。前述したように、もしバグなどがあれば、ユーザーが資産を失ってしまうことにもつながってしまいかねません。
特にイーサリアムは頻繁にテストネットを運用し、新機能がメインネットに実装されることがニュースになっています。
2024年3月に、イーサリアムのレイヤー2における取引コストが大幅に引き下げられる大型アップグレード「Dencun(Deneb/Cancun)」が実施されました。
イーサリアムには実在する地名から名付けられた3つのテストネット「Goerli(2024年2月いっぱいで閉鎖)」、「Sepolia」、「Holesky」が存在しており、Dencunアップグレードにおいてもこれらが活用されています。実際、Goerliテストネットでの検証時には一時的にバグが発生してブロックの確定が実行できなくなる事態が発生しました。仮にテストネットでバグが見つからずにメインネットに実装されていれば、大きな問題に発生していたかもしれません。
また、3つのテストネットはそれぞれテストする内容が異なっています。例えばGoerliとSepoliaではステーキングのテストの可否が異なります。
Goerliでは、バリデーターへの参加が公開されており、DAppsやスマートコントラクトのテストのほか、ステーキングのテストが可能です。一方でSepoliaではバリデーターの参加が許可制のためステーキングのテストができません。
テストネットが複数ある理由として、テストトークンの供給限界も挙げられます。
Holeskyのテストネットの立ち上げは、Goerliへのフォーセットによるテストトークンの供給が、バリデーターの需要に対して追いつかなくなったことが要因です。このテストネットが立ち上げられたことにより、Goerliのテストトークンの供給不足を解消し、ステーキングのテストも問題なく行えるようになりました。
上記のように、テストネットは異なる理由によって複数立ち上げられることがあります。テストネットでGoerliのようにコミュニティが構築され、メインネットに近い状態のものや、コミュニティや規模が小さいために同期が早く行える利点を持つものもあります。また、開発段階に応じてテストネットが使い分けられているものもあります。
無料のテスト用トークンが高騰することも
テストトークンは基本的には無料で配布されていますが、投機を目的として高値で取引される事態も発生しています。
前述したGoerliの例では、テストトークンの供給がバリデーターの需要に対して追いつかなくなった問題に対応するために、「レイヤーゼロ」というプロジェクトがテストトークンに紐づくgETHというトークンを分散型取引所に上場したことが引き金となりました。
gETHの上場は、開発者がgETHを購入することでテストトークンを入手することができるようにすることが目的でしたが、gETHが投機家を惹きつけてしまったとされています。
元々無料で配布されているGoerliのテストトークンを入手するためのgETHでしたが、発行当初は約0.1ドルと価格が低くとどまると想定されてしましたが、上場3日後には一時1.6ドルまで高騰し、時価総額も1500万ドルに達してしまいました。
まとめ
メインネットとは、実際のトランザクションが記録されたり、行われたりしているブロックチェーンの本番環境のことです。一方で実際の運用開始以降も開発が続けられているブロックチェーンでバグやエラーが起きないように開発するテスト環境でのブロックチェーンのことをテストネットと呼ばれます。
テストネットでは実験が行われるだけでなく、開発環境を生かした教育コンテンツが提供され、ブロックチェーンの基礎を学ぶ環境としても活用されています。
一方で、テストネットでは、大きなバグが見つかり、開発が遅れるというニュースが報じられることがあります。開発の遅延がリスクと捉えられると、価格への重石になることもあるかもしれません。動向をご自身でも把握しておくといいでしょう。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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