19歳でイーサリアムを開発したヴィタリック・ブテリンとは

ヴィタリック・ブテリン
2023-12-13 更新

NFT(ノンファンジブルトークン)や分散型金融(DeFi)など、暗号資産(仮想通貨)業界には次々と新しいトレンドが生まれています。これらはイーサリアム(ETH)を基盤として作られているものが多くあります。2023年9月現在で時価総額2位であるイーサリアムは発表当時、弱冠19歳だったヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が開発を主導しました。ブテリン氏は開発当時からブロックチェーンをビットコイン(BTC)のような投資や決済手段ではなく、さまざまな技術のプラットフォームにするという構想を持っていたといいます。現在の暗号資産・ブロックチェーン業界のトレンドを生み出したブテリン氏とはどのような人物なのでしょうか。

この記事では、今後のイーサリアムの行方を占うためにも最重要人物であるヴィタリック・ブテリン氏について解説します。

ヴィタリック・ブテリンとは

ヴィタリック・ブテリン氏はカナダの主要都市トロント出身のロシア系カナダ人起業家兼プログラマーです。弱冠19歳の時にイーサリアムを開発した人物として暗号資産(仮想通貨)業界の中でも最も影響力のある人物の一人として知られています。

ブテリン氏は1994 年 1 月 31 日にロシアのモスクワ州コロムナで生まれました。6歳までロシアに住んでいましたが、両親とともにカナダに移住することになります。

19歳でイーサリアムを開発したように、幼い頃から非凡な少年であったようです。

小学3年生で突出した才能を持つ「ギフテッド」のクラスに入り、幼い頃から数学とプログラミングに特に強い興味を持っていました。自分自身が周りの人とは異なる能力を持っていることを自覚し、あるメディアに「長い間、自分がある意味異常であると感じていたのを覚えています」と話しています。

ブテリン氏がビットコインについて知ったのは2011年で父親からの勧めによるものでした。当時、ビットコインは誕生から2年が経ちブテリン氏が17歳だった頃です。最初はビットコインがただの数字の羅列にしか見えず、興味が湧かなかったようですが、その1ヶ月後に別の場所でビットコインについて聞き、自身でビットコインについて調べるようになります。

ビットコインに興味を持ったブテリン氏はビットコインを保有したいと考えましたが、マイニング(採掘)するためのコンピュータも現金も持っていませんでした。そこで、インターネットフォーラムでビットコインに関する記事を執筆し、その原稿料としてビットコインを稼いだといいます。メディアへのインタビューでその原稿料を元に8.5BTCでTシャツを購入したことを明らかにしています。

その後ブテリン氏のビットコインに関する記事がビットコイン愛好家ミハイ・アリジー(Mihai Alisie)氏の目に留まり、オンラインニュースサイトである「ビットコインマガジン」を共同設立することにつながりました。

ブテリン氏はフォーチュン誌の「40under40」やフォーブス誌の「30under30」に選ばれており、世界をリードする開発者として注目を集めています。また、イーサリアムの時価総額が年々上昇したことで、ブテリン氏は2021年に保有資産が10億ドルを突破し、27歳という当時最年少でビリオネアの仲間入りを果たしています。

非中央集権への意識

ビットコインについて、ブテリン氏はビットコインの非中央集権性にも強く共感していることをさまざまなメディアで発言しています。それはビットコインと出会う前に起こった出来事と関係しているそうです。

ブテリン氏は2007〜2010年ごろにオンラインゲーム「World of Warcraft」に夢中でした。しかし、このゲームでアップデートが行われた際にゲーム内のお気に入りだったキャラクターの仕様が変更されることがあり、かなり落胆したといいます。これによって、中央集権的に作られるサービスの恐ろしさに気づいたと発言しています。

イーサリアムの誕生

ビットコイン・マガジンを共同設立後、2012年にブテリン氏はカナダのウォータールー大学に進学します。

しかしビットコインに夢中になっていたブテリン氏は週に30時間以上ビットコイン関連のプロジェクトに費やしていたこともあり、大学の中退を決意します。

その後、世界中のビットコインのプロジェクトを調査するための旅に出たことがイーサリアムのアイデアに繋がったといいます。

旅の中でブテリン氏は人々がブロックチェーンを暗号資産(仮想通貨)以外に使おうとしていることに気づきました。決済や投資といったある特定の用途のためのブロックチェーンではなく、個人認証やクラウドファンディングなど、あらゆる目的や用途にブロックチェーンが使われていることを知ったとメディアのインタビューで答えています。しかしながら、当時のブロックチェーンはそれらの用途に適したものでなかったそうです。

このことが、ある特定の目的のためでなく、「さまざまな用途に使えるブロックチェーンプラットフォーム」というイーサリアムの核となるアイデアとなりました。

そして、2013年11月にブテリン氏はイーサリアムのホワイトペーパーの草案を書き上げます。ブテリン氏はイーサリアムのホワイトペーパーを15人の友人に送り、その友人たちがさらに友人に連絡し、結果的に30人ほどがブテリン氏に連絡をとってきたそうです。

その後、2014年1月米マイアミで開かれたビットコインのカンファレンスでイーサリアムが発表されました。プロジェクトのコアチームのメンバーはブテリン氏とアリジー氏のほかに、アンソニー・ディ・イオリオ氏、チャールズ・ホスキンソン氏、ジョセフ・ルービン氏、ギャビン・ウッド氏といった、その後の暗号資産業界を牽引する人物が集まりました。

