オプティミスティック・ロールアップとは?スケーラビリティ改善に重要な技術
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イーサリアム(ETH)のスケーラビリティ問題などの課題に対応した技術にレイヤー2と呼ばれる技術がいくつかありますが、そのうちの一つに「ロールアップ」があります。
ロールアップ技術は高い処理能力と安価な手数料を実現する技術として注目されていますが、そうしたロールアップ技術の中で、注目度が高いのがオプティミスティック・ロールアップです。
この記事では、オプティミスティック・ロールアップの仕組みや将来性、他のロールアップとの違いについて解説していきます。
オプティミスティック・ロールアップとは?
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ロールアップは、イーサリアムの課題を解決するために誕生したレイヤー2技術の一つです。高い処理能力と安価な手数料を実現する技術として注目されています。
ロールアップにはゼロ知識(Zero-Knowledge:zk)ロールアップと、オプティミスティック・ロールアップ(Optimistic Rollups)の2つが知られています。
オプティミスティック・ロールアップは、トランザクションが有効であると「楽観的に」仮定し、問題がある場合は特定の時間枠内に異議を唱える機会を提供しています。これに対し、ゼロ知識ロールアップはトランザクションが有効であるという証拠を提出することでデータの正当性を保証します。
オプティミスティック・ロールアップはイーサリアムメインネットの負荷を軽減し、処理速度の向上をもたらすため、ユーザーはオフチェーンで速やかにトランザクションを処理することができます。
代表的なところでは、イーサリアムのレイヤー2プロジェクトであるアービトラム (Arbitrum)などが、実際にオプティミスティック・ロールアップを実装し、イーサリアムのスケーラビリティ問題の解決に成功しています。
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「レイヤー1とレイヤー2の違いや特徴を解説!ブロックチェーンの重要技術」
オプティミスティック・ロールアップの利点
オプティミスティック・ロールアップは、レイヤー1のセキュリティと堅牢性をそのまま利用できる特徴があります。
一般的なレイヤー2技術では、オフチェーンでまとめた真正性(正当性)のあるデータをレイヤー1に返し、一連のトランザクション作業を終了します。
一方、オプティミスティック・ロールアップは複数のトランザクションをひとつにまとめてレイヤー1に送信し、その後、一定期間内に問題が指摘された場合のみ、レイヤー1のセキュリティを使って真正性の検証が行われます。この場合の検証基準は、メインチェーンで通常行われるトランザクション検証と同様のものになります。これにより、オプティミスティック・ロールアップで行われたトランザクションの安全性は、レイヤー1で実施されるトランザクションと同等の基準で確保されます。
サイドチェーンのような他のスケーリング・ソリューションとは異なり、オプティミスティック・ロールアップはトランザクションの結果をオンチェーンで公開するため、そのままメインネットのセキュリティを維持することが可能です。
特に、オプティミスティック・ロールアップはゼロ知識ロールアップと比べると技術的に実装が容易であり、イーサリアム仮想マシン(EVM)との互換性が高いために、既存のイーサリアムアプリケーションを移行しやすい点も注目が高まっている理由として挙げられるでしょう。
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「イーサリアムで導入が検討されているロールアップ(Rollups)とは?」
オプティミスティック・ロールアップの仕組み
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オプティミスティック・ロールアップでは、オフチェーンで実行された複数のトランザクションが単一のデータ(バッチ)としてまとめられたのちに、イーサリアムのメインネットに送信される仕組みを持ちます。
このとき、オプティミスティック・ロールアップではすべてのオフチェーンデータは正しいデータであるという仮定の下で動作するのがポイントとなります。オプティミスティックとは日本語で「楽観」という意味であり、その名が示すよう楽観的動作を行うソリューションであることからそう命名されています。
これがオプティミスティック・ロールアップの特徴で、暗号技術によりデータの正当性を証明するzkロールアップなど他のロールアップと異なる点となります。
「楽観」を実現するチャレンジ期間
では、なぜ楽観的にデータを送信できるのでしょうか?
