暗号資産(仮想通貨)取引に関わるガス代について解説
暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンの分野は、その複雑さと革新性で知られています。そうした中で、ガス代と呼ばれる手数料はこの分野を理解する上では必要不可欠な知識です。
暗号資産取引において、ガス代は避けて通れません。効率的な取引を行うために、ガス代について正しい理解が必要です。
この記事では、暗号通貨の取引について深く理解するために、ガス代の概念を始め、それが暗号資産取引にどのような影響を与えるかなどについて詳しく解説します。
暗号資産(仮想通貨)取引における「ガス代」とは?
暗号資産(仮想通貨)の世界では、「ガス代」という言葉を頻繁に目にします。この「ガス代(Gas)」という言葉を最初に使った暗号資産(ブロックチェーン)はイーサリアム(ETH)で、取引手数料のことを指します。
一般的には、ガス代=イーサリアムの取引手数料を指すことが多いのですが、この用語は暗号資産の世界に幅広く浸透してきており、現在はイーサリアムに近しいブロックチェーンのほか、独自のブロックチェーンにおける手数料も一般名詞的に「ガス代」と呼ぶこともあります。よって、ブロックチェーンにおいて、「ガス代」という言葉が使われた場合は、それは手数料を指していると解釈してもらえれば問題無いでしょう。
イーサリアムのガス代とは
イーサリアムにおけるガス代は、取引や、スマートコントラクトと呼ばれるプログラムを実行する際に手数料として発生します。
ガス代に使用される暗号資産はブロックチェーンごとに決められており、一般的には利用するブロックチェーンのネイティブトークンである暗号資産が使用されます。イーサリアムの場合は、そのネイティブトークンであるイーサ(ETH)がガス代として使用されます。
なぜガス代が必要なのか
イーサリアムは、2013年の誕生当初からコンセンサスアルゴリズムにマイニング(採掘)によって合意を行うプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work:PoW)を採用していました。しかし、スケーラビリティ問題や大量の電力消費といったPoWの課題を解決するために、2022年9月にコンセンサスアルゴリズムをプルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)へ移行しました。ただし、PoSに移行したからといってガス代が劇的に安くなることにはつながりません。
これは、ガス代という仕組みがブロックチェーンネットワーク上の全ての計算とストレージのコストを補うために存在しているからです。
具体的には、ガス代はブロックチェーンを維持する承認者に対する報酬として支払われます。承認者は、新しい取引をブロックチェーンに追加する承認作業を行いますが、ネットワーク上でそうした活動を継続的に行うために、ガス代を報酬として得ることで運営コストをまかなっています。
ブロックチェーンはブロック承認者の自発的な活動を依存し、その行動の報酬としてガス代を提供します。これによりブロックチェーンの持続的な運用が可能となるのです。つまり、イーサリアムを始め多くのブロックチェーンは、ネットワークを維持するためにガス代が必要不可欠なのです。
ガス代は高騰する!?
イーサリアムで時折ガス代が高騰する問題は、ネットワーク開始初期の頃から課題となっています。
ガス代が高騰する理由のひとつは、イーサリアムの手数料が固定されていないことにあります。イーサリアムでは、ユーザーの取引手数料が高ければ高いほど、トランザクションの承認処理をするリストの上位に追加される仕組みになっています。
一方で、イーサリアムブロックチェーンのブロックサイズは限られた容量しかないため、1回の作業で承認できる件数は自ずと限られることになります。そのため、ユーザーは早く取引を処理してもらおうとするには、取引が増えれば増えるほど、より多くの手数料を支払う必要が生じるようになります。この連鎖によって、ガス代が高騰するという状況を引き起こします。
この問題は、コンセンサスアルゴリズムの技術に依存していないことから、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)へ移行しても解消されません。つまり、ブロックサイズが制約となるイーサリアムの設計そのものから生じる問題なのです。
ガス代高騰の仕組みにも役割はある
イーサリアムのガス代は、マイナーへの報酬だけでなく、ネットワークの過大な負荷を軽減するという役割も果たします。
イーサリアムの利用が世界中で増えれば増えるほどネットワークに多大な負荷がかかり、送金する速度やスマートコントラクトを処理するスピードが落ちてしまうことになります。そうした負荷をコントロールするために、ガス代の価格を変化させ、ネットワーク全体の負荷をコントロールしているのです。
さらに、ガス代の高騰は結果的にセキュリティを高める要因にもなります。
イーサリアムをはじめ多くのブロックチェーンは、悪意あるユーザーによりネットワークやサーバー(ノード)に必要以上の負担をかけるDOS攻撃や、セキュリティの脆弱性を突くなどのサイバー攻撃を受ける可能性があります。
しかし、イーサリアムをはじめとした多くのブロックチェーンでは、原則としてすべての取引にガス代が発生します。サイバー攻撃を行う悪意あるユーザーも、自身の攻撃によりガス代が高騰することで、攻撃に必要となるガス代も連鎖的に増加するため、結果的にサイバー攻撃の防止に繋がるのです。
イーサリアムのガス代はいくら?