そして、2014年7月にICO(Initial Coin Offering)で当時約15億円超となる31,529BTCの資金調達を実施し、ブテリン氏が著名な起業家であり投資家のピーター・ティール氏が設立した大学中退者向け起業家育成プログラムで獲得した10万ドルの助成金を合わせて、イーサリアムの開発を本格化させることになります。

翌年の2015年7月30日にはイーサリアムの最初のバージョンである「フロンティア」がスタートし、世界初のスマートコントラクトプラットフォームとしてイーサリアムが開始しました。

ブテリン氏の発言や動向はなぜ重要なのか

イーサリアムは発表当初から開発が続けられていることで知られています。2023年9月現在でも新しい機能の提案や実装が継続的に行われており、メディアやSNSでも話題に上っています。

ただ、そうしたさまざまな情報がインターネット上に出回ると、最新の正しい情報を得ることが難しい側面もあるでしょう。ブテリン氏の発言は、今後の開発動向や思想などを正しくキャッチできるために、度々話題となっています。開発が続くイーサリアムでは間違った情報に惑わされることを防ぐためにもブテリン氏の発言は重要と考えられます。

一方、情報を正しく判断するという以外の面でも、ブテリン氏の動向が暗号資産価格に影響することもあります。

2021年5月、ブテリン氏は新型コロナウイルス救済基金に、自身が保有していた約50兆SHIB(シバイヌ:当時の価格で約12億ドル)を寄付しました。50兆SHIBは当時のSHIB流通量の5%を超える量でした。SHIBはこの寄付の直前に海外の大手暗号資産交換業者に上場され急騰していましたが、このことによって価格が一気に50%も下落しました。当時そこまで流動性が高くなかったことも急落に繋がったかもしれません。

さらには、ブテリン氏に関するフェイクニュースが価格に影響を与えた可能性も報じられたことがあります。2017年6月、画像掲示板の4chanで、ブテリン氏が死亡したという情報が流れました。このニュースが瞬く間に広がり、当時のブテリン氏がSNSでしばらく投稿を行っていなかったことも重なり、暗号資産コミュニティに不安が広がったことでイーサリアムの価格に影響を与えたと言われています。当時は15%ほど一気に下落しました。

しかし翌日にブテリン氏自身がこのニュースを否定。ブロックチェーンの最新のトランザクションとブロック高が書かれた紙をもった自身の自撮り画像をSNSに投稿したことで生存を証明しました。

ブテリン氏が想定するイーサリアムの未来

ブテリン氏は10年後にはイーサリアムが「メタバースを支配している」と予想しています。
NFTのトークン規格の多くがイーサリアムのERC規格で作られていることもあり、異なるプラットフォーム間でデジタルアイテムや情報を移転・共有しやすいためでしょう。

さらに、イーサリアム・ネーム・サービス(ENS)はユーザーやデジタルアイテムに固有の名前やアドレスを付与できます。暗号化されたアドレスや分散型ウェブサイトに独自の名前を提供することでより使いやすくなるでしょう。

ENSによってユーザーやアイテムが異なるプラットフォーム間で同一のIDを持ち続けることが可能になります。

ただし、ブテリン氏はこのIDシステムにプライバシーの問題があると考えています。そこで今後重要になるのがゼロ知識証明という暗号技術をベースにしたzk-SNARKSといったプライバシー技術です。

zk-SNARKSを使用することで、「ある情報」について詳細な内容を公開することなく、「ある情報」が正しいことを証明できます。例えばある秘密の数字を知っていることを、数字そのものを知らせることなく、知っていることを証明できる技術です。

ブテリン氏はzk-SNARKSが今後30年間で最も広範囲に展開されるデータプライバシー技術になると考え、10〜20年で暗号資産業界以外にも広がることで「大きな革命」が起きると主張しています。

イーサリアムそのものの開発については、2022年7月のイーサリアム・コミュニティ・カンファレンス(EthCC)で、イーサリアムの将来計画を概説しています。

  1. プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake:PoS)への移行(The Merge)
  2. スケーラビリティのためのシャーディングの実装(The Surge)
  3. 効率性のためのVerkle Treesの導入(The Verge)
  4. ストレージ要件の削減(The Purge)
  5. 量子耐性の強化(The Splurge)

という5段階です。これらの更新は、速度、スケーラビリティ、送金コストの問題を解決し、イーサリアムをより効率的にして、数千のトランザクションを毎秒処理できるようにすることを目的としています。実現すればイーサリアムがより使いやすく、社会に広がることも期待できそうです。

まとめ

19歳という若さでイーサリアムを考案したブテリン氏はビットコインの非中央集権性に影響を受けながらも、ブロックチェーンを特定の目的のために開発するのではなく、プラットフォームとしての役割を持たせるためにイーサリアムを開発しました。

メタバースやNFT、DeFiなど毎年のように新しいトレンドが暗号資産(仮想通貨)業界に現れていますが、どれもイーサリアムが基盤となって作られているものばかりです。こうした暗号資産のユースケースの広がりを作り出した人物として常に注目の人物となっています。

イーサリアムの開発状況や今後の計画についてもSNSなどで発言することも多いため、ご自身で情報を把握する際の参考にしても良いかもしれません。

※掲載されている内容は更新日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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