ビットコイン取引での利益確定売り(利確売り)のタイミングは?重要ポイントを紹介
伝統的な資産クラスと比較して、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産(仮想通貨)は、一般的に高いボラティリティを有しています。このような市場環境では、「利益確定売り(利確売り)」のタイミングを見極めることが特に重要です。ただし、暗号資産の市場動向は予測が難しく、高リスクを伴うこともあります。したがって、取引戦略を立てる際には市場の動きやテクニカル分析といった手法を交えながら、慎重に分析することが求められます。
本記事では、暗号資産における利益確定売りの考え方と、その際に考慮すべきポイントについて掘り下げていきます。
利益確定売り(利確売り)とは
「利益確定売り(利確売り)」とは、保有している資産で含み益が生じている状態の時に売却することで利益を確定させることをいいます。「利食い売り」と呼ばれることもあります。今後値上がりする可能性があったとしても、利益を確保させるために売却し、相場が下落して損失を出すリスクを避けることにも繋がります。
例えば、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産(仮想通貨)銘柄で、利益確定売りを行う場合は次のようになるでしょう。
- 1BTC =500万円だった時点で1BTCを購入
- 数日後、1BTC=510万円に上昇
この時点で売却すれば10万円の「利益確定売り」となります。
利益確定売りと反対に、含み損が生じている際、損失を最小限に抑えるために売却することを「損切り」と呼びます。
利益確定売りのタイミング
含み益が出ている時には、「もう少し待てば含み益が増えるかもしれない」という期待から、なかなか利益を確定させるタイミングがわからなくなってしまうことがあるかもしれません。または売却を急ぎすぎて、利幅が小さくなってしまうことも考えられるでしょう。
一方で、今後の値上がりを期待して保有を続けていると、値下がりによって損失になってしまう可能性もあります。
そうした事態にならないためにも、事前にご自身で売却するタイミングを決めておく必要があります。利益確定売りのタイミングには、以下のようなことを考慮するといいでしょう。
- 目標利益や利確ルールを設定する
- テクニカル分析でタイミングを見極める
- アノマリーを参考にする
目標利益やルールを設定
ご自身で目標となる利益を事前に決めておけば、感情に左右されにくくなり、利益確定の際に迷うことは少なくなります。
具体的に、「購入時から10%上昇したら利確」といったルールを決めておくことも良いでしょう。しかし、こうしたルールや目標数値を設定するのは簡単ではありません。
そのために活用できる手法の一つがテクニカル分析です。
テクニカル分析でタイミングを見極める
利益確定のための目標を立てる際には、テクニカル分析を利用するのも一つの方法です。テクニカル分析は、チャートから過去の傾向を読み取り、将来の価格動向を推測する分析手法で、価格の方向感を定めるために使う「トレンド系」や売買のタイミングや相場の勢いを測る「オシレーター系」などの指標から、現在の価格が今後どのように動くのかを予想します。
例えば、上昇局面であっても、レジスタンスラインで反落する可能性が高そうであれば、その直前で売却するという想定をしておくのも一つの方法でしょう。
テクニカル分析にはさまざまな指標があります。指標ごとに売りシグナルなどがあるため、ご自身にあった手法を試しながらタイミングを見極めてみましょう。
アノマリーを参考にする
投資の経験則から生まれる「アノマリー」を参考にするのも一つの手法かもしれません。アノマリーは、具体的な根拠や説明が難しいものの、ある程度の規則性を持つと考えられています。
暗号資産投資でも株式投資と同様のアノマリーが観測されることがあります。また、暗号資産特有のアノマリーとして、半減期に関するものやリップル社のSwellといったイベントに関するものなどさまざまです。
アノマリーには具体的な曜日や季節など時期やタイミングが参考になるもののほかに、具体的に明確な時期が示されないものなどもあります。テクニカル分析などそのほかの手法と組み合わせて考えてみるのがいいでしょう。
関連コラム:
「暗号資産(仮想通貨)のアノマリーとは?投資の経験則を紹介」
ビットコイン独自のタイミング指標
ブロックチェーン上に取引が透明化されているビットコインでは、保有者の損益を測ることができるSOPR(Spent Output Profit Ratio)という指標があります。この指標によって投資家のセンチメントを予想し、市場動向を探ることができます。
SOPRは「UTXO(未使用のトランザクションアウトプット)の実現(コインが最後に動かされた時)ドル価値をアウトプット作成時の価値で割ること」で計算します。簡単にいえば「ある時点の売却価格」/「購入価格」であり、市場参加者が平均的に利益を得ているかどうかがわかる指標です。
SOPRは155日未満保有する短期保有者(STH-SOPR)と155日以上保有する長期保有者(LTH-SOPR)で分析対象が分かれています。STH-SOPRが短期的な動きを反映しています。
SOPRが継続して1以上を示している状態では、平均的に利益が出ている保有者が多いことが示されています。過去の傾向では、1以上のときは強気相場となっていることが多く観察されています。
反対に1以下のときは多くの投資家が損失を出していることを示しており、下落トレンド時には1以下となることが多いようです。
また、SOPRが1に近い状態は損益分岐点であることを示し、レンジ相場となりやすい一方で、トレンドの転換点になることがあります。
SOPR>1 | 利益が出ている保有者が多い | 強気相場の傾向 |
---|---|---|
SOPR<1 | 損失を出している保有者が多い | 弱気相場の傾向 |
SOPR=1 | 利益も損失もない、損益分岐点 | トレンドの転換点 |
SOPRが継続的に1を上回っている状態は、利益確定売りのタイミングが近いと捉えることができるかもしれません。上昇トレンドが継続している一方で、市場がやや過熱気味であることにもなり、トレンド転換する可能性もあるためです。
ただし、この指標も単独で利用するのではなく、テクニカル分析と組み合わせてタイミングを図るのが良いでしょう。
半減期による利益確定売りの影響は?
