暗号資産(仮想通貨)コスモス(ATOM)とは?将来性や特徴を解説
コスモス(ATOM)は、スケーラビリティ問題など、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など従来のブロックチェーンが抱える問題を解決するほか、異なるブロックチェーン同士をつなぐことができるという特徴を持っています。
2009年のビットコイン誕生以来、多くのブロックチェーンや暗号資産(仮想通貨)が開発されてきましたが、そのほとんどに互換性がありません。コスモスは、互換性のないというブロックチェーン間の問題を解決すべく開発されました。
この記事では、より効率的な取引やデータ流通の実現に役立つことが期待されているコスモスについて、その特徴をはじめ、仕組みや将来性などについて詳しく解説します。
暗号資産(仮想通貨)コスモス(ATOM)とは?
コスモスは、誰もがブロックチェーンを開発・利用できる未来の実現を目指すパブリックなオープンソースプロジェクトと、そのブロックチェーンの総称です。「ブロックチェーンのインターネット(Internet of Blockchain)」をコンセプトに掲げています。
このプロジェクトは2014年にジェ・クォン氏らによって設立されたTendermint社という組織により開発されました。創業から約2年後の2016年、コスモスのホワイトペーパーが公開され、2017年にはICOセールによって約1700万ドル(当時の日本円で約18億円相当)の資金調達に成功しています。
コスモスは、ビットコインやイーサリアムに代表される従来のブロックチェーンの「スケーラビリティ(拡張性)」問題や、「インターオペラビリティ(相互運用性)」が無いという長年の問題を解決すべく生み出されたプロジェクトです。
コスモスの最も大きな特徴は、互換性のない複数のブロックチェーン同士を繋ぐことができる「クロスチェーン」という仕組みにあります。クロスチェーンの仕組みを実装することにより、コスモスはブロックチェーンのスケーラビリティ問題を解決し、より効率的な取引やデータ流通の実現を目指します。
また、コスモスはネイティブトークンとして、ブロックチェーン上で利用される暗号資産(仮想通貨)であるATOMを持ちます。ATOMは、コスモスエコシステムにおける手数料の支払いやステーキング報酬等に利用されます。
プルーフ・オブ・ステークネットワークの採用
コスモスは、プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)を採用したネットワークで、コンセンサスアルゴリズムにTendermint BFTを使用しています。
コンセンサスアルゴリズムには、デリゲート(委任)の仕組みも導入されています。委任者は暗号資産の保有者に対して、保有している量に応じた投票権を割り当て、投票によってトランザクション(取引)の承認を委任できます。
取引承認者は手数料等を報酬として受け取ることができ、また、権利の委任相手が取引承認者に選ばれた場合、委任した者にもステーキング報酬が分配されます。
ATOMは、プログラムにより自動発行されますが、発行枚数に上限は設けられていません。ATOMの発行枚数は、動的インフレモデルの仕組みが実装されています。インフレ率を調整する目的で新規発行数量がステーキングされている数量に応じて自動調整されます。
ちなみにATOMのインフレ率は、従来は7%〜20%の間で変動するように設定されていましたが、2023年11月27日にコスモスのコミュニティが、ATOMのインフレ率を約10%に引き下げる提案を承認しました。この決定により、ATOMのステーキングAPR(年換算利回り)が約13%から19%程度に調整されることになります。この決定は、高いインフレ率によって長期的にはATOMの価値が下落する恐れがあることから行われました。
インフレ率の引き下げ調整は、ステーキング目的でATOMを購入したユーザーにとってはトークンを売却する理由につながる場合もあり、過度な調整は価格が下落するリスクになります。ユーザーは公式ブログやニュースを通じて、こうした動向には気をつけなければなりません。なぜインフレ率を調整するのかについても、理解しておきたいところです。
コスモスの特徴と仕組み
コスモスの大きな特徴であるクロスチェーンを実現する仕組みとして、導入されているのが「Hub」と「Zone」、「IBC」です。
クロスチェーンを実現するHubとZone、IBC
まず、IBCは、2つの異なるブロックチェーンを直接接続することでネットワーク内の各ブロックチェーンが相互にトークンを転送できるように機能します。
しかし、この方法はネットワーク内の接続の数がブロックチェーンの数に比例して大量に増加してしまいます。