イーサリアムのガス代は、「ガスリミット(ガス限度額)」「ベースフィー(基本手数料)」「プライオリティフィー(優先手数料)」という3つの要素で金額が決定します。
ガス代の計算式は以下の通りです。
ガス代(Gwei)=(ベースフィー+プライオリティフィー)×ガスリミット
なお、イーサリアムの手数料は「Gwei(1Gwei=0.000000001 ETH)」というETHよりも小さい単位を使用します。基本手数料は、「1GasあたりどのくらいのGweiがかかるのか」を表したもので、取引内容にかかわらず必要な基本料金のことを指します。
「ベースフィー」は取引ごとの基本手数料のことで、取引するユーザーが多いほど高くなり、少ないほど安くなるよう、自動的に調整されます。
「プライオリティフィー」または「チップ」は、トランザクションの処理を優先して行ってもらうためにマイナーに支払う追加料金を意味します。優先手数料が多いほどよりトランザクション処理が優先されやすくなります。
「ガスリミット」は、送金やスマートコントラクトの実行の際などにユーザーが支払えるガス代の上限を指します。ガスリミットは、取引の大きさによって決まるのが一般的で、ユーザー自身で調整することが可能です。ただし、ガスリミットを超えると取引に失敗し、逆にガスリミットが低すぎるといつまでたっても取引が完了しない可能性があるため、適切なガスリミットの設定が必要です。
こうしたガス代の計算は、自分で計算することもできますし、自動的に計算してくれるツールも提供されています。
ガス代を節約するための方法
イーサリアムではETHの価格が急激に変動したときや、ユーザーが急増したときにネットワークが混雑し、ガス代は高騰しやすくなります。よって、手数料を節約したい場合は、そうしたときの利用を極力避けることが重要です。
また、通常は、夕刻以降や特定のイベント時などにネットワークが混雑します。取引する時間帯を選べるのであれば、平日の午後から夕方までが比較的空いているといえますが、常にそうとは限らないので各自で日頃から混雑状況を調べておくとよいでしょう。
イーサリアムのガス代を決める3要素のうち、ガスリミットは自分で設定することができます。緊急でないトランザクションの場合は、低いガス単価を設定するようにするとよいでしょう。ただし、ガス代をあまり低く設定してしまうと、安定した取引に支障が出るため注意が必要です。
また送金については、取引自体の回数を減らし極力まとめて送金することもガス代を節約するには大切な要素です。暗号資産(仮想通貨)の送金は取引するたびにガス代が発生するので、こまめに送金するよりもなるべく1回の取引で終わらせるように努めるとガス代の節約につながります。
ガス代は経費になる
イーサリアムを含め暗号資産取引で一定の所得が発生した場合、確定申告を行う必要がありますが、その際にガス代は必要経費として計上することが認められているため、節税効果に期待できます。
ただし、ガス代を経費として計上するには、取引成立時における暗号資産自身の時価を把握する必要があります。随時時価を把握しておくのは手間がかかりますので、ガス代を払った時点での暗号資産の価格と取引数量は必ず調べ、その時点で日本円に換算するという作業を行っておくことが大切です。あとから調べるのは大変ですので、常に心がけておくとよいでしょう。
まとめ
ガス代は、ブロックチェーン技術の進化によって変化し始めています。イーサリアムもレイヤー2ブロックチェーン等の登場により、トランザクションの効率は上がりました。しかし、より多くのユーザーとトランザクションの増加により、ガス代は依然として高い状況です。
一方、高機能かつ低コストを実現するブロックチェーンも多く登場していることから、イーサリアム以外のブロックチェーンを利用する選択肢も増えています。
ブロックチェーンにおけるガス代の未来は、さらなる技術開発の進化により、より大きな変革を遂げていくことでしょう。
また、AI技術の進化によりガス消費量の予測が向上するなど、そうした情報サービスとブロックチェーンを組み合わせることでもガス代の節約ができる時代になりつつあります。
ガス代は、ブロックチェーンのネットワークを安定させて運営させていくものとして欠かせないものであり、ネットワークの存続には必要不可欠です。ガス代の高騰が悪であると断じるのでなく、ネットワークの安定性と信頼性確保するものであるということも念頭に置きたいところです。
※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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