ビットコインは、四年に一度のタイミングでマイニング(採掘)報酬が半分になる「半減期」があります。この半減期を1サイクルとして、これまでに過去最高値が記録されています。
過去の価格動向から、半減期前後は価格の変動が大きくなりやすいとされています。2016年7月にあった半減期では、半減期後に価格が一時的に下落しましたが、その後上昇に転じました。
2020年5月にあった半減期では、実際に半減期が発生した日に向けてじわじわと価格が上昇し、その後、12月にかけて急騰しました。まだ半減期自体が3回しか発生していないために、確実なことは言えませんが、半減期による利益確定売りが起こっているかどうかは不透明なようです。
長期的な動向として、半減期はビットコイン価格の値動きの参考にされますが、短期的な利益確定売りのタイミングとして参考にするにはやや難しいかもしれません。
2024年1月時点で、次の半減期は2024年春と想定されています。
関連コラム:
「ビットコインの半減期とは?価格動向の予測に必須の知識」
利益確定売りで気を付けること
利益確定売りによって、利益を日本円に換金したり、他の暗号資産(仮想通貨)に交換したりした場合には、金額によって、税金を納めなければなりません。
暗号資産取引で利益が出た場合は雑所得として申告します。給与所得者の場合は年間で約20万円以上の利益が発生したら確定申告を行わなければいけません。給与所得者以外では38万円以上の利益が発生すると申告が必要になります。
ただし、これらは暗号資産取引だけに限った場合です。暗号資産以外の投資で利益を得ていたり、副業などで所得があったりする場合には申告が必要な利益額が異なるため、事前に専門家に相談するのがいいでしょう。
関連コラム:
「ビットコインで利益が出た場合の税金対策!納税額はどのように決まるのか」
ビットコインはガチホがいい?
株式などでは、「利食い千人力」という格言があるように、利益が出ていれば利益確定することが賢明であるという考え方があります。
反対に、ビットコインには売却せずに長期保有する「ガチホ」という言葉があります。ビットコインでは「HODL」という言葉でも使われるガチホですが、デメリットとして短期的な資産の回転効率が悪いという点が挙げられます。同じ資金で次々に収益を狙うデイトレードができないという点や、レバレッジ取引で行う「空売り」といった下げ局面での投資戦略にも向いていません。
ご自身の投資戦略に合わせて、利益確定売りを組み合わせると良いでしょう。
関連コラム:
「暗号資産(仮想通貨)における長期保有(ガチホ)のメリットとデメリット」
まとめ
他資産と比べてボラティリティが大きいビットコインで、利益確定売りのタイミングを図るのは簡単ではありません。利益を狙っていても、突如下落してしまい、損失につながってしまうこともあります。
利益目標を決めたり、テクニカル分析などを用いたりして、自分自身に合った利益確定売りの際のタイミングを見つけるといいでしょう。
ブロックチェーン上で取引が透明化されているビットコインでは、株式や為替とは異なる分析指標も使えます。現在のビットコイン保有者全体で損益が出ているのかどうかを測るSOPRといったオンチェーン指標も参考にするといいかもしれません。
利益を確定して売却益を得た場合には、確定申告が必要になる可能性あることにも注意しておきましょう。
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