オプティミスティック・ロールアップでは、オフチェーンでまとめられたデータを送信後、ネットワーク参加者がトランザクションの有効性に異議を唱えることができる「チャレンジ期間」が設けられています。
チャレンジ期間中は証拠とステーク(掛け金)を提出することで誰もが異議を申し立てることができます。この申し立てが正しいと認められれば、不正を行ったトランザクションは取り消され、裁定を行ったイーサリアム・チェーンは正しい状態に更新されます。そして、不正なトランザクションを提出した人には罰金が科され、不正発見者には報酬が支払われます。
逆に不正ではなかった場合は、ペナルティとして意義を申し立てた人がステークした掛け金は没収されることになります。
また、チャレンジ期間に異議申立がない場合は、送信されたすべてのトランザクションは正しいと見なされ、イーサリアム上でトランザクションは承認されることになります。
この方法により、イーサリアムの手数料を各バッチに含まれる複数のトランザクションに分散できるため、個々のトランザクションの手数料を軽減できます。さらに、データ圧縮技術を用いることで、イーサリアムに送信するデータ量を削減も行っています。
イーサリアムネットワークの役割
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オプティミスティック・ロールアップがデータをイーサリアムネットワークに送る際のイーサリアムネットワークの役割と利点を説明します。
イーサリアムメインネットは、ロールアップにおけるオフチェーンの計算の正しさと、この計算に用いられたデータの可用性を保証します。そのため、セキュリティをイーサリアムに依存しない他のオフチェーン技術と比較すると、オプティミスティック・ロールアップはよりセキュリティが堅牢であるといえます。
イーサリアムの検閲耐性を利用
オプティミスティック・ロールアップでは、トランザクションの処理とイーサリアムへロールアップされたバッチを送信する役割を担うオペレーターが存在します。このオペレーターが存在することで、通常のロールアップ技術よりも処理が高速化できる反面、オペレーターによるトランザクションの検閲が可能になってしまうという問題があります。
ロールアップのスマートコントラクトによるセキュリティルールに基づき、オペレーターが不正を行うことは厳しく制限されています。イーサリアム上では、オペレーターはロールアップデータを公開することを義務付けられており、これによってイーサリアムの検閲耐性を活用し、より安全な環境を提供することが可能になります。
また、オプティミスティック・ロールアップのオペレーターがオフラインになったり、トランザクションのバッチ作成を停止したりした場合、他のノードは、利用可能なデータを用いてロールアップの最新状態を復元し、引き続きブロック作成を継続できます。
各ユーザーは、トランザクションデータを用いて資金の所有権を証明できるため、ロールアップから各自の資産を引き出すことができます。各ユーザーは、さらにトランザクションをレイヤー1に送信することもできます。
決済を担うのはイーサリアム
イーサリアムが担う重要な役割は、ブロックチェーンで最終的な確定を行う基盤層、つまりコンセンサスレイヤーとしての機能です。
このコンセンサスレイヤーとは、ブロックチェーンのエコシステム全体の基礎となり、セキュリティを提供すると同時に、不正証明に対して正しい客観的なファイナリティ(決済完了)を提供するものです。
不正証明とは、オフチェーンで行われた取引の結果が、イーサリアムのルールに従って正しく計算されていないことを示す証拠であり、イーサリアムネットワークのユーザーが提出することができます。イーサリアムメインネットは、オプティミスティック・ロールアップにおいて作成された不正証明を検証し、システムの整合性を維持する中心的な役割を担います。
また、オプティミスティック・ロールアップで実行されたトランザクションは、提出されたバッチがイーサリアム上で承認されることで確定します。イーサリアムのベースレイヤーで確定した後はロールバックすることができなくなります。
オプティミスティック・ロールアップの多様性
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オプティミスティック・ロールアップは、イーサリアムメインネットとの相互運用性を念頭において開発されており、ユーザーはメッセージや任意のデータをレイヤー1とレイヤー2との間で容易にやりとりができます。
またEVMとの互換性が提供されることから、既存のDAppsをオプティミスティック・ロールアップに移植することで処理速度を向上させるほか、セキュリティの向上が見込めます。
EVM互換性を持つことで、開発者はイーサリアム上で既に動いているプログラムに大きな変更を加えることなく、オプティミスティック・ロールアップを導入できます。これにより、新しいプラットフォームに移行する際の手間や時間を大幅に削減できます。
開発者やプロジェクトチームは、オプティミスティック・ロールアップを使用することで、イーサリアムメインネットと同等の機能をそのまま活用できるのも利点です。
具体的には、プログラム言語、コードライブラリ、テストツール、クライアントソフトウェア、デプロイ用のインフラなどが活用できます。これにより、開発者は新しい技術を一から学ぶ必要がなく、すでに慣れ親しんでいるツールを使用して開発を進めることができます。
オプティミスティック・ロールアップは、さらにレイヤー1とレイヤー2との間のメッセージのリレーやデータの受け渡しが可能です。これは「ブリッジコントラクト」と呼ばれるプログラムを使用して、レイヤー2上のコントラクトとの通信を可能にします。
イーサリアムメインネット上のレイヤー1のコントラクトにおいて、レイヤー2のオプティミスティック・ロールアップ上のコントラクトに含まれる機能を呼び出せることで、スケーラビリティや手数料の削減のほか、アプリケーションの開発が容易といったメリットを享受しやすくなります。
オプティミスティック・ロールアップの課題
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オプティミスティック・ロールアップにも課題はあります。
まず、誤った異議申立により、トランザクションに遅延が発生する可能性が挙げられるでしょう。さらに、一部のオペレーターがトランザクションの処理順序に大きな影響力を持っているというリスクも指摘されています。
また、正直なノードが存在しない場合、悪意あるオペレーターが不正行為を行うことが可能になります。最低1つの正直なノードが存在しない場合、悪意を持ったオペレーターがルールに反する操作を行う可能性があり、この操作によってセキュリティ問題を引き起こす可能性があります。ただし、イーサリアムメインネットのセキュリティシステムはこのような行為を取り締まることができるように設計されているため、ノードによる不正行為の実現可能性は低いといえるでしょう。
まとめ
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オプティミスティック・ロールアップは、イーサリアムネットワークの混雑を緩和するなどイーサリアムの性能向上に寄与し、ひいては暗号資産(仮想通貨)の未来において重要な役割を果たすことが期待されています。
レイヤー2技術の中ではシンプルな技術といわれるオプティミスティック・ロールアップは、開発者やユーザーがこの技術を活用することで、より速く、安価で、安全なブロックチェーン取引を行うことができるようになるのではないでしょうか。
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