コスモスの公式サイトによると、ネットワーク内に100のブロックチェーンがあり、それぞれが他のブロックチェーンとのIBC接続を維持する場合、必要になる接続数は4950になり、これはすぐに破綻してしまうと説明されています。
これを解決するために、コスモスのネットワークは「Hub」と「Zone」という2つのブロックチェーンを備えた「モジュラーアーキテクチャ」という仕組みを導入しました。
Zoneは、異なる個々のブロックチェーン群であり、HubはZoneがお互いに接続するために作られた中継役となるブロックチェーンで、ZoneひとつひとつとHubは、IBCによって接続されているという構造になっています。
ZoneがHubとのIBC接続を行うと、Hubに接続されている他のすべてのZoneに自動的にアクセスが可能になります。
その結果、Hubと接続されるZoneは、限られた数にする必要があります。
Hubは、ネイティブトークンとして暗号資産(仮想通貨)であるATOMを持つ最初のHubであるCosmos Hubと、それ以外のHubに分けられます。
Tendermintをはじめとして、Casper FFGなどの高速ファイナリティコンセンサスアルゴリズムを使用するブロックチェーンは、IBCで直接接続することが可能です。
しかし、ビットコインやイーサリアムなど、コスモスネットワーク以外のブロックチェーンは、IBCではなく「Peg Zone」と呼ばれる別のブロックチェーンの状態を追跡するためのブロックチェーンを仲介することによって接続します。
Peg Zoneは、Peg Zone自体が高速ファイナリティを備えているため、IBCと互換性があり、ブリッジするブロックチェーンのファイナリティを確立する役割を担い、IBC接続と同等の役割を果たすことができるようになります。
開発が比較的容易になるCosmos SDK
コスモスは、その技術の中心となる「Cosmos SDK」という開発キットを公開しています。
Cosmos SDKは、開発者が独自のカスタマイズが可能なブロックチェーンを構築するためのツールキットです。誰でも利用することができ、新しいHubや新しいブロックチェーン(アプリケーションチェーン)の構築や、そのブロックチェーン上で用いる独自トークンの発行、DAppsの構築などが容易にできます。
Cosmos SDKを利用したプロジェクトはすでにいくつも存在しており、これからブロックチェーンを利用したビジネスに広く利用されていくと考えられています。
ブロックチェーンの開発は一から作成するには膨大な開発コストがかかりますが、Cosmos SDKを利用することで、ブロックチェーンをゼロから構築することなく比較的簡単に独自ブロックチェーンを作成することが可能です。Cosmos SDKはモジュール型の設計になっており、必要な機能を組み合わせることで効率的にブロックチェーンを構築できます。
新しく作られたHubやブロックチェーンは、Cosmos Hubや他の既存のHubとの相互運用性を持ち、Peg Zoneで接続することで外部のブロックチェーンと相互運用することも可能になります。
コスモスの将来性は
コスモスはインターオペラビリティ(相互運用性)をはじめとする複数のブロックチェーンの問題を解決し得る有力プロジェクトです。
Cosmos SDKで独自ブロックチェーン(Hub)が開発できるコスモスは、年々新しいブロックチェーンがコスモスネットワーク上に構築されています。すでに数十以上ものブロックチェーンが存在し、それらのブロックチェーン上で約250種類を超えるDApps(分散型アプリ)が稼働しています。(2024年2月末時点)
近年は異なるブロックチェーン同士での相互運用性の確立にも注目が集まっており、その需要も高まりつつあります。
コスモスの将来を担う鍵となるのがCosmos SDKの利便性です。異なるブロックチェーン同士に相互運用性をもたらすコスモスは、独自ブロックチェーン、独自トークンにもまた相互運用性をもたらすため、今後のエコシステムの拡大に期待ができます。
コスモスの将来性については、コスモスネットワーク上で稼働する新しいブロックチェーンプロジェクトにも注目していくとよいでしょう。
まとめ
相互運用性を持つ独自のブロックチェーンをつくることもでき、独自の暗号資産(仮想通貨)を発行できるコスモスは、ブロックチェーン業界全体のエコシステム拡大の実現に寄与するとの期待が寄せられています。
ブロックチェーンは金融のみならず、保険や不動産、アート、エンターテインメントといった様々な分野で応用できるため、今後、ブロックチェーンの普及と共にコスモスの相互運用性の需要はさらに高まるかもしれません。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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